佐藤克巳さんの映画レビュー・感想・評価

佐藤克巳

佐藤克巳

映画(1134)
ドラマ(0)
アニメ(0)

彼女の發言(1946年製作の映画)

3.5

戦後の風潮靴下と女は強くなったの典型長女田中絹代と入婿佐分利信、吉祥寺に別居次女水の江瀧子と夫高田浩吉の夫婦関係が危うい雰囲気と、母岡村文子の同族会社におもちゃの製造を進めたい佐分利と高田の思惑が絡む>>続きを読む

マライの虎(1943年製作の映画)

2.5

「シンガポール總攻撃」の現地ロケ副産物で出来上がった戦争アクション映画だが、演出が陳腐で物珍しさ以上のものは無かった。

芝居道(1944年製作の映画)

5.0

成瀬巳喜男監督芸道物映画の集大成。道頓堀五座が競う中、角座興行師古川ロッパは、日清戦争を題材とした新派劇で大当たりし、付人渡辺篤が割引券を街に配った案件に同業者志村喬が異議を挟んだが、儲け主義ではなく>>続きを読む

宮本武蔵(1944年製作の映画)

4.0

色々なバリエーションがある宮本武蔵映画だが、一乗寺の決闘から巌流島の決闘迄を史実のみの簡潔さが清い溝口健二監督の秀作。武蔵河原崎長一郎の武芸道一筋の名演に、仇討を捨て仏門に入る姉田中絹代の小間使いの美>>続きを読む

をぢさん/をじさん(1943年製作の映画)

5.0

配給制時代向こう三軒両隣の下町町内会の和気藹々感の絶妙さと、無類の世話好き好親爺工事監督河村黎吉としっかり者の妻飯田蝶子の名人芸の掛け合いが見事な渋谷実、原研吉両監督の人情喜劇の傑作。河村夫婦の恩人で>>続きを読む

怒りの海(1944年製作の映画)

4.0

海軍造船官、東大総長だった平賀譲の死翌年製作された今井正監督の中立的立場で描かれた人間ドラマの佳作。平賀大河内傳次郎等海軍の宿願八八艦隊が、華府軍縮条約で英米の圧力で潰され、無残にも廃艦、建造中止、軍>>続きを読む

不沈艦撃沈(1944年製作の映画)

4.5

東宝よりマキノ正博監督、小国英雄脚本、丸山定夫が参加し、国策映画不得手の松竹が、開戦前の諏訪?の魚雷製造工場での海軍からの要請倍増生産達成に揺れる現場の状況が克明に描かれたオールスター娯楽映画の力作。>>続きを読む

還って来た男(1944年製作の映画)

5.0

軽佻派を標榜する二人、織田作之助脚本、川島雄三監督による夢のデヴュー映画作品と云うだけで無く、私見では川島の最高傑作ではないかと考えている。南方帰り軍医佐野周二が、故郷大阪に向かう汽車で出逢ったハワイ>>続きを読む

ことぶき座(1945年製作の映画)

4.0

戦中隆盛を誇った芸道物映画に浪曲師二代目広沢虎造をジョイントするプロデュースしたマキノ正博好企画を、腕は確かの原研吉監督が名演出した秀作。8年前に釧路でことぶき座で看板を背負った浪曲師高田浩吉が、劇場>>続きを読む

決戦の大空へ(1943年製作の映画)

5.0

八住利雄の脚本が絶妙なのか?早撮り名人渡辺邦男監督にしては、志願制の海軍飛行予科練習生の育成、略称予科練の訓練日々を丹念に清々しく描いた青春映画とも見れる戦争映画の傑作。土浦海軍航空隊を舞台に、班長高>>続きを読む

サヨンの鐘(1943年製作の映画)

4.0

1938年、台湾台北州蘇澳郡蕃地タイヤル族の村で起こった事故で命を落とした、少女サヨンの実話を清水宏監督が映画化した佳作。西条八十作詞、古賀政男作曲の歌になり哀悼の鐘まで設置された美談が語られる。美し>>続きを読む

私の鶯(1943年製作の映画)

5.0

巨匠島津保次郎監督の満州映画協会・東宝共同製作、日本劇場未公開作品である本作は、ロシア革命、ボルシェビキ革命を経て満州事変、キメラ満州国建国迄の白系ロシア人亡命社会を描いた壮大な歴史劇であり、ロシア音>>続きを読む

蛇姫様(1940年製作の映画)

4.5

川口松太郎新聞小説を原作に正続篇怪奇時代劇大作を大幅に省略した総輯篇なので、ひのき屋千太郎長谷川一夫の妹で琴姫入江たか子のお側に仕えるおすが山根寿子の死と、琴姫の守護神で猛毒のあるからす蛇の存在がはっ>>続きを読む

家光と彦左(1941年製作の映画)

4.0

名君徳川家光長谷川一夫、天下の御意見番大久保彦左衛門古川ロッパ、知恵伊豆松平伊豆守黒川弥太郎、政治顧問南光坊天海汐見洋のお馴染みキャラクターが、時代考証抜きに宇都宮城釣天井事件のスペクタル要素をメイン>>続きを読む

望楼の決死隊(1943年製作の映画)

5.0

旧制水戸高校在学中からバリバリのマルクス主義者今井正監督が、満州で暗躍する金日成ら抗日パルチザンの武装ゲリラ共匪が、鴨緑江が氷結する機に乗じて渡河、日朝国境警備隊との死闘を克明に描いた西部劇風アクショ>>続きを読む

すみだ川(1942年製作の映画)

2.5

メロドラマの女王川崎弘子にも翳りが見られる明治物歌謡映画の凡作。

無法松の一生(1943年製作の映画)

5.0

富島松五郎🟰坂東妻三郎、吉岡敏雄🟰長門裕之の域に達した完璧な無法松の一生。不幸にも内務省とGHQの検閲を受けながら、惜しまれて夭折した伊丹万作の魂を受け継いだ稲垣浩監督の、年老いた人力車引一筋の無法松>>続きを読む

獨眼龍政宗(1942年製作の映画)

3.0

家督を継いだとはいえ十七歳前後の若武者伊達政宗を、貫禄がつき過ぎた片岡千恵蔵抜擢には無理があったのだが、後年の粗製濫造気味東映時代劇水準の稲垣浩監督の凡作。或いは、永井右近役の水島道太郎が政宗をやるべ>>続きを読む

川中島合戦(1941年製作の映画)

5.0

戦国合戦の華第四次川中島合戦を、名匠衣笠貞之助監督が、リアリズム的手法を用い兵站側からの視点で、大東亜戦争開戦前に真珠湾奇襲を予見した様な壮大な騎馬戦を現出せしめた。上杉謙信と雑兵長谷川一夫等を率いる>>続きを読む

元禄忠臣蔵 前篇(1941年製作の映画)

5.0

巨大な松の廊下での浅野内匠頭嵐芳三郎が吉良上野介三桝豊に殺傷事件を引き起こす場面が没頭からあり、ワンシーンワンカットの妙技で時間が大河の様に流れる豪華な絵巻物を堪能した印象で、真山青果の新解釈忠臣蔵前>>続きを読む

阿部一族(1938年製作の映画)

4.5

史実を元にした森鴎外原作の映画化だけに歴史的背景は重視する必要かある。長男忠隆がガラシャ事件で廃嫡され、次男興秋は大阪の陣で豊臣方、三男忠利が初代熊本藩主。その忠利が父忠興に先んじて死去、祖父幽斎以来>>続きを読む

歌行燈(1943年製作の映画)

5.0

成瀬巳喜男監督芸道物頂点「鶴八鶴次郎」の山田五十鈴に、溝口健二監督「残菊物語」の花柳章太郎、及び新派最盛期の名人級柳永二郎、大矢市次郎、伊志井寛が、泉鏡花の耽美的で幽玄な世界を心ゆくまで堪能出来る成瀬>>続きを読む

ロッパ歌の都へ行く(1939年製作の映画)

3.5

ロッパ映画は、「ハリキリボーイ」の藤原釜足と岸井明とのトリオでサラリーマン・ミュージカル映画の傑作出した他、概ねポテンシャルが高いのだが、名脚本家小国英雄の演出が今ひとつで、折角の紅白歌合戦元祖の様な>>続きを読む

熱風(1943年製作の映画)

5.0

八幡製鉄所の長期ロケと円谷英二のミニチュアが良くマッチし、叩き上げの一本調子熱血男の伍長工員藤田進と、科学者で冷静沈着の第四溶鉱炉監督員沼崎勲が、溶鉱炉の神様と呼ばれる技師菅井一郎が言う戦艦一隻に相当>>続きを読む

開戦の前夜(1943年製作の映画)

4.0

吉村公三郎監督の前年「間諜未だ死せず」続篇のスパイ映画の佳作。憲兵少佐上原謙の依頼により、アメリカ大使館駐在武官大尉ノックス竹内良一を九州に行かせない命を受けた芸妓田中絹代が、雑誌記者斎藤達雄の通報で>>続きを読む

秘話ノルマントン號事件 假面の舞踏(1943年製作の映画)

3.5

大同団結運動に火がつき条約改正交渉に大きな影響を与えた有名な遭難事件で、英国人船長が禁固刑に処された迄の事実関係は正しいが、中国人誘拐事件以降は、反英感情を煽る意図が明白にあり、飛躍し過ぎた展開になっ>>続きを読む

間諜未だ死せず(1942年製作の映画)

5.0

アメリカ大使館を本拠地に雑誌経営者ノーラン斎藤達雄が、偽情報拡散、株価操作、テロ行為、空爆情報収集等ありとあらゆる暗躍を実施する責任者。間諜にフィリピン人日守新一、中国人原保美を非情冷酷に操るが、日守>>続きを読む

姿三四郎(1943年製作の映画)

5.0

短縮版しか現存しない断り書きがあり、その後2001年修復版が公開され7分短いだけになったそうで、今回再見して、ヒロインとの恋愛場面、三四郎特訓場面等が欠けたままだが、観た印象は頗る違った。檜垣源之介月>>続きを読む

くもとちゅうりっぷ(1943年製作の映画)

5.0

日本アニメーション映画史上最高峰の正岡憲三監督作品。「ファンタジア」「シリーシンフォニー」に勝るとも劣らない、しなやかで繊細な動作と、一枚一枚絵画の絵を連結した様な構図の凄さは絶品であり、てんとう虫の>>続きを読む

桃太郎の海鷲(1943年製作の映画)

5.0

日本初長編アニメーション映画の快挙を成し遂げただけの価値ではない。桃太郎に率いられた犬、猿、雉の戦闘員に、兎の整備兵を巧みに擬人化して愛らしいキャラクターを創造し得た当時のアニメーターは凄い。瀬尾光世>>続きを読む

新雪(1942年製作の映画)

5.0

幻の映画にやっとめぐり逢えた嬉しさ、124分のうち74分しか残存しないもの哀しさ、だけど鑑賞後の清涼感は半端では無い心地良さ。名匠五所平之助監督の最良作であった可能性は高いと思われ、神戸市六甲界隈の風>>続きを読む

音楽大進軍(1943年製作の映画)

3.5

楽器店員古川緑波、渡辺篤の慰問団音楽会発案と、日本の代表的な音楽家の出演交渉を、歌手志望の岸井明を交えてドタバタ喜劇振りを展開する。最後まで指揮者岡譲二の交渉が難航し、崖から落ちた3人組を他所に、中村>>続きを読む

待って居た男(1942年製作の映画)

5.0

脚本小国英雄、マキノ正博監督の名作「昨日消えた男」続篇だが、前作以上の豪華配役でロマンティックコメディ色が更に高まった捕物帖物時代劇の傑作。宿屋若主人大川平八郎が、妻山根寿子をつけ狙った犯罪捜査を江戸>>続きを読む

鞍馬天狗 横浜に現る/鞍馬天狗 黄金地獄(1942年製作の映画)

4.0

戦前の「七つの顔」に匹敵する荒唐無稽な伊藤大輔監督のアクション時代劇の快作。明治四年西郷隆盛が筆頭参議だった頃、大蔵大輔井上薫も関わったとされる藤田組贋札偽造事件がヒントになったのか?横浜の外国商社社>>続きを読む

緑の大地(1942年製作の映画)

5.0

国策映画と見下す傾向がある様だが、ハリウッドの「海外特派員」「カサブランカ」だって国策映画じゃないか。巨匠島津保次郎監督、脚本の戦後共産党系山形雄策も、中立的にスケール感溢れる人間ドラマを構築した稀に>>続きを読む

>|