ハマジンさんの映画レビュー・感想・評価 - 3ページ目

ハマジン

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審判(1963年製作の映画)

3.5

カフカ作品の特質の1つである「コメディ」の部分をきちんと撮ってるのがなにより好ましく、特に原作の「処刑場面」にひとひねり加えて、まさかの「爆発オチ」でしめくくるアレンジに腹筋が崩壊した。好いた隣人(ジ>>続きを読む

M(1931年製作の映画)

4.5

幼女連続殺人のニュースを読む市民の声が、該当の画面より1つ前のカットにかぶさるよう周到に編集がなされていて、不安とともに情報を拡散させるのがなにより「声」であることを、シンプルかつ的確に描いてる。サイ>>続きを読む

青い鳥(1918年製作の映画)

3.5

初期サイレントの本作の段階ですでに、映画手法の大半が洗練を極めていたことに今さらながら驚いてしまう。ディゾルヴの継ぎ目とか全然わからん。
奥行きのある空間に紗を多用した柔らかく繊細な質感が、独特の童話
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もう終わりにしよう。(2020年製作の映画)

2.0

このレビューはネタバレを含みます

人生初ネトフリ。映像がすべて「判じ物」の役割に奉仕してる印象を受け、あまりノレず。

チャーリー・カウフマン映画の大きなインスパイア元、よく名前が挙がるリンチやベルイマンよりも、むしろアラン・レネでは
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エドワールとキャロリーヌ(1951年製作の映画)

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『現金に手を出すな』で、2人のギャングが就寝前にベッドメイクしパジャマに着替え歯を磨くところまで一切省略せずに見せたとおり、「着替え」という日常の身ぶりから魅力的なアクションとドラマを次々引き出してい>>続きを読む

アレクサンダー大王(1980年製作の映画)

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すぐれた「歌合戦」映画はそれ自体すぐれた政治映画であることを証明している作品。

持続した長回しのショットが頻出するけれど、キモはむしろ次のカットへ移る際の「素早さ」の方にあると思う。人質の女性への暴
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1900年(1976年製作の映画)

4.0

幼少期から青年期へ場面転換するくだりがヤバすぎる。沿岸の組合のもとへ送られる汽車の窓ごしに、それまで一切映らなかった海の青がいきなりバンッと画面いっぱいに映り、ふいに暗転したかと思うと煙草の灯りが画面>>続きを読む

エル・スール(1982年製作の映画)

4.5

初聖体拝受式後のささやかな祝宴でエストレリャが父親と踊る場面は、親密で多幸感あふれる「仰角」気味のロー・ポジションで撮られるのに対し、終盤15歳の彼女が父親と最後の会話をするレストランで偶然出くわす結>>続きを読む

ウルフ・オブ・ウォールストリート(2013年製作の映画)

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最★高。
今見返すと、『アイリッシュマン』と鏡のように瓜二つの構造をした作品で、ほとんど本作の「鬱」ヴァージョンとすらいえる。破局の発端となるのが仲間の「謝ったら死ぬ病」なところも一緒。
全編を「第四
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ブリングリング(2013年製作の映画)

3.5

これ以上ないほどの自然さで男子にルブタンのハイヒールを履かせることのできる監督、現状ソフィア・コッポラくらいしかいないのでは。あと、現代のセキュリティが「施錠」ではなく「透過性」と「監視」で成り立って>>続きを読む

ソーシャル・ネットワーク(2010年製作の映画)

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これ、初見の印象以上に「パンデミック映画」しとるやんけ……と再見して改めて驚いたというか、Facebook登録者が(皮肉にも「排他性」を原動力にして)世界中に蔓延していく過程が淡々と描かれていて、正直>>続きを読む

赤死病の仮面(1964年製作の映画)

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表題作ほか、ポーの「飛び蛙」「陥穽と振子」「ウィリアム・ウィルソン」などの意匠もそこかしこに散らばってて楽しめたんだけど、赤死病がダーク・ヒーローというか「必殺仕置人」みたいな扱いになっとるやんけ何だ>>続きを読む

囚われの美女(1983年製作の映画)

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全編にただよう「狸に化かされた」感含め、一番近いの鈴木清順映画では。というか『陽炎座』(1981)を強く思い出した(「生きてるのか死んでるのかよく分からん金髪美女」といえば上記作の楠田枝里子そっくりで>>続きを読む

悪の力(1948年製作の映画)

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ウォール街のビル群にはさまれたトリニティチャーチの黒々とした質感が不吉な冒頭の俯瞰ショットからしてすでにただ事ではなく、扉を次々と開けながら金庫へ至るジョン・ガーフィールドのすばやい動作含め、画面の連>>続きを読む

(1949年製作の映画)

4.5

控え室のシーン全般におけるロバート・ライアンの「受け」の演技というか、それぞれのボクサーに自分のこれまでの人生を重ねて見ているのがわかるその表情1つ1つに、もうひたすら泣いてしまう。後の『ワイルドバン>>続きを読む

ヨーロッパ横断特急(1966年製作の映画)

3.0

もうロブ=グリエの書いた小説に出てくる「男」のイメージが全部トランティニャンにしか見えなくなってしまい困る。刑事の仕組んだ緊縛ショーの広告に釣られてよせばいいのにホイホイやって来ちゃうくだりが最高にバ>>続きを読む

あきれたあきれた大作戦(1979年製作の映画)

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銃撃をジグザグ走りでかわすくだりは完全にアルドリッチ『燃える戦場』(1970)の丸パk、じゃなくてオマージュだし、「いかがわしいピーター・フォーク」と「キレるアラン・アーキン」のコンビは後のカサヴェテ>>続きを読む

ツールボックス・マーダー(2003年製作の映画)

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控えめにいって傑作では。

冒頭、的確な仰角ショットでとらえられるボロアパート(解体前のアンバサダー・ホテル!)の外観からしてこれが「建物」をめぐる映画になることは明白で、ヒロインの行動が空間を拡げて
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狼の時刻(1966年製作の映画)

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ホラー演出特盛の終盤の悪夢展開よりも、映画中盤、館の晩餐会の余興として催される『魔笛』の人形劇がはるかに禍々しくてヤバかった。同様の手法で撮られたブラウニング『悪魔の人形』の「モノ化された人間=小人」>>続きを読む

スネーキーモンキー/蛇拳(1976年製作の映画)

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椀をつかもうとする手を優雅な身のこなしでひらりひらりとかわす師匠?の書き残した手形・足形を頼りに、複雑なコリオグラフィーのようなステップを踏むジャッキーをはじめ、「舞踏」としてのカンフーを堪能した。純>>続きを読む

燃えよドラゴン(1973年製作の映画)

4.0

カメラではなく「俳優の身体」がショットを決定づけてしまった映画の最良の例。特にエレベーター前のショットは白眉で、凡百の映画なら迫り来るモブに切り返すところを、カメラは立ち向かうブルース・リーだけをひた>>続きを読む

少女ムシェット(1967年製作の映画)

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家族の朝食用に、鼻歌を歌いながら4つのカップにコーヒーと牛乳をたったの一注ぎで一気に入れてしまう、ムシェットの手際の良いしぐさに感動。こういうささやかな瞬間が映っているからこそ単なる「悲惨なお話」には>>続きを読む

ワイルド・パーティー(1970年製作の映画)

3.0

何より冒頭の異常なテンションのカッティング(拳銃を口に咥えさせられた女性の悲鳴からガールズ・ロックンロールバンドのシャウトへつなぐ超悪趣味な編集!)と、そこまでの設定・プロットの流れを完全に打っ棄るク>>続きを読む

彼奴(きやつ)は顔役だ!(1939年製作の映画)

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禁酒法時代の狂騒を駆け抜けた1人のギャングの興亡史(第1次世界大戦後に帰還兵が陥った深刻な失業問題が色濃く反映されている)であると同時に、愛する対象と決して視線が合わない切なすぎる片思い映画でもあり。>>続きを読む

恐怖のまわり道(1945年製作の映画)

3.5

こわすぎる。
LAへ渡った歌手のガールフレンドを追いかけるピアニストの男のひたすら受動的な決断(力のなさ)によって、ヒッチハイクの旅が地獄への一方通行に変貌する陰惨きわまりない映画。しかもそれをそっけ
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ポパイ(1980年製作の映画)

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カートゥーン・アニメの動きを役者たちの生身の身体で「完コピ」するという、正気の沙汰とは思えない超絶大怪作。この企画が通って映画が製作されたということ自体が奇跡。
画面のいたるところで何かしらのスラップ
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湖のランスロ(1974年製作の映画)

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DVDで鑑賞後、冒頭の戦闘描写だけしばらくリピートしまくった。最高。殺戮の跡を残しながら騎士団が画面左から右へと馬を駆るショットの反復が、乗り手を失った一頭の馬がモルドレッド卿の反乱の惨状が広がる森の>>続きを読む

Mの物語(2003年製作の映画)

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このレビューはネタバレを含みます

「火の娘たち」と名付けられた四部作として本作とともに構想されていた『デュエル』『ノロワ』に連なる作品群の1つ。壊れた時計のリズムの狂った振り子音が示す曖昧な時間、「何もない」はずの場所を凝視する猫、不>>続きを読む

レイチェルの結婚(2008年製作の映画)

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2階に上がって窓の外の芝生を眺めるキム(アン・ハサウェイ)の視線の先を黒い犬が横切るショットを序盤と終盤で反復したり、結婚披露宴の途中で退出する母親を乗せた車を見送るキムのショットと、翌朝キムを見送る>>続きを読む

妖刀物語 花の吉原百人斬り(1960年製作の映画)

4.0

歌舞伎『籠釣瓶花街酔醒』を原作としつつ、内田吐夢版『スカーレット・ストリート』といったおもむきもあり。
「痣のある顔」とその傍らに置かれた「妖刀」という表面の不吉なしるしによって、片岡千恵蔵演じる次郎
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ジュニア・ボナー/華麗なる挑戦(1972年製作の映画)

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ロデオで自分を負かした猛牛・サンシャインにリベンジするために、故郷のロデオ大会に出場するジュニア・ボナー(スティーヴ・マックィーン)の数日間を描いた映画。作品全体ののどかな印象とは裏腹に、売りに出され>>続きを読む

(1928年製作の映画)

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優れたディザスター・フィルムは精神の変容を描く優れた恐怖映画に直結する、という最良の例だと思う。ホラー好きは絶対に見ておいた方がいい名作ですが、何と!現在国内絶賛未ソフト化!

「外的環境に対する人間
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ウィンダミア夫人の扇(1925年製作の映画)

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『結婚哲学』からさらに角を取って巧妙に毒を忍ばせた洗練の極み。字幕ゼリフを最小限までそぎ落しているにもかかわらず、しぐさと表情と小道具の意味作用によって、オスカー・ワイルド原作の機知に富んだ会話とニュ>>続きを読む

愛の奇跡/ア・チャイルド・イズ・ウェイティング(1963年製作の映画)

3.5

このレビューはネタバレを含みます

ゆっくりと前進するカメラが自動車の正面からドアの開いた後部座席に回り込み、不安そうな面持ちで座る少年をとらえる→自動車からなかなか降りようとしない少年を車のおもちゃを使って外に誘い出す男(バート・ラン>>続きを読む

幸運の星(1929年製作の映画)

4.5

第1次大戦の負傷で下半身不随になった元電気技師の男ティム(チャールズ・ファレル)と貧しい農場の娘メエリー(ジャネット・ゲイナー)の恋愛メロドラマ。盗み癖のある小汚い娘だったジャネット・ゲイナーが、みる>>続きを読む

スポンティニアス・コンバッション/人体自然発火(1989年製作の映画)

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水爆実験によって生み出された「怪物」が徐々に追い詰められながらもその呪われた力で「造物主」に復讐する、「核の恐怖」に味付けされたフランケンシュタインものの亜種。というか『エージェント・ウルトラ』の骨格>>続きを読む