KenFujinoさんの映画レビュー・感想・評価

KenFujino

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ウェンディ&ルーシー(2008年製作の映画)

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どうしようもない孤独感。現代という時代の寄る辺なさがよく描かれていると思う。出てくる人物が皆、揃いも揃って無気力。対照的に、冒頭の長回しからはじまり、貨物列車の俯瞰、ウェンディが壁にもたれて座っている>>続きを読む

アンナの出会い(1978年製作の映画)

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街や人を撮る構図が美しい。そこには情感を極限まで排した冷めたまなざしが感じられる。
多くはないセリフは、ほとんどが一方から他方へ心情を吐露するもので、一応相手はいるのだけれど、発せられた言葉は受けとら
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東京画(1985年製作の映画)

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ヴィム・ヴェンダースが1983年の東京を訪れて小津安二郎の影を探す、のかと思えば、いつのまにかゴルフの打ちっぱなしや食品サンプルの製造工程、原宿のローラー族を熱心に観察しているヴェンダース。そこにいる>>続きを読む

オールド・ジョイ(2006年製作の映画)

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久しぶりに再会した友人ふたりが、ドライブして森へ行くというシンプルな話。
セリフは少ないが、表情が多くを語る。ときおり挟まれる森の描写は、静かで美しいにもかかわらず、言葉では語れない不穏なものを感じさ
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トラック(1977年製作の映画)

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マルグリット・デュラスが、映画シナリオのようなものを見ながら、俳優と対話する。それだけなのに、目が離せなくなった。
なにかを制作するときの、まだ現実には生まれていないなにか、ゆらぎの状態にある思考のキ
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ピアニストを撃て(1960年製作の映画)

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主演のシャルル・アズナヴールがいいですね。表情に哀しみがあって。
アクションもハードボイルドも気恥ずかしくてできない感じのひねくれたフレンチおしゃれだからこそ、彼の表情が醸し出す哀愁がより一層深みを増
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ミークス・カットオフ(2010年製作の映画)

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彩度を抑えた映像のトーンがとても良い。一つひとつのショットが、ニューカラーの写真家の作品のようで、ひたすら観ていられる。
設定は西部開拓なんだけど、まったく西部劇的ではない。信じられるものがないままに
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勝手に逃げろ/人生(1980年製作の映画)

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構成は4章で組み立てられ、話の筋はしっかりしている。だが、まるで調和を拒絶するかのように映像と音声が切断される。切断は、ときに行為の異様さを際立たせる効果を発揮するが、ときに宙に漂う。「エクリチュール>>続きを読む

フェイシズ(1968年製作の映画)

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たくさんの表情が交錯する映像。バカ騒ぎのなかでふと洩れる嫌悪のまなざし。表情の仮面は脆くて、容易に憎悪に変化する。そこからなにかが展開するかと思わせるが、また元のバカ騒ぎに戻っていく。笑いと怒りが脈絡>>続きを読む

ブリュッセル1080、コメルス河畔通り23番地、ジャンヌ・ディエルマン/ブリュッセル1080、コルメス3番街のジャンヌ・ディエルマン(1975年製作の映画)

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主婦の日常のルーティンをひたすら映すだけ。3時間20分を超える長さ。しかもカメラはフィックスで長回しでセリフは少なくBGMもなし。
最初は退屈で、これは観続けられないかもと思ったが、なぜか次第に惹きつ
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パリ、恋人たちの影(2015年製作の映画)

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淡々と日常を描写しているのだけれど、人物の心の動きや言動がとてもなまなましく感じられる。
展開のスピードが自然で、人物の感情を想像する間がある。そのせいか、いつのまにか観ている自分もそこに同期していく
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去年マリエンバートで(1961年製作の映画)

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マリエンバートで出会ったことがあると言い張る男と、出会ったことはないという女のすれ違い。
時間軸の異なる位置(未來と過去)にいる2人がなぜか同じ現在の同じ場所に存在してしまったとしたら…
ストーリーは
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8 1/2(1963年製作の映画)

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フェリーニの自伝的な面もある映画で、監督の苦悩が描かれる。8 1/2というタイトルは監督として8本、共作1本という意味(共作は1/2と換算)。
プロデューサーの要求や俳優の懇願に追い詰められた監督は、
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ぼくの伯父さん(1958年製作の映画)

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のんびりとしたユロー伯父さんとエレクトロニックで時代の最先端の住宅に住む妹夫婦を対比する。お洒落でやさしい雰囲気だけど、風刺が効いている。
ユロー伯父さんの家の周辺の雰囲気がお洒落でかわいい。パリの路
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勝手にしやがれ(1960年製作の映画)

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刑事に追われたり、人が死んだり、設定はシリアスなはずなのに、内面の葛藤は描かれず切迫感を感じさせない。緻密に構成された映画とは対極にあるような自由さで、人物は街をさまよい言葉はかみ合わないままに漂う。>>続きを読む

女は女である(1961年製作の映画)

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コメディなのかな。劇中のテンションの高さがやや小っ恥ずかしかったり、男と女のやりとりにわざとらしさを感じたり。
画づくりや色づかいはおしゃれなんだけど、自分にはハマらなかったです。

気狂いピエロ(1965年製作の映画)

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ドゥルーズの「シネマ」を読んでて興味が出たので観た。わけわかんない映画かなと思って、これまで敬遠してたけど、そんなことなくておもしろかった。
アパートから逃げ出すところのつなぎとか超カッコいいし、男と
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市民ケーン(1941年製作の映画)

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「薔薇の蕾」という謎ワードを巡って、時間を行きつ戻りつしながら展開する伝記風のミステリー。画づくり、カメラの動き、つなぎなど、どれもがクオリティ高くて、80年以上前の作品というのが信じられない。
なん
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東京物語(1953年製作の映画)

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1953年だから、70年前の作品になるんですね。老夫婦の朴訥とした会話に癒される。親と子の非対称な心理に切なくなる。抑えた感情表現にもかかわらず、奥に潜む思考の揺れを感じて眼が離せなくなる。

三島由紀夫vs東大全共闘 50年目の真実(2020年製作の映画)

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2度目の視聴。最初観た時は、三島の圧倒的な迫力におされた印象だけが強く残ったが、2度目の今回は、三島の学生たちに対する敬意をしみじみと感じた。
最初の時は、観念だけが肥大して詭弁を弄する学生たちという
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好きにならずにいられない(2015年製作の映画)

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大きな体の心やさしいフーシは、自分の好きな世界を大切にしながら静かに暮らしてるだけなのに、まわりの人から容姿をバカにされたり、小言を言われたり、変質者として扱われたりする。でもそれを静かにやり過ごす。>>続きを読む

ヤクザと家族 The Family(2021年製作の映画)

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居場所が奪われていくとともに、どうしようもない空虚さにのみこまれていくヤクザを描く。
タイトルが「ヤクザと家族」となっているように、家族が大きなテーマになっている。ここでいう家族は伝統的な血縁家族に限
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インターステラー(2014年製作の映画)

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ワームホールとかブラックホール、五次元とか多宇宙とかワクワクする設定ですが、テンポが早くて掴みきれないところが多々あり。最新の宇宙物理学に則して設定が作り込まれていて、解説もいろいろあるようなので、深>>続きを読む

ノクターナル・アニマルズ(2016年製作の映画)

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観終わった後しばらく胸のざわつきが止みませんでした。映画のなかに小説の物語があるという構成、胸が締めつけられるようなストーリー、役者、そして映像美。どれもすばらしい。
映画と小説という二重の虚構がある
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最強のふたり(2011年製作の映画)

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フィリップが笑う前に微妙な表情をするんだよね。いまにも怒り出しそうな、でも悲しそうな表情。そういう間がちょっとあって、それから笑う。ストレートに笑うドリスとは対照的。でもドリスのストレートさの裏にはス>>続きを読む

カナルタ 螺旋状の夢(2020年製作の映画)

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人類学の存在論的転回のいくつかの観点、たとえば多自然主義やパースペクティビズムに関心があって観たのだけれど、むしろこの映像を観ながら、たびたび思い起こしていたのは「野生の思考」だった。
薬草や土地の良
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ドント・ルック・アップ(2021年製作の映画)

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評判良かったので見てみたけど、、、ハリウッド作品だね、という感じ。眼前に迫る課題を見て見ぬ振りする人への風刺ということのようだが、、、

シン・エヴァンゲリオン劇場版(2020年製作の映画)

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25年間に渡る作品の完結編。これだけ伏線が張り巡らされ、周囲の期待や妄想が膨らんだ作品世界を、キチンと収束させて、終わらせたのはすごい。
25年間、同時代に生きたからこその並走感、納得、充実感。たぶん
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ノスタルジア(1983年製作の映画)

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難解だった、、、が、画はどこを切り取っても素晴らしく美しい。

フォードvsフェラーリ(2019年製作の映画)

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子供の頃に好きだったフォードGT40がこのようにできたのか、ということがわかって興味深かった

A GHOST STORY ア・ゴースト・ストーリー(2017年製作の映画)

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静かで美しい映画。
劇中でゴーストは、観ることしかできない、ただひたすら寡黙な存在として描かれる。それが逆に、沈黙の奥底に沈んだ深い感情を表現している。
私を観る私を観る私、のように再起的に超越してい
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