近本光司さんの映画レビュー・感想・評価

近本光司

近本光司

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ゴジラの逆襲(1955年製作の映画)

3.0

「わたしたちの愛する大阪の街も、世界に誇る大阪城も、ゴジラのためにまったく踏み躙られてしまいました。ひとたびゴジラが暴れ狂うとき、わたしたちはまったく無力であります」。まるでレスリングの試合かのような>>続きを読む

ゴジラ(1954年製作の映画)

4.0

ゴジラの吐く熱戦で火の海になった東京の路傍で死を覚悟した母は、胸もとの幼き子供たちに「もうすぐお父ちゃまのところにいくのよ」と語りかける。彼女の語るところの父は、おそらくはさきの大戦で歿したという設定>>続きを読む

時の崖(1980年製作の映画)

4.0

いやはや、これはちょっとすごい作品です 褒めるならこっち

仔象は死んだ(1980年製作の映画)

2.5

どうして淀川長治が当時はあれだけ興奮を隠しきれなかったのかと、それから四十年以上の時が過ぎたいまに思う。かつて前衛芸術が信じられていた時代があったのだ。その感覚はとてつもなく遠い。

白い朝(1965年製作の映画)

3.0

シナリオ読んではじめて筋立てを理解 そんなフィルムを切り刻んでたのしいですか? そうですか…。

詩人の生涯(1974年製作の映画)

3.5

川本喜八郎にはもっと安部公房原作を手がけてほしかった

他人の顔(1966年製作の映画)

3.5

原作の手ざわりからはまさか主人公の妻に京マチ子が配役されるなんて想像もつかない。ここは気を衒わずに田中絹代でしょうよ、ちょっと京マチ子は色っぽすぎてだなあ。安部先生、そこはどうなんですかね、と訊いてみ>>続きを読む

おとし穴(1962年製作の映画)

4.0

おらはなあ、生まれ変わったら労働組合っちゅうもんがあるとこで働いて、あの汚ねえ会社の連中に一杯食わせてやりてえんだ。あるときそんな夢を語った男は、訳のわからないままに見知らぬ者に突然追わされて殺されて>>続きを読む

地上の詩(2023年製作の映画)

4.0

現代のテヘランで公権力に翻弄される市井の人びとを描いたクロニクル。役所の係員から新生児の命名受理を拒否される父親。小学校の入学式に着るためのチャドルを嫌々試着する少女。男子といた姿を目撃され校長室で説>>続きを読む

オトン(1969年製作の映画)

-

コルネイユのテクストが一切の感情を抜いた早口の棒読みで発話されていく。はじめはがんばって科白を聞き取ろうとしていたが、次第にそんな気概も薄れてきて、役者たちによる発話の異なるリズムに身を委ねることにし>>続きを読む

Bye Bye Tiberias(英題)(2023年製作の映画)

3.5

パレスチナに生きる女性たちの四代にわたる年代記。アラブ映画祭にて。

ちいさこべ 第一部(1962年製作の映画)

4.5

観客のひとりからヴィクトル・ユーゴを思いだしたといわれて、なるほどと腑に落ちた。確かにユーゴの小説は山本周五郎のヒューマニズムの源泉かもしれない。都合三度ほど観たのだが、江利チエミと子どもたちによる人>>続きを読む

五重搭(1944年製作の映画)

4.0

幸田露伴の原作に接近できたことがなによりもよかった。しかし原作のモデルとなった谷中の五重塔は、江戸の建立から二十世紀も関東大震災と東京大空襲という災厄を奇蹟的に無傷で乗り越えたにもかかわらず、1957>>続きを読む

法隆寺(1958年製作の映画)

4.5

この作品を上映したことがきっかけとなり、二十年振りに法隆寺を訪れた。その訪問を経て本作を見直すと、カメラワークの卓越はさることながら、いかに構成が優れているかと思い至る。三百人が詰めかけた満員のホール>>続きを読む

怪物(2023年製作の映画)

4.5

えーっ、めっちゃいいじゃん。みんなだめなの?

魔女(1922年製作の映画)

4.0

シネマテーク・フランセーズのホラー映画史特集にて、Dagerlöff & Galner というエレクトロデュオの生演奏付き上映。とにかく音楽がすばらしく、これほどあざやかに百年前の映画に息を吹きこむこ>>続きを読む

東海道四谷怪談(1959年製作の映画)

3.0

冒頭のシークエンスは見ものだった。思いを寄せる女との結婚を認めてもらうべく、夜半の暗がりでその父を待ち伏せる伊右衛門(天知茂)。貴様の如き分際でと取り合おうとしない父に腹を立てた彼はひと思いに斬ってし>>続きを読む

PERFECT DAYS(2023年製作の映画)

2.5

スカイツリーの麓にある木造二階建ての年季の入ったアパートに居を構え、渋谷区のトイレ掃除の仕事にひたむきに取り組み、ルー・リードやパティ・スミスをカセットで聞き、フォークナーや幸田文を読み、草木を愛でな>>続きを読む

逃げきれた夢(2023年製作の映画)

4.5

たった一度きりの人生が、いつのまにか自分の手許から過ぎ去ってしまっていた。もう取り返しがつかないところまで来てしまった。直視するにはあまりにおそろしい事実にはたと気づいてもがく還暦間近の男の悲哀。孤独>>続きを読む

銀河鉄道の父(2023年製作の映画)

3.5

満席にほど近い客席のあちこちから啜り泣く声が聞こえてくる。わたしもあの劇場の魔力に絆されたというところは否めないけれど、いい映画だと思う。ふつうの伝記とちがって宮沢賢治の父の視点で描かれる家族の物語自>>続きを読む

小早川家の秋(1961年製作の映画)

4.0

中村鴈治郎の顔が正視に耐え難いという点をのぞけば、いい映画だと思うのだが…。

早春(1956年製作の映画)

3.5

再見(ツァイチェン)。ぞくっと悪寒が走るような、印象に残る不気味なショットが三つ。ひとつ、料亭の個室で岸惠子と池部良の禁じられた接吻の直後に挿入される首を振る扇風機。ふたつ、死期が間近に迫る増田順二の>>続きを読む

宗方姉妹(1950年製作の映画)

4.0

小津の生誕120年/没後60年の日に再見。田中絹代と高峰秀子が共演を果たしたのはいつ振りだろうと思っていたら、公開当時のパンフレットに五所平之助『新道』以来14年振りのことだと書かれていた。二人は15>>続きを読む

この世界の片隅に(2016年製作の映画)

3.5

呉のまちに連日連夜爆弾が降りしきる描写に、八十年後のガザの現在が重なる。あの戦争のころ、ユダヤの民はむしろ殺戮される側にいたわけだ。七年振りくらいに再見したのだが、すぐれた映画はこうしていつの時代もア>>続きを読む

ゴジラ-1.0(2023年製作の映画)

4.0

戦地で死の恐怖を目前にして与えられた任務を果たせなかったこと。そのせいで多くの同胞たちが命を落としてしまったこと。わたしたちの目からすれば、その責任は当然敷島ひとりに帰せられるものではないにもかかわら>>続きを読む

君たちはどう生きるか(2023年製作の映画)

5.0

わらわらが熟して、丸く膨らんで一斉に空へと浮かび上がっていく。眞人はキリコに訊く。いったい彼らはどこにいくんだ? これから生まれるのよ。あなたが来た世界で。このキリコの科白を聞いた途端、わたしの涙腺は>>続きを読む

Fremont(原題)(2023年製作の映画)

4.5

隣人は言う。ここじゃ星は空を見上げるたびにちがうとこにいやがる。カブールではいつもおんなじ場所に留まってたはずだよなあ。こんなに星々が動きまわる土地で、どうやって安心して暮らせるってんだよ、あんたもそ>>続きを読む

Omen(英題)(2023年製作の映画)

3.0

コンゴ民主共和国に出自をもつラッパーであるBalojiがはじめてメガホンを取った長編映画。主演のマルク・ジンガは、かつて2019年のフェスパコでエタロン・ドールを獲った『密林の慈悲』でも主演を張ってい>>続きを読む

せかいのおきく(2023年製作の映画)

3.0

なあ、せかいって言葉、知ってるか。この空の果て、どこだかわかるか? 果てなんかねえんだよ、それが世界だ。なあ、惚れた女ができたら言ってやんな。おれは世界でいちばんお前が好きだって、これ以上の言い回しは>>続きを読む

Winny(2023年製作の映画)

4.0

字幕なしの母国語で、これだけ活きのいい現代の法廷ものを目撃できることを慶賀しなければならない。やはり法廷ものは字幕を読み進めていくだけでは十分でないのだ。じっさいの裁判同様、法廷で戦わされる言論のパフ>>続きを読む

ほつれる(2023年製作の映画)

4.0

巧い、とても巧い、とおもわず舌を巻く。わたしはこの映画に成瀬を感じたが、監督は一本も観たことがないと言っていた。演劇出身の監督だということがよく頷ける行き届いた脚本と演出の機微に役者たちはよく応え、ス>>続きを読む

茶飲友達(2022年製作の映画)

3.0

あまり好みではないが、うわさに違わぬ力作であることは素直に認めなければならないと思いながら、最後の渡辺哲のさみしげな後ろ姿を捉えたショットを観ていた。高齢者専用の売春倶楽部という設定の着想があったとし>>続きを読む

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