主人公が車泥棒ということもあって、運転中の車からのショットがふんだんに用いられており爽快。ダニエル・ダリュー扮する陰のある悪女もよい。
筋は「7月のクリスマス」に似通っている。ただ今回は主人公に幼馴染みと婚約者の三角関係が一つの話を成しており錯綜している。会話の応酬が多いがリズミカルで心地がよい。
多少変わっているが善人の若者と、それを支える少し空想家の恋人を中心に繰り広げられるドタバタ劇。言葉と金という実体のないものに振り回される人々を温かくコミカルに描いていると感じた。
敵軍に占領されたホテルという閉塞した空間で、如何に察知されずに情報を収集するかという常に緊張に満ちた90分。配役が個人の事情に立ちながら自然に国情を反映するような構成に監督の妙技をみる。
鶴田浩二の飄々として危機に際しては侠気に富んで縦横無尽に活動する役が茫洋と広がる若松の海の背景に溶け込んで清々しい。クライマックスの殴り込みのシーンはダイナマイトと日本刀の乱れ打ちでカタルシスすら感じ>>続きを読む
「約束の場所」の舞台を東京に移したよう。主人公が暴走気味だが背景が綺麗なので気にならない。ただ東京に水がたまったら澄まずに濁ると思う。
前回よりも人類側に諦念が見られ、より破滅の色を濃くしている。オリジナル五部作からの引用が随所にあり細部にまでこだわっている。
観客の期待をいい意味で裏切った作品。「最終章」というより「後日談」といった感じか。
「荒野のストレンジャー」では町の住民に復讐を果たす為にやって来た亡霊であったが、本作では住民を悪徳保安官から守る為に、神から遣わされた使者が主人公である。イーストウッド監督らしい地味なアクションが却っ>>続きを読む
時代の趨勢に乗り遅れた捜索者は、エンディングにある通り己の心や魂を探し求めており、これからも探し続けるのであろう。
ただ粗暴だったやくざが逆境にめげず謀略を駆使してのしあがってゆく。弱小組織ほど時には陰惨に、時には小狡く立ち回らなければならない様が、物寂しい冬の北陸を背景に語られる。
逃走する将兵、戦う戦闘機乗搭乗員、救出せんとする船乗りの三者の視点からなっている為、第二次世界大戦が生み出した奇妙な戦況が立体的に理解される。絶望的な状況における不屈の意志が殆ど言葉を交えず行動によっ>>続きを読む
苛烈かつ美麗なアクションに瞠目。暗い廃墟と塵芥を背景に華麗な衣装が俊敏な肉体に伴って動く様は、美しいと言い切るにはあまりにも力強く、破壊的ですらある。
MCUの中でも思春期の少年をコンセプトに据えた作品。他のMCU作品と比べて明るく軽快で切ない。ヴィラン側も人間味に溢れておりあまり憎めない。
途中までは青春群像ものとしてもみごたえあり。後半は特撮特有のカットがハリウッド風にアレンジされており面白い。
雨に濡れる木々の緑や波紋を広げる雨水、池の対岸を覆う霧雨といった雨の描写が美しい。
作品の細部に色気と殺気が宿っており退廃的な雰囲気を濃くしている。人間の情念と破滅を悲哀を漂わせつつ描いている。
ロボット物だが新海監督のテーマが色濃く出ている。この作品を最初に観れば他の新海作品も良く理解できるのではないだろうか。
ダンディーの一語に尽きる映画。全てを失ってもなお泰然とした態度を崩さないその姿はニヒルな美しさを感じる。
アクションは無論のこと、ヴァイキングとの諍いを国王軍の将校に話すくだりや、逃亡の際に俳優の顔をアップで映すなど実験的な試みが多く面白い。サントラも個性的。
とある中部太平洋の基地に寄港した航空母艦航空隊の雷撃機搭乗員達は、前線に雷撃機の補充がなかなか届かない状況に焦りや苛立ちを募らせる一方で、基地部隊の将兵達との交流によって戦うことや勝つことへの考えを深>>続きを読む
今更ながら視聴。移ろいゆく四季の鮮やかさと少年と少女の静かな激情がよく連動して深みをもたせている。
この映画には所謂悪役は一人もいない。仲代達矢演じる上官の佐久間大尉も人間的な弱さを持ち合わせている。そうであるにもかかわらず、なぜあのような悲劇的な結果に至ったかを時にはコミカルに、時にはシリアスに描>>続きを読む
「Vol.2」というだけあってジョークやアクションも二倍になって帰ってきており必見。エンディングに遊び心がありこれも見所。
アルジェリア民族解放戦線とフランス軍の攻防を淡々と描く。アリ・ラ・ポワントとマチュー中佐は大義の為の暴力を肯定する点で相似する。どちらの側にも究極の悪人などいない。
朝鮮戦争が停戦合意に至るまでを最前線の部隊に寄り添って描いた作品。過酷な戦闘による極限状態の為、ある兵士は発狂し、一方の兵士は人間であることを辞め、別の兵士はモルヒネ中毒者と化す。地獄の如き応酬の僅か>>続きを読む
ただ珊瑚礁の彼方に憧れを抱いていただけの少女が、己の使命に目覚め遂行するための手段を身に付けていく過程は感動必至。マウイなる半神や「海」など神々の加護によって功業を為すなど神話的である。
あらゆる怪獣が巨大で人間が虫けらのようにみえる。軍用ヘリのスローモーションや夕陽に向かって直進するシーンは『地獄の黙示録』リスペクトか。
SFとファンタジーが混交した冒険の物語。夢と現実をかろうじてバランスをとって構成している。ロボットと「鬼」対戦シーンは見事。
当時の世相に深く切り込んだ作品。宮本信子演じる女弁護士が時にはやくざに向かって啖呵を切り時には総支配人をやさしくいたわるなど正義と慈悲を兼ね備えた存在として描かれる。
前作の続編。宗教と企業や政界などの癒着構造を暴露する。前作よりも冒険の要素が多い。
このレビューはネタバレを含みます
正統派の西部劇。原作の『七人の侍』や『荒野の七人』へのオマージュが強く出ている。神の名の下に資本主義を正当化しながら教会を焼く資本家と、その跡地で祈りを捧げることを要求するガンマンの対比が面白い。
正に怪作。社会主義体制の風刺という側面も否定できないが、この映画には世代や時空を超えた友情を主眼としているように見える。スターウォーズよりもバック・トゥ・ザ・フューチャーの方が近いように思えた。緻密に>>続きを読む
単なる勧善懲悪ではなく、国税局員と調査対象者の関係を情趣豊かに描く。テーマがテーマだけに生々しいシーンが多いが俗悪でないのは四季を織り交ぜた演出と、視点を目的を達成する仕事仲間に絞ったためか。俳優陣の>>続きを読む