義民伝兵衛と蝉時雨さんの映画レビュー・感想・評価 - 7ページ目

サニーサイド(1919年製作の映画)

3.5

鮮烈さに欠ける内容でも、もはや存在自体が愛おしい。

キッド(1921年製作の映画)

4.6

喜劇王による心暖まる傑作トラジコメディ。
喜劇王の圧倒的な包容力。
少年時代に感じた懐かしい温もりが本作の中にありありと。
美しい郷愁。
笑いと涙。
彼の姿を見るだけでいつだって生きる元気が湧いてくる
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独裁者(1940年製作の映画)

4.9

十数年ぶりに鑑賞。喜劇王チャップリンが全身全霊で表現した反戦トラジコメディ。チャップリンによる皮肉たっぷりなヒトラー物真似が強烈に面白い。終始アクセル全開で痛快爽快。このヒトラー・ナチズム・パロディは>>続きを読む

ベネデッタ(2021年製作の映画)

3.5

このレビューはネタバレを含みます

黒死病に疲弊した17世紀イタリアのキリスト教社会。そこに蔓延した虚無感と、それに拍車をかけるような教会の腐敗。
営利主義、権威主義、信念無き祈り、上っ面だけの愛、妬み、怨み、僻み、偽善。その暗黒の中に
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別れる決心(2022年製作の映画)

3.7

このレビューはネタバレを含みます

グスタフ・マーラー『交響曲第5番(アダージェット)』。

理屈を超越した本当の愛。

未解決事件となることによって、愛する人の永遠の記憶へと昇華する。

「ベニスに死す」ならぬ、霧の街イポの黄昏の浜辺
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キートンの大列車追跡/キートン将軍/キートンの大列車強盗(1926年製作の映画)

4.3

南北戦争中に実際に起きた事件を下敷きに描かれたキートンのトレインアクション。壮大なスケール。キートンは勿論のこと、他の役者達の身体の張り方も凄い。ギャグも相変わらずキレキレ。監督として、そして役者とし>>続きを読む

緋牡丹博徒(1968年製作の映画)

3.2

『続銀幕ロック』で十代の頃から聴き込んだ藤純子の「緋牡丹博徒」。気がついたら自分の中で大好きな曲になっていたが、この主題歌に出会ってから十数年間本編の方は未鑑賞のままだった。4K版にて漸く初鑑賞。主題>>続きを読む

下女(1960年製作の映画)

4.4

不協和音。
悍ましさ。
メンヘラ下女の狂気?
妻の猜疑心が育んだ被害妄想??
はたまた中年男の普遍的な性的願望???
とある一家の幸福からの転落模様。
それはギリシア悲劇を彷彿とさせるようなゾクゾクす
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沈黙(1962年製作の映画)

4.6

肉体と精神の不和。
本能と理性のディスコミュニケーション。
放埒と抑圧。
現代社会の中で人々が背負う自己矛盾。
過度に推し進められた文明化が齎したディスコミュニケーション時代の写し絵なのだろうか?
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ファニーとアレクサンデル(1982年製作の映画)

4.6

理性と本能。
抑圧と放埒。
キリスト教倫理思想と檻の向こう側。

宗教と演劇。
禁欲と愛欲。
俗事と芸術。
病と健康。
現実と逃避。

疚しい良心と率直な欲望。

これぞベルイマン監督というようなテー
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aura aurora/オーラ・オーロラ(1985年製作の映画)

3.5

2018年K's cinemaにて初鑑賞。
貴重すぎる映像。
観れたことに感謝。

2023年1月28日、新文芸坐にて4年半ぶりに2度目の鑑賞。
アレルギー : U子氏のベースが超cool!
サディ・
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ちょっとの雨ならがまん(1983年製作の映画)

4.4

2018年K's cinemaにて初鑑賞。
80年代初頭のジャパニーズハードコアパンクシーンのリアルを捉えたドキュメント。彼らの生き方が垣間見える数々のインタビューに心唸る多数のライブ映像。構成も渋く
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イニシェリン島の精霊(2022年製作の映画)

4.3

このレビューはネタバレを含みます

死ぬまでの暇つぶしとでもいうかの様な、漠然とした平凡なルーティン化した日々や、ぽっかりと心に空いた虚無感の穴を必死に埋めるかの様な、歴史的な大いなる事業成就への情熱に燃える日々、どの道、平等に、人の一>>続きを読む

怪奇な恋の物語(1969年製作の映画)

4.1

物質主義や営利主義に支配された現代社会の中で、窒息寸前になり神経衰弱に陥ったとある芸術家が、静養先の田舎の古屋敷の中で取り憑かれた艶かしくも血生臭い戦慄の幻想。独創性に溢れた前衛的な映像表現には芸術映>>続きを読む

明治侠客伝 三代目襲名(1965年製作の映画)

4.1

加藤泰監督による任侠映画。鈴木則文が脚本で参加している。和のムードが輝く、素晴らしい美的感覚迸るカメラワークやカメラアングルに、オープニングからグッと引き込まれる。日本画さながらなこの映像美が徹頭徹尾>>続きを読む

キートンのセブン・チャンス/キートンの栃麺棒(1925年製作の映画)

4.2

遺産相続の為に、翌日の夜七時までに結婚相手を探さなければならないというストーリーのドタバタ喜劇。キートンの洒落たユーモアとアクロバティックなスタント。後半のスケールの大きさには特に驚かされる。古き良き>>続きを読む

女はコワイです/恋する男(1962年製作の映画)

4.3

女っ気のない30代男の痛々しい恋人探し。エテックス監督らしいユーモアとノスタルジーが長編デビュー作から満開に咲き誇る。優雅なギャグと耽美なモノクロに恍惚となる。笑いと哀愁が絶妙に入り混じるラストシーン>>続きを読む

破局(1961年製作の映画)

3.5

恋人から届いた失恋を告げる手紙への返信の手紙を思うように書くことのできない男性の模様が描かれたドタバタギャグ。「結局!」と思わせるようなオチがなんとも可愛らしくて可笑しい。パントマイムも印象深い。

健康でさえあれば(1966年製作の映画)

3.8

4話の中編オムニバス。
第1話、現実世界と吸血鬼の恐怖小説内を行き来する顎ガクガク不眠症ギャグ。オチも強烈。
第2話、映画館ドタバタギャグ&コマーシャリズムへのアイロニカルなギャグ。超絶カオスティック
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絶好調(1965年製作の映画)

3.4

ソロキャンプ・ギャグからいつの間にか収容所的現代社会への風刺へ。下らなくも可愛らしいギャグが終始印象的。

モリコーネ 映画が恋した音楽家(2021年製作の映画)

3.9

愛すべき映画音楽の巨匠エンニオ・モリコーネの人生を追った待望のドキュメンタリー。しかも監督がジュゼッペ・トルナトーレという感慨深さ。映画界に残した数々の偉大な功績。レオーネとの絆。ベルトルッチが語るモ>>続きを読む

THE FOOLS 愚か者たちの歌(2022年製作の映画)

4.4

Blues、Rock 'n' Roll、Funk、Soul、Punk、...

Fuck the System.
Fuck the Police.
Fuck the Government.

Weed
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ベニスに死す(1971年製作の映画)

4.5

小説家トーマス・マン× 音楽家グスタフ・マーラー × 映像作家ルキノ・ヴィスコンティ。3者の芸術(愛)が精神的にも物理的にも銀幕の上で相交わる。トーマス・マンが旅行先のヴェネツィアで実際に恋焦がれたポ>>続きを読む

詩人の血(1930年製作の映画)

4.1

詩人ジャン・コクトーの純粋な映像詩。現世の実相と詩人の創造。神話とポエジー。古典と実験。永遠と刹那。生と死。観念的で意味深長なイメージの数々。後の「オルフェ」の核を成す精神が剥き出しの状態で暴れ回って>>続きを読む

オルフェ(1950年製作の映画)

4.7

ジャン・コクトーが独自の解釈や独創的な表現で現代に甦らせた『オルフェウスの冥府下り』。耽美至極な映像詩がこれまた美しく木霊し続けて息を呑む。

詩人による生と死の横断。現世と冥府、刹那と永遠、人間と亡
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美女と野獣(1946年製作の映画)

4.3

ジャン・コクトーが照らし出す『美女と野獣』。劇中の薔薇の如く幻惑的で心奪う耽美至極な演出の数々。いつまでも眺めていたいと強く心を惹かれる財宝の詰まった宝箱の如き恍惚に、終始うっとりと陶酔。

空の大怪獣 ラドン(1956年製作の映画)

3.8

日本が世界に誇る大傑作「ゴジラ」から2年後。本多猪四郎×円谷英二の黄金コンビによる初のカラー東宝怪獣映画は、手造りだからこその温かみと味に溢れるミニチュア・ジオラマで再現された今となってはノスタルジッ>>続きを読む

ブローニュの森の貴婦人たち(1944年製作の映画)

3.7

「田舎司祭の日記」の5年前。ブレッソン監督、職業俳優との最後の仕事は、ディドロの「運命論者ジャックとその主人」の映画化。敵に回したら恐るべき魔性の女の復讐劇。後期のブレッソン作品からは考えられぬほどの>>続きを読む

大恋愛(1969年製作の映画)

4.4

既婚中年男の痛々しい恋の病。「ヨーヨー」程ではなくとも、観念的かつユーモラスな映像表現が本作でも光る。田園風景の中をベッドに乗って走るシーンの夢幻的な美しさと、えも言えぬシュールさは、特に鮮やかに心に>>続きを読む

幸福な結婚記念日(1962年製作の映画)

4.1

「ヨーヨー」で魅せたような畳み掛けるようなコミカルなユーモアに加え、「大恋愛」で魅せたような人生のリアリズムと普遍性。短編らしくアクセルが終始全開。ひたすら笑えて、ほろ苦くも仄かに甘い、ささやかなる幸>>続きを読む

ヨーヨー(1965年製作の映画)

4.6

ユーモラスかつ観念的な、驚きに満ちた独創的な映像表現。扉の開閉音から、キャンピングカーの移動シーンや、ラストのパーティのシークエンスなど、脳中に鮮烈に焼き付いて忘れられない情景が次から次へと。オマージ>>続きを読む

ケイコ 目を澄ませて(2022年製作の映画)

3.6

魂が熱を帯びてテラテラと輝く場所、幸運にもそこを見つけた人間が、そこに直向きに打ち込む姿と苦悩する姿。人生の中の居場所。そしてそれを支える周りの人々の姿。ミットを力強く打ち込む岸井ゆきのの澄んだ目と気>>続きを読む

アバター:ウェイ・オブ・ウォーター(2022年製作の映画)

4.3

物質主義、拝金主義、乱獲、略奪、戦争、人類の底知れぬ我欲が招いた地球の環境破壊。数十億年前、かつて地球が誇った純粋な自然の豊かさと、その後それを貪り壊し汚し続けてきた人類の愚かな歴史。今となっては地球>>続きを読む

悪魔の美しさ(1950年製作の映画)

2.7

ファウスト伝説がかなり自由に翻案されている。ファウスト伝説史上最も粗野なハッピーエンド...。史上最も情け無いメフィストフェレスを目にする事ができる。こんなにもズボラで弱くてだらしない悪魔はそうそうい>>続きを読む

トラック野郎 爆走一番星(1975年製作の映画)

4.3

大好きな「トラック野郎」シリーズ。第2作目。マドンナ役はあべ静江。ライバルは田中邦衛演じるボルサリーノ2。久しぶりに鑑賞。

大まかな内容は前作とそこまで変わらないが、小ネタが前作と違い、今作はう○こ
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百年の夢 デジタル・リマスター版(1972年製作の映画)

3.8

命あるものには避けては通れない老い。一瞬一瞬刻一刻と、今この瞬間にも、生命は老いていき、死へと向かっていく。万物流転。この刹那的な人生の中で、生きる意味、目の前に存在する世界の意味、そんなものを追求し>>続きを読む