「赤ん坊は、私です」「愛撫する資格をください」「女の脚は美しくバランス良く地球を測るコンパスである」等、変態映画史に残る迷言を残した男の変態日記は、フランス文学界の色魔王ことアンリ=ピエール・ロシェの>>続きを読む
闇、汚水、蒸し返すような暑さの責め苦に喘ぐ人間の絶望、裏切り、狂気、挫折。「生き地獄だな」って思った直後に「生き地獄です」って台詞が出てきた。地獄である。溺れる者は藁をも…な汚物まみれの手のアップ、地>>続きを読む
壮大過ぎる設定をもつ未知のヒーローを観客に突きつけるには充分過ぎるキャストを揃えた流石の見映えがあったものの、新キャラクター全員まとめてヨンドゥひとりの魅力に劣るという事実。シャンチーでは商業的な力に>>続きを読む
恋、殺し、友情、謀略、暴力、死。"映画"が詰まっている。それでも感情過多にはなり過ぎずスマートに省略される映像と物語が素晴らしい。大事な場面はそのものを映さず、相対する人物のリアクションで表現される。>>続きを読む
車窓から眺める景色が走馬灯に溶け込んでいくシーンがあったのでこれは良い映画。窓に流れる景色は、自分が静止していて周囲の事物が動いているような錯覚を抱かせる。
自殺願望を拭いたかったルイ・マルの恋と革命スペクタクル。これが『鬼火』の2年後なのが凄い。ダイナマイトボディのブリジット・バルドーはアナーキストの父親ごと橋を爆破するし、悪漢にガトリングをぶっ放し、水>>続きを読む
覗きたい記録したい病的な衝動はちょっと分かるし、ショットや演出が奇想に富んでいて今見てもまあまあ面白いが、いまいちぶっ飛びが足りない。元祖的な作品に対して「今見てもつまらない」は基本的にタブーな気もす>>続きを読む
ラフな哀愁と粋な味わいにいかにも"異国"な風景はよく馴染む。曲調にあわせてカメラの動きもスローに。時間はゆったりと流れ、人物の挙動にも余裕があり、路上の野良犬までも退屈そうに寝そべったり歩いたりしてい>>続きを読む
傑作。原作とくらべた配役のイメージの違いもさして気にならない。バッハ、ヴィヴァルディの神秘的な旋律、姉弟の彫刻像のような造形が部屋じゅうに散らばるガラクタや小道具ひとつひとつに実感を宿らせ、この不可思>>続きを読む
一貫してきた機械仕掛けの無味乾燥さは健在ながら、慎ましやかなアイロニーやある種の感傷性の深化が見られるクレールの円熟期。
珍しくこの作品を絶賛したアンドレ・バザンは翌年(1958)に亡くなり、そこに>>続きを読む
文明人としての批判的感覚や論理や洗練とはおよそ相容れない、映像の素朴さや本来的な力、運動によってのみ価値を有するパロディ的性格。オペラ劇場での美しい虚実対比で魅せられ、初期映画の追っかけやドタバタに繋>>続きを読む
面白いゴダール。いや決してその激しい思想に共感できるような代物ではないけども。マシンガンのごとく撃ち放たれる挑発的な映像の断片と言語の断片の衝突、色彩とテキストの融合には本来そこ一本で貫き通すべきだっ>>続きを読む
クレールの主題の中心は、映画本来の表現形態である運動の撮影(シネマトグラフ)、及び娯楽としての視覚的イリュージョンへの回帰にあって、この作品は文明の機械化そのものへの批判ではなく、使い方さえ間違えなけ>>続きを読む
あるトラウマや社会的な抑圧によって破滅した男のあまりにも惨たらしい余生と救済的な死。公務中にチ◯ポしゃぶらせてクビになるわ、果物売りサボって酒飲むわ、浮気するわ子供の前でヨメに暴力を振るうわでとにかく>>続きを読む
滅私ロッコ。聖人は自分を守れない、現実の聖書の不可能性。戦後イタリアの奇跡的復興にはじかれ都会の片隅に散る南部一家連帯の夢。汚点どころの話ではない最悪な兄に対する無償の愛でもう涙腺崩壊です。バガボンド>>続きを読む
退屈な時間には一度身を委ねてしまえば取り返しのつかない類いの不安がずっとまとわりついている。とある貴婦人の漠然とした脱出願望と不安への陶酔。月明かりの芳香に満ちた白い幻に包まれながら、滑り落ちていくよ>>続きを読む
物語や脚本がどうこうより、もうとにかく前半部分の映像が凄すぎる。しかもラングの『メトロポリス』が同時期に制作されているという。20年代ドイツとかいう神々のいた国。
ゲーテの文学的側面よりもレンブラン>>続きを読む
『ライムライト』『独裁者』は別格として。チャップリンは寓話としての世界観を作り込み過ぎている為、作り手の個人的な感情を色濃く反映した(それこそ魂をえぐるような)奥ゆかしさというものが感じられないことも>>続きを読む
「近頃なんだか、おかしいんですよ。もうあの忌々しい過去を忘れたのか、右傾化の風潮があって。いま『肉弾』のアイツが生きていたらどう思ってたんだろうな?戦前・戦中派の異物を中心にアナーキストを集め、ボロの>>続きを読む
砦の建造を祈る生贄に選ばれた青い眼の美青年は、グルジアのDJオズマことモップ野郎が国を出て他の女と結婚したその子どもで、青年は純粋さゆえに女占い師の予言を信じて祖国へ命を捧げるワケだが、女占い師はDJ>>続きを読む
ゾンビ映画並みの不穏さで深夜徘徊するドニ・ラヴァンの破壊力に始まる2時間トップスピードのエモーション。今を全力で生きるみたいな、ある種の青臭さに作品全体の空気を毒されかねない題材で、それをはねつけるシ>>続きを読む
とにかく革命を目指しているという点以外思想も理念も明確に定まらないごっこ遊びに明け暮れる、知識と退屈に呪われたモラトリアムな若者革命家たち?分からない。
戦時の栄光を纏い死の標識塔を旋回し続ける落ちぶれた曲芸飛行士、そんな夫への愛に妄執する美しい女、横恋慕を寄せる整備士。カンケイの呪縛に巻き込まれる新聞記者。すべてがある種の作為性と卑俗性ギリギリのとこ>>続きを読む
トリュフォーらしい三面記事みたいな愛憎劇に、どう見てもロメールを意識したショット。彩度の強い室内で窓に覗く黄緑、庭園やコートサイドの風景、木漏れ日、陰影、絵画…。さらにご丁寧なことに「隣の女」は「飛行>>続きを読む
「名付け親は人妻を寝取るのがうまい(笑)」とかいう謎の煽りから突然始まる殺し合い、以降孫の代まで続く復讐の螺旋。決闘の勝者は河を泳ぎ渡り対岸に隠遁し、敗者は葬送の船によって、これもまた先祖の眠る対岸の>>続きを読む
完全なる敗北に打ちひしがれ、犬にまで同情される男マストロヤンニの暗い背中にどこか身に覚えのある寂寥を重ねる。あの束の間の夢、ぎこちない幸福に包まれたダンスは今を生きる孤独への過程だったか。
コルンプ世代とかいう戦争で無垢な青春を失った若者たちのナイーヴさがイデオロギー的な闘争心に転換していく様。昼間は労働、夜間はサボタージュ。淡い恋心すらも必然的に闘う価値へと結びついていくのが悲し過ぎる>>続きを読む
くっそカッコいい。メルヴィルみたいなハードボイルド味があり、初期のゴダールのような軽妙な無軌道さもある。というかもろに『はなればなれに』なんだけど、人物をゆったりと注視する長回しもペーア・ラーベンのハ>>続きを読む
急速な時代の変遷に取り残されていく名家の没落は、チャップリンのあの演説を想起させる。「スピードは人を孤立させ、ゆとりを生むはずの機械は貧困を作り上げ…」みたいな。旧時代に固執する傲慢なバカ息子と自動車>>続きを読む
時代を超える笑いの発想、卓越した作曲センス、ペーソスに満ちたプラトニックな愛情、奔放な動物達を自由自在に操り、猛獣とも対峙した命懸けのアクション。悪夢のように悲惨な状況設定から喜劇的要素を引き出すチャ>>続きを読む
サーク式メロドラマの鉄板。ご都合主義的な運命によって引き合わされた七光りの不純な動機の償いに、美しい色彩や情感溢れる音楽が共感を呼ぶ。
アルジェリア戦争最中にあるフランス軍への批判、解放戦線の肯定という理由で検閲に引っ掛かり、終戦まで上映禁止となっていたゴダール長編第二作。主人公の境遇や内省には『無防備都市(1945年)』の台詞(「立>>続きを読む
生死を彷徨う詩人の内省にふわふわと誘われる心地良さ。なんというか、給食を食べた午後の道徳の授業で、さてひと眠りつこうかとささやかに決意するあの時間のような…
山小屋の暖炉の前で、ドヌーヴの美顔を指でそっと撫でるベルモンドが「君の顔はひとつの風景だ…」と愛を語るシーンは、特に嘘くさい美しさが溢れていた。個人的には結構好き。
登場人物が三人の軽妙ミニマムな不倫室内劇。台詞のほとんどがギトリの早口ひとり芝居で構成されていて、考えてること全部口に出ちゃうの?ってぐらいとにかく凄い勢いで喋りまくる。記憶力と頭の回転どうなってんだ>>続きを読む
良い意味で未完成な文学の中にあるべき余白を見つけ、そこに個人の解釈を落とし込み正しく切り貼りしていくことによって新たな芸術を創造していくスタイル。