糸くずさんの映画レビュー・感想・評価 - 7ページ目

糸くず

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人魚姫(2016年製作の映画)

3.6

話は王道のラブストーリーなのだが、ギャグとグロの突き抜け具合が常軌を逸しており、明らかに狂気を感じさせながらも、そこに悪意は影も形もなく、全てが「面白ければ何でもOK」という健康的な狂気に基づいて作ら>>続きを読む

フィッシュマンの涙(2015年製作の映画)

3.8

製薬会社の新薬治験で魚人間になってしまったフリーターパク・グの悲哀。

奇抜な設定ながら、演出はあえて平熱を貫きとおしており、親しみやすい。それでいて、就職難に苦しむ現代の若者の閉塞感を見事に映し出し
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息の跡(2015年製作の映画)

3.8

岩手県陸前高田市でたね屋を営みつつ、独学で学んだ英語や中国語で震災の体験を書いて出版している佐藤貞一さんを追ったドキュメンタリー。

「蓮実重彦がほめていたから」という大変不純な動機で見に行ったわけで
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映画ドラえもん のび太の南極カチコチ大冒険(2017年製作の映画)

3.6

「大冒険」のタイトルにふさわしい、夢とロマン溢れる冒険活劇。

のび太たちが南極大陸の地下に眠る巨大都市を発見する過程がワクワクドキドキに満ちていて楽しい。

氷を飴のように自在に動かして遊園地を作っ
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海は燃えている イタリア最南端の小さな島(2016年製作の映画)

4.2

平穏無事な日々が永遠に続くことはありえないけども、わたしたちは、大抵「自分だけは無傷で生きられる」という根拠のない自信を持って生きている。世界がひっくり返るはずがない。自分の目に見えるものが崩れ去るわ>>続きを読む

素晴らしきかな、人生(2016年製作の映画)

1.0

最近『パッセンジャー』が「問題作」として話題を集めているが、こちらも立派な(?)「問題作」である。こんな気の狂った脚本に、どうしてこれだけの豪華キャストが集合しているのだろうか。この映画は「心温まるラ>>続きを読む

ナイスガイズ!(2016年製作の映画)

3.3

欲望と陰謀が渦巻く70年代のロサンゼルスが舞台なのに、陰鬱な空気は微塵もなく、底の抜けたような明るさをまとった映画だった。

シェーン・ブラックは大都会の暗黒面に深く沈み込む気などハナからなかったに違
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僕らのごはんは明日で待ってる(2017年製作の映画)

4.2

この物語は、体育祭での米袋ジャンプから始まる。兄を亡くして以来、人と付き合わずに、教室の隅っこでたそがれてばかりいる亮太(中島裕翔)。彼は、体育委員の上村さん(新木優子)と一緒に米袋ジャンプをすること>>続きを読む

沈黙ーサイレンスー(2015年製作の映画)

4.5

異質な他者のために人はどれだけ寄り添う(祈る)ことができるのか、いかにして寄り添うべきか。この映画がまさしく「今」の映画であるのは、この問いが物語の軸として貫かれているからだろう。違うものへの無関心と>>続きを読む

エル・クラン(2015年製作の映画)

4.2

軍事独裁政権下でその腕を存分にふるい、「祖国の英雄」という誇りを胸に抱いて働いてきた一人の男。文民政権となって職を失ってもなお、暴力を求めて、彼の血は騒ぐ。抑えることなどできない彼は、心の真ん中にぽっ>>続きを読む

マグニフィセント・セブン(2016年製作の映画)

3.8

南北戦争を軸にした差別と憎悪と暴力の見取り図を作り上げることに心血を注いだ『ヘイトフル・エイト』と比べると、人種も価値観もバラバラな七人の男たちの連帯に血が十分に通っているとは言い難いものの、「黒人=>>続きを読む

ちょき(2016年製作の映画)

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「ていねいで、いとおしい小さな恋の話」か、「いとおしい」はいいとしても、「ていねい」ではない。普通のメロドラマだったら100%一緒になるはずのない男女が、様々な困難を無視して(「乗り越えて」ではない、>>続きを読む

MONDAY(2000年製作の映画)

3.1

『パルプ・フィクション』+『タクシードライバー』?

いやはや、ギャグなのかマジなのか区別がつかなくてツラい映画だった。

『パルプ・フィクション』は「遊び心溢れる」映画ではあるが、コメディを目指して
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キム・ソンダル 大河を売った詐欺師たち(2016年製作の映画)

4.1

心ときめくこと間違いなしのアイドル映画にして、明朗快活コンゲームアクション時代劇でもある、きわめて痛快でとことん楽しい一品。素晴らしい!

というか、話の構成からキャラクター設定に至るまで、ほとんど『
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ドント・ブリーズ(2016年製作の映画)

3.9

神に見捨てられた街・デトロイトのどん底でもがきながら生きる者たちの絶望の吐息で出来た映画。

荒廃した街から脱け出して新しい生活を手に入れるために、豪邸に侵入し、貴重品を盗む3人の若者たち。

彼らに
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ザ・コンサルタント(2016年製作の映画)

4.3

優しくない世界で生き残るには強くなるしかない。ぎこちない笑みしか作れない自分が、いくら世界に微笑みかけようとしても、世界は優しくはならない。それでも、たまに微笑み返してくれる人がいるならば、その笑みに>>続きを読む

アズミ・ハルコは行方不明(2016年製作の映画)

3.7

何者にもなれないお前たちに捧げる哀歌。

地方都市の中小企業に勤めるアラサー独身女性の憂鬱を見事に映し出している。ドラッグストア、レンタルビデオ屋、ファミレスに象徴されるロードサイドの風景。どんな事も
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ポッピンQ(2016年製作の映画)

2.8

東映アニメーション創立60周年記念作品でありながら、どう考えてもテレビシリーズでやるべき物語を、無理矢理一本の映画にまとめたような荒っぽさが目立つ映画で、何が起こっているかはわかるが、どうしてこんなこ>>続きを読む

92歳のパリジェンヌ(2015年製作の映画)

3.7

実直な尊厳死の映画であり、女性映画。

自分を信じ誇りを持って生きることが一番大切なこととするマドレーヌにとって、ただ長く生きることに意味はなく、自分が自分らしく生きられないのであれば、生より死を選ぶ
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ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅(2016年製作の映画)

4.0

魔法使いの世界でのはみ出し者たちによるワクワクドキドキのたっぷり詰まった愉快な珍道中であり、極上のロマンティック・ラブストーリー。

次々と登場する多彩な魔法動物たちが見ているだけで楽しく、それだけで
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技術者たち(2015年製作の映画)

3.5

今年最初の映画は、軽さを求めて、この映画に。

プログラム・ピクチャー感溢れる、コンゲーム映画で、二時間あるけれども、全てが騙し騙されの頭脳戦とアクションに注力されていて、お話がサクサク進んで、あっと
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今年の恋(1962年製作の映画)

3.8

2016年最後の映画は、年末にふさわしい慌ただしくも微笑ましいラブコメで。

冒頭から「憂鬱なんだ」を連発する色白文化系男子の田村正和がかわいくて微笑ましい。不良たちになめられるのが嫌で、ボクシングを
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砂の器(1974年製作の映画)

3.7

泣ける。「卑怯だ」と思っていても、泣いてしまう。

終盤の構成は『君の名は。』と同じで、物語の終着点である出来事が音楽ともに垂れ流されるだけであり、「品がない」と言うこともできるけども、荒れる日本海と
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ピートと秘密の友達(2016年製作の映画)

3.8

素直で力みのないフォーク・ソングのような優しい映画。

深緑の森と水色の空と明るい陽光がどこまでも広がっている。そんな雄大なアメリカの大地に、ドラゴンは生きている。ドラゴンは「怪物」ではない。ドラゴン
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君の名は。(2016年製作の映画)

3.5

本来ならば出会うはずがない二人が、「運命の赤い糸」によって結ばれる。しかも、「体が入れ替わる」という、あり得ない形で。そこには誰かの思惑なんて存在しないし、理屈もない。ただ「運命だから」「瀧と三葉だか>>続きを読む

聖の青春(2016年製作の映画)

3.7

青春の輝きを追うのではなく、めらめらと燃える命の炎に身を焦がし、そこから空へと飛び散っていく灰をかき集めたかのような、ヒリヒリとした緊張感に満ちた、それでいて美しい映画だった。

村山聖と羽生善治、二
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ジュリエッタ(2016年製作の映画)

3.6

まるで絵はがきのように美しい映像で綴られる、喪失に囚われた女が解放されるまでの長い長い日々。

夫との出会いからずっと、誰かを見捨てること・誰かの死によって運命付けられてきたジュリエッタは、自らの罪深
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奇跡の教室 受け継ぐ者たちへ(2014年製作の映画)

3.9

冒頭、ヒジャブを着た若い女性が教師に懸命に訴えている。卒業証明書をもらいに来た彼女は、教師からヒジャブを脱ぐように言われる。「学校のルールに従わなければ、卒業証明書を発行することはできない」ということ>>続きを読む

ジャック・リーチャー NEVER GO BACK(2016年製作の映画)

3.9

ジェームズ・マンゴールドと共に「一貫性のないフィルモグラフィーを持つ監督」として名高いエドワード・ズウィック先生が『アウトロー』の続編をやると聞いて、期待半分不安半分で楽しみにしていたわけだけども、蓋>>続きを読む

コンカッション(2015年製作の映画)

4.3

ナイジェリア移民の医師が、「よきアメリカ人」として、科学の力で真実を求め、嘘を暴き、英雄たちの失われた名誉を回復しようとするも、英雄たちの犠牲をエネルギーにして、人々にカネと希望をばらまきながら進み続>>続きを読む

ぼくのおじさん(2016年製作の映画)

3.8

モラトリアム青年のほろ苦い恋の顛末を描いた安定の山下節ゆるゆるコメディ。『オーバー・フェンス』が暗なら、こちらは明。

貧乏かつ甲斐性なし、屁理屈ばかり達者な天下一のなまけものである「哲学者」のおじさ
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この世界の片隅に(2016年製作の映画)

4.5

すずがただ平凡な毎日を地道に精一杯積み重ね、それに満足していることなどとは全く無関係に、戦争は牙を向いて人間を蹂躙していく。すずは自らの右腕と径子を失うことで初めて平和でも幸福でもない世界に自分が生き>>続きを読む

レイジー・ヘイジー・クレイジー(2015年製作の映画)

3.6

第1回仙台国際ココロヲ・動かす映画祭にて。

明らかに岩井俊二の影響を受けたようなキラキラとした青春の輝きをパッケージしたような映画でありながら、岩井俊二的な映画と決定的に違うのは、少女の裸とセックス
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コウノトリ大作戦!(2016年製作の映画)

3.8

コウノトリと少女と赤ちゃん、この三人(というか、一羽と二人)でどんな話にするのかと思いきや、「仕事第一のエリートビジネスマンとリストラ決定のドジな女の子の間に子どもができてしまったら」という、どう考え>>続きを読む

スター・トレック BEYOND(2016年製作の映画)

4.2

Fight The PowerとSabotageの映画。

「仲間を大事に」のヤンキー節と、安住よりも未知の世界へと飛び立つ興奮を選ぶ、知恵と勇気の宇宙冒険活劇の理想的な結婚。新メンバーであるソフィア
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オーバー・フェンス(2016年製作の映画)

4.5

モラトリアム中年の、再び巡ってきてしまった青春の日々と、レールを外れてしまった者の憂鬱。そこに差し込む、ささやかな希望の光。

モラトリアムを生きる人間を描くことにかけては天下一の腕前を持つ山下敦弘監
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