街角のアレンさんの映画レビュー・感想・評価 - 2ページ目

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バスケット・ケース(1982年製作の映画)

3.8

切り離されたシャム双生児の兄を連れ歩く弟。
B級映画のキャラはキモかわに寄せがちだが、性悪で変態、シンプルに怖いを最後まで徹底していて良かった。
生意気に洒落込んでるエンドロールは笑う。完成度の高いコ
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シルビアのいる街で(2007年製作の映画)

4.3

こんな表現もありなんだ、ありだよなと映画の自由さを感じた。内容は何てことないが構図やシーンの連なりで見せる技巧が素晴らしくて最後まで茫然。
こんなに風を描ける人がいるとは。
ホセルイスゲリンとは何者。

レボリューショナリー・ロード/燃え尽きるまで(2008年製作の映画)

4.0

50年代豊かなアメリカを象徴する夫婦の崩壊。
タイタニックの二人がまた沈む。
ブルーバレンタイン、最近では花束みたいな恋をしたに近い揺さぶり方。
意見の分かれるどろどろ作品はいいな。
終わり方が粋な映
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ロリータ(1962年製作の映画)

3.4

少女に人生を狂わされる中年男がひたすら哀れで面白い。
小走りにとんとん展開していく感じがロリータの小悪魔感を演出する。
個人的にはハンバート以上にクィルティが気味悪かった。ピーターセラーズ凄い。
自己
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灰とダイヤモンド(1957年製作の映画)

4.0

ナチスから解放された戦後ポーランド、共産党幹部の暗殺を試みる若者の話。
主人公のマチェク、まるでジェームスディーンの醸す儚さと愛嬌がある。
ラッセルが西側を皮肉りソ連の若者の幸福に言及したけれど、まさ
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地下水道(1956年製作の映画)

4.0

袋小路になったレジスタンスが地下水道から地上への逃げ場を探し続ける。
匂いについて一切言及しないが終始息を止めたくなる描写。
光は見えているのに手に掴めない絶望。
そんな中でもデイジーが魅力的で頼もし
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世代(1954年製作の映画)

3.8

ナチス占領下のポーランド。
遊び仲間の死をきっかけに次第に抵抗活動に身を染める青年。
"人生には闘う価値がある"
恋した相手がレジスタンスの姫とは幸か不幸か。
ラストの奮い立つ若さに死の匂い、あの眼
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冬の旅(1985年製作の映画)

3.8

閉塞的でとにかく暗い。最近の放浪ものでいうとやはりライカートのウェンディが重なるがこちらは出自がより謎めいていた。
劇中でも指摘されるがモナの奔放さはどうしても逃避に映る。しかしそれがなぜ誰に否定され
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道化師の夜(1953年製作の映画)

4.0

回想と夢、道化師の不思議な体験で挟まれる団長の哀愁漂う日々。
彼の肩身の狭さと滑稽さが不思議と団長の哀愁を一層引き立てる。
たまに手品のような映像の繋ぎ方が流石のベルイマン。
ハリエットアンデルセンは
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三島由紀夫vs東大全共闘 50年目の真実(2020年製作の映画)

3.7

「人と人との間に言葉が媒介として活きていた最後の時代」芥氏の発言が全てを物語っていた。
殺伐としているがお互い粋な躱し方を愉しんでるように見える。
保守ではないが三島こそ冒頭にある反知性主義の有資格者
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最高に素晴らしいこと(2020年製作の映画)

4.0

このレビューはネタバレを含みます

エルファニング目当てで軽い気持ちで観たら想像以上に重い内容だった。
消え行く者の生い立ちや孤独について、濁し加減が絶妙でとても生々しい。
敢えて描写しない思い切りのよさ。
この手のネトフリ映画を侮って
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ベイビーティース(2019年製作の映画)

3.8

難病の少女と不良青年の恋。
細かくチャプター分けすることで視点を留めさせず、お涙頂戴を上手いこと回避していた。
内装や家族の個性がどことなくGirl Asleepっぽい。豪州映画の抜けの良さ好きだな。

山椒大夫(1954年製作の映画)

4.3

初溝口健二。
平安初期の良家の家族、離散させられ始まる人生の旅路。
安寿の入水シーンも美しかったが、ススキの道とラストの浜辺が凄かった。号泣。
不条理と侘び寂びの相性の良さ、これでもかと。

やさしい女(1969年製作の映画)

4.0

舞い落ちるショールの柔らかで不穏な時間。
序盤から痺れるカットの連続で唸った。
ときに愉しい網越しの猿まねも、夫の自己愛が強過ぎて不憫。
これで "やさしい女" は素晴らしいな。描くはおろかな男。

春夏秋冬そして春(2003年製作の映画)

3.9

春夏秋冬そして春、だった。
栗の花の匂いについて、人間から湧き出るには崇高過ぎるとずっと思っていて。何だかそれを肯定された気分。
キムギドクがこんなに澄んだ作品を撮っていたとは意外だ。

COLD WAR あの歌、2つの心(2018年製作の映画)

5.0

久々に映画を堪能した。
東と西、民族音楽とジャズ、ズーラとヴィクトル。異なるものが混じり合ったときの静かな摩擦、密かに残り続ける熱。
終わり方もなんて美しいんだろう。
眺めの良い世界の果て、我々に見せ
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霧の中の風景(1988年製作の映画)

4.2

"はじめに混沌があり、それから光がやって来た"
ラストの台詞と父の不在、一本の樹はどこかタルコフスキーのサクリファイスに似てるけれど、こちらは言葉に限界を感じてしまう程の映像詩でした。まさに不朽の名作
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六月の蛇(2002年製作の映画)

3.4

電話相談員の女性がストーキングされる。
常に仄暗い青みがかったモノクロの世界。
急にSF要素入れたり、90年代の尖った邦画に在るような美学を感じる。
未だに作風を掴めていない塚本監督が更に分からなくな
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散歩する惑星(2000年製作の映画)

3.7

アナログな映像美もさる事ながら台詞が素晴らしい。
"慈しむべきは座らせる者"
この作品に出てくる弱者と介助者、どちらにもとれて良い。
一見残酷で批判しか含んでないが、やっぱり愛のように思う。
ゆる
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Swallow/スワロウ(2019年製作の映画)

3.8

何でも食べてしまうヘイリーベネット。
異食症、なかなか度胸の要る病気だった。呑み込まずに向き合うと、氷のように溶け出す過去の柵。
世離れした美貌がスリラーに見せてしまうだけで、実は前向きなフェミ映画か
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ラルジャン(1983年製作の映画)

4.7

無駄がないのは言わずもがな、救済をちらつかせ突き放す衝撃。
風吹かず儲ける桶屋もあるけれど。
繋がる少年の眉、世の善悪。
これが遺作とは格好良いな。

ホモ・サピエンスの涙(2019年製作の映画)

4.2

美しく愛おしい日常の断片。
想像以上にホッパーの絵だった。
独裁者さえ優しく包み込んでしまう。
"牧師で生計を立ててます" 地味に好き。

天国にちがいない(2019年製作の映画)

3.8

粋なパレスチナンジョーク。
自虐を通り越し当然のように達観しているスタンスが可笑しい。
考える余地が広く、拾えるものもあれば謎なままのもあった。テレパシーのような笑わせ方良いな。
更に落ち着かせた松尾
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マイ・サマー・オブ・ラブ(2004年製作の映画)

4.5

信仰への懐疑、幻想的なトリップ。
残酷で上質なガーリームービーでした。
パチンと催眠が解けるような顛末に驚き。
ナタリープレスの表情と癖強めの発音も良かった。名演。

DAU. ナターシャ(2020年製作の映画)

3.8

ソ連全体主義の恐ろしさを庶民の視点から描く。
ウェイターのナターシャ編。
美しく束ねられた髪からヘアピンを粗雑に外していく。過激なシーンは多々あれど今一番堪えました。抵抗を恐れる者の、自由を恐れる弱さ
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街の上で(2019年製作の映画)

4.0

脱力系モテキ。
道端での掛け合いが可笑しく最高でした。
自分ならイハちゃんのあざとさにころっと行ってしまうだろう。
街の上で一人ひとり、離れているのに温かい。

ANIMA(2019年製作の映画)

4.3

前衛的でディストピア感のある始まりからするすると進み、何とも優しくロマンチックに落とされ、してやられた。
安寧を与えてくれるトムヨークの暗い曲達、とりわけdawn chorusの世界だ。好き過ぎる。

ドント・ルック・アップ(2021年製作の映画)

3.6

誰も信じてくれないことの滑稽さ。
敢えて雑に皮肉るのが斬新で楽しい。
大衆が騒いでは分断され、残された格差に呆然とする。彗星でもコロナでも何でもいいのだけど、気付いたらそういったサイクルばかりの世界だ
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パワー・オブ・ザ・ドッグ(2021年製作の映画)

4.3

静かで無骨。
西部劇にしては知的で綺麗。
セクシャリティはじめ現代的な生きづらさを西部劇の中に落とし込んでいて、何というか上手だなと思いました。賞向き。
犬の力、それぞれが遠ざけたいもの。
キルスティ
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フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊(2021年製作の映画)

4.0

ザ・ウェスアンダーソン。傑作でした。
どこまで行くのかセンスのある架空。
今作は特に哀愁と憂いがあり好みでした。
このくらい分かりにくい方が個人的には好きだな。
レアセドゥの裸体とベニチオデルトロの存
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サクリファイス(1986年製作の映画)

4.2

まさかの北欧と和の融合。
美しく狂う姿を見て笑う映像体験。
エクダール家のお父さんが出ていて無性にベルイマンが観たくなった。
"はじめに言葉があった"

おいしい生活(2000年製作の映画)

3.5

強盗のカモフラージュのために始めたクッキー屋が繁盛してしまう。
とぼけたウディアレンはやはり最高🍪
ミートボールスパゲティに山積み食パンは笑った。
ノーブルとは、ぶらないこと。

ノスタルジア(1983年製作の映画)

3.7

詩的で難解ではあるものの不思議と既視感があり、近いものを感じることが出来た。そう錯覚させられる映像体験でした。
かなり前にソラリスで挫折してしまい離れていたタルコフスキー。今なら分かる美しさと間合い。

ジャンヌ・ダルク裁判(1962年製作の映画)

4.5

フロランスドゥレのジャンヌ、強くて美しい!
ドライヤーはか弱さを強調する演技がサイレントなのに煩く疲れてしまったが、こちらは良い。
ブレッソンの簡素さがやはり性に合う。
彼女の荷物、交差された手。

薬指の標本(2004年製作の映画)

3.7

記憶から遠ざけたいものを標本にして預かる。
ガーリーで不思議な映画は多々あるが出色の世界観を持つ作品だった。
雨上がりに生温の風が吹くあの感じ。
オルガキュリレンコの美貌とエロスに圧倒される。

わたしの叔父さん(2019年製作の映画)

4.1

農場を営む叔父と姪の暮らし。
自然音のみ。
台詞も最小限な穏やかな作品。
焦げたパンにヌテラ、ヘアアイロン。
日常のなか気付かず存在するヒュッゲ。
地味に北欧の個人の尊厳に対する意識の高さを感じた。