ハマジンさんの映画レビュー・感想・評価 - 2ページ目

ハマジン

ハマジン

映画(109)
ドラマ(0)
アニメ(0)

ゲット・クレイジー(1983年製作の映画)

5.0

ライブ演者も観客(一斉にマッチに火を付けコール!)も裏方も、とにかく出演者/製作陣全員にありったけの敬意を込めて「操行ゼロ」と讃えたい。
人、人、人(たまに人外)が入り乱れ、舞台、客席、舞台裏の境が次
>>続きを読む

13人の命(2022年製作の映画)

3.5

良すぎて二度見してしまった。手の甲の擦り傷のさりげない生々しさや、竹を割る動作を4カットで的確に見せる簡潔さこそ映画のリアリズム。
イギリス人ダイバー組、タイ組のキャスト共々抑えた演技のアンサンブルも
>>続きを読む

MEMORIA メモリア(2021年製作の映画)

3.0

アピチャッポンのフィルモグラフィのなかでは比較的わかりやすい部類のような。おなじみの2部構成も、ジャズ・セッションの「間奏曲」まで律儀に入って明快な輪郭におさまっている。ロン・ハワード『13人の命』で>>続きを読む

ボディ・ダブル(1984年製作の映画)

3.5

映画体験とはつまるところ窃視、窃盗、ストーキングのことであり、イコール「犯罪」である、という身も蓋もない原理に真剣に向き合い、そこから滲み出す血とエロスを真正面から(特にエンドクレジットでは文字通り)>>続きを読む

死霊伝説(1979年製作の映画)

4.0

風がびゅうッと吹き抜けるたび起こる禍々しい出来事。霧の渦巻く窓の外を浮遊しながら、窓ガラスを引っ掻いて犠牲者を誘う子供の吸血鬼。
「邪悪なものが宿る」屋敷内セットの美しさ。特に1階と2階をうろつく2人
>>続きを読む

一人息子(1936年製作の映画)

-

馬!子どもたちが野球をしている原っぱに突如映し出される馬!腹の下をくぐって「どうだい」と肝試しする突貫小僧を蹴飛し病院送りにする、馬の全身を捉えた目の覚めるようなショット。
元教師のとんかつ屋亭主(誰
>>続きを読む

大菩薩峠(1960年製作の映画)

-

開始早々無実の老人をいきなり背中から斬りつける外道、机竜之助(市川雷蔵)。血を拭いパッと放った懐紙が、孫娘が水を汲む川にハラハラと舞い落ちる。次いで夫の命乞いに来た妻お浜(中村玉緒)を水車小屋で手籠め>>続きを読む

ユリシーズの瞳(1995年製作の映画)

-

1ショットのうちにいくつもの時間の層が併存する長回しは今更言うまでもない(特に冒頭の、黒い傘の集団&白ヘルメットの機動隊と、ロウソク集団との衝突に至るシークエンスは必見)ことながら、つくづくメロドラマ>>続きを読む

無謀な瞬間(1949年製作の映画)

3.5

厄介事に立ち向かう際、一旦煙草を吹かしてから意を決して現場に乗り込むジョーン・ベネットのハードボイルドな佇まい。吸いすぎのあまり、強請屋のジェームズ・メイソンが心配してフィルターを買ってあげる始末。>>続きを読む

運命の女(2002年製作の映画)

1.5

リメイク元のシャブロル『不貞の女』を百万回見てから出直してほしい。
ダイアン・レインがアカデミー賞候補級の「熱演」で、なれ初めからいちいち身体を張って演じないと成立しない「不倫モノ」なんて、大時代すぎ
>>続きを読む

殺人者はライフルを持っている!(1968年製作の映画)

3.0

ドライブインシアターの巨大なスクリーンに映るボリス・カーロフと実物のボリス・カーロフにはさまれ、狙撃犯がスクリーンの姿にも発砲してしまう、なんて事態は現実にはありえないわけで(大きさがまるで違うではな>>続きを読む

ベイビー・イッツ・ユー(1983年製作の映画)

3.0

高校演劇部の部長とシナトラ好きの学校のはぐれ者との恋(にしてもロザンナ・アークエット側は端からそれほど乗り気ではない)と、その後のパッとしない生活。かたやプロム当日ケチな強盗事件を起こしてマイアミへ逃>>続きを読む

ロイ・ビーン(1972年製作の映画)

4.0

びっくりするほどマジック・リアリズム。失踪から20年経ち、石油採掘塔があちこちに林立するかつての面影を失った町に、「古い絵本の中から」突如現れる馬上のロイ・ビーン。そこからさらに何年も時間が経って、ポ>>続きを読む

沖縄やくざ戦争(1976年製作の映画)

3.0

千葉真一のどこまでも過剰な芝居と身体。1人だけフィクションの次元が違う。銃弾に斃れるかと思いきや逆立ち一回転しての退場。「ケダモノ」度でいうと、米占いにじぃーっと見入るかと思えば便所で突如女性に襲いか>>続きを読む

デイズ・オブ・サンダー(1990年製作の映画)

3.5

ラブシーンが全てイイ。瞳孔検査からのキス未遂をアップで→バビンスキー反射検査終了後、立ち上がりかけてトムからの突発的なキス→検査室を出て今度はニコール・キッドマンからの熱烈なキス、で一気にもっていく。>>続きを読む

ワン・フロム・ザ・ハート(1982年製作の映画)

3.0

登場人物が歌わないミュージカルかと思いきや、「歌えない」男のミュージカルだったという。搭乗口の連絡通路でフレデリック・フォレストがヤケクソ気味に歌う『You Are My Sunshine』の侘しさた>>続きを読む

カミュなんて知らない(2005年製作の映画)

3.5

このレビューはネタバレを含みます

ラスト、虚実の皮膜が溶解していく異形の「殺人シーン」は、数ある映画の中でもトップクラスの恐ろしさ。それまでの1時間40分はすべて前振り。「カット」の声がかかっても止まらない、ガラス1枚隔てた「向こう側>>続きを読む

こおろぎ(2006年製作の映画)

3.0

盲目で唖者の男と中年の女との、二重三重によじれた共依存生活。男の靴の片方を隠し、パンプスで一人散歩をさせる陰湿さ。しかし当の女もピンヒールの靴(女性の装具自体の拘束性)を履きつづける。抑圧された者が別>>続きを読む

世界の涯てに(1936年製作の映画)

4.5

事の発端(小切手偽造)に書かれた「6」という数字が、主役の男女を呪いのようにどこまでも追いかけてくる(箒売りの「6ペンス」という声、安酒場のヴァージン娘が歌う「7人の男に6回も…」)。数字の不正を犯し>>続きを読む

ショッカー(1989年製作の映画)

3.5

序盤から15人ほどサクサクと景気よく殺される。犠牲者を隠し扉の奥に引きずり込むカットと、足元に染み出す血だまりだけで殺人を見せる手際のよさ。恋人惨殺の瞬間も、鏡に塗りたくられる血の一筆で簡潔に。
から
>>続きを読む

追跡(1947年製作の映画)

3.5

ロバート・ミッチャム演じる男ジェブの家族をめぐる陰惨な過去の影が、彼を執拗に追いかけ命を狙い、育ての家族共々愛憎の不幸に陥れてゆくノワール西部劇。
窓の外に投げ捨てられたり、賭けの元手に放り出されたり
>>続きを読む

エル ELLE(2016年製作の映画)

3.0

「空間」をめぐって合理的に演出が組み立てられた、もはやオーソドックスとすら呼びたくなる、かっちりとした作りの映画。扉・窓・ブラインドの開閉を「誰が」行なうかが、人物関係・ドラマの曲がり角を生みだしてい>>続きを読む

ガンジャ&ヘス(1973年製作の映画)

2.5

古代の短刀で助手に刺され吸血鬼となった人類学者ヘスと、助手の妻ガンジャとのラブストーリーがメイン。病院で輸血袋をパクるくだり含め、どう見てもジャームッシュ『オンリー・ラヴァーズ・レフト・アライヴ』の元>>続きを読む

ナポレオン(1927年製作の映画)

-

BFIの332分版ブルーレイで鑑賞。
冒頭の雪合戦シーンから度肝を抜かれる。1927年の時点で手持ちカメラをやっている……絶句。
クライマックスのイタリア遠征進軍当日、フランス軍が一斉に起き上がる超パ
>>続きを読む

レッド・ドラゴン レクター博士の沈黙/刑事グラハム 凍りついた欲望(1986年製作の映画)

3.5

地下駐車場の坂を火だるまの車椅子が一直線に下るスピーディーなインパクトはもちろん、壁面を照らす炎の反映を同アングルからとらえた直前のカットが素晴らしすぎた。撮影ダンテ・スピノッティ。「次の殺人を遂行す>>続きを読む

世にも怪奇な物語(1967年製作の映画)

3.0

見通してから思い返すと、第1話『黒馬の哭く館』が一番好きだったのでわ……という結論に。絢爛かつきわどい衣装を次々まとうジェーン・フォンダ、きらびやかな屋内と陰鬱な屋外との対比、稲妻に照らされる黒馬のつ>>続きを読む

不都合な理想の夫婦(2020年製作の映画)

2.5

夫の虚言癖に愛想をつかしてディナーをバックレ、深夜の酒場のカウンターで煙草をふかし、ウォッカトニックを胃に流し込むように何杯もあおり、襟を大きく刳った黒いドレスの肩がずり落ちるほどの激しさでヤケクソ気>>続きを読む

スター80(1983年製作の映画)

3.5

エリック・ロバーツ演じるポン引きの、ことあるごとに鏡の前で挨拶の練習と周囲の人間への呪詛を繰り返す、ナルシシズムと自己肯定感の低さの悪魔合体。ゆえの嫉妬と被害妄想に巻き込まれる素朴なお人好しのドロシー>>続きを読む

ドン・ジョヴァンニ(1979年製作の映画)

4.0

奥行きの深いロージー的バロック迷路の先に蓋を開ける地獄の釜は、そもそも序曲のガラス工房ですでに予告されている。第1幕で農民の群衆が四方に開かれた建物の周りを無言で取り巻く不穏なくだりが、第2幕で石像に>>続きを読む

ドリーム(2016年製作の映画)

2.0

非白人用トイレの看板をケヴィン・コスナーが壊す身振りが感動的なのは、「IBMの機器が入らないので至急入口を壊して拡げる」前振りのシーンが効いてくる(NASAの建物自体が時代にそぐわなくなってきているこ>>続きを読む

サスペリア PART2 完全版(1975年製作の映画)

4.0

唇からあふれ出る水、浴槽の蛇口からほとばしる熱湯、カップからこぼれる紅茶など、殺人シーンに常につきまとう「液体」のイメージの連鎖が、「下降するエレベーターの格子にぶら下がった血の滴るネックレス」という>>続きを読む

永遠のガビー(1934年製作の映画)

4.0

手術台の上のガビーに覆いかぶさる麻酔ガスマスクの異様さ。「みんなの女性」という虚像の中に取り残される孤独を端的に表わす、「また会える、映画の中で」という台詞の絶望的な非対称性こそオフュルス女性映画のキ>>続きを読む

夏の嵐(1944年製作の映画)

3.5

ジョージ・サンダース演じる判事の弱さと保身ゆえの行動(できなさ)の果てに行き着く、郵便ポストの悲喜劇。ラスト、見せ場になるはずの「撃たれる」アクションすら画面の外で起こる容赦のなさ。そしてぞんざいに捨>>続きを読む

おらおらでひとりいぐも(2020年製作の映画)

3.0

沖田修一監督作品、「俯瞰」のショットがバチっとキマる瞬間が何より爽快で感動的だと毎度思うんだけど(『横道世之介』のキスシーンや『モリのいる場所』のエンドロールとか)、今回原作のポリフォニックなテクスト>>続きを読む

ミラクル・マイル(1988年製作の映画)

4.0

めちゃくちゃによかった……。甘酸っぱいラブロマンスが終末の厄災色に塗りつぶされていく(夜明けのオレンジ色の禍々しさ!)、アメリカのパラノイアを煮詰めたような悪夢じみたイメージの数々を堪能した(ピンチョ>>続きを読む

邪願霊(1988年製作の映画)

2.0

J ホラーの幽霊表現(画面奥や隅っこにぽつんと人が立つだけで幽霊にしか見えなくなる演出)って「画像の不鮮明さ」による効果が大きくて、フィルム/ビデオ/デジタルそれぞれの媒体で「不鮮明さ」の質が違ってく>>続きを読む