青野姦太郎さんの映画レビュー・感想・評価

青野姦太郎

青野姦太郎

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麻雀放浪記(1984年製作の映画)

4.5

クズ人間たちが一晩中麻雀を打ってクソみたいに死んでいくというしょうもない、でもなんか胸に来る話。敗戦直後という時代の欲望にまみれた猥雑な雰囲気が、賭け麻雀という題材をうまく引き立てている。そういう生き>>続きを読む

団地(2015年製作の映画)

4.4

藤山直美が楽しく中島みゆきの「時代」を歌っているといつの間にか喪失の悲しみに包まれてしまう場面など、ちょっと近年の邦画では見ることができなくなったエモーションを捉えていてただ立ち尽くすしかない。
まず
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クリーピー 偽りの隣人(2016年製作の映画)

3.3

引っ越してきた元刑事とその妻が謎の隣人との関係に悩まされているうちにだんだん支配されていくという話。もちろん世界の黒沢清が普通の映画として撮るわけもなく、様々なヘンテコかつオマージュマシマシの撮り方を>>続きを読む

雪の喪章(1967年製作の映画)

4.2

雪国の製箔屋に嫁いだ妙子(若尾文子)に次々と望まぬ不幸が襲いかかってくる陰鬱な話。夫の不倫や周囲の人間の事故死、病死などに加えて住居の火事、実家の倒産などが息つく間もなく起こり、平行して第二次世界大戦>>続きを読む

警察官(1933年製作の映画)

4.4

警察のPR映画とはいえ、こんなものを見せられたらちょっと正気ではいられないんじゃないか。元同級生のブルジョワ青年(中野英治)を銀行強盗の犯人ではないかと疑って付け回す警察官(小杉勇)の神経症的狂気が延>>続きを読む

たそがれ酒場(1955年製作の映画)

4.2

とある酒場の一日を巨大なセットを使用しグランドホテル形式で描いた内田吐夢唯一の新東宝映画。ミュージカル映画の側面を有しながら、物語には戦火の爪痕が色濃く残る。登場人物の演技を煽るようにジリジリと移動し>>続きを読む

ヘイトフル・エイト(2015年製作の映画)

3.5

いわゆる「ポスト古典的ハリウッド」の代表としてしばしば語られるクエンティン・タランティーノは、その枠組みに対して極めて自覚的な態度を有する作家でもある。彼にあっては古典の規範とは常にその逸脱との境目に>>続きを読む

狼よ落日を斬れ 風雲篇・激情篇・怒濤篇(1974年製作の映画)

4.6

三隅研次の遺作の名に恥じない立派な映画。信じていたものが次々と崩れ去っていく幕末の動乱の中で、時代に翻弄されながらも実直に生き続ける杉虎之助(高橋英樹)の生真面目さに、どうしても撮影所体制が崩壊してい>>続きを読む

二匹の用心棒(1968年製作の映画)

3.4

本作の当初の主演は市川雷蔵であり、クランクイン後10日ほど撮影を行ったが、直腸癌腫のために途中で降板、脚本の改稿を経て主演本郷功次郎で撮り直しが行われた。『関の弥太っぺ』のリメイク作品でありながら、主>>続きを読む

尻啖え孫市(しりくらえまごいち)(1969年製作の映画)

2.8

織田信長(勝新太郎)とその家臣木下藤吉郎(中村嘉葎雄)が、鉄砲使いの名手にして暴れん坊の豪傑雑賀孫市(中村錦之助)を味方に引き入れるため、彼が京都を通りがかった際に一目惚れしたという女の偽物を用意しよ>>続きを読む

兇状流れドス(1970年製作の映画)

3.3

東映やくざ映画のガマン劇の構造を流用しながらも、そのクリティカルなポイントである一種の過剰さを恐らくは故意に抑制しているために物語のフックが弱く、最終的なカタルシスも強度に欠ける。松方弘樹の飄々とした>>続きを読む

裸のキッス(1964年製作の映画)

3.4

説話上の重要なクライマックスであるところのコンスタンス・タワーズの釈放決定、そのための重要な鍵となる幼女の発見及び証言の確保においてサスペンスがいまいち機能しておらず、檻に囚われた彼女のもどかしさが迫>>続きを読む

チャイナ・ゲイト(1957年製作の映画)

4.2

子供が子犬を大事に抱えながら人の流れに逆らって荒廃した村落を走り抜けていくあのオープニング・ショットの美しさ。たくさんの風鈴が揺らめく窓際にマルセン・ダリオが吸い込まれるように接近していくあの背景の恐>>続きを読む

ショック集団(1963年製作の映画)

4.7

傑作。精神病に文字通り深く没入していく映画であるにもかかわらず、最も暴力的な衝動が刻まれる瞬間の画面に存在しているのが病理の根幹などではまったくなく、そこから最も遠い場所にあるはずの健康的な肉体と理性>>続きを読む

銭形平次捕物控 美人鮫(1961年製作の映画)

2.3

燦然と輝く三隅研次のフィルモグラフィ唯一の汚点。同61年は国内初の70ミリ映画『釈迦』を監督するという大映の社運をかけた大仕事を任されていたという事情があるだけに仕方がないが、恐ろしくつまらない。逆に>>続きを読む

狐のくれた赤ん坊(1971年製作の映画)

4.5

寅八(勝新太郎)の息子善太(香川雅人)が大名行列に対する不敬罪で捕らえられたものの、寅八必死の懇願によりなんとか許しを得て親子ともども屋敷から飛び出してくる場面。もはや半分諦めかけ、棺桶を背負いながら>>続きを読む

新女賭博師 壺ぐれ肌(1971年製作の映画)

3.3

1966年から始まった大映の「女賭博師シリーズ」の第17作。直後に大映の倒産によってシリーズ自体が打ち切られたため実質的な最終作である。かねてから「東映のヤクザ映画を含めて、任侠ヤクザ映画は大嫌い」と>>続きを読む

キャロル(2015年製作の映画)

3.2

映画冒頭、キャロル(ケイト・ブランシェット)とテレーズ(ルーニー・マーラ)がホテルのレストランで話していると、いきなり遮るように男が現れ、キャロルがそそくさと席を立つ。続いて男も立ち去り、テレーズただ>>続きを読む

花の兄弟(1956年製作の映画)

4.0

市川雷蔵が父の仇の情報を探るため、やくざの集団に下っ端として潜り込み、その過程で知った彼らの大江戸放火計画を未然に防ぐため弟の林成年と共に奔走するという話。その間にもやくざの首領の妾が雷蔵に惚れたり、>>続きを読む

銭形平次捕物控 美人蜘蛛(1960年製作の映画)

3.0

銭形平次(長谷川一夫)が八五郎(三木のり平)と一緒に伊勢参りへ向かう旅の道中、連続殺人事件に巻き込まれる…というミステリコメディ時代劇(なんじゃそりゃ)。60年代の三隅では唯一50年代の楽天的ムードを>>続きを読む

不知火奉行(1956年製作の映画)

4.2

白塗りの勝新太郎が不知火の仮面を被って江戸の街を飛び回り、果てには二刀流で大暴れするという、オーソドックスでありながら滅法面白く痛快な捕物時代劇。恐らくは片岡千恵蔵去りし後の大映が千恵プロの多羅尾伴内>>続きを読む

浅太郎鴉(1956年製作の映画)

3.6

本作の脚本は、マキノの国定忠治シリーズで脚本を担当していたことでも知られている比佐芳武が、国定忠治の子分、板割りの浅太郎を主人公に書き下ろしたオリジナル。三隅研次が初めて市川雷蔵とタッグを組んだ作品で>>続きを読む

編笠権八(1956年製作の映画)

4.0

市川雷蔵のスターとしての魅力が存分に開花している…三隅の60年代の名作のモチーフが遍在している…なるほど確かにそれらも重要だが、そんなことより、ラスト、三田登喜子が「しばらく!」と言って歩き出すと(分>>続きを読む

怪猫呪いの壁(1958年製作の映画)

3.8

白塗り時代の勝新太郎が主演の化け猫映画だが、実はけっこう手のかかったことをしていて悪くない。特撮ではなく美術や照明によって強引にお化け屋敷を作り出しているのだが、そのアナログ的な手作り感が時代劇の雰囲>>続きを読む

執念の蛇(1958年製作の映画)

3.2

50年代の大映は二番館や三番館から公開する一時間程度の娯楽性に富んだショート・ピクチャー、通称SPを量産しており、本作もそのうちの一本。悪女が玉の輿に乗るために仲間と協力して邪魔者を消しまくると死者が>>続きを読む

古都憂愁 姉いもうと(1967年製作の映画)

4.8

依田義賢の脚本、武田千吉郎のキャメラ、そして三隅研次の精緻な演出全てが完璧な恐るべき傑作。プライドが高くて素直じゃない、でもどこか憎めない京女たちのリアリティが抜群。八千草薫が船越英二にからかわれ、嫉>>続きを読む

ブラック・スキャンダル(2015年製作の映画)

2.9

本作は、マフィアのボスであるバルジャー(ジョニー・デップ)の非道な犯罪行為を、周囲の側近たちの司法取引上の証言によって再構築していくといういわゆる『市民ケーン』的構造を採用している。これは、彼がなによ>>続きを読む

千羽鶴秘帖(1959年製作の映画)

4.0

左幸子の短銃が宙に号砲を放つとそれが合図であるかのように怒涛のクライマックスに雪崩れ込む、こういう遊びが気持ちいい。雷蔵が大凧に掴まって空を飛び天守閣の純金のシャチホコを盗み出すシークエンスの編集や、>>続きを読む

とむらい師たち(1968年製作の映画)

3.7

デスマスク作りの名人"ガンめん"(勝新太郎)が、仲間とともに独創的な葬儀会社を立ち上げるというブラックで風刺の効いた喜劇が後半に入ると雰囲気一転。突如として死者を弄ぶ資本主義的システムに嫌気が差したガ>>続きを読む

なみだ川(1967年製作の映画)

4.8

おしず(藤村志保)が想い人の貞二郎(細川俊之)に呼び出され、二人きりで対面する場面。おしずの体勢が貞二郎にだんだんと正対していくことによって緊張している彼女が心を開いていく様子が示される真横からのフル>>続きを読む

鬼の棲む館(1969年製作の映画)

4.7

最良の時期の神代辰巳に匹敵する傑作。製作に永田雅一の名がクレジットされ、原作谷崎潤一郎、撮影宮川一夫、舞台は南北朝時代…と来れば勘の良い人ならばすぐにあの巨匠の名が浮かぶであろう。いよいよ崩壊寸前の大>>続きを読む

酔いどれ博士(1966年製作の映画)

4.2

思わず『赤ひげ』と口に出したくなるところだが、ひねくれ者なので『太陽の墓場』あるいは『とんかつ大将』と呟いてみる。いずれもこの映画を見てふと想起した作品である。三隅のスタイルはかなり透明化されていて、>>続きを読む

青葉城の鬼(1962年製作の映画)

4.5

伊達騒動の首謀者であった原田甲斐を、御家存続のため汚名を被った忠臣として再解釈した山本周五郎の『樅の木は残った』が原作。主演に長谷川一夫を据え、脇を加藤嘉、宇津井健ら実力者が固めた従来型の時代劇であり>>続きを読む

無宿者(1964年製作の映画)

4.4

1960年代前半の三隅は全て素晴らしい、これはもはや口にするまでもない事実である。だが、本作はそれらの作品群の中にあっても決して見劣りしない素晴らしい作品であるものの、ではどこが魅力なのかと問われると>>続きを読む

スペースバンパイア(1985年製作の映画)

4.2

マチルダ・メイの伝説的な爆乳によって広く知られている本作であるが、改めてスタッフを見てみると、トビー・フーパー、ダン・オバノン、ヘンリー・マンシーニと映画の神に愛された名前が勢揃いしており、本作の映画>>続きを読む

オデッセイ(2015年製作の映画)

4.5

火星に置き去りにされたマッド・デイモンを助け出すためにNASAと少数精鋭の宇宙船が壮大な救出劇を試みるというそれだけで『プライベート・ライアン』の記憶が否が応でも呼び起こされるが、それだけでなく、例え>>続きを読む