niameyさんの映画レビュー・感想・評価 - 4ページ目

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ゴッズ・オウン・カントリー(2017年製作の映画)

3.9

やさぐれ鬱屈していたジョニーが、ゲオルゲとの関わりを通し次第に立ち直っていく展開に、じんわり心が温かくなる。

ゲオルゲに導かれ、ジョニーが朝日に照らされた遠くの丘陵を眺めるシーンが良い。それまでの荒
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怪物(2023年製作の映画)

4.4

物事の全貌を把握することは難しい。誰かの嘘や勘違い、自らの先入観が作る死角に怪物は生まれ、不幸が起きる。

怪物に翻弄されながら、断片的な情報を元に手探りで生きねばならない我々の心許なさが主題であった
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aftersun/アフターサン(2022年製作の映画)

4.0

このレビューはネタバレを含みます

仲睦まじい父親と娘の回想映画だが、カラムが独り暗い夜の海に入っていくシーンや、バルコニーの鉄柵の上に立つシーンからは、また別の側面が見えてくる。

カラムが精神的に不安定であったことを当時11歳のソフ
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はざまに生きる、春(2022年製作の映画)

3.7

このレビューはネタバレを含みます

誰かに告白したことがあるのかという春の問いに対して、傷付きたくないからないと答える屋内の姿が印象に残った。

劇中ではあまり描かれることはなかったが、発達障害であるが故の、定型発達には分からない生き辛
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WEEKEND ウィークエンド(2011年製作の映画)

3.8

ラッセルには自身への不信が、グレンには他者への不信があったように思う。

互いの欠落を埋めるが如く、2人は次第に関係を深めていく。週末の僅か2日間を描いた作品だが、人生を変える出会いと別れが鮮やかに表
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宇宙人のあいつ(2023年製作の映画)

3.5

土星の凄いような凄くないようなテクノロジーにも、日出男のここぞという時に怪しくなる日本語にも、脱力を誘う狙って外した緩さがあって楽しかった。

おもむろに始まる真田サミットの存在が光っている。互いに大
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アンテベラム(2020年製作の映画)

3.7

奴隷として綿花栽培に従事するエデンと、社会学者として活躍するヴェロニカの姿が交互に映し出される。中盤までは両者の関係性が物語を牽引していく。

時系列の見せ方が巧みで、自分のルーツを紐解いているように
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劇場版 PSYCHO-PASS サイコパス PROVIDENCE(2023年製作の映画)

4.1

TVアニメ第3期には常守の不在をはじめ欠落した情報が多く、掴みどころのない印象があった。今作で多くの謎が明らかにされ、色が付いたような気がする。

灼の父親と炯の兄を巡る過去の顛末も描かれていた。でき
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ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー(2023年製作の映画)

4.2

あちこちに隠されたイースターエッグや、耳に馴染んだゲーム音楽のアレンジなど、至るところから作品への愛が感じられ、思わず嬉しくなってしまった。

ピーチ城でマリオが何度も特訓コースに挑むシーンが良い。ア
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帰れない山(2022年製作の映画)

4.0

このレビューはネタバレを含みます

劇中の寓話に登場する「最も高い山」は各々にとって最愛の存在を意味しており、それを持たない者や失った者が「8つの山」を放浪するのだと解釈した。

そう考えると、原題である「8つの山」の由来は、親友である
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マイ・フェア・レディ(1964年製作の映画)

3.8

粗野な花売り娘だったイライザが、次第に洗練された大人の女性へと近付いていく様を描いた物語で、その外見のみならず、内面の変化にも目を奪われた。

特に、舞踏会後にヒギンズ邸で彼女が見せた憂鬱な仕草からは
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ぬいぐるみとしゃべる人はやさしい(2023年製作の映画)

3.9

原作既読。小説には内面描写が非常に多く、映画ではそれを登場人物の独白というかたちで補っているように見えた。

心地良さと心地悪さの混在した不思議な作品だった。相手の世界に踏み込まない優しさと、相手との
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君の名は。(2016年製作の映画)

4.2

様々な顔を持った作品だった。身体が入れ替わる序盤はコメディだし、過去の事故を辿る中盤はミステリーだし、ロードムービーや青春映画の側面もある。

沢山のジャンルが互いに衝突することなく、絶妙なバランスで
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せかいのおきく(2023年製作の映画)

3.5

このレビューはネタバレを含みます

せかいのおきくというタイトルには、果てのないこの世界に生きるおきくという意味が込められているのだと解釈した。

思うに任せぬその世界で、不遇や非運に腐ることなく、真っ直ぐに生きようとする登場人物達の姿
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あらののはて(2020年製作の映画)

3.7

高校時代の心残りを晴らそうとする女性の物語だった。彼女が知りたかったのは、荒野は自分のことを好きだったのかという問いへの答えだったように思う。

定点カメラによる長回しが多い。特に夜の公園のシーンが印
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ヴィレッジ(2023年製作の映画)

3.7

劇中に邯鄲という能の演目が登場する。そこで謡われる世の儚さは、人生に翻弄される優の内面を照らし、その陰影を効果的に浮かび上がらせていたと思う。

エンドロール後に流れる映像が良い。観客に世の無常さを繰
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TOVE/トーベ(2020年製作の映画)

3.6

爆撃の轟音が響く防空壕の中で、トーベがムーミンのイラストを描いているところから物語は始まる。絵柄と状況のアンバランスさに冒頭から引き込まれた。

多様性があり、客観的でどこか批評的でもある。ムーミンに
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サイド バイ サイド 隣にいる人(2023年製作の映画)

3.4

開示される情報は断片的で、掴みどころの無い作品に思えた。それ故か、観終えて記憶に残ったのは、ストーリーの展開ではなく映像の美しさの方だった。

誰かの想いが見えるという魅力的な設定がありながら、それが
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うみべの女の子(2021年製作の映画)

3.7

思春期のただ中にいる少年少女を映した作品だった。中学二年生という、心と体がばらばらで、言葉を選べない時期の不安定さが、生々しく描かれていた。

脈絡のない彼らの言動に初々しさや瑞々しさを覚える一方で、
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ザ・ホエール(2022年製作の映画)

3.8

タイトルのザ・ホエールはチャーリーのことを指していたのだろう。彼の巨躯は鯨の姿を、喘鳴はその声を思わせる。

白鯨において、エイハブ船長はモビィ・ディックへの復讐に生涯を捧げた。家族を捨てエリーから恨
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ガンズ・アキンボ(2019年製作の映画)

3.5

振り切れた登場人物が多く、それだけで面白かった。特にリクターの存在は大きい。会話のまるで通じない絶望感が、独特の浮遊感や緊張感を生み出していた。

アクション映画というよりはコメディ映画に近い。ニック
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わたしの見ている世界が全て(2022年製作の映画)

4.1

このレビューはネタバレを含みます

兄弟には社会性がないと断じる遥風が、他者に興味を持つようになるまでを描いた社会性獲得の物語になっている。その諧謔に思わずくすりとしてしまう。

事務所で教材商法の男性を問いただすシーンが印象的だった。
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半径1メートルの君(2021年製作の映画)

3.6

吉本興業の企画による短編オムニバス映画だった。意外にもコメディ調のエピソードは少なく、予想を裏切られた。

2人の会話劇が多い。半径1メートルの君という題名には、コロナ禍で疎にならざるを得なかった君と
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シン・仮面ライダー(2023年製作の映画)

3.7

独自の世界観に基づく専門用語が飛び交うところや、内面を投影したと思しきカットが多用されるところなど、まさしく庵野監督の作品だという感想を持った。

見所は本郷の葛藤だと思う。ルリ子が指摘する通り、彼は
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PLAN 75(2022年製作の映画)

3.7

ミチの心が折れたのは炊き出しの食事を受け取った瞬間だったように見えた。

真面目な彼女は施しを受けてまで生き長らえたくないと考えたのかも知れない。選ぶことのできる死が、選ばざるを得ない死に変わってしま
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The Son/息子(2022年製作の映画)

3.7

空回りという言葉が頭に浮かんだ。互いを大切に思いながら、誰も適切な方法を選べず、事態は悪化の一途をたどる。

自身の内面で起きていることを言葉にできないニコラスにも、息子に父親からされたような対応しか
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ピアノ・レッスン(1993年製作の映画)

3.9

話すことを止めてしまったエイダにとってピアノは分身にも等しい存在だった。

持参したピアノはあろうことか登場人物の殆どから弄ばれ軽く扱われてしまう。そんなピアノに自分の姿を重ね、彼女は人知れず傷つき憤
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丘の上の本屋さん(2021年製作の映画)

3.3

丘の上で書店を営む老人と、本に興味を持つ移民の少年との友情を描いた作品だった。祖父と孫ほどに年の離れた両者が親交を深めていく様は心に響いた。

幸せになる権利という言葉が劇中に出てくる。少年の背景は多
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大地と白い雲(2019年製作の映画)

3.9

近代化の波を前に、伝統的な暮らしを手放すことの葛藤を描いた作品だった。

迷いなく都会へ出ようとするチョクトと草原で暮らし続けようとするサロールは対称的だ。それが原因で擦れ違い、孤独と不安に苛まれる彼
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エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス(2022年製作の映画)

4.0

マルチバースという壮大な世界観の下にありながら、繰り広げられるのは、娘と向き合おうとする母親のこまごまとした成長譚で、その落差に面白さを感じた。

人類が誕生しなかった世界で石ころのエヴリンとジョイが
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アラビアンナイト 三千年の願い(2022年製作の映画)

3.5

物語は共感の手段となり得る。3人の女性を巡る物語を介して、アリシアはジンの中に自身と同じ孤独を感じ取り、そこに共鳴したのではないかと思えた。

アリシアの告げる1番目の願いは唐突なものだった。直前に聞
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小さき麦の花(2022年製作の映画)

3.8

手の甲に小さく咲いた麦の花はすぐに消えてしまう。それは幸せな時間が、瞬く間に終わってしまうのと似ている。

「土へと還る」という意味の原題を思えば、小さき麦の花は人生に訪れる刹那な幸せの象徴であったの
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コンパートメントNo.6(2021年製作の映画)

3.8

どこか遠くへ行きたいと思わせる作品だった。旅することの、一度しか味わえない感じや、現実から離れていく感じ、何でも起こり得る感じが鮮やかに蘇った。

タイトルが秀逸だ。様々な場所が舞台となるが重要なのは
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世界は僕らに気づかない(2022年製作の映画)

3.7

己の出自に屈折した感情を持つ主人公が、父親探しを通じて、母親との関係を再構築する物語だった。怒れる息子という副題は端的で、彼は常に憤っている。

主人公は幾度もカメラを構える。ファインダー越しに自分は
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健太郎さん(2019年製作の映画)

2.8

嫌な緊張を強いられる作品だった。家庭という安全地帯に赤の他人が侵入してくることや、両親という常識側の人間が彼を畏敬していることに背筋が寒くなる。

健太郎さんとは何者なのかという謎は中盤辺りで解き明か
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エゴイスト(2023年製作の映画)

4.1

このレビューはネタバレを含みます

原作既読。登場人物やエピソードが絞り込まれている。どちらかと言えば引いても足さない構成で、小説の持つ雰囲気を大切にしていることが伺い知れた。

自身の行動が利己的だったのではないかと嘆く浩輔と、それを
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