糸くずさんの映画レビュー・感想・評価 - 5ページ目

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ハイドリヒを撃て!「ナチの野獣」暗殺作戦(2016年製作の映画)

5.0

ロマンティシズムが止めどなく溢れる映画でありながら、全編に渡って立ちこめる死の匂いがロマンに浸ることを許さない。もはや「映画」という名のレクイエムだ。心臓に釘をずっと打ちつけられているかのような時間が>>続きを読む

スクランブル(2017年製作の映画)

3.4

「ご都合主義ここに極まれり」というような映画ではあるものの、撃たれたマフィアの死体を引きずって片付ける男たちであったり、弟と金髪美女がいちゃつくのを兄貴がごはんを食べながら眺めたり等、どこか間の抜けた>>続きを読む

散歩する侵略者(2017年製作の映画)

3.7

どうも「黒沢清の映画」を見ているというより、「黒沢清のパロディー」を見ている気分に陥ってしまって、今一つ。

侵略者たちは、人間が築き上げてきた概念を持たないのだから、概念を一から得なければならないと
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パーソナル・ショッパー(2016年製作の映画)

4.5

オリヴィエ・アサイヤスの映画は、「エドガー・ラミレスの代表作は『Xミッション』じゃなくてコレ」な『カルロス』しか観てないのだけど、こんな直球のゴーストストーリーを作る人とは思っていなかったので、とても>>続きを読む

スキップ・トレース(2015年製作の映画)

3.5

ジョニー・ノックスヴィルの体を張ったリアクション芸は楽しかったものの、いろいろと雑な印象。

特に、エレベーターで殺された名もなき美女が完全に無視されたまま事件が解決されるのはどうかと思う。

最近の
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君はひとりじゃない(2015年製作の映画)

4.2

意地悪さと優しさのバランスが絶妙なスピリチュアル・ドラマ。

幽霊の存在を散々ちらつかせておきながら、最後の降霊会をあんな展開で終わらせるのにあ然としたが、「彼女はもうここにはいない」という認識の共有
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ありがとう、トニ・エルドマン(2016年製作の映画)

4.8

普通の映画だったら、イネス(サンドラ・フラー)が最初に泣く場面で「彼女は変わった」ということにして映画を終わらせるだろうけども、この映画はそうはならない。彼女の最初の涙は長い長い物語の始まりに過ぎない>>続きを読む

思い出(1986年製作の映画)

-

寄せては返す波。砂浜に残された足跡。50年以上前の映画と同じ雲が、今日も空に浮かんでいること。残っていくものと失われていくもの。何気ない日常の一こまだけども、既にゲリンの息吹があるように思う。

ある朝の思い出(2011年製作の映画)

-

ゲリンの中では、「失われていく一瞬一瞬を映像として刻みつけたい」という欲望と、「あらゆる物事は失われた途端に、繰り返される日常や時間の中に埋没していく」という無常観が拮抗しているように思うのだが、そう>>続きを読む

サン゠ルイ大聖堂の奴隷船サフィール号(2015年製作の映画)

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なんというか、修学旅行で訪問した歴史的建造物や遺跡で流されている映像資料みたいで、かなり辛かった。

アナへの2通の手紙(2010年製作の映画)

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大プリニウス『博物誌』を手がかりにして、映画(=映像)と絵画の起源を探る。

それこそ古代から人々がインスピレーションを受けてきたであろう、木々の枝のざわめきや水の反射、水面のゆらぎ、そして影など自然
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人生タクシー(2015年製作の映画)

3.8

強盗で始まり、強盗で終わる。小粒でもピリリと辛い皮肉としたたかさが効いている映画。

誰が役者で誰が本物の乗客なのかわからないことで生まれる、現実と虚構の境界線がごちゃごちゃになる映画ならではの面白さ
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ダニエラ 17歳の本能(2012年製作の映画)

4.2

バイセクシャルの少女による自由奔放なセックスの冒険を通して、キリスト教福音主義による性への抑圧を描いた傑作。

ポップでカラフルな映像で描かれるのは、ダニエラの果てることのない性への赤裸々な好奇心。男
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ガチバン ULTRAMAX(2014年製作の映画)

4.0

二十歳のヤンキーと十八歳の暴力団員、表の社会で生きる者の光と裏の社会で生きる者の闇の対比が素晴らしい痛切な青春映画の傑作。

窪田正孝と山田裕貴が飲み屋街で殴り合うクライマックス。この映画でほぼ唯一の
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マキシマム・ブラッド(2014年製作の映画)

3.6

ソフトのジャケットに「その男、最強の人質奪還屋。」と目立つように書いているが、人質奪還はしない。冒頭、ハニートラップに引っ掛かったヴァン・ダムがホテルの部屋で腎臓を取られたことに気づいて「最悪……」と>>続きを読む

打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?(2017年製作の映画)

2.5

もうそろそろ地に足をつけて生きていくことについての映画に舵を切る時だ。世界がどんな姿であってもいいはずがない。美しい幻に逃げるな。夢から目覚めろ。いまがどんなに醜くても、わたしたちはいまを生きるしかな>>続きを読む

スパイダーマン:ホームカミング(2017年製作の映画)

4.2

例えて言うなら、初めて自転車に乗れた時の興奮と「どこまでも行けるぜ」という万能感、そして、自転車だけではたどり着けない距離を体感した時の諦め。そういったものがいっしょくたになった無邪気で屈託のない少年>>続きを読む

ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない 第一章(2017年製作の映画)

3.8

王道かつカルト的であるジャンプ漫画と「よくできた実写化」の間に奇妙な壁がある。

『ジョジョ』が映画化されると聞いた時、「いくら三池でもこれは負け戦だろうから、いかに派手に負けるかで勝負するしかないの
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マンチェスター・バイ・ザ・シー(2016年製作の映画)

3.9

時はどんな人間にも同じように過ぎていく。そして、時は傷を癒す。しかし、「時」という薬の効き方は人それぞれであり、過ぎた時間は同じでも、傷の治りは違う。

終わりそうにない雪かき。アイスホッケー。「寒い
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リザとキツネと恋する死者たち(2014年製作の映画)

3.9

感想を書くために、ただ今この映画のことを考えた時に思い出したのが『マジカル・ガール』である。といっても、この映画と『マジカル・ガール』は話が全然違うのだが、物語を彩る奇抜なアイテムとキャラクタからは想>>続きを読む

草原の河(2015年製作の映画)

3.9

宙を舞うクマのぬいぐるみと畑に埋められるそれ。母親のおっぱいとヤギのミルク。そして、ヤンチェン・ラモと子ヤギ。大自然や日常の過酷さと、それを受け入れるにはまだ幼すぎる女の子の心。だが、物事を素直に受け>>続きを読む

娘よ(2014年製作の映画)

3.6

虐げられる女性たち、砂漠と荒野を駆け抜けるトラックと『マッドマックス 怒りのデスロード』と重ねて語りたくなる要素が見受けられるが、この映画はアクションで組み立てられた映画ではないし、反逆の物語でもない>>続きを読む

いいにおいのする映画(2015年製作の映画)

3.4

吸血鬼の少年カイト(吉村界人)と幼なじみの少女レイ(金子理江)のラブストーリーに、愛する人を失った父と子が喪失を乗り越えるまでの道程が重なる。オーソドックスな物語であるが、それゆえに奇抜なキャラクター>>続きを読む

オフィス 檻の中の群狼(2015年製作の映画)

3.6

韓国の大企業の過酷な労働環境と熾烈な就職戦争を告発する現代の怪談。

何よりも魅力的なのは殺人犯であるキム課長を演じたペ・ソンウの怪演である。見た目はなだぎ武のようであるが、黒沢清の映画に出ていても全
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走れ、絶望に追いつかれない速さで(2015年製作の映画)

3.7

親友の自殺と彼が残した言葉と絵に過剰な「意味」を与えない姿勢が誠実でよい。いや、より正確に言うなら「与えることができない」のだろう。

この映画に真相のようなものはない。薫(小林竜樹)がなぜ亡くなった
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NARC ナーク(2002年製作の映画)

4.0

デスクでの仕事に戻りたい麻薬捜査官と相棒殺しの犯人逮捕に燃える刑事のバディムービーとくれば、互いの立場を越えた友情か共犯関係の泥沼が定番といったところだが、この映画は一味違う。

妻を亡くし子どももい
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ローマ法王になる日まで(2015年製作の映画)

3.7

この物語の中心は、軍事独裁政権下のアルゼンチンにおいて神父として活動するホルヘの葛藤の日々である。抑圧された状況の中で真に良心的な神父であること、真に神と救いを求めている人と共に寄り添うことの苦難は想>>続きを読む

ジョン・ウィック:チャプター2(2016年製作の映画)

3.7

「修羅は続くよどこまでも」というか、むしろ修羅の道だけがジョン・ウィックの居場所であって、恋人との日々や愛犬、住み馴れた家のような凡人の幸せは、殺しの天才である彼には不自然なものなのだ。凡人であるわた>>続きを読む

ホワイトリリー(2016年製作の映画)

3.5

陶芸家の師匠と弟子の共依存を描いた古典的なサイコスリラー。

映画では今時なかなか見かけない直球のサイコスリラーが観れたことはうれしい。しかし、この内容なら「ポルノ」はあくまで建前の純然たるサイコスリ
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