街角のアレンさんの映画レビュー・感想・評価

街角のアレン

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オッペンハイマー(2023年製作の映画)

3.8

エミリーブラントがイケててよい。
核融合と核分裂で対局を描いていたのが今思えば親切。
少し前の映像の世紀バタフライエフェクトを観ておいて助かった。
結果Near Zeroに怯えて脅して何がしたいという
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デ ジャ ヴュ デジタルリマスター版(1987年製作の映画)

4.5

怪しい歴史家と英雄イエナチュの謎を追うライター。
この既視感は17世紀か現世か。
浅い眠りのような陶酔感はもとよりニナとの暮らしやエンドロールが好き過ぎた。
上演後に渋谷さんのトーク。円環構造、幻惑の
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季節のはざまで デジタルリマスター版(1992年製作の映画)

4.0

スイス山麓の廃墟ホテルで見る幼少期の幻影。
大人が自由でいると子供は自分が紛れることに安心する。楽しいとも少し違うあの懐かしい感覚。
互いに干渉し合わない過去との付き合い方という表現が素敵で、全てだっ
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ヘカテ デジタルリマスター版(1982年製作の映画)

3.7

二次大戦下のモロッコ。
戦いをよそにアフリカで退廃的な恋に溺れる贅沢で甘美な作品だった。ファムファタールは独占欲の強い男の幻想か。犬、蛇、月光、ヘカテのモチーフ。
欧米ではぞっとすることを誰かが自分の
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数に溺れて(1988年製作の映画)

5.0

奇天烈な町。同じ名を持つ祖母、母、娘。
変な子供が出てシニカルで女性が淡々と怖いという大好きな作風。個人的にはアルトマン三人の女とセット。
ウェスのムーンライズキングダムは大分ここから持ってきてるよう
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ZOO(1985年製作の映画)

4.0

動物の死後を見つめる双子の生物学者。
モチーフに沿った神経質な画作りが気味悪いほど素晴らしかった。
脈拍に沿って痛む片頭痛みたいなナイマンの楽曲もよい。
シマウマは白い縞の黒い馬か黒い縞の白い馬か、考
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パパは、出張中!(1985年製作の映画)

3.8

軽いか重いか言葉は巡る、チトー政権の恐ろしさ。
楽しい映画と思いきやクストリッツァの中では最も暗く社会派な作品で若干疲れた。
ドリーベルでの自転車が次作ではサッカーボールか。
一大イベント割礼、スカー
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ドリー・ベルを覚えているかい?(1981年製作の映画)

4.0

催眠術オタクの少年ディーノ。
今はなきユーゴで過ごした青春時代。
ドリーベルとの恋よりも父子関係に心掴まれた。
イデオロギーにバンドに家事、半ば与えられたものを雑然と受け入れこなしちゃう感じがクストリ
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ヴェルクマイスター・ハーモニー 4Kレストア版(2000年製作の映画)

5.0

心優しき天文学好き青年が闇に巻き込まれていく。
日常は破壊され、また平均律に落ち着くのか。
無情で侘しく哀愁ある終わり方が素晴らしい。
己の小さきを知ってから鯨に対峙する様に、何と言えばいいんだ。不揃
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瞳をとじて(2023年製作の映画)

4.3

寡作な映画監督がフィルムの中の旧友を探しに行く。
だいぶ説明的な作風になってしまったかと心配したが杞憂だった。アナトレントが出てから次第に雰囲気が変わり奥行きが出てきて引き込まれた。
特に映画愛溢れる
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Here(2023年製作の映画)

4.5

繊細さ漂う移民男性の明るい予感。
どんな時でも恋は強い。
新しいスープを逃げない決意と読んだがどうだろう。
薄らとライカートのOldJoy、最近であれば少しパーフェクトデイズみもある。浄化された。

ゴースト・トロピック(2019年製作の映画)

4.0

移民女性が寝過ごして夜を彷徨う。
予定調和でないものに幸福が帯びるというシンプルで優しい真理。忘れていないかと問われている気がした。
クレジットの出し方も簡素且つ優しさに溢れていて細部まで素晴らしい。
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哀れなるものたち(2023年製作の映画)

3.8

エマストーンが身体を張っていて圧倒された。
どことなくフランケンシュタインぽい。
ベラを見ていると学びの生みの親は理不尽だなと思う。
シャボン玉げっぷにニワトリ犬、気味悪いくらいの被写界深度の浅さ。ま
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サン・セバスチャンへ、ようこそ(2020年製作の映画)

3.7

映画愛あふれる笑いに少しの悲哀。
オマージュに出てくるような古典好きはモートのような偏見をわりに持ちがち。滲みつつも楽しい、自虐という名の救われ笑いありがとう。特にゴダールのシーツかぶりいじりがウディ
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PERFECT DAYS(2023年製作の映画)

4.2

ヴェンダース的陰翳礼讃。素晴らしかった。
実際に探したらいるのではないかと思えてくる。
ニコちゃんが現れ居なくなるまでになぜか泣いてしまった。火照りが引いて残った心地の良い余韻。
淡々と濃くも薄くもな
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葬送のカーネーション(2022年製作の映画)

3.7

冬のトルコ、難民の祖父と孫。
祖母の遺体を運ぶ静かなロードムービー。
台詞ほぼ無し、表情や眼差しがただ在る好みな作風でした。平俗な日常のノイズに包まれてやってくる人の優しさが二人の疎外感を際立たせる。
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枯れ葉(2023年製作の映画)

4.5

ミュートしたくなる日々に射す一筋の斜光。
変わらず素晴らしかった。
カウリスマキが自分が生きている同時代の作品を、それも真正面からのべたな恋愛作品を残してくれたことがたまらない。映画愛も感じられて感動
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ファースト・カウ(2019年製作の映画)

3.9

抜け穴を探す旅、穴のないドーナツ。
窪みで少し休んでいただけの二人。
我慢ならずミスドのオールドファッションをトースターで焼き蜂蜜とシナモンを掛けて食べたが本当においしかった。この食べ方をファーストカ
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ルナ・パパ 4Kレストア版(1999年製作の映画)

4.6

砂漠と湖の世界でお腹の子のパパを家族みんなで探す。
クストリッツァの如く破茶滅茶でエネルギーに満ちあふれていてラストまで早かった。異文化と虚の境い目をなめらかに、そこにファンタジーを二つまみ位入れてく
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不安は魂を食いつくす/不安と魂(1974年製作の映画)

4.8

アラブ系移民労働者とドイツの未亡人の恋愛。
タイトルからして陰鬱で重たい内容なのだと腰を据えて観たら良い意味で肩透かしをくらった。まさかのカウリスマキ風味の温かさ。ただアリの不躾な点もそのまま、エミに
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動くな、死ね、甦れ!(1989年製作の映画)

4.5

湯気立つぬかるみに無秩序で閉鎖的な日常。
観ているだけで居心地のわるい世界なのだがワレルカの危うさに引っ張られる。精一杯走れば大人から逃げ切れてしまう、不意に追いついてしまう。
ラヴィドボエーム以来の
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小さき麦の花(2022年製作の映画)

4.0

見逃していたロバ映画を久々にスカラ座で観た。
エンドロールの中国IT企業のロゴの多さに、当然ながらロバではなくBMWが蒸かす現実であることを突きつけられる。アンチ物質主義的なものを作るのも深圳の資本力
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私、オルガ・ヘプナロヴァー(2016年製作の映画)

4.0

チェコ最後の女性死刑囚オルガ・ヘプナロヴァの人生。
内容は重いが画が決まり過ぎていて素晴らしかった。
雨の中オルガが洗濯物を干す数秒のシーンが秀逸。
反撥して求める母性、普遍的な少女性のようなものも垣
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EO イーオー(2022年製作の映画)

3.8

ロバ好きにはたまらない作品。
ブレッソンと比較すると大分開けている印象。ほとんど社会にロバの目が向けられていた。
バルタザールは特に顛末がお気に入りなのでスコリモフスキは一体どう撮るか気になっていたが
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ショーイング・アップ(2023年製作の映画)

3.8

フランクで明るい、新鮮なケリーライカート作品。
何が起こるわけでもないが妙に残る良い作品でした。
Lizzyの作品はシンシアラーティという方のものらしい。
ティーチインで黒澤明と同レンズを使用したがど
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RRR(2022年製作の映画)

4.3

粗削りも魅力としてねじ伏せてしまう圧倒的なパワー!
ナートゥで踏み潰せば生まれるカタルシスという名のスパイス!最高でした。
責務とは結果に非ず行為に宿る、肝に銘じたい。
理屈でないものが今嬉しいよな。

WANDA/ワンダ(1970年製作の映画)

4.0

放浪するワンダと偶然出逢った強盗。
シビアだけれど結構可笑しい。
撃ち抜いてくれないボニーアンドクライドは過酷だということ。すなわち現実。
好きなアメリカでした。
ライカートのリバーオブグラスは影響受
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ブリュッセル1080、コメルス河畔通り23番地、ジャンヌ・ディエルマン/ブリュッセル1080、コルメス3番街のジャンヌ・ディエルマン(1975年製作の映画)

4.2

淡々と家事をこなすジャンヌの生活200分。
ふとした瞬間こういう孤独や虚無は浮かび上がるときあるなと。ここ汲み取れただけで間違いなく傑作。
そして自然と母や祖母に思いを馳せた。
息子よ、寝る前に発散せ
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白夜(1971年製作の映画)

4.2

ロシアからパリに設定を移したドストエフスキー白夜。
セーヌ川に飛び込むマルトを止め静かに熱狂するジャック、冷静に観ると最後まで拗らせ具合がかなり可笑しい。
何よりイザベルヴェンガルテンの佇まい、至高の
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ノベンバー(2017年製作の映画)

5.0

エストニア発のダークファンタジー。
寓話的で昔話のようだがクラットの存在だけ現代的で不思議。スマホやテクノロジーへの警鐘かな。
水の旅、雪解けに誓いの現れ、憎い表現をするなと中盤辺りから放心状態だった
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たぶん悪魔が(1977年製作の映画)

4.2

陰鬱で救いがないが美しかった。
当初シャルルの挑戦的な眼差しは死から最も遠いものに感じたが空虚さを睨みつけていただけだった。
自分の為だけに生きるのが若さに漂う儚さで、その危うさを追うよう。
無性にカ
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湖のランスロ(1974年製作の映画)

3.8

アーサー王に仕える名剣士ランスロの葛藤。
頼っていた騎士道精神、仲間内の秩序が崩壊していく。急に個として生きゆくランスロに異国の時代劇ながら共感するものはあるが、あまりの潔さにこれ不倫だったんだと終わ
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マルケータ・ラザロヴァー(1967年製作の映画)

4.0

マルケータの恋と自立。
神聖で寓話的。かなり土着的で人間の本質を描くあたり黒澤映画を彷彿させる。馬で追うシーンの台詞でわざわざ7人で行けと指定したり何かしらリスペクトを感じる。
聖書絡みなのと構成が複
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デュエル(1976年製作の映画)

4.0

月と太陽の女王が魔法の石を巡って対決する。
ピアニストの演出によって虚構の中でも現実を常に意識させられぐらぐらした。
衣装と小物のチープさが凄く大事。
スイカのジュース飲みながら観て変な気持ちになった
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突然炎のごとく(1961年製作の映画)

3.8

ジュールとジム。男の友情、そして女。
どうしたってジャンヌモローの映画だけれどマリーデュボワに一目惚れしてしまった。奔放に少しの堅実さで天真爛漫の出来あがり。よい。
対して当時の女性から共感を得たとい
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ある日、突然。(2002年製作の映画)

3.6

女性が女性カップルに声をかけられ始まるロードムービー。
乾いた白黒のブエノスアイレスとややシュールな展開が絶妙。
裸体も生き方も特に健康的である必要がなく美しいと思わされる、何だろう南米のこの自由さと
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