人種や年齢、そして文化すら異なる男女の多難な愛の行方が描かれる。両者を繋ぐのは、アリの拙いドイツ語と、エミの入れるコーヒーと、酒場でのダンスだ。
親族や隣人から向けられる侮蔑や嫉妬の感情も、故郷を思>>続きを読む
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少女が子猫を拾い、家族で幸せに暮らすという牧歌的な物語だと思っていた。だが、想像以上に現実的な作品だった。
中盤で不仲だった両親が別居してしまう。親猫から捨てられたルーに、クレムは自分の境遇を重ねて>>続きを読む
アナが負傷兵にリンゴを差し出すシーンはどこか象徴的で、強く印象に残った。その純真さは閉塞感の漂う劇中で、希望として描かれているように見えた。
彼女はフランケンシュタインと思しき青年になぜ優しく接した>>続きを読む
熊とは、理不尽な戒律や古いしきたりなど、現状にそぐわない数多の決まりごとを守ろう、または守らせようとする同調圧力の暗喩であったのかも知れない。
劇中で熊によって命を落とす者が出てくる。熊はいないと謳>>続きを読む
独立した会話劇が交互に映し出されたり、昔のドキュメンタリー映像が差し挟まれたりする。どの演出も物事を多面的に見せるための仕掛けだったと感じる。
複数の視点から浮かび上がるのは、バーナデットの喪失だ。>>続きを読む
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現実の世界と重なり合うように存在する、時の止まった幻の町が舞台となる。
空間がひび割れて、その向こう側に現実の世界がちらりと見えるという演出は秀逸で、少しずつ明かされていく事の真相に、情緒が迷子にな>>続きを読む
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臨場感のある作品だった。未麻が我に返る度に、観ている側も一緒になって、これは現実なのか、それとも夢なのかと必死で考えを巡らせていた気がする。
ところで、劇中の日記にブルーという言葉が憂鬱という意味合>>続きを読む
同じ対象が時に壁画として描かれ、時に立像として表される。二次元と三次元の世界を行き来する、コマ撮りならではの良さを活かした独創的な作品だった。
オオカミから逃げた先の一軒家をなぜオオカミの家と呼ぶの>>続きを読む
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子を育て、子に看取られるという人間の営みを思う。イオルフは人間よりもはるかに長命であるため、マキアはエリアルを育て、やがて彼を看取ることになる。
見送る側に立たされる孤独と、一時を共にしたという充足>>続きを読む
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冒頭の映像で、ループが起きている原因に何となく察しがついてしまう。故に見せたいものは別にあったのだと思えた。
それは虚構によって救済される主人公の悲哀だった気がする。現実が再構築された歪な世界の中で>>続きを読む
犯人の視界をジャックするかのように、主人公は遠く離れた場所で起きる殺人事件をリアルタイムで目撃してしまう。
犯人は誰で目的は何なのか、主人公が視えるのは何故なのかという謎を軸に物語は展開していく。明>>続きを読む
あらゆる要素が洒脱さと緻密さで満ちていて、隙のない作品だったと感じる。
テーマは衝撃だろうか。宇宙人が来襲したという衝撃を始め、母親が亡くなったという衝撃や想い人が出立したという衝撃など、様々な衝撃>>続きを読む
愛猫と暮らす男性たちをひたすら映し続けるドキュメンタリー映画だった。
まるで息子や娘を見やるかのような男性たちの優しい眼差しも素敵だったし、飼い主にすっかり気を許した猫たちの柔和な表情や可愛い仕草も>>続きを読む
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溺死者のごとく湖面に浮かんだクロエの姿を映し出すところから物語は始まる。思えば冒頭から死の匂いが漂っていた。
泳げないバスティアンが湖の向こう岸を目指すシーンが脳裏から離れない。認められたい、一緒に>>続きを読む
愛嬌のあるキャラクターにも、レトロさの漂うメカニックにも、もはや親しみや懐かしさを通り越して安心感すら覚え、すっかり我を忘れて観入ってしまった。
偏見は判断を誤らせるという台詞が登場するが、テーマは>>続きを読む
対称的な2組の親子が登場する。劇中では、彼らの恋愛模様を通じ、それぞれの関係が再構築されていく様が描かれる。
観終えて、シャオホンとララは、互いの中にこうあって欲しいという母親や息子の姿を見ていたの>>続きを読む
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ミリオネアで出題される4択クイズと共にジャマールの半生が紐解かれていく。
序盤は彼がなぜ尋問を受けているのか、中盤は最後の賞金にまで手が届くのか、終盤はラティカと無事に再会できるのかが焦点となり、観>>続きを読む
ジャンプスケアに頼らず、文脈だけで怖がらせようという思惑が伝わってくる作品だった。まるで、真っ向から勝負を挑まれているような気さえしてくる。
文集へのさなの寄稿文から、ミンナのウタというキーワードの>>続きを読む
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オムニバス形式の作品だが、各話は相互にゆるく繋がっている。時系列が所々で入れ替えられており、観終えた後にあれこれ想像を巡らせる楽しさがあった。
トースターの音と銃声が重なるところや、店の扉が閉まり章>>続きを読む
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バービーやケンが何体も登場する世界観に戸惑ったが、ドール所有者の数だけ、その人の思い描くバービーがいてケンがいるという演出だったのかも知れない。
人間界で目の当たりにした男性優位の社会にバービーは疑>>続きを読む
一言で感想を言うなら、高熱でうなされている時に見る夢のような作品だった。
動物とも植物ともつかない異形の生き物が跋扈する惑星が舞台で、巨人から蹂躙されるがままの人類の行く末が描かれる。独創的であり、>>続きを読む
組織は様々な背景や属性を持つ個人で溢れている。それでも、誰もがあるがままの姿でいることは難しいように見える。
主人公は軍隊や家族という集団の中で、ただ自分らしくあり続けようとする。その強かさと直向き>>続きを読む
公式サイトにある「父親の葬儀にも、人生にも何もかも間に合っていない」という簡潔で酷薄な見出しに目を奪われた。
文言の後半部は、その年齢で人生のあるべき段階に至っていないという意味か。踏み込んだ表現に>>続きを読む
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無邪気さ故の残酷さが執拗に描かれる。身に余る力を感情の趣くまま行使して、後戻りできなくなっていく様に、ざらりとした後味を伴う心地の悪さを覚えた。
終盤にある広場のシーンで、対峙する両者を観戦でもする>>続きを読む
タクシー運転手とその乗客という設定に目が留まった。本来なら、その場限りで終わるはずの関係性が徐々に深化し、後日談へと繋がる展開に魅せられた。
思い出の地を辿りながら、最終目的地を目指すというプロット>>続きを読む
主人公は休養中の俳優だ。その姪は夏季休暇中の学生だろうか。そこに逃亡中の友人が加わる。共通するのは、全員が人生の猶予期間に身を置いていることだ。
いつかは決定的な何かと向き合わねばならないという共通>>続きを読む
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誰に非があったのかと考えてしまう。興味本位で軽率な質問をした同級生か、人目を気にしてレミを突き放したレオか、混乱して自殺を選んでしまったレミか。
レミの死は自分に全ての責任があると、レオは考えている>>続きを読む
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ロールシャッハテストのように、人によって見え方が変わる作品かも知れない。個人的には、近しい人を死者の国から連れ戻さんとする冥界下りを思い出した。
テーマの一つは覚悟だろうか。眞人は石との契約の継承を>>続きを読む
遊園地のアトラクションに惹かれる、対物性愛者の女性を描いた作品だった。
ジャンボは点滅や回転することでジェンヌと意志の疎通ができる。その設定ゆえに、本来は一方通行の恋愛となるべきところが双方向となり>>続きを読む
「自分らしく生きること、人間らしさとは、何なのか。」という公式サイトの一文が目に留まった。その問いは、作品を理解するための糸口のような気がする。
観終えて、自分らしく生きることとは人生の手綱を握るこ>>続きを読む
失われた若さへの切望がパールを殺人の衝動に駆り立てているように見えた。ただ、誰を殺して誰を殺さないのかには、一定のルールがあるのではとも思える。
3部作の1作目ということもあり、全貌はまだ見えてこな>>続きを読む
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人は未練にどう折り合いをつけるのかを描いた作品に思えた。ピアニストの夢を絶たれた主人公と、捨てられないごみ屋敷の住人達は根の部分では似ている。
各エピソードでは、婚約指輪から惣菜まで、多種多様な未練>>続きを読む
2分サイクルでループが起きる。物語を展開させるには短すぎる気もしたが、登場人物の誰もがきびきび動き話すので、程良い緊張感と没入感が生まれていた。
2分で移動できる範囲が舞台となり、会話劇が主体だ。台>>続きを読む
原題はLeslieではなくTo Leslieとなっており、その意味を考えさせられた。
レスリーは主人公で、その再起が描かれる。しかし、周囲の人々こそが隠れた主役で、彼らが彼女に向ける様々な感情の表出>>続きを読む
法廷ドラマというよりは湿地ドラマだった。チェイスを殺した犯人は誰なのかという点よりもカイアはいかなる生涯を送ったのかという点が主軸になっている。
そのように見えたためか、ラストシーンで明かされる事の>>続きを読む
カフタンの静けさを伴う青色と、タンジェリンの瑞々しい橙色の対比が美しい作品だった。前者は秘密という言葉を、後者は生命という言葉を思い起こさせる。
戒律や法律は見えない境界線のようなものだ。その内側で>>続きを読む