ひでやんさんの映画レビュー・感想・評価

ひでやん

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先生、私の隣に座っていただけませんか?(2021年製作の映画)

3.6

このレビューはネタバレを含みます

男目線ならサイコホラーなサスペンス。女目線なら痛快コメディの復讐劇。

夫の不倫に気づいた漫画家の妻が、新作漫画で夫の不倫現場をリアルに描き、自分の不倫も描いていく今作、何を考えているのか分からない黒
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空白(2021年製作の映画)

3.7

いつまで経っても消えない悲しみと、いつかは切れる怒りのエネルギー。

娘を亡くした父が怪物と化して暴走。その怒りは空っぽの心を埋めるためでもあり、自身に向けられない怒りの矛先を他者へ向けているようでも
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めまい(1958年製作の映画)

4.4

このレビューはネタバレを含みます

観る者も追体験する伝説のめまいショット。

瞳のクロースアップで画面が赤くなり、幾何学模様の渦巻きが次々と現れるオープニング。ソール・バスがデザインしためまいのイメージに惹き込まれる。不可解な行動に出
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反撥(1964年製作の映画)

3.9

このレビューはネタバレを含みます

美しきカトリーヌ・ドヌーヴ、崩壊。

右目のクロースアップにクレジットが流れ、ゆっくりとカメラが引いていくオープニング。魂が抜けたようなドヌーヴが映し出され、その表情が尋常じゃない内面を物語る。

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ラ・ジュテ(1962年製作の映画)

4.2

過去、現在、未来を行き来する男の運命。

全編モノクロの静止画とナレーションのみで構成されたフォトロマンと称される短編で、『12モンキーズ』の原案にもなったSF。第三次世界大戦後、廃墟と化したパリ。人
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コンフィデンスマンJP 英雄編(2022年製作の映画)

4.0

本当の英雄とはなんだろう。

前作の『プリンセス編』は感動路線だったが、今作は原点回帰で愉快痛快だった。今回も気持ちよく騙してくれてありがとう。

地中海に浮かぶマルタ島の都市ヴァレッタを舞台に、お馴
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コンフィデンスマンJP プリンセス編(2020年製作の映画)

3.9

大富豪一族を相手に、10兆円とも言われる遺産を狙う劇場版第2弾。

キャストが超豪華。過去にゲスト出演した俳優陣に加え、端役の新キャストが名優ばかり。美しいスィンガポウとマレーシアを舞台にワンダホォー
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コンフィデンスマンJP ロマンス編(2019年製作の映画)

4.1

香港を舞台に繰り広げるコンゲーム、最後に笑うのは誰だ?

おさかなは香港マフィアの氷姫ラン・リウ。伝説のパープルダイヤを手に入れるため、いざ香港へ。着くなりブルース・リーになって「アチョー」のダー子た
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草の上の昼食(1959年製作の映画)

4.1

科学を粉砕する人間讃歌。

人工授精で優秀な人類を残すべきと主張する生物学者と、男はいらないが子供は欲しいと思っている田舎娘が恋に落ちる喜劇。

南仏プロヴァンスの自然が美しい。木に止まる蝉、河畔のキ
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ピクニック(1936年製作の映画)

4.0

緑が目に浮かぶモノクロの自然美。

田舎者は都会に憧れ、都会人は田舎の自然を愛す。というわけでパリジェンヌは草の上の昼食がお好き。お気に召すまま戯れて。

漕いだ分だけ大地から離れ、少しだけ空の青に近
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マスカレード・ナイト(2021年製作の映画)

3.5

前作と同じ「ホテル・コルテシア東京」が舞台となり、大晦日のカウントダウン・パーティーに現れる殺人犯を捕まえるため、潜入捜査官とホテルマンが再びタッグを組む。

「あ、さんまだ」
「イヤン!めっかっちゃ
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マスカレード・ホテル(2019年製作の映画)

3.5

一流ホテルを舞台に、人を疑う潜入捜査官と客を信じるホテルマンという正反対のコンビが連続殺人事件に挑むミステリー。

宿泊客が珍客ばかり。ストーカー、障碍者、理不尽な要求、クレーム、カスハラなど、曲者揃
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ドライブ・マイ・カー(2021年製作の映画)

3.8

至る所に散りばめられた暗喩。

「僕は正しく傷つくべきだった」という家福の言葉が心に残った。自分を真っ直ぐ見つめ、受け容れる事で正しく傷つく。緑内障で視野が狭くなる片眼は、家福が続けた「見ないふり」の
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(1955年製作の映画)

3.7

悪党がたどる悲劇。

原題はペテン、詐欺を意味するが、邦題は死のイメージが強い。サスペンスドラマで登場する断崖絶壁を想像したのだが、思っていた崖と違った。

司祭の服着て善人を騙し、金を巻き上げるペテ
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イメージの本(2018年製作の映画)

4.0

脳内がヒリヒリするアート体験。

「5本の指があって、指が合わさると手ができて、そして人間の真の条件とは手で考えることだ」というゴダール自身のナレーションで始まり、5本の指のごとく5章で構成されて「手
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アラバマ物語(1962年製作の映画)

4.1

無垢を殺めるは無知の声。

人種差別が根強く残るアメリカ南部の田舎町で、白人女性暴行の罪で逮捕された黒人青年を弁護し、差別と戦う弁護士の父を子供の視点から描く。

父が子供に「無害な鳥を殺すのは罪」と
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キートンの大列車追跡/キートン将軍/キートンの大列車強盗(1926年製作の映画)

4.2

でっかいスケールの鬼ごっこ。

南北戦争を題材に、奪われた機関車と恋人の奪還に燃える機関士を描いた痛快活劇。1926年て…約100年前に迫力満点のシーンをどうやって撮ったんだ?100年後の未来人を楽し
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男はつらいよ 寅次郎相合い傘(1975年製作の映画)

3.9

うれしはずかし相合い傘。

シリーズ15作目のマドンナは、浅丘ルリ子演じるリリーが再登場。寅さんの旅は北海道、家出した中年男と知り合って、でっかい大地のちっちゃな屋台でリリーとバッタリ。気ままな3人の
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孤狼の血 LEVEL2(2021年製作の映画)

4.0

受け継がれた意志。

前作から3年後、長きにわたる広島仁正会と尾谷組の抗争は手打ちとなり、休戦状態の中で五十子会の残党、上林が刑務所から出所する今作は、鈴木亮平演じる上林がヤバ過ぎる。檻から放たれた狂
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孤狼の血(2018年製作の映画)

4.2

群れを成す獣を、生かさず殺さず手懐ける一匹の狼。

『アウトレイジ』に対する東映の答え─そんな宣伝文句に惹かれた今作はのっけから衝撃。豚のケツから始まり、「これがヤクザ映画の本家、東映の本気じゃあ」
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護られなかった者たちへ(2021年製作の映画)

3.9

すり抜けてしまう穴だらけのセーフティーネット。

震災、生活保護、殺人事件という3つのテーマが重かった。石川県に住む自分は元日の能登半島地震の恐怖を体験したが、幸いなことに家族も家も無事だった。しかし
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アナザーラウンド(2020年製作の映画)

3.7

百薬の長となるか、薬物の狂となるか。

デンマークでは飲酒に年齢制限がなく、16歳から酒を購入できるというから驚き。マーティンが教え子に「1週間の飲酒量は?」と訊くシーンがあるが、なるほどだ。

「血
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オールド(2021年製作の映画)

3.7

このレビューはネタバレを含みます

老化が急速に進む謎のビーチに閉じ込められた家族の恐怖を描いたタイムスリラー。

このシチュエーションは斬新。ビーチが舞台なのに人を喰うサメは出ず、年を食う人。舐め回すようなカメラワークや、顔を映さない
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さらば、愛の言葉よ(2014年製作の映画)

4.1

イマージュの海に溺れて。

初期のゴダールは「男と女と車(+銃)」で映画を撮ったが、83歳にして発表した今作は「男と女と犬」の物語を3D映画で世に放つ。登場するのはゴダールの愛犬ロクシー。

「想像力
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ゴダールの探偵(1985年製作の映画)

3.6

反転する真実と、反復する事実。

赤と白のクレジットが洒落ているなと思っていたら、やたらと引っ張るもんだから、サイレント映画の字幕みたいになるクレジット。冒頭でカメラの横に立つ女性の足が映し出され、そ
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カルメンという名の女(1983年製作の映画)

4.2

『ゴダールのカルメン』というタイトルの方がしっくりくる。

政治に傾倒していた時代を通過し、80年代に入ったゴダールは著作権が切れたオペラ『カルメン』を換骨奪胎。男と女の駆け引きを描いた今作は、原点回
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青春残酷物語(1960年製作の映画)

3.8

痛々しい無軌道な愛。

ジャン=リュック・ゴダールに「真のヌーヴェルヴァーグだ。 私やトリュフォーよりも前にオオシマは、既存の映画とは全く違う映画を撮っていた」と言わしめた衝撃作で、松竹ヌーヴェル・ヴ
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ザ・ファブル 殺さない殺し屋(2021年製作の映画)

4.0

少女に負わせたダメージと、少女に持たせたイメージ。

アクションは前作よりパワーアップし、ストーリーは前作より感動的だった。続編となる今作の敵は、表向きは善良なNPO団体の代表だが、裏では資産家の子息
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ザ・ファブル(2019年製作の映画)

3.6

殺し屋休業につき、殺さずの救出ミッション。

原作未読なのでキャラに対するイメージがなく、フラットな気持ちで楽しめた。ボスの命令で一年間、一般人として普通に暮らすことになった伝説の殺し屋を描いた今作、
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17歳の瞳に映る世界(2020年製作の映画)

3.7

孤独と決意、表情で語る17歳。

邦題からはキラキラとした青春の輝きをイメージしたが、木で鼻を括ったような少女の瞳は憂いを帯びていた。主役のオータムは時折口角をわずかに上げる程度で全然笑わない。その無
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ある男(2022年製作の映画)

3.9

分からなかった真実より、共に過ごした事実。

男の後ろ姿が正面で左右反転せずに、そのまま鏡に映り込むマグリットの絵が映され、タイトルバック。意味ありげな冒頭から興味が湧く。そして車窓に映る自分の「顔」
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フィールド・オブ・ドリームス(1989年製作の映画)

3.6

トウモロコシ畑でつながって。

あの日あの場所に、置き忘れた夢がひとつふたつ。家族や仕事や友や恋…悩みの絶えない人生が積もり、夢に蓋をする。それは縦積みにされた雑誌のようで、一番下の夢が引っ張り出せず
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ワイズマンとのピクニック(1968年製作の映画)

3.8

穏やかな陽だまりの中で。

緑の木立でレコードが回り、スーツがフルーツを食べて、椅子がサッカー。チェス盤がゲームをし、塵取りがせっせせっせと穴を掘る。草の上で繰り広げる家具たちのピクニック、無人のピク
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J.S.バッハ G線上の幻想(1965年製作の映画)

3.6

最低音の弦が奏でる音とイメージ映像の共振。

脚本を使わずに即興的に撮影したというシュヴァンクマイエルのモノクロの短編。全体を暗闇が占め、壁や窓、扉や鉄枠が音の響きと重なる。正面から捉えた平面の映像に
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フード(1993年製作の映画)

4.0

食事をテーマに3部構成で描いた短編。

食べてりゃとにかく生きられる。生きてりゃなんとかなる。辛い事があるとそんな事を考える自分だが、そのポジティブ思考を破壊するシュヴァンクマイエル。幼少期に食べ物へ
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ファンタスティック・プラネット(1973年製作の映画)

3.8

青い巨人が支配する惑星で。

ぶっ飛んだ発想力と想像力に感心。奇怪で不気味な生物や植物、独創的な建造物、強烈なドラーグ人のビジュアルなど、この世界観を70年代に描いた事に驚き。宮崎駿が今作を観て「日本
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