えそじまさんの映画レビュー・感想・評価 - 9ページ目

青い青い海(1935年製作の映画)

4.0

スポーツ科の学生。2人の男が1人の女を取り合うという単純明快なプロットが荘厳な自然描写によって神秘的な寓話にまで引き上げられている。自由自在にうごめく海が意思を持った巨大な生物のようにしか見えない。>>続きを読む

シャン・チー/テン・リングスの伝説(2021年製作の映画)

3.4

このレビューはネタバレを含みます

基本的にはカンフーアドベンチャー大作だったけどあの義手ソードマンがかろうじてマーベル感保ってたな

しかしそれにしても、片腕犠牲にして宇宙の半分救ったバナーの扱い…連絡先ぐらい教えてやれよ…

サマーフィルムにのって(2020年製作の映画)

3.9

映画消滅危機という現実問題(実際馬鹿にならない)をテーマにして、チグハグな茶番劇を大真面目に作っているニキビ面の青臭さというか、もっと下劣で狡猾な猿みたいな青春時代を送っていた俺にこの真っ直ぐな純白さ>>続きを読む

夏の夜は三たび微笑む(1955年製作の映画)

3.9

いつものようなベルイマンの厳格さは陰影を凝らしたショットの視覚的な強さに留まっていて、内容自体は品の良いユーモアが散りばめられた、少し毒気を含みつつもらしからぬ可愛さに包まれている(展開はエグい不倫モ>>続きを読む

幻影は市電に乗って旅をする(1953年製作の映画)

3.8

冒頭の愛嬌あるキリスト降誕劇ではブニュエルのお決まりというか、他作品でも度々登場する欲望の林檎がしっかりと描かれていた。というかむしろリリア・プラドのイヴを林檎と絡めたかったが為にこの演劇を取り入れた>>続きを読む

夏の嵐(1954年製作の映画)

3.6

イタリア統一戦争のさなかに燃える個々の熱情。目も綾な衣装や絢爛たる装飾、暗い敷石道に運河の光が揺れるアーケード、水の都ヴェネツィアの街並、また全編通して流れる情熱的な交響曲、恋の自刃に切り刻まれた夫人>>続きを読む

タルテュッフ(1925年製作の映画)

4.7

現在進行中の劇の中で劇中劇がメタ進行する王道の枠構成(この時点でもう既に使い古されているようなので)に関しては、今更観たところで何ら驚くことはないが、創意に満ちた光と影の流動、衣装・美術のディテール、>>続きを読む

恋人のいる時間(1964年製作の映画)

3.9

愛を語りたがる方と、感じたがる方。過去を記録する方と、今を生きる方。結婚生活(愛の周期性)の否定。自制できない力によって突き動かされる幸福。

若い娘(1960年製作の映画)

4.3

蜘蛛、死体、雌鳥、林檎、美脚、靴。お決まりのブニュエル的ド変態遊戯を存分に発揮した男女の関係を描きつつ、まさかの反人種差別的なテーマが物語の筋になっている。その気があるのかどうかは本人のみぞ知ることだ>>続きを読む

巴里の女性(1923年製作の映画)

3.9

チャップリンもいなければ笑いもないチャップリン映画。ちょっとした仕草や視線、情景の暗示でストーリーや人間心理の綾を映し出した省略の美学。当時の技術でこんな芸当が出来るのはグリフィスかチャップリンぐらい>>続きを読む

ベリッシマ(1951年製作の映画)

3.7

娘をスターにすべく奔走する毒親が危機一髪早期改心するまでという庶民の悲哀を描いた、初期ヴィスコンティの喜歌劇。喋ってないと死んじゃうの?ってぐらい喋り続ける機関銃かあちゃんを演じるのは『無防備都市(1>>続きを読む

不安は魂を食いつくす/不安と魂(1974年製作の映画)

4.4

お互いにもうちょっとやさしくなりましょう。でないと生きる意味がない。不自然にまで組み立てられた空間と色彩に目を向けて恍惚としましょう。分かりやすく通俗的な物語を欺瞞と捉えるよりも、素直に愛の可能性をよ>>続きを読む

砂漠のシモン(1965年製作の映画)

3.9

実在の聖人である登塔者シメオンの柱頭苦行伝説をモデルにした、カラマーゾフよろしく荒野における悪魔の試練。結果、悪魔の完全勝利。機械万歳、スピード万歳、堕落万歳、人間万歳!

最後の人(1924年製作の映画)

3.8

失われた権威と誇りに妄執する老人は、分かりやすい嘲笑によって殺せる。第一次敗戦後のハイパーインフレからナチスが誕生するまでの20年代ドイツという魔境で制作され、当時の社会情勢を個人の感情と重ねたような>>続きを読む

皆殺しの天使(1962年製作の映画)

4.1

この魅力的なタイトルは、制作中のブニュエルが偶然耳にして気に入っただけであって大した意味はないそうだ。原案時点でのタイトルは『プロヴィデンス(神の摂理)通りの難波者たち』であり、物語はそういった何か超>>続きを読む

ムーラン・ルージュ(2001年製作の映画)

3.2

カメラの主張激し過ぎだし絢爛なセットも衣装も何もかもうるさいけど、絵に描いたような悪人公爵のゲイリー・オールドマンいいな、って思っていたら全然違う俳優でした。若きニコール・キッドマンの美貌とユアン・マ>>続きを読む

ざくろの色(1971年製作の映画)

4.6

叶わぬ愛に燃える詩人の内省、死という安息に向かう色と詩と魔術と大地の奔流。

タルコフスキーよろしく言語化の域を超越した芸術的シコシコワールドを堪能できる選ばれし者(変人)だけが観ることを許される禁断
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帽子箱を持った少女(1927年製作の映画)

4.0

初ボリス・バルネット。当時ソ連人民委員部に支援を受けた宝くじ付国債の宣伝作品だそうだが、テンポ良し、アクション良し、ギャグ良し、絵作り良しで映画として面白い。
サイレントにおける空っぽの密室という縛り
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キッド(1921年製作の映画)

3.9

ドタバタ喜劇と涙の結合という形式を王道にした元祖的な存在。自伝によると、唐突で違和感のある夢のシーンはジェームズ・バリーの三幕戯曲「シンデレラの接吻」へのオマージュとのこと。

ビリディアナ(1960年製作の映画)

4.2

敬虔な修道女ビリディアナの陥落による宗教の敗北。当然フランコ政権下のスペインでは上映禁止、大衆は誹謗・攻撃の嵐を浴びせ、ヴァチカンやイングランド(サリー州)、ローマやミラノでもプリントが没収、ブニュエ>>続きを読む

アルチバルド・デラクルスの犯罪的人生(1955年製作の映画)

4.5

作中アルチバルドが死神だと信じるオルゴールの魔力は、客観的において(あるいはメタ的に)偏執に基づく空想に他ならない。性と死の同居を前にした異常な感情を最大の悦びとする偏執性。外観的にはそれが足へのフェ>>続きを読む

昇天峠(1951年製作の映画)

3.9

このレビューはネタバレを含みます

周囲の反対を乗り換えて無事婚姻、「初夜を無人島で過ごすなんて…」「あなたと一緒なら無人島も宮殿だわ♡」のメキシコ式(?)新婚ロマンスがオフクロの危篤によって秒で幕を閉じ、合法的遺産争奪を目指すバスツア>>続きを読む

ランジュ氏の犯罪(1936年製作の映画)

3.7

「何がランジュ氏をさうさせたのか?」的な、あるペテン師の殺人を巡る小市民回想劇。殺伐としたプロットの背でワイワイガチャガチャ騒ぐ市井の人々はいかにもルノワールで、そういった喜劇性から真面目さへの、ある>>続きを読む

スサーナ(1950年製作の映画)

4.0

嵐の夜に、州の感化院を脱獄し裕福で平穏な農場に流れ着いたスサーナが、そこに住まう男達を誘惑し尽くし、欲望のままに楽園と秩序の破壊を目論む。目も眩むような美しい肉体を存分に活かし、次々と男どもを籠絡して>>続きを読む

ストロンボリ/神の土地(1949年製作の映画)

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イングリッド・バーグマンと大地の美しさに釘付けだった低俗な俺なんかは神どころではなく、突如海面に踊り出て闘牛のごとく暴れ狂い、銛で突かれまくるあのマグロの大群に度肝を抜かれたのである。あれは一体何だっ>>続きを読む

暗黒への転落(1949年製作の映画)

3.6

初期のニコラス・レイ。どんな悪人であっても生まれ落ちたその瞬間は善性を持っておりそれを生かすも殺すも環境次第であるという、当時でも既に散々使い古されているテーマをよりストレートに描いた法廷モノ。やや演>>続きを読む

さよなら子供たち(1987年製作の映画)

4.5

大人から見る子どもの内面の真実といったような一種の「決め付け」を軸にしたドラマチックな展開はなく、ルイ・マル自身が少年期に体験したのであろうありのままの内面が、何故か一種の普遍的な共感性をもって綴られ>>続きを読む

ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ザ・ウェスト(1968年製作の映画)

4.0

周知の通り、セルジオ・レオーネは映画における”間”の大切さ、静と動のコントロールの妙を分かりやすく見せつける監督の一人であり、汚いおっさんの顔面のアップとワンショットで繋ぐ息苦しい時間が銃声によって破>>続きを読む

暗殺のオペラ(1970年製作の映画)

3.9

ボルヘス原作、ベルトルッチ監督の不条理サスペンス。反ファシズムの英雄である主人公の父親が死んだ時から、たぶんこの村の時間は止まっている。これがタルコフスキーの『ストーカー(1979年)』や『ノスタルジ>>続きを読む

パリの恋人(1957年製作の映画)

3.0

芸術の都を土足で踏み荒らすアメリカ文化の縮図。「セットじゃねぇぞ!現地ロケだオラァ!」って感じで踊り狂ってるところが特に典型的でウケる。どう見ても序盤の質素なオードリーが一番美しいんですがそれは…

パリジェンヌ(1961年製作の映画)

3.7

軽やかで、きらびやかで、小悪魔なパリジェンヌたちの可愛さ全振りオムニバス。これが実質主演デビュー作となったカトリーヌ・ドヌーブにどうしても目がいってしまうものの、他の挿話も普通に可愛くて楽しい。親友の>>続きを読む

バーバー(2001年製作の映画)

3.7

とある理髪師の日常崩壊。終始付き纏う厭世感にモノクロとベートーヴェンがうまくマッチしていてコーエン兄弟らしいブラックユーモアもある。マクドーマンドの容姿が今とほとんど変わらずゴリゴリなのもあって相対的>>続きを読む

狂った一頁(1926年製作の映画)

3.3

おそらく最古であろう日本シュルレアリスム。ブニュエル&ダリの例のアレよりも先にこれを作っているのは凄いけど、いかんせんこの手の前衛作品(しかも内容がクソ重い)で1時間越えは精神的にキツイ。15~20分>>続きを読む

突然炎のごとく(1961年製作の映画)

4.8

ゆがんだ恋愛観に、沸き立つような軽快な音楽、アメリカB級映画古典のような劇的な演出の強弱によって、ある種の軽々しさのようなものが自然に添えられたトリュフォーにしか表現出来ない唯一無二な映画。


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最後にして最初の人類(2020年製作の映画)

4.0

旧ユーゴスラビア共和国の共産主義時代に、イデオロギーへの象徴として建てられた幾何学形の巨大モニュメント群「スポメニック」、原作から引用される"第18期人類"(ティルダ・スウィントン)の20億年後からの>>続きを読む