このレビューはネタバレを含みます
偽物の宮崎アニメのような本物の宮崎アニメ。
噂の通り吉野源三郎の「君たちはどう生きるか」を参照しつつ、ジョン・コナリーの「失われたものたちの本」を翻案したファンタジーであるが、いずれも「原作」とも「原>>続きを読む
イマジネーションに満ち溢れた宮崎駿版「不思議の国のアリス」。
民俗文化を盛り込んだ舞台設定はもとより、起承転結を解体した構成と展開に驚嘆する。
宮崎駿のダイナミックな演出と安藤雅司のセンシティブな作画>>続きを読む
宮崎駿のロゴスとパトスが溢れ出た異色の時代ファンタジー。
『風の谷のナウシカ』から13年後、その間に天安門事件やソ連の崩壊を目撃し、漫画版「風の谷のナウシカ」を描き上げた宮崎は、安直なヒューマニズムや>>続きを読む
現代の息吹を吹き込んだ古典文学。
大胆な構成と鮮烈な演出で過去と現在を行きつ戻りつしながら、青春の歓喜と人生の苦難を並行して描出する。
シアーシャ・ローナンとフローレンス・ピューが輝きを放っているが、>>続きを読む
女性版『デッドプール』。
ハーレイ・クインのキャラクターもさることながら、第四の壁を乗り越えたり、時制を行きつ戻りつしたりなど、演出や展開も『デッドプール』の二番煎じ。
敵役のキャラクターが主役のキャ>>続きを読む
グザヴィエ・ドランからハリウッドへのラブレター。
リヴァー・フェニックスやブラッド・レンフロに想いを馳せ、1人の青年を闇に落とす一方、1人の少年に光を与える映画の持つ諸刃の力を描き出す。
この映画でハ>>続きを読む
ナチズムに抵抗した実在の農夫のポエティックなレクイエム。
映像詩人テレンス・マリックが綴り上げる高潔な信念を貫き通す高邁な精神。
しかし、それは独善と換言することが可能ではないか。
そして、その姿勢は>>続きを読む
ジュディ・ガーランドの晩年をレニー・ゼルウェガーが熱演。
現在のレニーと晩年のジュディがオーバーラップし、ポッチャリブロンドのレニーがガリガリブラウンのジュディに見て取れてしまう。
ジュディの優しさや>>続きを読む
米国史上最大のセクハラ事件のドキュメント。
とはいえ、本作の主題はセクハラだけではなかろう。
卑劣な上司に立ち向かう女性たちの辛い闘いは、社会の構造と組織の力学を浮き彫りにしていく。
2度目のアカデミ>>続きを読む
リアルなストリッパー版『オーシャンズ8』。
本作の主役は男性社会に闘いを挑んだ女性たちでなく、格差社会に闘いを挑んだ弱者たちである。
一見、#MeToo運動の一環の映画のようであるが、実際はアメリカ社>>続きを読む
福島第一原発事故のドキュメント。
とはいえ、本作はドキュメンタリーではなく、エンターテインメントである。
それゆえ、原発所員の勇姿を称揚したり、総理大臣の無能を揶揄したりしていることを批判するべきでは>>続きを読む
劇場公開版より長く、特別完全版より短い『地獄の黙示録』。
プレイメイトのシークエンスはないが、フランス人入植者のシークエンスはある。
これまでのバージョンと印象に大差はないが、IMAXの画面と音響で狂>>続きを読む
アリ・アスター版『食人族』。
露悪趣味の低俗で不快な展開に閉口。
令和の時代にモンド映画に遭遇したことに当惑してしまった。
とはいえ、前作で『ローズマリーの赤ちゃん』を焼き直し、本作で『食人族』を焼き>>続きを読む
サム・メンデス版『ダンケルク』。
ワンカットでないことは注視すれば看取できるが、そんなことはどうでもいい。
塹壕戦の緊張感と臨場感は圧倒的で、乗り物に酔い易いと吐き気を催す恐れも。
タイムリミットのサ>>続きを読む
アメリカ版『犬神家の一族』。
遺産を巡る争いを絡めて富豪の死の謎を描くミステリー。
絡み合う人間関係や入り組んだトリックを描き出す軽妙洒脱な手腕は見事。
アカデミー賞のノミネートも納得の脚本はアガサ・>>続きを読む
人面の化猫が踊り狂う奇怪な珍作。
たしかに、オープニングの「ジェリクルソング」やクライマックスの「メモリー」は感動する。
しかし、異様な造形の人面の化猫が珍妙な動作で踊り狂う地獄絵図はトラウマになりそ>>続きを読む
テリー・ギリアム版『アメリカの夜』。
幾度の頓挫を乗り越えて本作は完成しているわけであるが、製作当初の98年当時のギリアムが『フィッシャー・キング』や『12モンキーズ』などのハリウッドの大作映画を手掛>>続きを読む
権力の暴走への静かな怒り。
捜査機関もメディアも絶大な権力を所有する組織であり、浅慮な行動は権力の暴走を引き起こす。
1996年の事件を題材としているが、当時よりも現在の方が深刻な状況なのかもしれない>>続きを読む
ドイツが舞台の「少年H」。
反戦主義の母親に秘密警察の恐怖、焼け野原の敗戦など、エピソードは妹尾河童の自伝小説にソックリ。
「空想の友達がヒトラー」のユニークなアイデアも生かし切れず、脚本も演出も緩慢>>続きを読む
『万引き家族』×『ジョーカー』。
格差と貧困が引き起こす下層の逆襲を描き出す。
緻密で美事な脚本と演出でシリアスな社会問題に材を取ってユニークな娯楽映画を作り上げるポン・ジュノの手腕は瞠目しないではい>>続きを読む
サラリーマン映画なカーレース映画。
フォードとフェラーリの対決の映画でなく、フォードの幹部と現場の対決の映画であり、さながら「半沢直樹」や『七つの会議』のようなテイストが本作をユニークなものにしている>>続きを読む
『男はつらいよ』の総集編的なスピンオフ。
現在の満男の物語を縦糸に、過去の寅次郎の挿話を横糸に、過去の映像のコラージュで紡ぎ上げる人情喜劇。
さくらに博、リリーの過去の映像と現在の映像が交錯し、過去と>>続きを読む
現代版『普通の人々』。
『わたしは、ダニエル・ブレイク』から3年。
今尚、拡大する格差を崩壊する家庭に描出し、現代の悲劇をドキュメンタルに突き付ける。
希望の灯火が『わたしは、ダニエル・ブレイク』では>>続きを読む
時代錯誤の郷愁映画。
『Shall We ダンス?』からは23年が経過し、『それでもボクはやってない』からも12年が経過しているが、端正な作風に変化はなく、新味もない。
モチーフのチョイスはユニークで>>続きを読む
9部作の感動的な集大成。
『フォースの覚醒』で旧3部作の浪漫と冒険を再現したJ・J・エイブラムスは、世界中のファンが驚き惑った『最後のジェダイ』から思い切って舵を切り、再度、旧3部作の浪漫と冒険を取り>>続きを読む
『ジュマンジ/ウェルカム・トゥ・ジャングル』の続編。
おじいちゃんが「ジュマンジ」の世界に迷い込む設定はおもしろいが、その設定を生かし切れておらず、前作よりおもしろいわけでもなく、つまらないわけでもな>>続きを読む
営業VS経理を江戸時代に置き換えたリアルな忠臣蔵。
藩士の業務としての討ち入りは、債務の処理や裏金の工作など、まるで池井戸潤の経済小説のよう。
これぞまさに森繁久彌もビックリの“サラリーマン忠臣蔵”。>>続きを読む
ほのぼのした『のび太のドラビアンナイト』。
たしかに、純朴で健気なすみっコたちにホッコリするが、それだけでしなく、感動もしないし、号泣もしない。
大人の鑑賞に耐え得ると言い難い。
ディズニー版『ハウルの動く城』。
たしかに、映像も音楽もすばらしく、一見の価値もあるし、一聴の価値もある。
しかし、ストーリーは支離滅裂で、超感覚的に突き進み、『ハウルの動く城』を思い起こしてしまった>>続きを読む
マーティン・スコセッシの集大成的なアメリカの裏社会史のドキュメント。
ロバート・デ・ニーロとアル・パチーノは言うに及ばず、ジョー・ペシやハーベイ・カイテルも共演しているだけで胸に迫るものがある。
とり>>続きを読む
『ターミネーター』+『ターミネーター2』なリメイク。
ストーリーもキャラクターも1作目と2作目を足して割ったようで、それほどおもしろくもないが、それほどつまらなくもない。
プロローグがショッキング。
少年時代のトラウマの克服の冒険。
かつての仲間たちが再会する前半の展開は、『グーニーズ』や『スタンド・バイ・ミー』、あるいは『ドラえもん』の後談のようで感動してしまった。
しかし、後半の展開はオーソド>>続きを読む
『スラムドッグ$ミリオネア』×『アバウト・タイム〜愛おしい時間について〜』なファンタジー。
設定のおもしろさに展開がついていけず、大風呂敷を収め切れていなくもない。
しかし、ザ・ビートルズの名曲の数々>>続きを読む
『タクシー・ドライバー』×『キング・オブ・コメディ』なジョーカーの誕生秘話。
この作品のジョーカーは、ギャングでもなく、テロリストでもない。
マッドネスとピュリティを併せ持った社会の弱者は、トラビス・>>続きを読む
太宰治の晩年の退屈な戯画。
「ヴィヨンの妻」「斜陽」「人間失格」をモチーフに、3人の女性(本妻1人と愛人2人)との関係を中心に文豪の本性をスキャンダラスに描き出そうとしているが、華美な表現に走り過ぎて>>続きを読む
SF版『地獄の黙示録』。
『ゼロ・グラビティ』のようなスリルも期待してはいけないし、『インターステラー』のようなドラマも期待してはいけない。
ジェームズ・グレイは「闇の奥」に着想を得ていると言っており>>続きを読む