都部さんの映画レビュー・感想・評価

都部

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海がきこえる(1993年製作の映画)

4.0

ジブリ映画史上最高のヒロインが登場する とても大事で大好きな映画。従来のジブリにある壮大な世界観や使命感を帯びた目的には欠くが、瑞々しい学生達の遣り取りと情緒的で郷愁を煽る進行は無二で、二人きりの東京>>続きを読む

トランスフォーマー/ビースト覚醒(2023年製作の映画)

3.0

普通に面白い。ベイ監督時のような偏執的な雑味や大迫力は欠けるが、堅実な筋書きを堅実に痛快に盛り上げる。悪く言えば残る物は少ない映画だが新三部作の幕開けとしては申し分なく、尺も含めて手軽に見れる大作。C>>続きを読む

オッペンハイマー(2023年製作の映画)

4.6

原爆の父の産みの苦しみを噛み締める至極の180分。ノーランが作家性として趣とする時間軸の巧妙な交差と共感性の高揚その集大成的な結実への興奮、そして科学者ひいては人類の罪過:原爆と対峙する重厚な史実劇と>>続きを読む

ヴィーガンズ・ハム(2021年製作の映画)

3.4

菜食主義者の肉が美味い!! 社会風刺を孕んだカジュアルなカニバリズム映画として充分な痛快さがあり、記号化された配置に露悪を感じるものの、リズミカルな編集と根源的食物連鎖を軸とした堂々たる語り口は風通し>>続きを読む

ライフ(2017年製作の映画)

3.6

SFスリラージャンルに含まれる概ねの魅力を無駄なく圧縮していて、未知の生命相手に宇宙基地で孤軍奮闘する緊張と閉塞感の充足、”この映画は『エイリアン』など著名な作品の再生産である”と妥当性のある指摘を加>>続きを読む

ジョン・ウィック(2014年製作の映画)

3.8

再鑑賞。本作は愛ゆえの復讐なる単純な筋書きに対して、活劇の幕間で展開される殺し屋たちが属する独自の世界観が作品を支える重要な”遊び”として機能しており、洒脱な構成である一方で無駄を楽しむ余地もあり、奥>>続きを読む

男はつらいよ 柴又慕情(1972年製作の映画)

3.4

歴代マドンナの中でも上位の人気を誇る歌子を演じる吉永小百合の演技力と上品たる雰囲気による作品完成度の下駄履きは感じられるが、歌子が寅にとある報告を告げる終盤の場面は寅映画らしい哀愁と美麗が混じ入る象徴>>続きを読む

男はつらいよ 寅次郎恋歌(1971年製作の映画)

3.3

70年代ウーマンリブによる女性の社会的地位の獲得が拡大する一方で、前時代的な貞淑な妻として生涯を終えた女の哀しみが、死去した母を思う博の口から怒り混じりの涙と共に語られる場面が作品としてはハイライトか>>続きを読む

男はつらいよ 純情篇(1971年製作の映画)

3.2

全体的にはテーマも含めて小粒の回。本作の見所はサブプロットとして据えられた博の独立騒動にあるという点で、アバンの新妻との宿屋での遣り取りは格好が付いているが寅の大きな存在感を明示する場面は、本題部分に>>続きを読む

男はつらいよ 奮闘篇(1971年製作の映画)

3.4

知人の絶賛を受けて大きな期待を宿して鑑賞してみましたが、実際これまでの作品群の中でもかなり印象的な一作で、それになにより先天的な障がい者と共にどう生きてどう向き合うべきかという命題をしっかりと突き詰め>>続きを読む

男はつらいよ 望郷篇(1970年製作の映画)

3.7

車寅次郎の人柄と人生の最大公約数的な秀逸な構成を見せる一作目の完成度に勝る現時点での最高傑作である本作。

寅が送る自由な人生により喪われる多くの物を改めて容赦なく描くことで、寅がその心中に抱えている
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新・男はつらいよ(1970年製作の映画)

3.0

1.2.3と続きに続いて指向性こそ異なる佳作の粒揃いだっただけに、どうにも不出来が目立つ四作目という印象は拭えないだろう。
親孝行なる体裁の自己満足の為に馬で儲けた寅がハワイ旅行を画策するも……という
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男はつらいよ フーテンの寅(1970年製作の映画)

3.4

監督が山田洋次氏から森崎東氏に一時的に変更された影響なのか、主たる舞台は伊勢の温泉旅館となっており、とらやの一同の登場シーン──特に妹であるさくらの出番──は前作前々作と較べると著しく少ない。しかし印>>続きを読む

続・男はつらいよ(1969年製作の映画)

3.5

前作と比べると一本の映像作品としての完成度はやや落ちた印象だが、分かりやすい笑い処──中盤に寅次郎が叔父夫婦の家に帰ってくるのだが、”母”の話題を出さないようにするもつくづく失敗する面々と益々落ち込む>>続きを読む

男はつらいよ(1969年製作の映画)

3.8

『男はつらいよ』という表題はともすれば差別的であるなんて風潮正しき現代において、自分が本作に初めて触れた時にどんな所感を抱くかと戦々恐々だったが結論を述べると普通に面白かった。

活弁士さながらの啖呵
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バービー(2023年製作の映画)

3.6

先日ワーナーブラザーズ史上最大のヒット作となった本作は、自分の身体に生じた ”とある問題”を解決する為に対極のようで同様の問題を孕んでいるバービーランドと現実世界を行き来する羽目になった箱入り娘のバー>>続きを読む

岸辺露伴 ルーヴルへ行く(2023年製作の映画)

3.0

邦画にも優れた実写映画が数あることを鑑みた上で、総合的にそれらを見た時の映画としての完成度の平均は『中の下』であるというのが個人的には妥当だと考えていますが、本作はその『中の下』という評価がピタリと嵌>>続きを読む

リトル・マーメイド(2023年製作の映画)

3.5

主演を務めるハリー・ベイリーによる人並み外れた歌唱力が最大の魅力とも言える本作は、原作を現代劇として仕立てるにあたり小粋な改変も加えながら、原作/アニメとは異なる実写ならではのアプローチで異種婚姻譚を>>続きを読む

DC がんばれ!スーパーペット(2022年製作の映画)

3.2

この物語が観客に訴えるのは『気取らずに友達を作ろう』という単純明快なメッセージであり、これは概ね世の中に存在する大抵のヒーローチームが一致団結するまでに抱える共通の課題であるという点で、本作は子供の尺>>続きを読む

スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース(2023年製作の映画)

3.4

メタフィクション大好きなフリークとしてはすっかり慣れ親しんだメタ要素を孕んだ構造批判劇がスパイダーマンの枠組みで見れるという事で、ウキウキで鑑賞に望んだわけだが結果から述べると期待値を若干下回る完成度>>続きを読む

スパイダーマン:スパイダーバース(2018年製作の映画)

4.5

2011年 バラク・オバマのアフリカ系アメリカ人初となる大統領就任を受けて原作 ブライアン・マイケル・ベンディスと作画家サラ・ピチェッリにより創成された黒人のスパイダーマン──マイルズ・モレラスのヒー>>続きを読む

ワイルド・スピード/ファイヤーブースト(2023年製作の映画)

2.1

本作が如何に愚作であるのかを理路整然と語るとなると当然の如く千の言葉を尽くす羽目になるのだが、大前提としてあるのはこの作品を"シリアス"と認識しているヴィン・ディーゼル以外の目から見れば、Fast&F>>続きを読む

屋根裏のアーネスト(2023年製作の映画)

3.1

近年のタイムループ映画の大傑作『ハッピー・デス・デイ』のクリストファー・ランドンによる新作は、およそ望ましくない落ち着きを得ており脚本演出共に目覚ましさに欠け、本作に新たな秀作足り得た完成度であると太>>続きを読む

ザ・フラッシュ(2023年製作の映画)

3.7

同じ世界観を舞台としたシリーズ作品ながら作品内外共に連帯感を損ない続けたDCEUの暫定的な最終作に位置する本作は、タイタニックも沈む直前に真っ二つになった姿こそが華であったように、コミックを原作とした>>続きを読む

怪物(2023年製作の映画)

4.3

子供は無知ゆえに、大人は既知ゆえに、陥りがちである偏見や思い込みなどの視野狭窄が引き起こしてしまった事件の全容を描く本作。

数多の社会問題を複合的にしかし整然と扱いながらも、"それ"に対する認識が異
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ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:VOLUME 3(2023年製作の映画)

4.7

社会的弱者/逸脱者/あるいは落第者に寄り添い続ける作家性を保有するジェームズ・ガン監督による集大成然とした本作は、彼の作品を構成する要素が過去作以上に高水準で発揮されている。また別スタジオでの映画/ド>>続きを読む

映画 中二病でも恋がしたい Take On Me(2017年製作の映画)

2.7

蛇足の謗りを受けても仕方のないFDめいた物語は、1期で示される問題定期とその結論の再再定義が中心となっており、表面的な視覚的変化しか意味を持たない日本各地を点々とする展開も長く怠く作劇上の必要性を大き>>続きを読む

名探偵コナン 黒鉄の魚影(サブマリン)(2023年製作の映画)

3.7

ミラクルキュートな科学者(サイエンティスト)である灰原哀を物語の主軸に据えた映画は今回が初となる。事実上の準主役の役目を彼女が堂々たる振る舞いにより果たす物語の様相は、黒の組織との接触が持つ危機感/緊>>続きを読む

ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー(2023年製作の映画)

3.0

世界で最も面が割れているマジックマッシュルーム常用者がゲームを飛び出して映画館にやってくる。誰もが知る作品世界の基礎設定を媒体に合わせて翻案することで、改めて呑み込みやすい作りとなっており、誰が見ても>>続きを読む

スーパーマン(1978年製作の映画)

3.5

アメリカのポップカルチャーの象徴とも言える"スーパーマン"。その初の映画化はアメコミ映画の段取り構築した作品であるが、基本的に現実志向を趣とする昨今のアメコミ映画と比較すると、楽観的な作風が今ではとて>>続きを読む

リンク(1986年製作の映画)

3.6

動物を恐怖の対象として描く作品と言われて、ヒッチコックの『鳥』よりも直近のジョーダン・ピールの『NOPE』やジョジョの奇妙な冒険第三部の『フォーエバー』を想起する身としては、アニマルサスペンスは馴染み>>続きを読む

Melanie Martinez: K-12(2019年製作の映画)

3.1

脈略に欠ける展開の連続や現実離れした世界観を前にすると作品の捉え方に困惑するものの、本質的にはボディシェイム──身体的特徴に対する揶揄や中傷──に対する反抗の精神を趣とした、現在進行形で揶揄を受ける人>>続きを読む

トロピック・サンダー/史上最低の作戦(2008年製作の映画)

3.2

冒頭からラズベリー級と感じさせる映画のフェイク予告が連続する作品のメタめいた構造の開示は愉快で、くだらなさを至上とする筋書きを派手派手しく舗装することを宣言するかのような紛争シーンの撮影場面は期待を大>>続きを読む

僕は友達が少ない(2014年製作の映画)

1.2

す、凄まじい……と思わず戦慄する粗だらけの実写映画である本作は、2010年代前後の『売れてるオタクコンテンツの名前だけ借りて映画らしき物を仕立て上げる』風潮の象徴のような完成度で、判断の真意を測りかね>>続きを読む

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