甲越さんの映画レビュー・感想・評価

甲越

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ほかげ(2023年製作の映画)

4.2

戦争という常軌を逸脱した空間の中でおぞましい体験をした人が、精神の安定を破壊され、廃人となってしまう恐ろしさとやりきれなさのようなものをストレートに描いている。日本は敗戦から立ち直り、復興を果たすこと>>続きを読む

翔んで埼玉 ~琵琶湖より愛をこめて~(2023年製作の映画)

3.9

とにかく面白い。この映画の意義などはなく、ただ笑えるバカバカしさがいい。そしてこのナンセンスさを映画のスクリーンで派手にぶちあげるところがいい。これはテレビでは到底到達できないことで、ある意味、映画の>>続きを読む

ゴジラ-1.0(2023年製作の映画)

4.1

ゴジラを主役とせずに、戦争を未消化なわだかまりとして抱える主人公の物語としたことがよかった。そして人々が敗戦から立ち上がり、やっと取り戻しかけた日常が、無惨にも破壊されていくシーンに漂う絶望感や虚無感>>続きを読む

リボルバー・リリー(2023年製作の映画)

4.1

綾瀬はるか主演で、用心棒として少年を守る過程でその少年の成長を促すストーリーは、「精霊の守り人」に重なるところが多く、とても良かった。やはり綾瀬はるかはアクションを決められる稀有な日本人女優だと思う。>>続きを読む

水は海に向かって流れる(2023年製作の映画)

3.8

感情を押し殺し、いつも不機嫌そうに生きている千紗を広瀬すずが抑えた演技で好演している。これまでの彼女のイメージとは違った役柄で、彼女のポテンシャルの高さに驚いた。
ストーリーは高校生男子が夢想しそうな
>>続きを読む

ぼくたちの哲学教室(2021年製作の映画)

4.0

この映画の舞台であるホーリークロス男子小学校は宗教闘争の傷痕が色濃く残り、犯罪と薬物がはびこる絶望的とも思える地区にある。こうした環境下にあってもケヴィン校長は、暴力による問題解決という負の循環を改め>>続きを読む

パリタクシー(2022年製作の映画)

4.1

壮絶な過去を回想していくとき、誰か話しを聞いてくれる人がいた方がいい。相手は要領は良くなくても、他人の痛みや悲しみがわかる人がいい。そして思い出の場所を巡る旅がいい。これらをひっくるめると、老婦人と訳>>続きを読む

シン・仮面ライダー(2023年製作の映画)

4.1

文藝春秋5月号に掲載された「シン・仮面ライダーを解剖する」と題した論説が興味深い。筆者の太田啓之記者は原作者である石ノ森章太郎が描いた漫画版仮面ライダーはテレビ版よりもはるかにペシミスティックで、死の>>続きを読む

仕掛人・藤枝梅安2(2023年製作の映画)

4.3

第一作を「静」とすれば、第二作は「動」。時代劇ならではの迫力ある殺陣は見ごたえがあった。仕掛人は運命の惨さ、悲しみ、そして自分だけが生き残っていることの罪悪感を抱えて生き抜いていく。そして仕掛人が踏み>>続きを読む

エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス(2022年製作の映画)

4.1

多くの人は別宇宙では自分が輝いていることを夢想するのだと思う。ただ現実は厳しくどうにもならない自分自身に失望してしまう。それは自分だけでなく、家族や友人など身近な人も同じで、皆が思い悩んでいる。大切な>>続きを読む

コンパートメントNo.6(2021年製作の映画)

4.2

列車の終着駅であり、北極圏に位置するムルマンスクで迎えるクライマックスがとても良く、ラストのワンカットにこの映画の素晴らしさが凝縮されている。そして映画館を出た後にこの映画の余韻がじわじわとやってきて>>続きを読む

FALL/フォール(2022年製作の映画)

4.0

高所恐怖症の私には気を失うようなとんでもないシチュエーション設定に加えて、観る側に緊張感を強いるアングルの連続に身体が強張ってしまった。さらに主人公はこの状態で知りたくもない事実が突きつけられ、精神状>>続きを読む

仕掛人・藤枝梅安(2023年製作の映画)

4.2

とにかく配役が豪華で素晴らしい。豊川悦司と片岡愛之助は見事な当たり役だと思う。梅安は冷酷に仕掛を遂行する一方で、どこか人との繋がりを求め心の安らぎを得ようとしているところがいい。彦次郎との信頼関係を確>>続きを読む

非常宣言(2020年製作の映画)

3.9

緊迫したシーンの連続、特に制御不能になった航空機の墜落シーンが凄まじく、図らずも肩に力が入ってしまい、呼吸をすることを忘れてしまったかのようだった。まさに韓国映画の真骨頂だと思う。犯行理由があやふやな>>続きを読む

パーフェクト・ドライバー/成功確率100%の女(2020年製作の映画)

4.0

裏業者に脱北者、これに腐敗した権力組織と韓国映画ならではの要素が組み合わされ、スリリングな場面展開と迫力満点のカーチェイスがとても面白かった。過酷な運命を持つウナは自分の殻に閉じ籠もり孤独に生きていた>>続きを読む

ケイコ 目を澄ませて(2022年製作の映画)

4.3

日経と読売の評価が高かったので観てみたら、期待以上に良かった。主人公は聴覚障碍者だが、この映画にはいろいろな音があって、抑え気味で淡い映像に凄く効果的に思える。ミットやサンドバッグを叩く音はボクシング>>続きを読む

RRR(2022年製作の映画)

4.4

とてつもなく面白い映画で極めてエンターテイメント性が高い。エンターテイメントのあらゆる要素をサービス精神旺盛に盛り込んだところはハリウッド映画すら凌駕していると思う。奇想天外、二転三転するストーリー展>>続きを読む

千夜、一夜(2022年製作の映画)

4.1

田中裕子が桟橋で遠くを見ているパンフレットに魅せられて観たが、なかなか重いテーマの作品だった。何のあてもなく、失踪の理由も判らずに、ただ待ち続けることがいかに辛いかが切々と伝わってくる。何よりも新しい>>続きを読む

線は、僕を描く(2022年製作の映画)

4.0

凄く実直な映画だと思う。横浜流星の抑えた演技が良く、自分の生き方を模索していくひたむきさがストレートに伝わってくる。原作が良かったので観に来たが期待以上に良い作品だった。水墨画実演の迫力や躍動感、ひた>>続きを読む

百花(2022年製作の映画)

3.9

原作が文藝春秋に連載された際にいい小説だと思ったので、今回の映画化は楽しみだったし、見てみると期待以上に良かった。川村元気氏が表現したいことが、小説ではやや抑制気味であるのに対して、映画ではかなりスト>>続きを読む

きっと地上には満天の星(2020年製作の映画)

4.3

自分の想像を越えるエンディングは物凄く切ないのだが、自分としてはとても良かった。邦題はもちろん素敵だと思うが、原題の「Topside」に込められた意味は何なのか考えさせられる。どのような境遇であっても>>続きを読む

モガディシュ 脱出までの14日間(2021年製作の映画)

4.3

臨場感に溢れ、迫りくる緊迫感に圧倒される。エキストラの数が半端なく迫力満点の映像に圧倒された。2021年度韓国映画興行No.1というのも素直に納得でき、これだけエネルギッシュな映画は久しぶりに見た。ア>>続きを読む

PLAN 75(2022年製作の映画)

3.9

今、世界は米国型資本主義こそが万能で、これに対応できないものが脱落していくことはやむを得ないという風潮が蔓延り、格差がますます拡がっている。そこではすべての尺度が生産性であって、これが突き進むと収入や>>続きを読む

ベイビー・ブローカー(2022年製作の映画)

4.3

ソン・ガンホが演じる主人公は犯罪者であり、確かに悪いやつのはずだが、完全にそうとも思えないのは、捨てられた赤ん坊を売り渡すことは、案外その赤ん坊にとっていいことなのかもしれないからだろうか。この主人公>>続きを読む

東京2020オリンピック SIDE:B(2022年製作の映画)

3.9

SIDE:Aが期待していた以上に良かったのでこちらも観賞したが、自分としてはSIDE:Bの方がより良かった。コロナ禍での開催に加えて、何か呪われたかのように運営組織が崩壊していく様が淡々と映し出されて>>続きを読む

はい、泳げません(2022年製作の映画)

3.5

映画を観る前に原作を読んだが、映画はなるほどと思うストーリー展開に仕立てられていてこれはこれで良かった(ただ静香コーチのトラウマはちょっとやり過ぎかと思う)。自分は水泳か得意ではないので、原作を読んだ>>続きを読む

東京2020オリンピック SIDE:A(2022年製作の映画)

3.8

今回の東京大会については、日本選手団の活躍に乗じたマスコミの過熱ぶりが開催反対の声をかき消し、コロナ禍でも開催する意義についての議論が停止したと思う。そもそもオリンピック招致の意義はなんだったのか極め>>続きを読む

大河への道(2022年製作の映画)

3.8

期待以上に楽しめ、とても良質な娯楽映画だと思う。200年前に正確無比な日本地図を制作したとされる伊能忠敬とその弟子たちによる偉業にはただただ驚嘆するが、これを単なる時代劇とせずに、現代からの視点で、伊>>続きを読む

シン・ウルトラマン(2022年製作の映画)

4.2

再放送を含めて初代ウルトラマンを見てきた私にとっては、これこそがウルトラマン本来の姿だと深く感銘した。初代ウルトラマンのエピソードを組み合わせた構成を嬉しく思いつつも、単なる懐古主義ではなく、ウルトラ>>続きを読む

ドライブ・マイ・カー(2021年製作の映画)

4.2

家福はみさきの過去を知ることで、これまで目を背けていた自分自身の内面を認めることができた。家族であっても他人の心はすべて理解できないのだから、まずは自分自身をしっかりと理解して、それを相手に発信するし>>続きを読む