くまちゃんさんの映画レビュー・感想・評価 - 4ページ目

最後まで行く(2014年製作の映画)

3.9

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人生はクローズアップで見れば悲劇だがロングショットで見れば喜劇である。
今作にはそんなチャップリンの言葉が良く似合う。

殺人課の刑事ゴンスは汚職の証拠を隠蔽するため母の葬儀を抜け出し職場へ向かってい
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ジャスト 6.5 闘いの証(2019年製作の映画)

3.8

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現在アフガニスタンは世界最大の阿片とヘロインの生産国である。その割合は世界の生産量の8割を超える。戦争や貧困といった地獄から目を逸らせるために薬物に手を出す者が後を絶たない。
イランはアフガニスタンに
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仕掛人・藤枝梅安(2023年製作の映画)

4.0

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主人公藤枝梅安は人命を救う「鍼師」と人命を奪う「仕掛人」2つの顔を持つ。
今作は「鬼平犯科帳」「剣客商売」と並ぶ池波正太郎の人気シリーズであり、人間の持つ善と悪、陰と陽を残酷なほど丁寧に描いている。
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イチケイのカラス(2023年製作の映画)

3.3

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リーガルドラマの劇場版となれば扱う題材はおのずと限定的になる。
社会問題や環境問題、政治家の汚職や隠蔽、国家的な陰謀。

今作は一つひとつの事件が大きな事案に帰結し、複合的要因による事故であったと結論
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ハケンアニメ!(2022年製作の映画)

3.7

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敵もなければ奇跡も起きない。
情熱大陸の如くアニメ作家の仕事模様が永遠に映し出されるのみである。
それなのに不思議と見れてしまうのは彼らが紛れもない職人だからだろう。
確かな技術をもったスペシャリスト
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ルパン三世 VS キャッツ・アイ(2023年製作の映画)

4.2

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ルパン三世は国籍、年齢、性別さえも不明。その性質は無色透明。目には見えるが実態の掴めぬ水のような存在。
その特異性を反映するかのように描く作家によって何色にも染まる。そこに違和感はない。観客はこれがル
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そばかす(2022年製作の映画)

4.2

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甘ったるい恋愛物やキャラクター同士の不要なロマンスで食傷気味な観客にとって今作は薄味でありながら、栄養価の高い秀作である。

佳純は恋愛感情や性的欲求を他人に対してもったことがない。
本人が現状に満足
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すずめの戸締まり(2022年製作の映画)

3.4

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新海誠はここ10年如何に震災と向き合ってきたのか。
「君の名は」も「天気の子」もディザスタームービーであり、その「ディザスター」こそ震災をモチーフにしている。

通底しているのは災害による被災規模と自
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ほの蒼き瞳(2022年製作の映画)

3.8

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ルイス・ベイヤードの「陸軍士官学校の死」を原作としたミステリー。
監督スコット・クーパーと主演クリスチャン・ベールは今作が3度目のタッグとなる。

1830年。ニューヨーク州にある陸軍士官学校内で士官
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恐怖の報酬(1953年製作の映画)

4.2

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サスペンスの古典でありアンリ・ジョルジュ・クルーゾーの真骨頂。

犯罪や謎解きではなく、危険物を目的地に運ぶという至ってシンプルな題材でありながらこれほどサスペンスフルに飽きさせずストーリーを運べるの
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THE FIRST SLAM DUNK(2022年製作の映画)

3.8

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今作品に原作へのリスペクトなどという概念は存在しない。
なぜなら監督、脚本を手掛けたのが青春コンテンツの金字塔「SLAM DUNK」を最も理解し、熟知している男、原作者、井上雄彦その人だからだ。

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ファミリア(2023年製作の映画)

3.4

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神も仏もいない、理不尽なリアル。
夢を持て、救済を求めるな。
幸福とは、伸ばした手の先で泡沫と散る幻影の事である。

ブラジル移民という日本が持つデリケートな問題を描くに当たり、演技未経験の当事者達を
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ブラックアダム(2022年製作の映画)

3.2

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今作はヒーロー映画ではない。
純然たるドウェイン・ジョンソン映画である。
「エターナルズ」のマ・ドンソク同様、役者の持つパブリックイメージとポテンシャルをヒーローというファンタジックなマッチョイズムに
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ブラックナイトパレード(2022年製作の映画)

3.0

日本を代表するコメディ映画の迷手、福田雄一監督が今作を手掛けるというのはファンの間で不安が広がったのではないか。

佐藤二朗、ムロツヨシといった個性派俳優の起用、グダグダしたアドリブの応酬、良くも悪く
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宮松と山下(2022年製作の映画)

3.5

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エキストラ俳優宮松。主役にはなれない男を巡る静謐なドラマ。

主演香川照之は「半沢直樹」以降、過剰な演技を求められることが多い。
散々見せられた威圧的怪演の数々に観客はもはや食傷気味であり、そこまで求
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監獄アマゾネス/美女の絶叫(1986年製作の映画)

3.5

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女性の監獄物はあまり多くない。
過酷な牢獄環境を描くには凄惨な性描写がオーソドックスであるため、B級ポルノ映画になりやすいからだろう。

今作は性的な場面が少ない。
同じB級でもモンスターパニックに近
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犯罪河岸(1947年製作の映画)

4.0

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アンリ・ジョルジュ・クルーゾーが戦後初監督をつとめたサスペンスドラマ。
クルーゾーの長編第一作「犯人は21番に住む」と同様原作はスタニスラス=アンドレ・ステーマン。

承認欲求の強い若い流行歌手ジェニ
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ストレイヤーズ・クロニクル(2015年製作の映画)

2.9

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同一の目的に対し異なったラインで行われた生体実験。
無数のフランケンシュタインによるエゴイズム。その副産物たる怪物たちは何を想い、何を成し遂げるのか。

複雑かつ、深淵なテーマながら物語は浅くエフェク
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Dr.コトー診療所(2022年製作の映画)

3.8

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山田貴敏の原作漫画を実写化し2003年より放送されたTVドラマ。
吉岡秀隆が「北の国から」のイメージを脱却し、吉岡にとって新たな代表作であり代名詞となった作品である。
自身の作品がここまで育つとは山田
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密告(1943年製作の映画)

3.6

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とある田舎町。
「カラス」と名乗る人物からの密告文書が町内を騒がせる。標的となったのは医師ジェルマン。
密告によれば彼は精神科医長ヴォルゼの妻ローラと不倫関係にあるという。さらには堕胎手術を請け負って
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ガス燈(1940年製作の映画)

3.8

パトリック・ハミルトンによる戯曲を原作とした英国映画。

裕福な女性が殺害される冒頭。
これからの90分。如何様なミステリーが展開されるのか。観客は探偵が犯人を追い詰めるエクスタシーを無意識に渇望し、
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チルドレン・オブ・ザ・コーン(1984年製作の映画)

3.3

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子供とトウモロコシの町ガトリン。
大人は全員殺された。神意によって。

神、その使徒アイザックに傾倒する子供たち。
己の信仰心に従い暴徒と化し、殺人や略奪、紛争や戦争へと発展する例は歴史が証明している
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RUN/ラン(2020年製作の映画)

4.0

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「search/サーチ」で世界を驚愕させた奇才チャガンティ監督が次の題材に選んだのが母の狂気的な愛。
病気持ちで足が不自由な娘を献身的に支える母。この手のスリラーやサスペンスはありふれている。しかし「
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search/サーチ(2018年製作の映画)

3.9

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失踪した我が子の捜索で暴走する親。
この題材における間口を広げた革新的な作品と言えるだろう。
物語は最初から最後まで特筆するような驚きはない。しかし全編モニター内で展開されるという独創性と演出、ハイレ
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ある男(2022年製作の映画)

4.1

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冒頭映し出されるとある男性の後ろ姿を描いた一枚の絵。
これはルネ・マグリットがパトロンであるエドワード・ジェームズのために制作したものであり、鏡面に写る自身が後ろ姿という構図であることからエドワードの
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エクスペンダブルズ3 ワールドミッション(2014年製作の映画)

4.4

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アクション映画?否、これはオールスターキャストによるお祭り映画である。
激渋おじさんが飲酒しながらどんちゃか踊っているかのような、こんなに楽しいのになぜか泣けてくる。これが消耗品軍団の力なのか…

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言の葉の庭(2013年製作の映画)

4.0

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「君の名は。」というモンスターコンテンツ誕生前の新海誠による映像的価値が非常に高い秀作。

「君の名は。」は時空を超えた運命的な恋や、迫りくる災害、人格転換のファンタジーなど娯楽性が高い。
対して今作
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エクスペンダブルズ2(2012年製作の映画)

4.5

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今作はただのアクション映画ではない。
純然たるアイドル映画であり、往年のスターたちによる同窓会映画である。

起爆装置が作動した金庫の解錠、観客はなんとかなることを予想しつつも多少緊張するだろう。
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エクスペンダブルズ(2010年製作の映画)

4.0

アクション映画はジャンキーな一つのジャンルとして時にはB級のような扱いを受ける時がある。
公開当時の熱量は時の流れとともに風化し、やがてイジリの対象になる。
映画としてはメッセージ性やアート性、奇抜で
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カメの甲羅はあばら骨(2022年製作の映画)

4.0

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「ポピーザぱフォーマー」「Peeping Life」「ネットミラクルショッピング」深夜におけるCGアニメーションのようなノリと発想、映像化を思いついても映画というコンテンツは真っ先に除外する。なぜなら>>続きを読む

バーフバリ 伝説誕生(2015年製作の映画)

3.9

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「マガディーラ勇者転生」と比較してもその規模、クオリティが著しく進化していることが観てとれる。
1500ftはある滝やマヒシュマティ宮殿など、明らかにCGであることは認知できるはずなのに世界にマッチし
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RRR(2022年製作の映画)

4.1

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「バーフバリ」を超えるエクストリームアクション。
これほど力強く、血肉湧き躍る熱量はまさに映画館で体感すべきだろう。

進化し続けるインド神話の継承者S・S・ラージャマウリ監督が挑むのは1920年代、
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伝説巨神イデオン 接触篇(1982年製作の映画)

3.5

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39話を1.5時間にまとめるのは中々難しい。
そのため各々の精神的成長過程が見えづらく、場面が変わると少し大人になっていたりする。しかし、その繋ぎの部分で劇的場面や要素を的確に押さえており、編集の妙と
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百花(2022年製作の映画)

3.3

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川村元気は自身の体験と当事者たちからの綿密な取材を通して小説「百花」を書き上げた。彼の作品は以前にも映像化されている。「世界から猫が消えたなら」「億男」どちらも主演は佐藤健をむかえメガホンはそれぞれ永>>続きを読む

マガディーラ 勇者転生(2009年製作の映画)

3.2

多くのインド哲学では「再生」「生命、物質、存在の周期性」とする基本理念がある。
「輪廻」とはサンスクリット語のサンサーラに由来し周期的な変化を意味し、それはアートマン(真我)の旅と定義される。
ヒンド
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聖なる鹿殺し キリング・オブ・ア・セイクリッド・ディア(2017年製作の映画)

4.0

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切開され、剥き出しで鼓動する心臓のアップから始まる今作。ヨルゴス・ランティモス監督はなんとも観客の不安と不穏と不快感を煽るのがうまい。

外科医スティーブンは眼科医の妻と二人の子供と暮らしているが、多
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