アイスランドの広大な農場。羊飼いの夫婦には、隠された秘密がある。
その秘密が隠蔽されたまま、幻想的な風景が横たわる。
そこに人間の身体をした子羊が、何かの予兆を伺わせる。
それだけで十分恐怖を募らせる>>続きを読む
バブルってひとことで言うけれど、みんながみんな、バブルがはじけておかしくなったわけではない。
左遷、離婚とひとことで言うけれど、みんながみんなそれを挫折と認識するわけでもない。
仕事がうまくいかないと>>続きを読む
私たちには世界の片面しか見えてないと思うんだよね。
すみれは真奈に言う。
表の片面は、たとえば新入生歓迎で賑わう大学キャンパス。
ひときわチャラチャラキャラが多いテニス愛好会の面々。
四年間の青春を謳>>続きを読む
苦悩とか葛藤とかは個人的な体験だ、と誰しも決めつけている。
だが、アルモドバルにかかるとそうじゃない。いつのまにか民族や国家にまで発展していく。
愛一つとってもそう。彼にかかると男女とか超えて、全人類>>続きを読む
17年飼ったカメが、甲羅干しをさせているうちに行方不明になり、早一週間。
カメにとっては、自由になれて良かったのだろうと思う反面、言い知れぬ喪失感に襲われて、毎日悲嘆に暮れている。
そんな心境の時にこ>>続きを読む
9.11がもたらしたアメリカの逆襲。
気持ちは痛いほどわかる。ただ、それが罪のない者までに及ぶと、そのやり方は明らかに間違っている。
民主主義の国が、自ら民主主義を壊していく。
グアンタナモ収>>続きを読む
シャラマン作品や、同じ北欧の「ミッドサマー」はまだ理解できるが、本作の幼い子供が織り成す超常現象は、ちょっと理解の域を超える。
大人は蚊帳の外で、子供たち同士が超能力の出し合いを行うと、分別がついてい>>続きを読む
終戦から11年もの間シベリアに抑留され、ダモイ(帰国)を果たした日本軍兵士たち。
しかし、その中には、ダモイを果たせなかった人々もたくさんいる。
そこに焦点を当てた辺見じゅんの原作を読み、感動を>>続きを読む
フランスの監督らしい幻想的な戦争風景。
テレンス・マリックの「シン・レッド・ライン」をも彷彿とさせる戦争の静かな狂気。
陸軍中野学校出身の小野田さんにとって、戦争はいつ何時も秘密戦。
「絶対>>続きを読む
時代は大正時代の末期。戦争による利権獲得か国際協調による経済成長か。
二者択一で対立する帝国陸軍と帝国海軍。
帝国海軍の戦争回避論者山本五十六の思惑。
関東大震災後の昭和にさしかかるこの時代こそが、>>続きを読む
「悪意のない石を積み上げるのだ」
主人公の亡き母親の叔父の言葉が心に響く。
悪意のある石を積み上げたから、人は人を傷つけてしまうのか。
悪意のある石を積み上げたから、戦争が起こったのか。
悪>>続きを読む
生と死の間にひとつの世界がある。
幽霊の世界とは違う。
その世界で普通にみんな生活している。
その世界に送り込まれた人は、そこで生と死の選択をする。
天間荘がその世界の入口。
のんがいい。>>続きを読む
このシリーズは、初期作品の新鮮な感動というものが、いつまでも残っている。
たとえばジャン・レノが出ていた頃の、トンネル内でのブルーライトかレッドライトの選択を迫られるシーンや、宙吊りで、コンピュー>>続きを読む
50代の男と女。この二人のあやしげな昼下がりの飲み会。
仁寺洞と言えば、韓定食の店が多い町。
高そうな店でマッコリをおちょこで何杯も飲み合うふたり。
元女優でわけありで帰国した女と映画監督の男>>続きを読む
ウソだろうが演技だろうが関係ない
男が女を抱きしめること
それ自体が愛なんだ。
母親の愛人、酔っぱらってよく言うよと思った。
ただのすけべおやじが、と思った。
常に女性をカラダを目的で抱>>続きを読む
若い人のひとことに、はっとさせられることがある。
自分が今まで信じた世界をいとも簡単に崩すひとこと。
たとえば刑事一筋できた男が音楽隊に回され、なんで自分が?という思いを音楽隊の同僚の若い女性に>>続きを読む
井上光晴(本作のモデル)といえば、原一雄監督の「全身小説家」のイメージが強すぎる。
お世辞にもいい男とは言えないが、口だけは上手くて、女性を自宅にはべらす。
いまどきはハイボールなのに、ウイスキーの銘>>続きを読む
採れたてのものを喰らう楽しみ。
気の合う者同士で。ふたりで。
それも男と女で。
でも、ふたりは父親と娘ぐらいの年の差がある男女。
作家と編集者という原稿でつながっただけの仲。
毎回人里離れ>>続きを読む
最近クズという言葉が流行っている。
クズという言葉があまりに気軽に使われるような気がする。
強盗したらクズ、不倫してもクズ。
人をクズ扱いすると自分の優越感が充たされる。そんな時代。
「グッ>>続きを読む
戦友同士のふたりの女性兵士。戦地から帰還してぺテルスブルクで働く。
ロシアはウクライナで戦争してるけれど、中には女性兵士もいるのだろう。
戦争をするロシアは許せないが、女性兵士にスポットを当てた>>続きを読む
家賃滞納するほどの生活苦の人々が暮らす「ハイツムコリッタ」。
そこの家主の未亡人は、そんな人々を優しく包む。
前科がある若者、何らかの理由で無職の中年男、墓石を売る親子。
「ささやかな幸せをさ>>続きを読む
若者には特有の哀しい性(さが)がある。
人より秀でなくてもいいけれど、人並みではいたい。
孤独はつらい。友だちはほしい。彼女もほしい。
けれど、飲み屋で知り合った男とサーフインに行くが、そもそ>>続きを読む
この物語で眼中に入ってこなかった人々。
それは、教師の見えないところでいじめを働く子供たち。
自分の子供が他人の子供を傷つけていることを知らない親たち。
体罰や虐待があたりまえだと思っている親、教師。>>続きを読む
「壊れて傷んでも、その中にはしばしば美しい瞬間がある。それをすくい上げたかった」
是枝監督が『万引き家族』で言っていたこと。本作も同じ匂いがする。
美しい瞬間を紡ぎだすもの。
ソン・ガンホの不>>続きを読む
鬼才リューベン・オストルンドのカンヌ・パルムドール二回目の受賞作。
最初の受賞作『ザ・スクウェア 思いやりの聖域』では、スノッブな富裕層のキューレーター対アジア系移民。本作では豪華クルーズ船の富裕>>続きを読む
セーヌ川に浮かぶアマダン号。そこは文化活動を通して精神疾患の人々を支援するデイケアセンター。
カメラはそこに通う人々の言葉や行動をひたすら映し出していく。
インタビューによって何かを引き出そうと>>続きを読む
19世紀のフランスで起きたユダヤ人兵士をめぐるドレフェス事件(冤罪事件)を描いている。
前職から謀報部長を引き継いだユダヤ人中佐ピカールは、上層部のトップっダウンで腐敗した組織を変えようと闘争を決>>続きを読む
誰かが、「田中(爆笑問題)は日本の安定だ」と言っていた。
相方の大田の暴言を、まるで牛若丸のように軽妙にかわす彼を、そう評したのだろう。
しからば、マ・ドンソクは「韓国映画の安定」と言えないだろ>>続きを読む
生かされず殺されず。偉大なる便利屋。
古今東西そんな人々が、実は世の中を動かしている気がする。
名もなく貧しく美しく。そんな人々が。
日本地図を作った伊能忠敬は知っていても、彼の死後地図を完>>続きを読む
「わたし達はおとな」という題の「達」だけがなぜ漢字なのだろう。
そこにこの監督のこだわりがあるような気がしてならない。
友だちという言葉一つとっても、普通友達とは書かない。逆におとなは、普通「大人>>続きを読む
破産寸前のコインランドリー。税金対策で四苦八苦。夫婦仲も親子の仲も末期状態。移民ゆえの苦悩もやまずみ。チャン・イーモウあたりが監督をすれば、それなりのヒューマンドラマに仕上がっていただろう。でも、感動>>続きを読む
元風俗嬢であることを隠さないで生きるちひろさん。
ちひろさんの座右の銘は、風俗嬢だった時のお客さんのひとこと。
「ぼくたちはみんな人間という箱に入った宇宙人なんだ」
他人がみんな宇宙人だと考えれば、理>>続きを読む
ひとりでは仕事はできない。分業体制だから、持ち場持ち場の役割と責任が明確でなければならない。
その組織の長は、確固たるビジョンが必要で、それをきちっと各役割部隊に伝えなければならない。
確固たる>>続きを読む
昭和の面影が色濃く残るボクシングジム。
会長は、ケイコについてこう語る。
「彼女には人間としての器量があるんですよ。素直で率直で。凄くいい子なんですよ」
才能とか素質はないと言う。
器量という言葉の意>>続きを読む
モノクロ映像に粋な音楽。
ウイル・パットンの父親と監督の実の娘、息子のコラボ。
スタンド・バイ・ミー調の姉弟と黒人少年の放浪。
アメリカ社会が抱えるもの。低所得者層の白人家族、児童虐待、警官の>>続きを読む
歴史に残らず
秘密の文書に埋もれるのは
語らない悲劇と勝利と影の英雄たちだ。
偽装作戦のメンバーであるイアン・フレミング(007の原作者?)の言葉が心に残る。
見えている部分は、戦場で銃と>>続きを読む