佐藤克巳さんの映画レビュー・感想・評価 - 9ページ目

佐藤克巳

佐藤克巳

映画(1236)
ドラマ(0)
アニメ(0)

お小夜恋姿(1934年製作の映画)

3.5

温泉街旅館の看板娘田中絹代が、画家山内光とモデル坪内美子との三角関係になり坪内が川に身投げして山内は去って行く。というストーリーは売れない作家斎藤達雄の駄目小説だった。一転、現実の田中がタクシー運転手>>続きを読む

坊っちゃん(1935年製作の映画)

3.5

山本嘉次郎監督が、著名な夏目漱石原作で知友宇留姫木浩を主役の坊ちゃんに抜擢し、スターの地位に押し上げた蛮カラ青春映画の佳作。うらなり藤原釜足が九州左遷された不正に腹に据えかねた宇留木が山嵐丸山定夫とタ>>続きを読む

大学の若旦那(1933年製作の映画)

5.0

サウンド版サイレント映画屈指の名作であると共に、東宝「若大将」シリーズの原点として高く評価されるべき清水宏監督の青春映画決定版。慶大ラグビー部出身日本代表でもあった主人公藤井貢が、醤油問屋の若旦那で文>>続きを読む

音楽喜劇 ほろよひ人生(1933年製作の映画)

5.0

この作品の2年前チャップリン「街の灯」に近似した雰囲気を持つ木村荘十二監督のPCLトーキー第1号作品。プラットフォームでアイスクリーム売り藤原釜足が、同じくエビスビールの売り子千葉早智子に恋をし、彼女>>続きを読む

噂の娘(1935年製作の映画)

5.0

成瀬巳喜男監督の「妻よ薔薇のやうに」と対を成す、亡くなった母、婿入り養子の父御橋公、酒店を切り盛りする姉千葉早智子、水商売妾伊藤智子、その娘で同居するモガ妹梅園龍子、放蕩の祖父汐見洋、姉の資産家息子大>>続きを読む

母の戀文(1935年製作の映画)

3.5

1960年代後半のCX「お嫁さん」シリーズを彷彿とさせるホームコメディの先駆的作品として貴重な野村浩将監督の佳作。出来過ぎた嫁坪内美子と柔道四段で模範的サラリーマン亭主小林十九二の熱々夫婦振りと、坪内>>続きを読む

春琴抄 お琴と佐助(1935年製作の映画)

5.0

道修町薬種店の盲目のこいさん田中絹代と、一切の世話を請け負って丁稚奉公する高田浩吉の、音の世界に埋没して一生を貫く谷崎潤一郎の耽美的小説を見事映像化した島津保次郎監督の傑作。明治初期の上方情緒溢れた豪>>続きを読む

人生のお荷物(1935年製作の映画)

5.0

五所平之助監督の男親の本音を吐露した蒲田調ホームドラマの異色作で、直接的には父斎藤達雄と母吉川満子の晩年に生まれた長男葉山正雄をお荷物としているが、現代においては子供を出産、養育する事自体がリスクとす>>続きを読む

婚約三羽烏(1937年製作の映画)

4.0

巨匠島津保次郎監督の遊び心で企画されたのか、松竹初代三羽烏が共演したロマンティックコメディの佳作。社長令嬢高峰三枝子のアイデアでマネキンボーイに採用された、三宅邦子と同棲の仲佐野周二と、見合い話が進行>>続きを読む

花嫁日記(1934年製作の映画)

2.5

初期トーキー映画の渡辺邦男監督作品だからおそらく早撮りで製作された楽天的喜劇なのだが、余りに内容が散漫過ぎる。

戦国群盗伝 前篇 虎狼(1937年製作の映画)

5.0

鳴滝組のペンネーム梶原金八脚本、滝沢英輔監督の元祖時代劇アクション映画の傑作。残念ながら総集篇カラー着色で拝見したが、醍醐味はジョン・フォード顔負けの西部劇の域に達した野心作に相違なかった。山中貞雄の>>続きを読む

男の償ひ 後篇(1937年製作の映画)

3.0

旅館経営する田中絹代の家族に不幸が相次ぎ今更と現れた佐分利信との別離後、またしても夫夏川大二郎と長男を失い、田中は発狂してしまう。この惨状に至り佐分利は、男の償いとは?手遅れでしょ。人間って多かれ少な>>続きを読む

男の償ひ 前篇(1937年製作の映画)

3.5

「愛染かつら」で野村浩将監督の名声を挙げた前年作らしい、吉屋信子原作の家族制度の悲劇を扱ったメロドラマ。親類で幼馴染の桑野通子の見合いの当て擦りに、田中絹代からのプロポーズで進んだ縁談を打算的に受けた>>続きを読む

エノケンの青春酔虎伝(1934年製作の映画)

4.0

榎本健一が山本嘉次郎監督とのコンビで、東宝ドル箱ミュージカル喜劇エノケンシリーズの記念すべき第1作となった秀作。デヴュー前から浅草で二人座長だった二村定一と歌い踊りの学友が、エノケンが千葉早智子との新>>続きを読む

子宝騒動(1935年製作の映画)

4.0

和製チャップリン小倉繁が本領発揮したドタバタを通り越してシュールな爽快感が味わえる斎藤寅次郎監督の秀作喜劇。貧乏過ぎても平然とした亭主が、子沢山に更に妻の出産で金策に追われるが、次々ドジを踏む。最後は>>続きを読む

石川五右ヱ門の法事(1930年製作の映画)

3.5

このレビューはネタバレを含みます

貴重な斎藤寅次郎監督の渡辺篤を中心としたドタバタ喜劇の佳作。当時の芸人の反射神経の鋭さ、パントマイムの鮮やかさで、動きだけで十分笑えるテンポの良さに感服した。

長恨(1926年製作の映画)

4.0

伊藤大輔監督の才気溢れる十数分間の醍醐味満喫。大河内傳次郎の「忠次旅日記」で未消化だった決死の立回りが堪能出来、俯瞰や移動撮影を凝らしたモンタージュの迫力は「雄呂血」をも超えている。

忠次旅日記 御用篇(1927年製作の映画)

4.5

娯楽映画の画期となった記念碑的傑作。六方を踏む歌舞伎の手法をふんだんに盛り込み、迫力ある形相のアップとフラッシュバックが際立つ劇画を読む様な鮮やかな演出が見事な伊藤大輔監督の快心作。三部作の三部で欠落>>続きを読む

花ちりぬ(1938年製作の映画)

5.0

助監督に市川崑の名があり、後年「日本橋」が良く似た作風の傑作だったなぁと得心が行った。その師匠格の石田民三監督の、蛤御門の変に於ける祇園茶屋の廓の女のみで舞台構成された森本薫原作の花街物映画の傑作中の>>続きを読む

ラヂオの女王(1935年製作の映画)

4.0

フィルムの状態が良くなく矢倉茂雄監督初見だが、当時のP.C.L撮影所やラジオ局、複葉機の飛行場等の情景が興味深く、玉手箱をひっくり返した様な愉快なロマンティックコメディの佳作。ラヂオの女王千葉早智子の>>続きを読む

東京の英雄(1935年製作の映画)

3.5

1935年に至ってもサウンド版が隆盛だったが、おそらく活動弁士、楽隊の失業者対策だったか?音楽に乗って映像はスムースだが、台詞はサイレントのギクシャク感は如何ともし難い。だが本作の場合には、倫理観の違>>続きを読む

花籠の歌(1937年製作の映画)

3.5

父河村黎吉が経営するトンカツ屋は、看板娘田中絹代と華僑系李さん徳大寺伸の腕で大繁盛していたが、田中が学生佐野周二と結婚して跡取りになると、失恋した徳大寺が去り店が下火となった銀座物語だが、五所平之助監>>続きを読む

私の兄さん(1934年製作の映画)

4.0

優等生兄河村黎吉を金子信雄、不良の二枚目弟林長二郎を小林旭に置き換えて、見合いを嫌って逃亡したヒロイン田中絹代を浅丘ルリ子にとくりゃあ、日活青春映画だよね。つまり、大親分島津保次郎監督の遊び心は、現代>>続きを読む

朧夜の女(1936年製作の映画)

5.0

五所平之助監督松竹最盛期の、明治の名残りを持つ下町風情が染み入る人情悲劇の傑作。町衆からも信頼された紺屋主人坂本武が、未亡人で牛鍋屋女中で働く妹飯田蝶子の息子徳大寺伸がバーの女給飯塚敏子との不始末を被>>続きを読む

花嫁の寝言(1933年製作の映画)

4.0

軽妙洒脱な五所平之助監督の秀作喜劇。姉妹篇の破壊力には及ばないが、江川宇礼雄他三人組が、一人抜け駆けして就職し女房田中絹代と新婚の小林十九二の家に、花嫁の寝言を聞く為押し掛け騒動となるが、一人別行動の>>続きを読む

花婿の寝言(1935年製作の映画)

4.5

この当時アメリカと同時進行で始まったスクリューボールコメディの日本代表五所平之助監督の秀作。タイトルに五所亭、監督名ごしょから笑わせる。当代美男美女林長二郎と川崎弘子が夫婦で仲睦まじ過ぎる関係に、同僚>>続きを読む

一人息子(1936年製作の映画)

5.0

真打小津安二郎監督の初のトーキー映画は、ペーソス溢れるリアリズムの粋をいく傑作。息子日守新一は上京して24歳、既に妻坪内美子と赤ん坊を抱える夜間教師で、双六では上がりに近いと、母飯田蝶子を落胆させる。>>続きを読む

妻よ薔薇のやうに(1935年製作の映画)

5.0

旧来の定番「父帰る」をイメージする母の兄藤原釜足からしたら、父丸山定夫の行動は許せない理不尽な行為だろうが、母伊藤智子は薄々気づいていた筈で、夫婦間の性格の不一致は決定的。美しく利発に育った娘千葉早智>>続きを読む

虞美人草(1941年製作の映画)

4.0

20世紀初頭の電気の時代を象徴する上野の東京勧業博覧会を見事再現した中川信夫監督の価値ある秀作。日露戦争で世界に度肝を抜いた日本の光と影を、会場の電燈と恩師荒屋のランプに感じた。また、夏目漱石の原作を>>続きを読む

隣の八重ちゃん(1934年製作の映画)

5.0

城戸四郎、島津保次郎監督の築き上げた松竹蒲田調映画の最高峰だろう。日常何気ないエピソードを切り取り、淡々とした風情を醸し出す小市民の平和な日々。東京近郊のサラリーマン家庭の女学生八重ちゃん逢初夢子、そ>>続きを読む

男性対女性(1936年製作の映画)

4.0

興行主の娘田中絹代と生糸貿易商の長男で考古学者佐分利信との冷めた恋愛劇には閉口するが、巴里帰りの同じく次男で舞台演出家上原謙と劇場照明係桑野通子が、レヴューを通じて親密を深めるバックステージ物としては>>続きを読む

恋の花咲く 伊豆の踊子(1933年製作の映画)

5.0

「マダムと女房」でトーキー映画の先陣を切った五所平之助監督が、再びサイレンに回帰し誰もが知る文芸作品に挑戦した傑作。伏見晃が内容を大幅に増補して出来た「五所の伊豆の踊子」であり、踊子田中絹代の兄小林十>>続きを読む

上陸第一歩(1932年製作の映画)

5.0

サイレント映画の集大成「生まれてはみたけれど」と同年に誕生した、日本のトーキー映画時代到来を予見させる島津保次郎監督の傑作。岡譲二の眼光鋭い容貌は後年の仲代達也を彷彿とさせ、港の女に新派の水谷八重子を>>続きを読む

嫁ぐ日まで(1940年製作の映画)

5.0

小市民映画のパイオニア島津保次郎監督の、東宝でのお手並み拝見の2作目珠玉の名品。亡き母親の代わりに家事一切をこなす割烹着姿の若き原節子が、父御橋公の後妻沢村貞子を快く受け入れ嫁いで行く迄を丹念に描写し>>続きを読む

女性の勝利(1946年製作の映画)

2.5

冷徹な眼光の検察官松本克平が溝口健二監督の様に思えた。その妻桑野通子は、三浦光子の犯した嬰児殺害事件で、妹で弁護士田中絹代がこれを法廷闘争にするため画策し、その間に立って苦しむ。実はこの映画の撮影中、>>続きを読む

伊豆の娘たち(1945年製作の映画)

4.0

終戦まもなく撮られた五所平之助監督の抒情豊かなヒューマンコメディの佳作。人情味溢れる演技でバイプレイヤーからのし上がって台頭した河村黎吉が、韮山の食堂を営み気の良い父親、店の手伝いと家事に追われ働き者>>続きを読む