三隅炎雄さんの映画レビュー・感想・評価 - 5ページ目

三隅炎雄

三隅炎雄

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悪の親衛隊(1971年製作の映画)

3.8

渡瀬恒彦・ジェリー藤尾・川口恒三人組のチンピラ映画。『893愚連隊』の手本がうっすら透ける。あの映画の天知茂にあたるのが丹波哲郎で、こちらは八代万智子とノワールな世界を見せる。渡瀬ら野良犬三人組とハー>>続きを読む

決着(おとしまえ)(1967年製作の映画)

2.9

このレビューはネタバレを含みます

『決着』『続 決着』を続けて見た。決着と書いておとしまえと読む。任侠映画正統派キャラの兄貴分吉田輝雄と半人前な弟分梅宮辰夫の組み合わせ。
梅宮が任侠映画の批評として配置されているかと言うとどうもよくわ
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男度胸で勝負する(1966年製作の映画)

5.0

昭和初期を舞台にした梅宮辰夫主演の着流し任侠映画。村山新治が監督した。
暗く冷たく沈んだ画面と抽象的で幻想的な三木稔の現代音楽を使って、或るやくざの一家族が任侠道に絡め取られ無残に解体していく様子を、
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鉄火場の風(1960年製作の映画)

3.8

監督牛原陽一、脚本熊井啓による日活ノワールの佳作。無実の罪で服役した石原裕次郎が、自分を陥れた芦田伸介を追い詰めていく。
かなり大きく時間を割いたリアリスティックな賭場シーケンスと、キューブリック『現
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日本仁侠伝 花の渡世人(1966年製作の映画)

3.8

高橋英樹の『日本任侠伝』2作目。舛田利雄の1作目は無国籍アクションを着流し姿で演じるパロディ仕様だったが、野口晴康(博志)のこちらは、東映でマキノ雅弘や山下耕作が撮るような典型的な任侠映画の台本を、心>>続きを読む

日本仁侠伝 血祭り喧嘩状(1966年製作の映画)

3.8

舛田利雄が高橋英樹・宍戸錠で撮った着流し任侠映画。ではあるが行動原理はあくまで個の理屈で、東映式の組織と個人との葛藤とは無縁の、いつもの日活無国籍アクションを着流し姿でちゃっかりやっているのが楽しい。>>続きを読む

ひとりぼっちの二人だが(1962年製作の映画)

4.4

水揚げを拒み置屋から逃げ出した吉永小百合と、彼女を護るため奔走する浅草のチンピラやくざ、ヌード劇場の芸人、ボクサーら。秀作『上を向いて歩こう』に続く坂本九・小百合・浜田光夫・高橋英樹・渡辺友子出演の青>>続きを読む

黒い海峡(1964年製作の映画)

4.0

暗く陰惨なメイクをしたやくざの石原裕次郎が、組の金を盗みクラブ歌手の吉行和子とともに姿を消した兄弟分の中谷一郎を追う。
十朱幸代とのメロドラマもあるがどちらかというと控えめ、アクションとハードボイルド
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夜をひらく 女の市場(1969年製作の映画)

3.8

小林旭がホステスの引き抜き屋を演じる水商売ノワール。同じ江崎✕小林の『女の警察』がホステスのトラブル解決業だったから、今回は立場を変えて攻める側になった。梅宮辰夫の「夜の青春シリーズ」でスケコマシもの>>続きを読む

悪魔のような女(1955年製作の映画)

4.7

このレビューはネタバレを含みます

80年代前半に画質の悪い非正規ビデオをレンタルして見て以来。あの時は有名などんでん返しが当たり前すぎてガッカリしたのだけれど、考えてみればこれをパクったテレビドラマをたくさん経験した後なんだから、ガッ>>続きを読む

恐怖のまわり道(1945年製作の映画)

4.2

ルチオ・フルチお気に入りの一本だそう。ひたすら主人公を罵り続ける女がそのあまりの激烈な個性故に非現実味を帯び、主人公の罪の意識が生み出した幻影ではないかと観客に思わせもするところに、フルチは魅入られた>>続きを読む

侠花列伝 襲名賭博(1969年製作の映画)

3.9

松原智恵子主演の任侠映画。と言っても藤純子みたいに男相手に立ち回りするのではなくて、脚本の星川清司はヤクザと芸者の間に生まれたヒロイン松原のために、藤竜也・江原真二郎・高橋英樹の三人の男たちが命をかけ>>続きを読む

惜春鳥(1959年製作の映画)

5.0

突如前衛になるので何事が起こったかと戸惑う、というか魂消る。青春群像劇の姿を借り、木下恵介が美青年たちへの愛を綴った一種の性的なファンタジーで、ここでは女の有馬稲子は白虎隊の青年たちに同化することでや>>続きを読む

夜の勲章(1963年製作の映画)

4.0

原作は藤原審爾。小林旭が私立探偵を演じるハードボイルド・ミステリの秀作。いつもの日活的なアクションやメロドラマ的要素を抑えて、あくまでミステリとしての面白さで興味を引っ張るのがアキラ映画として異色だ。>>続きを読む

そして、神はカインに語った(1970年製作の映画)

5.0

このレビューはネタバレを含みます

『幽霊屋敷の邪淫』『顔のない殺人鬼』の監督アントニオ・マルゲリーティがクラウス・キンスキー主演で撮った怪奇幻想タッチの異色マカロニ・ウェスタン。死者が復讐鬼となって街に帰ってくる話だから、イーストウッ>>続きを読む

絶唱(1958年製作の映画)

5.0

このレビューはネタバレを含みます

滝沢英輔の最初の映画化。百恵・友和版は封切で見たが粗筋程度しか覚えていない。これも正直あまり面白くないなあと見ていたのだが、小林旭が戦地へ行く辺りから何だか徐々に画面が凄みを帯びてダニエル・シュミット>>続きを読む

有難や節 あゝ有難や有難や(1961年製作の映画)

3.9

守屋浩のヒット曲を使った和田浩治の日活アクションコメディ。型破りの出だしが段々定型に収まって行くのは惜しいけど、定型も定型ド定型、お決まりの最後の祭踊りは思い切り弾け飛んでて凄い。『拝啓天皇陛下様』を>>続きを読む

しあわせはどこに(1956年製作の映画)

3.8

いたいけなヒロイン芦川いづみが周囲に虐められながらもくじけず幸せを掴むまでを描く。いづみちゃんをハラスメントするクソ男二人、宍戸錠と殿山泰司がまことに憎々しく、いつもながらの誠実一直線、葉山良二の凡庸>>続きを読む

若い傾斜(1959年製作の映画)

4.0

電気会社に務めながら弁護士を目指す川地民夫が自社の汚職事件に巻き込まれる。西河克己監督による社会派サスペンスの秀作。一応メインは川地と浅丘ルリ子の形を取っているが、実質の主役は川地の友人の赤木圭一郎と>>続きを読む

男なら夢をみろ(1959年製作の映画)

3.7

タイトルとは逆に、主人公石原裕次郎が演じるのは、夢を捨てて生きるしかなかった元戦争孤児のヤクザだ。焼け野原で出会い、兄貴と慕い頼った孤児仲間の葉山良二は、今は権力側で敵対する立場になっている。その二人>>続きを読む

遊侠三国志 鉄火の花道(1968年製作の映画)

3.9

石原裕次郎・小林旭・高橋英樹主演の日活任侠映画。強欲な親分三島雅夫に日々に悩まされている子分の石原・高橋の堪忍袋の緒がブチ切れて自分んとこの一家を殲滅、流れ者の小林がそれに加勢するという、まず東映では>>続きを読む

ノサップの銃(1961年製作の映画)

4.6

主演宍戸錠・南田洋子、監督松尾昭典、脚本星川清司による日活アクションの異色傑作。出だしこそ典型的なライス・ウェスタンだが、舞台が漁村に移るとイタリアのリアリズム映画のような荒々しいタッチで、漁民の生活>>続きを読む

星と俺とできめたんだ(1965年製作の映画)

4.4

西郷輝彦・渡哲也W主演の歌謡アクション。歌謡映画の枠の中にメロアクション、ラブコメ、任侠映画、スポーツ映画、企業サスペンスをゴチャまぜに放り込んで遊びに遊んだパロディ調の怪作で、井田探本領発揮のデタラ>>続きを読む

錆びたペンダント(1967年製作の映画)

4.0

渡哲也・山本陽子主演の青春ムードアクションといったところか。悪役が山本の兄貴役の木村功というのが珍しく、これがまた成瀬巳喜男の映画からでも流れてきたようなウジウジイジイジしたダメ男というのが変わってい>>続きを読む

街が眠る時(1959年製作の映画)

2.9

長門裕之主演のモノクロ事件記者ものの一つで、これは大藪春彦が原作。ギャング映画的な虚構の枠内で演じられる大藪的なタフガイと長門の個性が噛み合わず、演出に迷いがつきまとう。
殺し屋の宍戸錠は、同年始まる
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イノセント・ドール 虜(1986年製作の映画)

4.2

このレビューはネタバレを含みます

フルチ唯一のソフト・ポルノだそう。いきなりとんでもない性愛プレイが出てきてひっくり返る。普通思いついても流石にアホらしくてあれを撮る人はいない。そこを平然と絵にしてちゃんと一本の映画に纏めてしまう。ワ>>続きを読む

惜別の歌(1962年製作の映画)

4.0

ヤクザの家に生まれ今は高校の体育教師をしている小林旭が、故郷仙台に戻り再び暴力の世界に巻き込まれる。モダニズムと暗く生々しい情念が混じり合う日活固有のやくざノワール。
野口博志の抑制の効いた端正な語り
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ランド・オブ・ザ・デッド(2005年製作の映画)

4.5

封切時は演出が保守的になった気がして今一つ乗れなかったのだが、今見ると堂々たる傑作で、これはもう丸っ切り今現在の私達自身の物語ではないか。17年経って新自由主義日本はここまで荒廃したのだ。

人間たち
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舞踏会の手帖(1937年製作の映画)

5.0

このレビューはネタバレを含みます

第二次世界大戦が始まる二年前の映画。暗い世相を寄せ付けない、恐ろしくもある湖の澄み切った絶景から始まるけれど、その湖を黒衣の女が船に乗ってやってくる。夫の墓から戻ったのだ。どんなに世界が美しくとも、死>>続きを読む

昼下がりの暴力(1959年製作の映画)

3.7

ヤクと現ナマを巡るギャングたちの非情な争いを、野口博志監督が外国の暗黒街映画をお手本にモノクロームの画面でテンポよく描く。戦争の記憶を引きずった内容で、戦中派の水島道太郎と宍戸錠が戦後派のチンピラ川地>>続きを読む

夢は夜ひらく(1967年製作の映画)

4.2

野口晴康(博志)監督によるかなり個性的な歌謡映画。傑作と言っていい。
昼は図書館で働き、夜はクラブで歌う園まりのもとに、アウトローの高橋英樹が園の兄(小高雄二、写真のみ)が遺した金を届けに来る。恋人で
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夜の最前線 東京㊙️地帯(1971年製作の映画)

4.3

東映の梅宮辰夫『夜の青春』シリーズを日活が郷鍈治でやった感じだが、下敷きはシュレシンジャー『真夜中のカーボーイ』で、郷がジョン・ヴォイト、岡崎二朗がダスティン・ホフマン、苦い味の青春(と言うには年食い>>続きを読む

波止場の鷹(1967年製作の映画)

3.7

田宮二郎の『勝負は夜つけろ』(井上昭)と同じ生島治郎の小説を原作とする西村昭五郎の佳作ハードボイルド。裕次郎・ルリ子主演で序盤は馴染みのムード・アクション様式美で進み、徐々に生島タッチのハードボイルド>>続きを読む

若ノ花物語 土俵の鬼(1956年製作の映画)

4.0

『力道山物語 怒涛の男』の森永健次郎監督/古賀政男音楽による姉妹編。同様に少年期青年期を職業俳優が演じ、途中から本人自身が演じる。相撲部屋の挫折する親友のエピソードも重なっていて、同じ吉田光男が演じて>>続きを読む

ぼくどうして涙がでるの(1965年製作の映画)

4.0

原作は僧帽弁閉鎖不全症を患った妹紀子の闘病生活を綴った伊藤文學の同名著作。それを森永健次郎が吉田憲二脚本、十朱幸代主演で映画化した。吉永小百合の映画等でも記録映画的なカメラワークを試みる森永が、ここで>>続きを読む

拳銃無宿 脱獄のブルース(1965年製作の映画)

4.2

オープニングが『東京流れ者』みたいだが製作はこちらが一年前。『続東京流れ者』がそうだったように、森永健次郎が撮る渡哲也は後のニューアクションの血の匂いがする。特にこれは藤竜也や(監督お気に入りの!)前>>続きを読む