友情とも愛情とも呼べない、人間の関係性がふた通り示される。
一つは、ディスコミュニケーションのうちに展開され、もう一つは、的確なコミュニケーションが発生するものだ。だが、二つとも根本的には同様であると>>続きを読む
スミレさんに、マモちゃんに、そして過去の自分に対して、ラップバトルがはじまったあの瞬間のゾクゾクが、この映画の全てだった。
想像以上に、シンプルで分かりやすい話になったのは、サバービアがステレオタイプ的に描かれることに不自然さを感じたところから、予想がついていたかもしれない。50年代を思わせるが、でも没個性的な典型的な世界>>続きを読む
上映が終わって、余韻もない中、劇場の明かりがつく。すると、場内の雰囲気がパッと緩んだ。暗闇の中で、みな我慢していた感情が、ここで爆発したようだった。高い声で話すもの、笑うもの、頷き合うもの… 緩んだ雰>>続きを読む
象と共に暮らすことが、まず第一にシステムとして仕事になっている。はぐれた象をはじめ、野生の象との共生を目指すための試みは、まず「象使い」という仕事として、経済的に成り立っていることに注目したい。ペット>>続きを読む
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そう、宇宙はどこまでも続いている。だが、「小さくて愚かな」人間であることは変わらない。
その宇宙の一部分、いや、大半は、生命体が存在しない惑星だという。そこではエブリンもジョイも、石であった。正直、>>続きを読む
「女性を守る」という、歴史あるイデオロギー的な考えが、貧困と格差、受験戦争とイジメという現代社会を体現する言葉に絡められ、非常に新鮮な感覚で更新されている。
「守られる」ことは、決して弱いからではない>>続きを読む
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面白く、よくできた映画である。コメディ要素を強く出しながら始め、テンポ感で映画のスピードを上げていく中で、どんどん味が染み込んでいく。気づいたら壮大なテーマに踏み込み、これがただのユートピアではないこ>>続きを読む
「犯罪」とは、非常に恣意的に構築されたものだということを、何度も何度も、嫌というほどに思い知らされる。「犯罪」とは、歴史と社会のなかで、作られ凝り固められてきた。それは人種差別的な価値観をベースにし、>>続きを読む
なんて秀悦な物語なのだろう…!ずっと観たいと思っていた作品は、間違いなく裏切らなかった。最初からこの映画が「優勝」だということは分かってる。そう、わかりきっている…!テンポ感のよいオープニングは第一条>>続きを読む
言葉を発していくこと それは世界を変える一歩なのか
何も大きな悲劇はない。だからこそ、それは何にも変え難い悲劇になる。
誰も死なない。幸せな生活に見える。十分に過ごせる。貧困に陥っているわけではない>>続きを読む
何も起こらない
言うなれば、ずっと「起」がある。誰かが加わっていくたびに、物語は動いていきそうだが、少しの変化はありつつも、そのまま、そのまま。派手なことは起こらない。ここには、なんの欲望もない。女3>>続きを読む
長い付き合いは、気だるい。
どうしようもなさから離れられない。時代が、社会が、そして自分が変わっていくはずなのに、どうしても素直に受け入れられない。
遠巻きに観る彼らは、止まる景色のなかで、もがき続>>続きを読む
食べることをテーマにしたこの映画は、まさにバイキングに行っているかのような作品だった。そう、途中に何度か示されるような、格式ばったフレンチ料理のフルコースではない。バイキングだ。さまざまな料理が混ざり>>続きを読む
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「自分のことが嫌い」という強烈な告白から正直に始まるこの物語は、終始、杏奈の世界の中で展開される。本当にそうなのだ、最初から最後まで、杏奈は常に告白や対話を続ける。そしてその旅路の先に見つかったのは、>>続きを読む
子ども向けと思いきや、かなりグロテスクな傑作だった。さまざまな歴史と議論がある捕鯨という行為を、パステルカラーの子どもの想像力で覆う事の気味の悪さ。
子どもたちはクジラを食べることはせずに、対話をして>>続きを読む
ぐにゃぐにゃだった身体に、真っ直ぐな線が見える。
すごい映画を見た。身を乗り出して、その結末を待った。
私は自らの身体の変化を経験しているからこそ、ぐにゃぐにゃの脂肪の塊が、筋肉の塊へと変貌することの>>続きを読む
このレビューはネタバレを含みます
手紙の内容はもちろん、二人の関係性の親密さに、私たちは図々しく立ち入ることはできない。
そのことを最後に気付かされることは、憎いし、ずるいとまで思う。
二人の関係性は偶像でも抽象でもなく、リアルなも>>続きを読む
寅さんが現れて欲しい、私の不幸を一発振り落として、そして揺さぶって欲しい。「インテリ」青年に少し自分を重ね、寅さんの到来をいつまでも待つ。