コービーブラックさんの映画レビュー・感想・評価

コービーブラック

コービーブラック

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トリとロキタ(2022年製作の映画)

4.1

アフリカからベルギーに来て、安住の地を求める「姉弟」を描く社会派サスペンス。終始、二人の絆や心に寄り添うようなカメラが秀逸。背中を見せる時にだけ街は映る。ここに逃げ場はない。選択肢はない。辛い。だけど>>続きを読む

エンパイア・オブ・ライト(2022年製作の映画)

3.6

舞台は1980年代イギリス。花火が照らす海辺の街と照明が灯る名画座。ロジャー・ディーキンスの撮影が最高だ。人生の暗い部分に光を当て、煌めく一瞬を切り取る。批評家筋では脚本にケチがつくらしいが、重要なこ>>続きを読む

フェイブルマンズ(2022年製作の映画)

4.0

スピルバーグの業。映画に愛されることは、やがて青年期の心をズタズタにする呪いでもある。家族、友達…カメラを向けると「物事の本質」を図らずも映してしまう。物語が進むにつれ、本質ではなく、ある視点であると>>続きを読む

イニシェリン島の精霊(2022年製作の映画)

3.7

アイルランドの孤島で対立する友人同士の物語。でも対立(戦争)によって翻弄される脇役たちこそ本当の主人公でしょう。暴力に傾かず、人生を少しでも良くしようとする妹やドミニクのことを誰が馬鹿に出来るのだろう>>続きを読む

LOVE LIFE(2022年製作の映画)

3.6

正しいこと、間違っていること、とかく白黒をつけたがる私たち。法的には問題がなくても誰かを悪者にせずにいられない。この映画は登場人物の誰も断罪しないのが心地良い。それぞれの立場や価値観をスケッチして、極>>続きを読む

激怒(2022年製作の映画)

2.5

「勝ち負け」が全てな新自由主義が支配する日本において痛快な娯楽作。自由にやりたいようにやる。ジョン・カーペンターイズムに興奮。色彩感覚も抜群だ。

NOPE/ノープ(2022年製作の映画)

3.3

面白い!見せ物小屋たる「映画」や「シットコム」において搾取されてきた人々や動物をモチーフにした社会的イシューをスペクタクルに取り込む知性よ。ジョーダン・ピール恐るべし。官能や猥雑さはない。

灼熱の魂 デジタル・リマスター版(2010年製作の映画)

4.1

痛々しい、胸が苦しい…。中東の内戦と宗教対立に翻弄された母の悲劇の真実に兄妹が迫る。リアリティのある戦争映画でありながら、真実に近づくミステリー要素が物語に引き込む。荒廃とした風景の画作り、過去と現在>>続きを読む

星の子(2020年製作の映画)

3.0

カルト宗教に嵌る家族の物語。子どもへの愛情から始まり、やがて虐待に変わる。寒気がする。芦田愛菜が演じる宗教2世が結婚や将来を語るとき、胸が張り裂けそうになる。明日があるというだけで「普通の恋」は素晴ら>>続きを読む

フリー・ガイ(2021年製作の映画)

4.0

ゲームを扱った娯楽作で「タイムリープもの」を最新にアップデートしている。メッセージも切実。主人公はモブ(背景)キャラだ。自我が芽生えたら…どうなる?自らの意志で生きることで、自分の人生の主人公になる。>>続きを読む

ザ・スイッチ(2020年製作の映画)

2.6

女子高生と殺人鬼が入れ替わるホラーコメディ。くだらねえー!…ただ、身体的な変化と共にルッキズムや同性愛などに目配せしていて現代的だし、スラッシャー描写満載で説教臭くない。何より殺される人選とやりすぎな>>続きを読む

暴力脱獄(1967年製作の映画)

4.2

器物破損で捕まったルークは、重罪でもないのに脱獄を繰り返す。戦争で人を殺めた過去を持つルークは自由を奪うものが許せない。暴力にいつも笑顔で抵抗してみせる。「カスでも良い手(クールハンド)になる」のを証>>続きを読む

ロング・グッドバイ(1973年製作の映画)

3.8

私立探偵マーロウは友人が疑われる妻殺し事件を追う。気ままな猫、マッチで燻らすタバコ、ヨガをする半裸の女、シュワちゃん…全て本筋と関係なし。物語より詩的な表現。ジャジーな劇伴と華麗なカメラワークで魅せる>>続きを読む

本気のしるし 劇場版(2020年製作の映画)

3.9

浮世という女性を助けたことから、サラリーマンの辻は恋に落ち翻弄されていく…。この映画に流れる哲学が好きだ。登場人物は臆病だったり、後ろめたいことをしているが、一方で優しくもある。そして、浮世を悪女とせ>>続きを読む

ヒッチャー ニューマスター版(1986年製作の映画)

4.4

ヒッチハイクで乗せた殺人鬼に美少年が追い回されるサイコ・スリラー。緊張感の塊のような一本。荒野に降る雨、靄、夕焼け…心の内を映すような映像も美しい。なぜ追い回す…?これはマッチの火から燃え上がる歪んだ>>続きを読む

オーメン(1976年製作の映画)

3.5

死産した子の代わりに引き取った悪魔の子を巡る物語。救いようのない話でも感動するのは、洗練された劇伴と恐怖描写に宿るサービス精神が心を打つから。「悪魔」で怖がらせる緻密な演出力は「ヒーロー」で興奮させる>>続きを読む

Swallow/スワロウ(2019年製作の映画)

3.7

誰もが羨む生活をするヒロインだが、異物を飲み込むことでしか自分を保てない…。これは倫理観を揺さぶられる「劇薬」だ。ヒロインに肩入れし過ぎるのは危険すぎる。果たして正しい決断をしたか、自分が夫なら救えた>>続きを読む

ハッピーアワー(2015年製作の映画)

5.0

港町・神戸を舞台に人生に向き合う37歳の女性4人の姿を描く。トンネルを抜けた先、霧がかった風景が象徴するのは、不透明な未来。親友や夫婦や親子だとしても、他者は「分からない」ことだらけ。それでも「分かり>>続きを読む

無頼(2020年製作の映画)

2.5

日本戦後史と並行させながら、裏社会を生きる漢の生涯を描く。これは俳優陣の演技合戦を見るだけで価値がある(特に、柳ゆり菜は最高!)。悪役顔のオンパレード、軽妙な台詞回し、趣向を凝らしたバイオレンス。見所>>続きを読む

ミッシング・リンク 英国紳士と秘密の相棒(2019年製作の映画)

3.8

イギリス貴族の探検家とビッグフットによる冒険の旅。謎のキャラ造形に戸惑ったが、凸凹な二人のバディ感が最高だ。貴族社会で孤立しても、自然界で孤立しても、どんな状況でも自分が信じた道を進む二人が愛おしい。>>続きを読む

KUBO/クボ 二本の弦の秘密(2016年製作の映画)

4.0

三味線を使い特殊な力を操るクボが父母の仇を討つ旅に出る。なんと美しい構図と色彩の連続。これだけ細部への拘りを見せられると「物語」と共に「作り手の絆と情熱」もヒシヒシと伝わり涙した。それが「物語を紡ぐ」>>続きを読む

VIDEOPHOBIA(2019年製作の映画)

3.6

性的な盗撮動画をネットに流出された女性の心情を描いたスリラー。モノクロの映像、寄り画中心の撮影、不可思議な背景や小道具が紡ぐ緊張感がヒロインの生きづらさを伝える。
それでも重低音な音楽とソリッドな編集
>>続きを読む

ストレイ・ドッグ(2018年製作の映画)

2.0

ニコール・キッドマンが酒浸りの女刑事を演じるフィルムノワール。見所は多い。ミステリー仕立ての脚色、無駄のない編集、主人公の変貌を伝える特殊メイク。しかし…それがハードボイルドに不可欠な「むき出しの生々>>続きを読む

ウルフウォーカー(2020年製作の映画)

4.5

アイルランドに移り住むハンターの娘と狼を体に宿す少女との物語。絵画のような美しいタッチに息をのみ、ラフで躍動的なアクションに圧倒された。主観で「自由」な未知の世界を追体験、「牢獄」のような社会で翻弄さ>>続きを読む

燃ゆる女の肖像(2019年製作の映画)

3.8

18世紀、フランスの孤島を舞台にした女同士の恋。未知なる「海」に飛び込む勇気と、燃え上がる「炎」のような恋心を描写した画面設計はひたすら美しい。見つめ合い、心を通わせていく二人は、儚い終わりでも、幻想>>続きを読む

バクラウ 地図から消された村(2019年製作の映画)

4.0

ブラジル辺境の村への侵略と人々の抵抗を描く。道端の棺桶、悪徳政治家、UFO⁉︎…何これ、展開が全く読めない。縦横無尽のカメラワーク、民族楽器にシンセ、ハエの音も活かす音響、様々なアイデアをぶち込む前人>>続きを読む

コードネーム U.N.C.L.E.(2014年製作の映画)

3.4

米ソの凸凹コンビのスパイが核開発に関するミッションを遂行までを描く。60sのオシャレな音楽とファッション、時間軸も入れ替える細かい編集。隅々までスタイリッシュな様式美が行き届いている。おまけに軽妙なタ>>続きを読む

トータル・リコール(1990年製作の映画)

4.2

アクションや美術はとにかく過剰で遊び心満載の名シーンがこれでもかと続く。一方、過去より今を信じる大切さを描くなどテーマは切実。人間とミュータントが同居する様はユートピアのよう。人もバンバン死ぬし、ヴァ>>続きを読む

ラブホテル(1985年製作の映画)

3.3

「お金が全て」のバブル前夜。借金苦で自暴自棄になった男と風俗嬢とのロマンス。借金、解雇、不倫…社会との軋轢の中で「生」へと繋ぎ止めるのは性愛を通して分かちあう異性。エグめなベッドシーンと共に、ロマンチ>>続きを読む

ヒート(1995年製作の映画)

4.2

デ・ニーロ演じる強盗団のボスと、アル・パチーノ演じる刑事の対立を描く。対照的に見え、実は「仕事に憑かれた」似た者同士の二人。そして、銃撃戦とラブストーリーを対比。ある時は冷酷で、ある時は優しい。殺し合>>続きを読む

ザ・ハント(2020年製作の映画)

3.3

富裕層が人間狩りをするスリラー。表現方法は、エグいし、グロいし、バカバカしいが、描かれるテーマは尊い。「極端な思想」で互いに分かり合おうとしないことを批判している。しかし、作品自体は、思想は関係なく誰>>続きを読む

罪の声(2020年製作の映画)

1.5

グリコ森永事件をベースにした社会派ミステリー。エンタメとしては上出来だが、悩ましいのがテーマとの相性。「劇場型犯罪を面白がる人々によって葬られる被害者」を描くマナーとして、バディ物に仕立てた脚本、クレ>>続きを読む

君の名前で僕を呼んで(2017年製作の映画)

4.3

イタリアの田舎町を舞台にした恋。水辺の風景に蝉の声、一瞬の夏をパッケージしたような美しさと共に正直に生きることの尊さが描かれる。そして冬、暖炉の灯が象徴するのは少年を見守る家族の温かい眼差し。自分にと>>続きを読む

ハッピー・デス・デイ 2U(2019年製作の映画)

2.5

タイムループによってヒロインの成長を描くホラーの続編。コメディ色を強め、謎のSF要素も盛り込んだエクストリームな展開で予想を裏切る。その分、怖さもなくなったが「続編」特有のファンサービス溢れる過剰演出>>続きを読む

ハッピー・デス・デイ(2017年製作の映画)

3.2

舐めてました…作中でも言及している通り『恋はデジャ・ブ』のホラー版という様相だがラブコメのツボも押さえ、タイムリープ物の芯の部分…同じことを体験することで、失敗したらどう乗り越えるか?大事なものは何か>>続きを読む

レディ・バード(2017年製作の映画)

3.3

グレタ・ガーウィグ監督作。母の押し付けや学校の厳しい校風に反抗して生きる女子高生。彼女が作り上げたレディ・バードというキャラが背伸びして受験や恋と向き合う姿は痛々しくも清々しい。丁寧に人間を描いている>>続きを読む

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