三隅炎雄さんの映画レビュー・感想・評価 - 3ページ目

三隅炎雄

三隅炎雄

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兵隊極道(1968年製作の映画)

3.8

若山富三郎とゴロツキ部隊が中国大陸で兵士や従軍慰安婦を使い捨てにしながら麻薬で私腹を肥やす軍人・ヤクザに反逆する。デタラメな喜劇タッチが終盤硬派なシリアスなタッチに。最後突如現れる日蝕は黒い日の丸と今>>続きを読む

極道(1968年製作の映画)

4.0

2作目以降とは作風に溝がある。笑いと暴力との振幅が極端に大きく異様だ。とりわけ激昂した血塗れの若山富三郎がラスボス内田朝雄を罪のない内田の情婦(あるいは若い妻)ともども日本刀で串刺しにして殺す、それも>>続きを読む

関東果し状(1965年製作の映画)

3.9

シリーズ4作目。トラック荷台謎の鶴田機関銃乱射から鶴田組事始め式「漢になりたい 漢で生きたい」の大唱和へ続く豪快極まりないオープニングに、まず度肝を抜かれる。
新紡績工場建設をめぐる東京と神奈川の任侠
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関東やくざ嵐(1966年製作の映画)

4.7

1965-46年に小沢茂弘が鶴田浩二主演で集中的に撮った着流し任侠映画シリーズの5作目にして最終作。脚本に任侠映画初の宮川一郎が加わることで人物に奥行きが生まれ、自分だけでなく周囲のかたぎをも否応なく>>続きを読む

博徒斬り込み隊(1971年製作の映画)

4.7

鶴田浩二主演の異色暴力団もの。出所すると世の中すっかり変わっていてというよくある出だしなのだが、他と違うのは任侠道が虚しくなった主人公が、魂の抜け殻のような顔に自殺念慮を透し見せ、それも一人で死ぬのは>>続きを読む

横紙破りの前科者(1968年製作の映画)

4.9

このレビューはネタバレを含みます

若山富三郎の『前科者』シリーズ第2作目。山下耕作の最初のは自身の『極道』1作目の毒抜き版みたいな生ぬるい映画で芳しくなかった。これは脚本笠原和夫、監督小沢茂弘に変えて仕切り直しをしたもので、驚くほど奇>>続きを読む

日本悪人伝(1971年製作の映画)

5.0

同じ村山新治が撮った傑作『遊侠三代』のラストでは、主人公の梅宮辰夫が魂の救済を求めて教会に向うのだが、この映画のゴロツキ若山富三郎はいきなり額に十字架の刺青をして現れ、誰に誓ったか地獄の鬼とならんと文>>続きを読む

博徒一家(1970年製作の映画)

3.5

博徒シリーズ7作目ということになっているがオールスター仕立ての作り、話の主人公は鶴田浩二でなく高倉健なので、7作目と言っていいのかどうか。仕上がりは同じ小沢のオールスター映画の秀作『博徒列伝』に遠く及>>続きを読む

札つき博徒(1970年製作の映画)

3.9

69-70年の2年間は長い小沢茂弘低迷期だが、70年最後のこれは唯一持ち味が発揮された作品ではないか。
ふるさと戸畑に戻った渡世人鶴田浩二は、祇園祭りを民衆の手から奪い取ろうとする二つの任侠団体の一掃
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着流し百人(1972年製作の映画)

3.7

鶴田浩二が老侠客水島道太郎に請われて金沢まで同行することになり、途中で出会った奇妙なやくざ者たちとチームを結成、目的地金沢で水島のために清水次郎長一家的大暴れをする。
パロディ的な軽い内容の作品で、松
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傷だらけの人生 古い奴でござんす(1972年製作の映画)

4.7

飛田の利権をめぐる任侠映画。関東軍が満州各所に軍の慰安所をつくるため、満州ゴロと憲兵隊を使って密かに飛田新地から娼婦を集めようとする。これにやくざの縄張り争いが絡んで血の雨が降るのだが、対立関係にある>>続きを読む

傷だらけの人生(1971年製作の映画)

4.6

酒の流れで飛田で女を買い朝帰りした鶴田浩二と若山富三郎が、女房に怒られたり子分にからかわれたり、それぞれ家でバツの悪い思いをするところから映画は始まる。このつかみが変わっていて引き込まれる。

任侠映
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三池監獄 兇悪犯(1973年製作の映画)

4.6

三池監獄を舞台にした小沢茂弘任侠映画最初期の『監獄博徒』と対になる映画。あちらはアメリカのギャング映画・西部劇からの影響大だったが、こちらはどぎつい暴力とセックス描写に満ちた、まさに実録暴力映画時代到>>続きを読む

昭和侠客伝(1963年製作の映画)

4.2

石井輝男が脚本監督で東映着流し任侠映画のひとつの雛形を作ってみせた重要作。前に村田英雄主演・佐伯清監督の『浅草の侠客』があり、これを挟んで翌年沢島忠監督・笠原和夫脚本の『人生劇場 新飛車角』へと繋がっ>>続きを読む

北海遊侠伝(1967年製作の映画)

3.5

鰊漁の番屋を乗っ取ろうとするヤクザと漁師たちの闘い。『ジャコ萬と鉄』を東映東撮スタイルの任侠アクションに読み直したような映画で、番屋の親方がアラカン、その息子の鉄を村田英雄と千葉真一の二人に分けて、ジ>>続きを読む

浅草の侠客(1963年製作の映画)

3.5

沢島忠『人生劇場 続飛車角』の2ヶ月後に公開された東映の侠客物。『人生劇場』で主題歌を担当した村田英雄が、大正期の浅草を舞台に、親分子分二人きり、病床の老親分を養うために演歌師として稼ぐ昔気質のやくざ>>続きを読む

男の勝負 白虎の鉄(1968年製作の映画)

4.3

鉄道敷設による乗合馬車会社への補償金にやくざが嘴を容れてくるという話。メインは藤純子と二人の侠客、村田英雄・若山富三郎との愛の物語で、男女の愛が絡みあい最後は男と男が抱き合うようにして死んでいくという>>続きを読む

男の勝負 関東嵐(1967年製作の映画)

4.1

定型美学を丁寧になぞって終わった感じの鈴木則文の2作目『仁王の刺青』に比べると、いかにも飯場にいそうなおじさん村田英雄の立派すぎない、男前鶴田浩二や高倉健にはない魅力が上手に活かされている。出だしはや>>続きを読む

男の勝負(1966年製作の映画)

3.9

監督中島貞夫の前に監修マキノ雅弘と出る。墓地・刑場跡だった千日前を興行街にして栄えさせようと奮闘する侠客たちを描いた着流し任侠映画で、大道芸人やら乞食やらもまじってワッショイワッショイやるのはいかにも>>続きを読む

拳銃野郎(1965年製作の映画)

4.5

井田探が斎藤耕一の脚本を得て撮ったメタ日活映画にしてもう一つの『囁きのジョー』。大変な傑作で、これを見ると井田の前作『星と俺とできめたんだ 』が単なるおふざけデタラメではなく同様の実験的なメタ日活映画>>続きを読む

伊豆の踊子(1960年製作の映画)

4.4

鰐淵晴子・津川雅彦主演版。鰐淵の踊子は顔立ちが派手すぎる感じだし初のカラー版ということで少々衣装頑張りすぎの気もするが、トーキーではこれが『伊豆の踊子』のベストではないか。痛ましくやるせない、銭金と被>>続きを読む

逢いたくて逢いたくて(1966年製作の映画)

3.3

園まりが演じる大学生が、声の出なくなった人気歌手園まりの代役を務めるうちに、取材記者の渡哲也と互いに好意を持つようになる。『ローマの休日』のアレンジとして悪くないアイディアだと思うのだが、主人公の体験>>続きを読む

真紅な海が呼んでるぜ(1965年製作の映画)

3.8

松尾昭典監督の異色日活アクション。主役の渡哲也と二谷英明の船乗り兄弟のパートは日活定形まんまでドラマとしては無に等しく(終わりの麻薬の雑な扱いを考えると限りなくパロディに近い)、復讐のために日本へ帰っ>>続きを読む

黄金の野郎ども(1967年製作の映画)

3.7

暴力組織間の対立の中で捨て駒にされた男たちが反逆する――監督は江崎実生、まさに日活ニューアクション前夜といった内容の裕次郎映画になっている。人工的なセットと生々しい暴力、それに対応するように裕次郎もそ>>続きを読む

銃弾の嵐(1962年製作の映画)

3.6

古川卓己監督、宍戸錠主演のコミカルなアクション映画。小林旭『渡り鳥』シリーズを宍戸錠主役で読み替え、更に宍戸の『稼業』シリーズの味を付け加えた。『渡り鳥』での宍戸の役割を、前年の快作『俺は地獄へ行く』>>続きを読む

望郷の海(1962年製作の映画)

3.4

ボクシングのトレーナー小林旭は、自分の預かり知らぬところで仕組まれた八百長試合のせいで、恋人松尾嘉代とボクサー藤竜也をやくざの深江章喜に惨殺される。悪党深江の生来の臆病さ、その深江を猫可愛がりする兄の>>続きを読む

竜巻小僧(1960年製作の映画)

4.0

和田浩治✕西河克己『小僧』シリーズ3作目(最終作)。旅先のお祭り描写も加わって更に『渡り鳥』っぽくなったが、和田の相方が殺し屋ではなく、カストロ姿の革命妄想狂ジェリー藤尾になり、和田の生き別れの父親探>>続きを読む

疾風小僧(1960年製作の映画)

3.8

和田浩治✕西河克己の『小僧』シリーズ2作目。原爆孤児設定はなくなって、サーカス射的芸人の少年が幼い頃別れた父親の生まれ故郷旭川を訪れる物語になっている。明白に『渡り鳥』シリーズを意識した作りだが、無国>>続きを読む

若い突風(1960年製作の映画)

4.0

和田浩治が無実の罪を着せられたまま失踪した父を救おうと活躍するシリアスタッチの青春サスペンス。話こそありきたりだが、西河克己の職人監督としての優れた手腕を存分に楽しめる。サスペンス・パート、アクション>>続きを読む

波止場の賭博師(1963年製作の映画)

4.2

石原裕次郎の代表作『夜霧よ今夜も有難う』と共に『カサブランカ』を下敷きにしたもう一つの日活ムードアクションの秀作。
キャバレー経営の裏で、組織に追われる人間を海外逃亡させる「逃し屋」小林旭の元へ、かつ
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危険な商売 鉛をぶちこめ(1962年製作の映画)

3.8

齋藤武市監督、宍戸錠主演の本格的なハードボイルド映画。地方都市に謎の男がやってきて2つの暗黒組織の対立を煽り殲滅させるというハメット「血の収穫」スタイルの血腥い非情な話で、清順『野獣の青春』前年製作>>続きを読む

錆びた鎖(1960年製作の映画)

3.9

港湾荷役会社の家の次男坊赤木圭一郎が、会社乗っ取りを企む手形パクリ屋たちと闘う青春アクションで、主人公の家族まわりが完全に『エデンの東』になっていて面白い。複雑な家族関係と各人の屈折した感情、過酷な港>>続きを読む

素っ飛び小僧(1960年製作の映画)

3.9

和田浩治主演・西河克己監督コンビの『小僧』シリーズ1作目。当時16歳の和田少年が大人顔負けのガンプレイでギャング団と闘う無国籍アクション。和田の初々しい演技にポンポン小気味良く展開する西河演出と、ダレ>>続きを読む

俺は銀座の騎兵隊(1960年製作の映画)

3.8

野口博志監督、和田浩治主演の青春アクション。一つ前の『素っ飛び小僧』が広島の原爆孤児の設定だったのに対してこちらは長崎の原爆孤児、銀座に流れてきたとっぽい和田少年が、空き地で廃バス暮らしする同じ孤児境>>続きを読む

宇宙からの脱出(1969年製作の映画)

4.1

情緒的表現から距離を置いた硬質で客観的な文体で、帰還不能の宇宙船乗組員救出作業をリアルに描いていく。音楽は殆どなく、ヒーローと呼べる人間は一人も出てこない。勇敢な英雄的人物も最後の最後でお手柄を横から>>続きを読む

機械人間 感覚の喪失(1935年製作の映画)

5.0

このレビューはネタバレを含みます

スターリンによる大粛清下で製作されたソビエトSF映画の傑作。R.U.R.の文字が出てくるがチャペックの小説とは直接関係なく、ウクライナのヴォロディミル・ヴラドコの小説が元とのこと。

ヨーロッパのとあ
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