義民伝兵衛と蝉時雨さんの映画レビュー・感想・評価 - 5ページ目

スーツ(2003年製作の映画)

3.4

GUCCIのスーツを着飾り背伸びをする青年達の姿。
理想と現実。
親達との多感な時期の複雑なやり取りや、
艶やかな女性達への憧憬や淡い恋心、
そして若き日の友情。
ノスタルジックな青い春の匂い。
時よ
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ルナ・パパ 4Kレストア版(1999年製作の映画)

4.4

エミール・クストリッツァ監督の「アンダーグラウンド」に通ずるようなハイテンションでドタバタなコミカル感。神話的な寓話であり、月夜のレイプシーンはギリシア神話のダナエやイオがゼウスに犯され交わる場面まで>>続きを読む

コシュ・バ・コシュ 恋はロープウェイに乗って 4Kレストア版(1993年製作の映画)

4.3

戦時下で見つめる人間の普遍的な営み。鳴り止まぬ人間同士の争い(これも人間の普遍的な性質)に囲まれた内戦下のタジキスタンの首都ドゥシャンベ、その中の解放区の如き(恐妻からも一時逃れることの出来る)宙に浮>>続きを読む

少年、機関車に乗る 2Kレストア版(1991年製作の映画)

4.3

兄と弟、機関車珍道記、父をたずねて三千里。圧巻のセピア美やモノクロ美、そしてその先にある人々の営みや圧倒的な自然美。98分間の大地への回帰。撮影の素晴らしさが終始溢れ出ている。ノスタルジックな大地の残>>続きを読む

苦い涙(2022年製作の映画)

4.0

ファスビンダー監督自身の実体験が隠喩的に投影されている「ペトラ・フォン・カントの苦い涙」、その隠喩的ベールを一枚取り払ってファスビンダー監督自身の人生をより浮き彫りにさせて描かれているリメイク版。ファ>>続きを読む

怪物(2023年製作の映画)

3.4

このレビューはネタバレを含みます

“怪物”
母親にとっての”怪物”=担任又は校長。
担任にとっての”怪物”=母子又は中村獅童演じる父親。
“他者への先入観”これが自分の表象の中に”怪物”を創り上げる。
“一面的な物の見方”の中に”怪物
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神々のたそがれ(2013年製作の映画)

4.9

混沌と歪に蠢き犇めき合う地獄の如きディストピア・アルカナル、否、ソビエト社会、否、人間世界。

滑稽で愚かしくて暴力的で救いがなくて、何処までも美しい我々の剥き出しの性

ギリシアも
ローマも 
中国
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ロバート・アルトマンのイメージズ(1972年製作の映画)

4.5

統合失調症の既婚女の混乱した表象を極めて内面的に主観的に描き出すことに成功している大傑作映画。現実に耐え切れなくなった知性の狂乱が、悍ましくも美しい戦慄の抽象画の如き映像表現によって次から次へと生々し>>続きを読む

雨にぬれた舗道(1969年製作の映画)

4.4

孤独に蝕まれたアラフォー独身女の戦慄の強迫観念。
それが圧巻の心理的映像表現で次々と抉り出されていく衝撃...。
耽美的で官能的な狂気の映像体験にひたすら息を呑み続けた。
そしてトドメの一撃の如く投下
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私、オルガ・ヘプナロヴァー(2016年製作の映画)

3.7

「俗がなじる、”変人”、”社会不適合者”と...。」マジョリティに痛めつけられたマイノリティの怨恨。憤怒、嘲笑、悲哀、絶望、マグマのように噴火するルサンチマン。「エレファント」や「ニトラム」の姉妹であ>>続きを読む

書を捨てよ町へ出よう(1971年製作の映画)

4.8

虚無を眼前に直視すると、地獄すら耽美で愛おしく思えてくる。諸行無常。刹那。この世の万物に対する虚無感、そこから狂い咲く激情。しかし本作の中には紛れもない“愛”というものが色濃く屈強に刻み込まれている。>>続きを読む

田園に死す(1974年製作の映画)

4.5

十代の頃に大好きだった作品。サントラを購入して聴き込んだことも懐かしい。『寺山修司映画祭2023』にて、十数年ぶり、劇場にては初鑑賞。寺山修司のルーツ。現実と虚構。観念的で、夢幻的で、ノスタルジック。>>続きを読む

カラビニエ(1963年製作の映画)

3.6

国家の謀略と国民の無知。
国家の洗脳と国民の妄信。
国家の搾取と国民の怠惰。
あれよあれよと言う間に突入している戦時中。
『気づいた時には巻き込まれていた』が国民に取っての戦争の常。
権力とマリオネッ
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ウイークエンド(1967年製作の映画)

4.6

平日と週末という概念。資本主義社会が織りなす悲喜劇。本作のスポットライトが照らすのはその週末の有様。文明の発展がこじ開けた人類の悲喜劇。
我が国の週末の騒々しさも似たような有様であり、正月やゴールデン
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ノー・ホーム・ムーヴィー(2015年製作の映画)

3.5

過去、現在、未来。ユダヤ系一族の血脈。掛け替えのない母娘の歴史。
老いていく母に、病んでいく娘、退廃していく肉体と心。
「ジャンヌ・ディエルマン」同様に、後半に連れてアケルマン監督が抱える孤独感や倦怠
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アメリカン・ストーリーズ/食事・家族・哲学(1988年製作の映画)

3.7

NY、希望と哀愁の交差点、ユダヤ系移民達の心が交わる摩訶不思議な夜。
異郷と故郷、現実と夢幻、悲劇と喜劇、未来と過去。
アケルマン監督らしい長回しや長台詞が魅力的な、自身のルーツや同胞達への愛が感じら
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TAR/ター(2022年製作の映画)

3.7

アジアの奥地で『モンハン』のゲーム音楽を奏でるラストは卑俗へと成り下がった巨匠の悲劇か?又は更なる巨大権力への再君臨を企む怪物の喜劇か?「地獄の黙示録」で言うところのカーツ大佐の王国、「ベニスに死す」>>続きを読む

はなればなれに(1964年製作の映画)

4.3

独特なカメラワークに、独特な編集、ムーディーな音楽や、パリの魅力が詰まったロケ撮影など、相変わらず鮮烈で素晴らしいゴダール監督流B級ハリウッド映画風ヌーヴェルヴァーグ。 1分間の無言、ダンスシーンでの>>続きを読む

無気力症シンドローム(1989年製作の映画)

4.5

激動のソ連、一党独裁から民主化へ。ペレストロイカによる混乱の真っ只中に爆誕した大傑作映画。ソ連社会と人間精神の土俵際の模様。内外の矛盾は国家も個人も同様に。土壇場の圧倒的な疲弊感。さらば混沌...、さ>>続きを読む

《ジャンヌ・ディエルマン》をめぐって(1975年製作の映画)

4.1

女優としてのそしてフェミニストとしてのデルフィーヌ・セイリグの思慮深さや知性の奥深さが克明に記録されている。シャンタル・アケルマン率いる若き女性映画クリエイター達を女優ソクラテスとでも言うかのような思>>続きを読む

パリ、18区、夜。(1994年製作の映画)

3.8

パリ、18区、夜、現代社会の生き辛さや人生の孤独感の交差点。90sらしいスタイリッシュさが乾いた都市社会を生きる人々の様々な心の模様を鮮やかに照らす。

ゴダールの決別(1993年製作の映画)

3.3

スイス・レマン湖畔の絶景を舞台に繰り広げられる現代版『ゼウスとアルクメネの神話』。
神と人間、愛とか被造物とか表象とか、それに箴言集なんかも、どうとかこうとかと、認識に掠っては何処かへ飛んで行ってしま
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ゴダールの探偵(1985年製作の映画)

3.2

既成概念を徹底的に厭う破壊と再生。ゴダール監督らしい異形なフィルムノワールに存分に誑かされた。ボクサーのパンチの如く右、左と打ち込む自身初のドルビーステレオ作品という点も印象的。

ダニエル・シュミットのKAZUO OHNO(1995年製作の映画)

4.2

大野一雄にダニエル・シュミットとレナート・ベルタ。
ゾッとするような恐るべき美の諧調。
鳥肌と涙止まらぬ退廃美の極致。
出逢うべくして出逢った魂と美学達。

独裁者たちのとき(2022年製作の映画)

4.3

ソクーロフ監督がまたもあの時代に思いを馳せる。
コミュニズム、インペリアリズム、ファシズム、ナチズム、第二次世界大戦。
スターリン、チャーチル、ムッソリーニ、ヒトラー、冥府を徘徊する今や”いにしえ”と
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ロイドのスピーディー(1928年製作の映画)

4.3

澤登翠さんの品のある活弁付上映にて。

ロケーション、ダイナミズム、カメラワーク、
コニーアイランド、ベーブルース、馬車、
スピーディーやワン子と共に、1920年代後半のNYを駆け巡り満喫。
現役超人
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荒武者キートン/キートンの激流危機一髪!(1923年製作の映画)

4.3

坂本頼光さんのユーモラスで活気のある、トラブルへの即興対応も神がかっていた、活弁付上映にて鑑賞。

キレキレなブラックユーモアに、
ゴリゴリなハードアクション、
喜劇と活劇のバランスがこの上なく絶妙で
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アンナの出会い(1978年製作の映画)

4.6

イデオロギー、戦争、世界情勢の目まぐるしい変化
現代社会における女性にとっての結婚そして子育てとは
安住の地はたまたユートピアへの憧憬
同性愛者達の厳しい社会的立場
母親の不朽の愛情
資本主義社会が作
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ツィゴイネルワイゼン 4K デジタル完全修復版(1980年製作の映画)

4.5

怪奇
夢幻
幽玄

芸者

自殺
幽霊

ジプシー
レコード
和の美
観念的
曖昧
幻惑
魅惑
斬新
奇抜
唯一無二

「雨月物語」の京マチ子をも彷彿とさせるような大谷直子の薄気味悪くも妖艶な佇
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東から(1993年製作の映画)

3.0

生々しい感情が籠っていた「家からの手紙」のような抒情的な映像詩ではなくて、本作はもっぱら叙事的な内容であるが、どこか形式的であり、唯物的であり、徹頭徹尾作り手の魂というものが感じ取れない。徹底的な厳格>>続きを読む

故郷の便り/家からの手紙(1977年製作の映画)

3.7

NYに渡った若きアケルマン監督の様々な感情が漲る抒情的な映像詩。地下鉄、曇り空、NYの薄暗い風景と、溢れんばかりの愛情が籠った母からの手紙、アケルマン監督自身によるその朗読を通して、様々な感情が伝わっ>>続きを読む

街をぶっ飛ばせ(1968年製作の映画)

3.3

アケルマン監督デビュー作。相変わらずクレイジーな「気狂いピエロ」ならぬ「気狂いアケルマン」。「私、あなた、彼、彼女」、そして「ジャンヌ・ディエルマン」まで突き抜けるハードコアな心情。アケルマン監督らし>>続きを読む

ゴールデン・エイティーズ(1986年製作の映画)

4.0

アケルマン監督が指揮を取るミュージカルロマンチックコメディ。それぞれの愛の適材適所。カラフルな色調、ポップな音楽、女性達が奏でる色鮮やかな世界観が病みつきになる。大女優デルフィーヌ・セイリグが圧巻の演>>続きを読む

愛の記念に(1983年製作の映画)

3.6

渇愛、淫奔、男性依存、失愛、自己欺瞞、性的快楽への逃避行、現実逃避。

愛する恋人への渇愛から派生した報復的な淫行、
そこから始まった思春期少女のアバズレ録。
それは後に、家庭崩壊、機能不全家族、とい
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富士山への道すがら、わたしが見たものは…(1996年製作の映画)

3.6

昭和、平成、瞬く間に過ぎ去って行く日本の思い出。メカスの映像詩を通して改めて実感するこの国の美しさ。16mmフィルム、温かみ溢れる木漏れ日が銀幕に反射して心まで浸透する。

一晩中(1982年製作の映画)

4.5

「一晩中」というタイトルの通り、宵の口から朝方までの一晩の、夜の人間界の普遍的な人間模様が垣間見えてくる。「ジャンヌ・ディエルマン」同様に時間が経過していく感覚が凄くリアルで卓越していて、この時間経過>>続きを読む