佐藤克巳さんの映画レビュー・感想・評価 - 4ページ目

佐藤克巳

佐藤克巳

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雪子と夏代(1941年製作の映画)

4.0

戦前多くの吉屋信子作品が映画化されたが、青柳信雄監督の本作は、東宝二大看板女優競演で貴賓と優雅さに於いて稀に見る秀作となった。戦死した夫の家から自立して洋裁店を営む入江たか子の下へ、同じく夫を亡くした>>続きを読む

信子(1940年製作の映画)

5.0

左巻き大島渚が絶賛する「女の園」だが、戦前にだって立派な女学生映画が存在していた事を証明する清水宏監督の青春映画の傑作。女学校新任教師高峰三枝子は九州から上京、親戚の置屋女将飯田蝶子宅に下宿、校長岡村>>続きを読む

元気で行かうよ(1941年製作の映画)

3.5

高杉早苗が38年に結婚引退し桑野通子、高峰三枝子にベテラン田中絹代を加えた3人が看板女優に、佐分利信、上原謙と三羽烏の一人佐野周二が本年召集され帰還第一作となった松竹オールスター映画の話題作。爽やかな>>続きを読む

お加代の覚悟(1939年製作の映画)

4.0

巨匠島津保次郎監督の7巻物小品だが中身の濃い松竹置き土産の一作。日本舞踊師匠三宅邦子は湯豆腐でちょっと一杯傾けると、戦地の夫と一人語らう仕草の粋な事。その夫に頼まれて写真を撮る若旦那上原謙に、ポーと赤>>続きを読む

絹代の初戀(1940年製作の映画)

4.5

大甘かも知れないが、テレビ映画「木下恵介劇場」迄続く典型的大船映画のお手本であり昭和の黄昏。証券会社常務佐分利信から歌舞伎の切符を貰った煎餅屋を営む姉田中絹代が一目惚れ、その会社員妹井川邦子に縁談話。>>続きを読む

小島(こじま)の春(1940年製作の映画)

4.5

癩病を扱った功罪はあるだろうが、癩病患者を晒し者にする扱いでは無かった点は確か。豊田四郎監督の力作だが、俳優陣の健闘が支えた名作。長島愛生園女医夏川静江の心温まる演技を始め、癩病患者菅井一郎、杉村春子>>続きを読む

そよ風父と共に(1940年製作の映画)

5.0

前年「まごころ」で少女思春期映画の良作を撮った成瀬巳喜男が脚本、譲った形の弟子山本薩夫監督作品初期の秀作。学も無く浪花節好きの風呂屋を営む父藤原釜足と、ハイカラ好き女学校四年生高峰秀子の温かい親娘愛が>>続きを読む

五人の兄妹(1939年製作の映画)

4.5

木下恵介脚本を得て吉村公三郎監督作品初期の秀作の一本。マッチ工場を経営する父藤野秀夫が自殺して、長男笠智衆が、家族の責任を一身に背負って頑張り抜く人生ドラマ。次男日守新一は世帯を持つが、選挙の利権屋で>>続きを読む

残菊物語(1939年製作の映画)

5.0

二代目尾上菊之助の実話か判明しないが、溝口健二監督の戦前最高傑作と評判の、芸道物三部作の唯一現存する貴重な作品。成瀬巳喜男「鶴八鶴次郎」の歌舞伎バージョンといった感じだが、音羽屋という名跡が再起復活の>>続きを読む

はたらく一家(1939年製作の映画)

5.0

原作徳永直作の庶民階層の働けど働けど楽にならずの一家の子供の進路問題を真正面から提起した成瀬巳喜男監督のヒューマンドラマの傑作。画面の暗さは、裸電球時代のリアル感でプロレタリア文学の雰囲気がたっぷり出>>続きを読む

ロッパの新婚旅行(1940年製作の映画)

4.0

山本嘉次郎監督、古川緑波主演の絵に描いたような人情喜劇の佳作。森繁久彌、タモリの早稲田OBは、ロッパの系譜に属する感じ。おでん屋女給三益愛子と駈落ち新婚旅行ならぬ落ち目の引っ越しもミュージカル風。仲人>>続きを読む

燃ゆる大空(1940年製作の映画)

5.0

日本にも遂に本格的航空映画が誕生した感慨がある阿部豊監督、撮影宮島義勇、特殊技術撮影円谷英二等による三年の歳月を掛けて製作された意欲作。戦闘機隊中隊長大日向傳、その飛行学校教え子月田一郎、大川平八郎等>>続きを読む

新女性問答(1939年製作の映画)

5.0

贅沢三昧の松竹女優オールスター戦ともいうべき佐々木康監督の女性讃歌を謳った稀に見る傑作。女学生7人組のパーティーで、三宅邦子が結婚宣言してグループを脱退する。三宅の相手は、弁護士を目指す桑野通子の芸者>>続きを読む

女性の戦ひ(1939年製作の映画)

3.0

小説の世界なら謙譲の美談で美しいかも知れないが、メロドラマの女王川崎弘子と和製バレンティノ上原謙との共演だったら、得るものが無さ過ぎ不完全燃焼感は拭えない。川崎が前向きに女優になるとか、上原が川崎と結>>続きを読む

煉瓦女工(1946年製作の映画)

4.0

幻の映画に相応しい検閲で御蔵入し戦後公開となった千葉泰樹監督の最下層で蠢く下町人情劇の秀作。黒澤明「一番美しく」の矢口陽子が、夜学に通う前向きな女工を演じて清々しく、悦ちゃんや小高兄弟の子役等も好演し>>続きを読む

仇討選手(1931年製作の映画)

3.5

2時間の長尺映画を1分足らずのシーンでと思ったが、追手に取り囲まれ仇討の下らなさを豪語する大河内傳次郎を拝見出来ただけでも嬉しい。

上海陸戦隊(1939年製作の映画)

5.0

1937年支那事変の切っ掛けとなった第二次上海事件の海軍特別陸戦隊孤軍奮闘の死闘を、反日中国女役原節子の兄熊谷久虎監督が時系列的に描いたセミドキュメンタリー戦争映画の傑作で、以降東宝戦争シリーズの定型>>続きを読む

土と兵隊(1939年製作の映画)

5.0

この映画もGHQに押収され30分カットされた形となっていても、田坂具隆監督の渾身を込めた世界一の陸戦映画に間違いは無い。公開時キューブリック「フルメタル・ジャケット」を観た時、この映画を連想せずにはい>>続きを読む

暖流 (再編集版)(1939年製作の映画)

5.0

公開時前篇・後篇全3時間を現存する2時間強の短縮版だが、返ってスピーディーになって良く観えたかも知れない。「兄とその妹」を撮って快調島津保次郎が東宝移籍したピンチヒッター弟子吉村公三郎監督の評価を一躍>>続きを読む

子供の四季 春夏(はるなつ)の巻(1939年製作の映画)

4.5

第1部、第2部ともラストがGHQ検閲でバッサリ切られて何のこちゃ状態に置かれた。前作「風の中の子供」と内容はほぼ同じだが、祖父坂本武の同族会社内の主導権争いが全面に出て子供の遊びにも影響が現れた。三平>>続きを読む

まごころ(1939年製作の映画)

5.0

成瀬巳喜男監督のタイトル通りのまごころ籠った愛情物語の小品だが稀に見る傑作。和製テンプルちゃんの悦ちゃんと加藤照子の小学6年生の爽やかな友情と、悦ちゃん家族の父高田稔、母村瀬幸子と、加藤の家族の母入江>>続きを読む

藤十郎の恋(1938年製作の映画)

4.5

山本嘉次郎監督作品というより製作主任黒澤明色が強い長谷川一夫主演芸道物の秀作。坂田藤十郎長谷川が、近松門左衛門滝沢修に依頼し出来上がった新狂言「大経師昔暦」のおさんの解釈に難渋していたが、芝居茶屋女将>>続きを読む

路傍の石(1938年製作の映画)

5.0

田坂具隆監督のおそらく日本初本格的文芸映画の傑作だろう。下宿浪人画家江川宇礼雄が忍従する子供片山明彦をダルマに例えて自分の足で立てに奮起、片山が、開化丼を切っ掛けに下宿屋主人沢村貞子、松平富美子にラン>>続きを読む

南風(1939年製作の映画)

5.0

主人公キクは林芙美子の実母の名、林と画学生との結婚も事実からして自伝的作品の映画化を、松竹の成瀬である渋谷実監督が流行りのメロドラマに反発したかの様なシリアスな女を描いた傑作。兄笠智衆が、恋人徳大寺伸>>続きを読む

花つみ日記(1939年製作の映画)

5.0

スッキリクッキリ画像だったら満点もあったと思われる石田民三監督の珠玉の女学生映画の傑作。米軍による大空襲前大阪のロケーションシーンが魅了する、学校からの帰り高峰秀子と清水美佐子が、通学バスに乗らず歩い>>続きを読む

按摩と女(1938年製作の映画)

5.0

後から感情が引き摺られる様な余韻を残す、風光明媚な山奥の温泉場に、行きずりの人が飛び交う宿で、東京からの学生グループ、女子ハイキンググループとの追っ掛けっこしてやって来た盲の按摩徳大寺伸と日守新一が、>>続きを読む

鶴八鶴次郎(1938年製作の映画)

5.0

芸道物で「残菊物語」と比較されるが、どちらかと言えば「浮草物語」に近い燻銀の趣深い成瀬巳喜男監督作品の傑作。鶴八山田五十鈴とその母を師匠とする鶴次郎長谷川一夫は兄妹同然で育ち芸を精進する仲だが、息のあ>>続きを読む

不壊の白珠(1929年製作の映画)

5.0

清水宏監督初期サイレント映画の水準の高さを思い知らせる菊池寛原作メロドラマの傑作で、セピア色や青色に彩色された映像の瑞々しさは秀逸。カット割がキレキレで、カフェの背景の影絵の巧妙さ、クローズアップされ>>続きを読む

恋も忘れて(1937年製作の映画)

5.0

島津保次郎監督のハイセンスなBGで活かしたレディを演じた「兄とその妹」と対象的な清水宏監督の、煙草を燻らせ頽廃美の極致を魅せる桑野通子を観るためにある映画と言って良く、港横浜の風情溢れた彼佐野周二と彼>>続きを読む

純情二重奏 前篇(1939年製作の映画)

4.0

残念ながら総集篇なので雰囲気だけ味わったが、「愛染かつら」を踏襲したメロドラマの要素に音楽映画を加えた佐々木康監督功績大。また、高峰三枝子が歌うスターとして高杉早苗、桑野通子の三人娘から自立した重要作>>続きを読む

風の女王(1938年製作の映画)

4.0

音楽の佐々木康監督らしい心地良い青春映画と思いきやラストのどんでん返し。片岡鉄兵原作じゃぁ一癖も二癖もある。閉塞感に苛まれたピアニスト志望の次女高杉早苗が、会社専務佐野周二に呼び出された長女三宅邦子に>>続きを読む

むかしの歌(1939年製作の映画)

5.0

原作・脚本森本薫、石田民三監督の傑作「花ちりぬ」に続く京都・大坂哀惜物語を描いて秀逸過ぎる国宝級の傑作。前作では蛤御門の変によるどんどん焼けで没落する京都が、本作では、東京遷都による京都・大坂の大不況>>続きを読む

綴方教室(1938年製作の映画)

5.0

山本嘉次郎監督の製作主任に黒澤明が就いて見違える作品が頻出した気がするが、その初期秀作の一本であり、戦後の吉永小百合主演「キューポラのある街」と作品内容が酷似している気もした。また、高峰秀子が少女スタ>>続きを読む

愛より愛へ(1938年製作の映画)

4.5

小市民映画の達人島津保次郎監督の技ありの青春映画の佳作。前年「朱と緑」の高杉早苗と高峰三枝子の役柄を逆転させ、良家を飛び出し売れない作家業を廃業して叔父坂本武の世話で新聞社の面接を受けるが失敗する佐野>>続きを読む

五人の斥候兵(1938年製作の映画)

5.0

この段階では本格的戦争ではない。支那事変に発展していく紛争段階だ。済南事件等で日本権益が脅かされて、支那大陸における日本人居留民保護を目的とした日華利害対立の争いが真実。田坂具隆監督は、限定された極地>>続きを読む

母と子(1938年製作の映画)

5.0

五所平之助の門弟らしい渋谷実監督の社会風刺鋭い家庭劇の傑作だが、五所のユーモアや暖かみ迄削ぎ落とした非情で残酷さすら感じさせる結末。躍進するやり手専務河村黎吉を慕い疑う事を知らない妾母吉川満子と、本家>>続きを読む