efnさんの映画レビュー・感想・評価 - 18ページ目

雨に唄えば(1952年製作の映画)

4.0

 素晴らしい、とにかく素晴らしい。だが笑って楽しむには抵抗がある。ジーンケリーのラブロマンスを描きつ無声映画の凋落と有声映画の躍動を描いた、と要約すれば聞こえはいいのだが、ミュージカルにしては政治云々>>続きを読む

巴里のアメリカ人(1951年製作の映画)

3.9

 エンディングにかなりの不満はあるが、二股発覚後の幻覚だけでも見る価値がある。様々な書割が開き、砕かれ、内々にトリコロールで彩られた街、ゴッホをモチーフにしたカフェ、警官、魔術師等々が洪水のように現れ>>続きを読む

アメリカ交響楽(1945年製作の映画)

3.9

 Rhapsody in BlueとAn American In Parisを抜粋なしで演奏するガーシュイン大好きな映画。音楽に支えられているというより、純粋に音で作曲動機を追うスタイルをとっている。>>続きを読む

イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密(2014年製作の映画)

4.2

 計算、計算、計算、紙、紙、紙、デートさえも紙の上で数式を編みながら交わされる。そもそもの出会いもクロスワードだった。この世界中にありふれた道具がガジェットとして重要なのか、質感、色、字体すべてに命が>>続きを読む

ソーシャル・ネットワーク(2010年製作の映画)

4.2

 あえてザッカーバーグを選んでフェイスブックの誕生、拡大とその後の訴訟を扱っているのが良い。もしジョブズが主人公だったなら、男女関係をデータベース化したコースマッチなんて扱わなかっただろうし、そもそも>>続きを読む

ベンジャミン・バトン 数奇な人生(2008年製作の映画)

4.0

 老人として生まれて「介護」され、初老として酒場や売春宿で楽しみ、中年として働き戦争を体験し、青年を体験し恋を成就させ、赤子として育てられ、生と共に死ぬ。介護が教育、恋が買春とそれぞれ置き換えられ、逆>>続きを読む

フォレスト・ガンプ/一期一会(1994年製作の映画)

4.0

 トムハンクスもカメラも走って走って飛んで飛びまくる。走る被写体の力強さもあるが、それを追跡する編集が良い。あって当然のようにジャンプカットが挿入され、時にはリピートしながら先祖を遡り、フェイントなの>>続きを読む

セブン(1995年製作の映画)

3.9

 逆光に次ぐ逆光、ガラス越しに浮かび上がる指紋、鏡のような現場と証拠の数々、名無しの健全な生活への妬み。カメラから犠牲者と犯人に至まで何もかもが裏返しの映画。

ヒッチコック/トリュフォー(2015年製作の映画)

3.7

 フィンチャーもスコセッシも黒
沢も「技巧はすごいし何度も観てしまうけど、いまいち心に響かない」と言っていて、胸にストンと落ちるものがあった。商業という枠組みの中で如何に生き抜くかを極限まで練り上げた
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78/52(2017年製作の映画)

3.8

 シャワーシーンの72シーン58カットの解説。各カットの秒数、途中サブリミナルのように挿入される手のショット、シャワーシーンのジャンプカットを使った省略、シーンのはじめからじょじょに絞られ、最終的にノ>>続きを読む

幽霊西へ行く(1935年製作の映画)

4.0

 ルネクレールが撮る女の子は本当にかわいい。他の監督なら押し付け気味に感じるぼかしフィルターも彼が使うと魔法になる。たぶん、照明全焚きでぼかしや影を指し色程度に使ってるからなんだろうけど、入れるタイミ>>続きを読む

ドラえもん のび太の創世日記(1995年製作の映画)

3.8

なんの考えもなく生命倫理の限界点を突破していく恐ろしい作品。人の子でもない小学生が世界をつくり、自ら神となのってその他の宗教(仏教)をディスり、挙げ句の果に「手違い」で人以外の知的生命体を創り出してし>>続きを読む

ドラえもん のび太の宇宙漂流記(1999年製作の映画)

3.7

宇宙を舞台にしたSFの総決算(引用)という感じ。弦楽器をガシガシ効かせたフルオーケストラのサントラが良い。

ドラえもん のび太と銀河超特急(1996年製作の映画)

3.7

役になりきる惑星をもうちょっと活かしてほしかった。銀河超特急のパートはどれも良い。

サイコ(1960年製作の映画)

4.2

 音響、細かい動作の演出が効いていて、ヒッチコックの中でも随一の緊張感がある。金を持ち逃げしようと飛び込んだ車中で聴こえる幻聴、嘆く妹、横領を追求するカウボーイハットの中年、直帰したはずの部下(私)を>>続きを読む

海外特派員(1940年製作の映画)

3.6

 サスペンスでプロパガンダを撮る、というのはチャップリンでお馴染みだけど、観客がどう受け取ったのかが気になる。
 
 暗殺後に傘の森で追いかけっこするあたりは良かったけど、演説が多めでひとつの作品とし
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三十九夜(1935年製作の映画)

4.0

画面外に意識を誘導する演出がいい。群衆にまぎれて身を隠そうとするも否応なく聴こえてくる殺人犯(自分)の噂話、逆に窓を通して漏れていく真実、密告。ヒッチコックはアメリカに渡る前のほうが好きだ。

ニュー・シネマ・パラダイス(1989年製作の映画)

3.7

いい映画だし観客と映画の文化史的な距離とか、フィルム内フィルムの質感とか、窓枠のフレーム化とかも楽しいけど、成功するまでの人生の起伏がオタクのそれすぎて観ているのが辛い。

壮烈第七騎兵隊(1941年製作の映画)

3.8

 基本的にステロタイプな英雄譚だが、ベトナム戦争以来の映画には見る事のできない描写ばかりで興味深い。ウェストポイント入学の日に上官殴打、学校ではいたずら三昧、卒業後も命令無視にまた上官殴打の果に昇進。>>続きを読む

黒い十人の女(1961年製作の映画)

4.0

 昭和36年のハーレムの痴話喧嘩。恋人ら一人一人の描き分け(配役)、ややメタな視点を利用した十人の女たちの内紛、どれもうる星といったハーアニメを先取りしたような内容で驚かされる。
 カメラも自由自在で
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ミッドウェイ海戦(1942年製作の映画)

3.8

 キャプラの作品に比べるとプロパガンダとしては物足りないが、そこはジョンフォード。砂丘をうろつく海鳥に自由のナレーションを入れたり、兵士たちの内地での生活、父母の職業を紹介したりして、兵士と民間人の間>>続きを読む

ドラえもん のび太のねじ巻き都市冒険記(1997年製作の映画)

3.8

螺で知性を、鏡で複製し、雷で知性を与える。創世記を恐れぬ科学の乱用は、ちょうど聖書をオマージュして人間からの解放と隣人愛の大切さを説いた鉄人兵団と対偶になっている。90年代後期だからできた佳作。

ドラえもん のび太と鉄人兵団(1986年製作の映画)

3.8

自律型ロボットが選民意識に寝覚め人間を滅ぼし、移民先で隣人愛に目覚め、天使を見るまで90分。大学の授業か?

シャドウ・オブ・ヴァンパイア(2000年製作の映画)

4.2

ムルナウのノスフェラトゥをベースにしたメタフィクション。
 現実を異化してフィルムに収めようとするイカれ監督と陽を浴び、人の温もり(血)を得て現実を生きようとする吸血鬼を対比が映画のジャンル性(ファン
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吸血鬼ノスフェラトゥ(1922年製作の映画)

3.7

当時の大仰な身振り手振りの逆を行くかのようなノスフェラトゥのカクカクした動きがいい。船倉で目をバッチリ見開いて垂直に起き上がるのと書類をかじりつくように見つめてシュッと筆を取る場面が好き。

7月4日に生まれて(1989年製作の映画)

3.8

 ランボーやディアハンターで虚無として描かれがちなベトナム戦争を個人の体験として留保し、かつ反戦運動に結びつけた佳作。戦争それ自体の評価は人によって違うかもしれないが、帰国した兵士が国民から受けた仕打>>続きを読む