映像がすごい勢いで通り過ぎていった、という表現がしっくりくる。
まったく面白くない、面白くしようとする気がさらさらない、そういう前提がない、泥沼の上に建築するみたいな態度だ。残るのは眼差しと表情の機微が生むサスペンスだけ。
あの60秒間に目まぐるしく変容するもの、自分自身を通り抜け走ってゆく確からしいものこそ「本当」なのだと思う。
機械的な労働のリズム、無機質な表情の世界に訪れる硬質なエモーショナルが確かにあった。余韻はないが厳格過ぎもせず、ただし漲るショットの連続はジャームッシュやブレッソン、小津とも違う種類のなにかを感じる。>>続きを読む
全くドラスティックではないが(クライマックスに達しそうで達しない)、中心の周縁の原理を描いたのが『フロリダプロジェクト』ならば、今作はその発生と不可逆性?に光を当てたのかもしれない。絶対に交わらないス>>続きを読む
世の中がぜんぶB級に、インスタントに、ライトになった世界だ。カメラがいたるところにあっても不思議じゃない世界だ。
『勝手に逃げろ/人生』を観た。はじめてだ、ゴダールを観て清々しい気持ちになったのは。蓮實重彥がゴダールは優雅である、と言っていたのを思い出す。自由でなくとも常に優雅でありたいよ。
べっとりとした質感。土砂降りの雨、洪水のような車や電車。避難所のような親密な室内。