義民伝兵衛と蝉時雨さんの映画レビュー・感想・評価 - 8ページ目

野獣死すべし(1969年製作の映画)

3.5

シャブロル・サスペンス。
幼い息子を轢き逃げされた男の復讐劇。敵役の成金プチブル男の驕慢で粗野な人物描写に妙にリアリティがあって面白い。現実にもこのような人間はいる。美しい相手役のカロリーヌ・セリエは
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山猫(1963年製作の映画)

4.7

気高さ、優雅さ、華やかさ、気品、山猫=ライオン・”生粋の貴族”の習わし。そしてそんな彼らの時代や精神の終焉間際の光景。貴族に変わって憚る成金。威信に変わって憚る権力。品位に変わって憚る下卑。山猫(ライ>>続きを読む

秘密の森の、その向こう(2021年製作の映画)

4.1

今正にこの季節、紅と緑が入り混じる秋の森の自然美を背景に描かれる母娘の摩訶不思議な交友。親子、家族、それぞれが抱えている孤独感と、それぞれを隔てている外気を越えて寄り添った時の仄かな温もり。暖かい木漏>>続きを読む

美しきセルジュ(1957年製作の映画)

4.2

シャブロル監督の母方の実家があるクルーズ県サルダンの田舎町。豊かな自然と西洋の古風な家々。この美しいロケーションの素晴らしさだけでも終始感嘆。そしてカメラワーク、編集、若き映像作家の才能が躍動する。「>>続きを読む

レイジング・ブル(1980年製作の映画)

4.2

熱気立ち込めるリング、血と汗が飛び交う拳闘シーン、その凄まじさ、そこに見える叙情的で幻想的な映像美、流石スコセッシ監督という感じ。レイジング・ブルの異名を持つ元世界ミドル級チャンピオン ジェイク・ラモ>>続きを読む

ノベンバー(2017年製作の映画)

3.8

真夜中の神秘とでもいうかのような、丑三つ時に浮かぶ満月のような恍惚感。草木も眠る深い夜の闇の如きダークなトーンが終始心地が良い。そして、その色調の下で神話・寓話・御伽噺・ポエム・アート・コメディ・オマ>>続きを読む

ロード・オブ・ザ・リング/王の帰還(2003年製作の映画)

4.1

スメアゴルがゴラムへと闇落ちしていく様が描かれたオープニングシークエンスの素晴らしさ。その後、前作と似たような戦争シーンを長々と繰り返すが、時折挟まれるフロド一行の物語が心を離さない。その後も延々と続>>続きを読む

(1971年製作の映画)

4.3

思春期の瑞々しく艶やかな”人生の序幕”の情景と、紆余曲折した先で辿り着いた荒廃した”人生の最果て”の情景が、交差する。豊穣の大地と、不毛の大地。両情景共に人生の危うさみたいなものが容赦無く垣間見えてく>>続きを読む

ソングス・フォー・ドレラ 4Kレストア版(1990年製作の映画)

4.1

元ヴェルヴェット・アンダーグラウンド、ルー・リードとジョン・ケイル。一度別れた道も、亡きウォーホルに引き寄せられ再び重なるクロスロード。3人だけの世界。透き通った清らかな空気の中へ迸る熱情。それをカメ>>続きを読む

All the Streets Are Silent:ニューヨーク(1987-1997)ヒップホップとスケートボードの融合(2021年製作の映画)

3.9

90年代のニューヨーク。ヒップホップ、スケートボード、あの頃のストリート・カルチャーの圧倒的な輝きを反芻する。バスタライムス、ウータン・クラン、ハロルド・ハンター、ハーモニー・コリン、etc...。若>>続きを読む

国道20号線 デジタルリマスター版(2007年製作の映画)

4.5

3度目の鑑賞はDR版にて。国道20号線沿いの街並み、族車の轟音、映像と音響が驚くほど鮮明になっていて興奮した。あの頃の甲府や石和のアウトサイダー達の姿に投影させた地方都市の退廃の実情。寂れた国道20号>>続きを読む

無常(1970年製作の映画)

4.8

艶かしい和の情趣が漲る圧巻のモノクロ映像美。洗練された構図に斬新なカメラワーク。その圧倒的な芸術性に息を呑む。これぞ官能。彼岸に対する希望に容赦無い現実を突き詰ける。現実の厳しさを慰める死後世界への希>>続きを読む

家族の肖像(1974年製作の映画)

3.5

このレビューはネタバレを含みます

「午前十時の映画祭12」にて鑑賞。
名優バート・ランカスターに、シルヴァーナ・マンガーノ、ドミニク・サンダ、クラウディア・カルディナーレと、大好きな名優と、心奪われる私的三大美女優の揃い踏みにテンショ
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揺れる大地(1948年製作の映画)

3.9

このレビューはネタバレを含みます

資本主義社会の底辺から抜け出す為に独立した漁師一家のはなし。しかし、悪天候の日に漁に出るという愚行の為に夢と希望は呆気なく崩れてしまう...。
どん底から抜け出せない無知なプロレタリアートと、お山の大
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検察官/勾留(1981年製作の映画)

3.6

このレビューはネタバレを含みます

名優達によるシリアスかつ機知に富んだ密室会話劇の面白味。取り調べシーン、妻の聴取シーン、会話劇的にも映像的にも魅力が溢れている。そして登場人物達が予想外の結果に戸惑い続ける展開が何より面白く、ラストは>>続きを読む

なまいきシャルロット(1985年製作の映画)

4.1

理想とは遠くかけ離れている現実が実際世界から見事に抽出されている人間ドラマ。瑞々しいリアリズムが作品の指先にまで行き渡っている。ミレール監督がヌーベェル・ヴァーグの正統後継者と称されている所以を判然と>>続きを読む

ロード・オブ・ザ・リング/二つの塔(2002年製作の映画)

3.2

ひとつの物語が散らばり広がる。その結果、ひとつひとつの物語の人間ドラマの濃度は薄まる。趣は戦闘シーンに置かれ、人間ドラマの要素には前作ほどの濃厚さは感じられないが、中世ヨーロッパ、はたまたギリシャ神話>>続きを読む

火の馬(1964年製作の映画)

4.7

兎に角まず映像が素晴らしすぎる。アングル、カメラワーク、構図、錯視的視覚効果、音響、音楽、美術等、完全に天才芸術家の放つ独創的な卓抜した美的感覚。同郷の天才映画監督セルゲイ・エイゼンシュテイン監督の大>>続きを読む

ざくろの色(1971年製作の映画)

4.5

新文芸坐にて初鑑賞。
言葉とペンと書物。天才詩人の苦悩と、不滅の魂を持ったその作品達。それらを超観念的映像表現で奏でる。映像に音に美術。堪らず噴き出してしまいそうなシュールさ。凄まじいほどに抒情的で観
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あるじ(1925年製作の映画)

4.3

とある一家のサイコパスな暴君あるじ、それに虐待される家族とペット、そしてそんな主人の性根を叩き直そうとする元乳母の婆さん、リアリズム迸るホームドラマの痛快劇。
アンチ家長制度。アンチ男尊女卑。このテー
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アバター:ジェームズ・キャメロン3Dリマスター(2022年製作の映画)

4.2

初めて観たが噂通りの素晴らしい映像体験で感動した。過ちを繰り返し続ける人類の底知れぬ欲深さや傲慢さへの警鐘、そして自然への感謝と愛情。矛盾しているような気がしたCGでの自然賛美的内容は、開いてみれば映>>続きを読む

ロード・オブ・ザ・リング(2001年製作の映画)

4.5

子供の頃に劇場で観て夢中になったのが懐かしい。凄く久々に鑑賞。子供の頃に味わったような感動は流石に味わえないだろうと高を括っていたが、昔と同じような感動が味わえた。年を食って観ても全く色褪せない名作で>>続きを読む

赤い夜(1974年製作の映画)

3.4

怪人二十面相&キャッツアイ率いる覆面強盗団、人間を兵器化したゾンビ軍団、そしてそこに地下活動する秘密結社のテンプル騎士団。それらによる仮面舞踏会は、馬鹿馬鹿しい程のコミカルさと滑稽さとシュールさで、爆>>続きを読む

顔のない眼(1959年製作の映画)

4.4

不穏さ、不気味さ、悍ましさ、戦慄感。作品を首尾一貫して満たしているイルネスな空気感が兎にも角にも素晴らしすぎる。最早美しさえ感じるようなこの病的な世界観は完全無欠な完成度。恍惚となるような毒々しさは中>>続きを読む

メリー・ゴー・ラウンド(1981年製作の映画)

3.6

デビュー作の「パリはわれらのもの」の系譜にあるかのような陰謀論的なサスペンス要素。カオスティックな内容がリヴェット作品らしくて素晴らしい。レオとベンの観念的なバトルシーンもリヴェット監督らしくて面白い>>続きを読む

北の橋(1981年製作の映画)

4.0

リヴェット監督流なこれまた超独創的で摩訶不思議なファンタジーアドベンチャー。まず真っ先にロケ撮影の素晴らしさに圧倒された。中でもバイクシーンの鮮烈さ。歴史あるパリの街並みがもう目と鼻の先。スクーターで>>続きを読む

かぐや姫(1935年製作の映画)

2.4

円谷英二が撮影した竹取物語。33分の短縮版を鑑賞。所謂総集編みたいなもので、編集のテンポにはリズムも趣もない。後に特撮の父となる円谷英二が本編カメラマン時代に撮影した幻の作品がどのようなものだったかと>>続きを読む

女っ気なし(2011年製作の映画)

3.8

決して端的には言い表せない複雑に入り組んだリアリズムが生々しくカメラによって捉えられている。リアリズムに満ちたギヨーム・ブラック作品の中でも至極のリアリティ。
ヴァンサン・マケーニュという役者の素晴ら
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反逆のパンク・ロック(1983年製作の映画)

3.8

ロジャー・コーマン× ペネロープ・スフィーリス。実際のパンクバンドによるライブシーンが兎に角素晴らしい。ステージは勿論フロアの雰囲気など80sUSハードコアの当時のリアルな空気感が伝わってくる。演者も>>続きを読む

7月の物語(2017年製作の映画)

3.7

二部構成。ギヨーム・ブラック監督らしいリアリズムが総じて素晴らしい。第一部のヴァカンス帰りの疲れと切なさと幸福感が入り混じる真夏の夜の情景から、第二部の当たり前のような何気ない日常のすぐ傍らにも非情な>>続きを読む

勇者たちの休息(2016年製作の映画)

3.5

自転車好きには堪らない内容。ロードバイクにキャンプ道具積んで北海道半周の一人旅やヒルクライムの大会にも参加したことのある自分としては心唸るものがあった。ツールドフランスが有名なフランスはやはり国民にも>>続きを読む

NOPE/ノープ(2022年製作の映画)

2.6

このレビューはネタバレを含みます

隠れる子役は黄色人種、怒れるチンパンジーは黒人?拳を合わせる寸前に撃ち殺される。アメリカの白人至上主義社会の縮図を皮肉ったメタファーなのだろうか? ジョーダン・ピール監督なだけに本作の場合は奥深いとこ>>続きを読む

遭難者(2009年製作の映画)

3.8

他者を求め孤独を拒む男と女と、他者を拒み孤独を求める男の、やり取り。一方は求め拒まれ 一方は求められ拒み、愛し傷つき 愛され傷つけ 結局自分もまた傷つく。正にヤマアラシのジレンマ。しかしそれも人間の美>>続きを読む

バビロン(1980年製作の映画)

4.5

1962年にジャマイカはイギリスの植民地から独立。舞台はそれから約20年後の70年代末のイギリスのサウスロンドン。そこで生活するジャマイカ移民達が築き上げたレゲエシーン、そして彼らを取り巻く過酷な社会>>続きを読む

ワイルド・スタイル(1982年製作の映画)

3.7

グラフィティアートにブレイクダンス、ラップにDJ、当時のニューヨークのユースブラックカルチャー、所謂オールドスクールヒップホップのリアルな空気感を存分に堪能することが出来た。もはやヒップホップカルチャ>>続きを読む

激怒(2022年製作の映画)

2.7

近未来?の日本のディストピア。行き過ぎた道徳観や倫理観による監視社会の悍ましさ。道徳、倫理、常識、世間体、暗黙のルール、それらによって蓋をされた個々人の本質と自由。人間を矮小化させて均一化させるこれら>>続きを読む