ジェフリーハラダさんの映画レビュー・感想・評価

ジェフリーハラダ

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オッペンハイマー(2023年製作の映画)

3.8

3時間、オッペンハイマーの伝記を映像で読んでいるような体験でした。情報量が多く、会話も多く、簡単には飲み込めないが、見ごたえはありました。

ざっくりいえば、最初の1時間でオッペンハイマーが学生からマ
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胸騒ぎ(2022年製作の映画)

3.8

ホラーというより、居心地の悪い人間関係によるサイコスリラーという感じだった。イタリアで素晴らしいバケーションを過ごしたデンマークの家族が、そこで出会ったオランダ人の家族を訪ねる。
たがいに英語で会話し
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デューン 砂の惑星PART2(2024年製作の映画)

4.5

前作は惑星アラキスにおいて、皇帝とハルコネン家が結託し、アトレイデス家が滅び、英雄ポールが砂漠へ逃れる貴種流離譚だった。
パート2では、砂漠の民フレメンの中で、力とカリスマ性を獲得した英雄が復讐と帰還
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No.10(2021年製作の映画)

4.3

変態だけど、これは傑作ではないかい!?
前半と後半がまるでちがう映画になってしまう、という意味では、リンチの『ロスト・ハイウェイ』のようだ。
精神状態が不安定な中年俳優が、共演者の女性俳優と不倫。その
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プリシラ(2023年製作の映画)

3.7

少し前に『エルヴィス』を見たので、ちょうど良かった。エルヴィス・プレスリーの栄枯盛衰の個人史を、パートナーの女性プリシラの視点から見る。
女子中学生のときに従軍時代のエルヴィスに出会い、やがて結婚。グ
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パスト ライブス/再会(2023年製作の映画)

4.0

予想よりストレート・アヘッドな物語で驚いたが、心に沁みた。誰にでも1つや2つありそうな子ども時代の初恋。
本作の場合、家族とともに北米にわたった韓国人の女性と、彼女に想いを寄せ続けた韓国男性が主人公。
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夢の中(2023年製作の映画)

4.0

都楳勝監督の『夢の中』をひと足先に拝見。これは先鋭的で、大変な意欲作だと思います。
カメラマンのアシスタントをしているらしい男性と、安易に男性に身を任せ、この世からいなくなろうとしている儚い女性の出会
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映画 五等分の花嫁(2022年製作の映画)

3.6

原作のコミックスを読んでませんが、TVアニメ版の1期と2期を見てから『映画 五等分の花嫁』にのぞみました。TV版の続編ということですよね?
すでに、TV版は本命にいくと見せかけて、少年時代に出会った運
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枯れ葉(2023年製作の映画)

4.1

やっぱりいいなあ、カウリスマキの映画。それほど若いとはいえない、男女のボーイ・ミーツ・ガールという素朴な物語だけれど。
建築作業員のお酒好きの男性と、大きな犬を飼っていて、ちょっとしたことで離職してし
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ゴースト・トロピック(2019年製作の映画)

4.0

マグレブ系の女性が、ふだんは清掃員をやっているのか、疲れて居眠りし、最終電車で終点まで行ってしまう。
町中にもどるためのバスに間に合ったかに見えたが、そのバスは出ず、家路につくために真夜中のブリュッセ
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ウーマン・キング 無敵の女戦士たち(2022年製作の映画)

3.9

アクションが主体のエンタメ作と思いきや、西アフリカのダホメー王国(現ベナン)における奴隷貿易の歴史が、しっかりと時代考証されていて興味深い。
ダホメー王、側室、主人公の女戦士を率いる将軍との王室内の政
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バージンブルース(1974年製作の映画)

3.8

若かりし秋吉久美子のかわいさを見たくて、ついアマプラで拝見。
野坂昭如のタイトル曲を歌う映像や、70年代の風俗やファッション、長門裕之のパパ活中年男ぶりなど、見どころはたくさんある。
しかし、よく考え
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ブルーノート・レコード ジャズを超えて(2018年製作の映画)

4.0

知っているようで知らない、レーベルとしてのブルーノートの盛衰史。
ハービー・ハンコックとかウィンストン・マルサリスとか、音楽は聴いているけど、あまり肉声を聴いたことがないジャイアントたちが出てきて感動
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マンティコア 怪物(2022年製作の映画)

3.8

東京国際映画祭で上映された作品なんですね。スペインからきたトラウマ系の映画。
内気で才能のあるゲームデザイナーが、ふしぎな魅力をもつ女性と出会い、少しずつ心を開いていく物語かと思いきや…。
絶対にネタ
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人間の境界(2023年製作の映画)

4.5

ヨーロッパへの移民・難民をテーマにした、超ヘヴィな社会派ドラマ
アフガン、シリア、ブラック・アフリカからベラルーシに到着した移民や難民を、西側への嫌がらせのように、国境からポーランド側へ送りこむ。しか
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季節のはざまで デジタルリマスター版(1992年製作の映画)

4.0

ダニエル・シュミット版の『失われた時を求めて』といえようか。
幻想性や趣味志向が少し苦手な監督だが、これは自伝的な少年時代の記憶が元になっているらしく、他の作品より見やすい。
祖母が経営していたホテル
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さよなら、僕のマンハッタン(2017年製作の映画)

3.8

『(500)日のサマー』のマーク・ウェブ監督ということで拝見
サマーに比べればストレートな物語だけど、出版社重役と作家志望の青年、父親と息子、そこに美しい女性が絡んできて…という点ではひねりが効いてい
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ゴジラ-1.0(2023年製作の映画)

3.8

アカデミー賞受賞で気になって、ようやく劇場で拝見。なるほど、戦後の焼け跡のセットと背景の継ぎ目もわからず、銀座が破壊されるシーンなど特撮とCGがシームレスで見事でした。
特攻隊で生き残った神木隆之介を
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クラユカバ(2023年製作の映画)

4.2

これは良かった。
大正時代か昭和レトロを独自に解釈した世界観で、クラガリという地下世界を描くのだが、小物やセットや機械などの美術がすばらしい。
ちょっと今敏の『パプリカ』を思い出す。
江戸川乱歩や夢野
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整形水(2020年製作の映画)

3.8

同じ長編アニメーションを作っても、韓国というお国柄か、整形がテーマで。
しかも、血みどろの描写や肌が溶け落ちる描写など、非常に韓国映画的なのかも。
整形水によって、あれだけ顔貌を変えられるという設定に
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アイの歌声を聴かせて(2021年製作の映画)

3.5

『イヴの時間』の吉浦康裕監督だけに、観る前の期待感は大きかった。
AIの女の子が、どうして主人公のサトミを幸せにすることにこだわるのか。
その謎解きと、人間を監視・保護するAIの視点に、人間的な温かみ
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余命10年(2022年製作の映画)

3.9

何かと話題のブルーライト文芸だが、きっと読んでみれば感動するのだろう。
同窓会で出会って恋に落ち、女性が不治の病になって…というプロット以上に、映画版は20年代の日本の若者のリアリティをすくっていると
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エルヴィス(2022年製作の映画)

3.8

遅ればせながら配信で拝見。エルヴィス・プレスリーの生涯、ぜんぜん知らなかった。
特に彼のロックンロールが、メンフィスの黒人音楽のゴルペルやブルースから生まれてきたことが強調されていたところが新鮮だった
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リトル・シングス(2021年製作の映画)

3.7

好きなタイプのウェルメイドなサスペンス映画。
劇場公開されなかったようだけど、レンタルで拝見。
いわくありげなデンゼル・ワシントンの保安官と、エリートの刑事を演じるラミ・マレックが好対照。
連続殺人の
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すべて、至るところにある(2023年製作の映画)

4.0

とても現代的な映画なのかな、と思いました。
セルビア、マケドニア、ボスニアといった聞き慣れないバルカン半島の国をめぐるロードムービーですが、単純に俳優の女性が監督のあとを追うだけでなく、そこに過去に撮
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お終活 再春!人生ラプソディ(2024年製作の映画)

3.6

いまの日本の高齢化社会を考える上で、この映画ほど適切な作品もないのではないか。
人生を結婚生活と子育てに費やしたため、大原千賀子扮する熟年の妻はいま一度、シャンソンを歌うことを夢見る。
それに比べて、
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デ ジャ ヴュ デジタルリマスター版(1987年製作の映画)

3.8

シュミットの映画の中では、筋がはっきりして見やすい作品かもしれない。
美男の新聞記者と美女の作家という夫婦。頭蓋骨を自宅に隠し持っている人類学者。歴史的人物の死に取り憑かれた記者は、デジャヴを見る。。
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異人たち(2023年製作の映画)

4.0

アンドリュー・ヘイ監督『荒野から』で、馬と少年の瑞々しい関係の描き方に心を打たれたので、新作を鑑賞。
もう一度、大林宣彦の『異人たちの夏』を見直して、比較してみたいところ。
空間と登場人物が限定されて
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君を愛したひとりの僕へ(2022年製作の映画)

3.7

タイトルやヴィジュアルから王道の青春ラブストーリーかと思いきや、並行世界やその理論的バックボーンとなる虚質科学の長台詞などあり、見ごたえのあるSFだった。
こちらを先に見てから、『僕が愛したすべての君
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最後の決闘裁判(2021年製作の映画)

4.0

このレビューはネタバレを含みます

中世のフランスが舞台の実話ものなのに、主役級がマット・デイモンやベン・アフレックで、英語で話してるところに違和感があったものの、2時間半、目が離せなかった。
『羅生門』や『カジノ』のように、3人の人物
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12日の殺人(2022年製作の映画)

4.0

『悪なき殺人』の監督ということで期待通りの重厚なミステリー。未解決の実際の事件がベースなので、すっきりとした結末があるわけではない。
だが、証人が隠し事をしたり、被害者が善人でもなかったり、次々と容疑
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RHEINGOLD ラインゴールド(2022年製作の映画)

4.5

試写で見せて頂いた。クルド系の音楽家の子に生まれ、フランス、ドイツへと移住し、麻薬の売人になった主人公。
金塊強盗で投獄された塀のなかで、ラッパーとして生まれ変わるまでの劇的な実話を映画化。
民族音楽
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アクアマン/失われた王国(2023年製作の映画)

3.7

映画館で鑑賞。大海洋でくり広げられる、マーベルならではのノンストップ・アクションなのだが、メインは反発しながら助けあう兄弟の物語。
ラストにもあるが、現代の文明と隣接してある海中のアトランティスという
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落下の解剖学(2023年製作の映画)

4.0

オンライン試写でひと足先に。去年のカンヌでパルム・ドールとのこと。
フランスの雪山を舞台にしたミステリーで、後半は法廷ドラマ。2時間半ぐいぐい引き込まれるプロットだが、原作物ではない。
鍵は盲目の息子
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岬のマヨイガ(2021年製作の映画)

3.5

東日本大震災で家族を失った少女たちが、親切なおばあちゃんとふしぎな古民家で共同生活
『遠野物語』にでてくるマヨイガの伝承がベース
後半は東北の妖怪たちがゾロゾ
前半のヒーリングな物語から、後半へのファ
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街は誰のもの?(2021年製作の映画)

3.8

サンパウロやリオなどのグラフィティ・アーティストらに取材。違法行為であると同時に、アートの社会参加である様を、スケーターやデモと共に路上の人たちの視点から描く。
民族誌的なドキュメンタリーの好編。

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