labotさんの映画レビュー・感想・評価

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スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム(2019年製作の映画)

3.9

救済する者、救済される者、奪いとる者。かつて三分されていたこれらの役割の境界線が融解しているように思う。善はひとりひとりの中に存在し、悪もまた我々の中に内包されている。皆がヒーローになり得る反面、皆が>>続きを読む

スパイダーマン:スパイダーバース(2018年製作の映画)

4.0

清々しいまでに映像表現にステータスを全振りしており、アニメーションの新時代に先陣を切ろうという気概には脱帽もの。度々、原作のカラー原画の塗りが素晴らしい漫画がアニメ化される際に、モーションの都合上簡素>>続きを読む

ラ・ジュテ(1962年製作の映画)

4.5

記憶とは決して脳内で完全無欠の動画として再現されるわけではなく、ある象徴的な画が現れ、この映画の様に次の画が現れるが、その合間の余白を埋めるべく、記憶の中の画を更に想像で補い、また次へと繋がれて行く。>>続きを読む

ピアニスト(2001年製作の映画)

5.0

3回目の鑑賞。ハネケが描きたかったのは、恋愛でもなければ女性擁護でもなく、男の真似事をする女への報復でもない。本作は、当てはめられた役割からの脱却、及び本当の自分を手に入れるに至っての、価値観の臨死体>>続きを読む

チワワは見ていた ポルノ女優と未亡人の秘密(2012年製作の映画)

3.5

こんなクソ邦題を付けた奴を絶対に許さない。絶対にだ。
ポルノ女優という、部屋のホコリ一つ許されない浮世離れしたジェーンの世界と、生活感のあふれたセイディーの世界とのコントラストが激しいが、セイディーが
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ある子供(2005年製作の映画)

3.5

あれだけ自分の子に愚行を行ってきたブリュノが、共犯として巻き込んだ他人である悪ガキに対し、罪を自供することで責任を果し自分が大人であるという実感を得るという皮肉さ。ここでようやく「ある子供」とは誰を指>>続きを読む

こわれゆく女(1974年製作の映画)

4.0

ヒステリーの矛先がいつ子どもたちに向けられてもおかしくない状況にどっと気力を消耗させられた。二階に連れ戻されようと母を守ろうとする子どもたちだけが、メイベルを世間一般で言う「普通」という額縁に収めよう>>続きを読む

劇場版ポケットモンスター ミュウツーの逆襲(1998年製作の映画)

4.1

いつまでも自分の心の片隅に置いておきたい。大変父性的な作りで、子ども向けとは安直な幼稚さではなく、子どもの指針となるべきであるという首藤剛志氏の意志が集結された傑作。今見るとエヴァとガタカを足して2で>>続きを読む

欲望(1966年製作の映画)

4.0

真実を映し出すはずの写真という媒体に願望が投写され、写真は鏡となり、自分自身を見直さざるを得なくなる。ヤードバーズの音楽(価値)には棒立ちでも、破壊され投げ捨てられたギター(無価値な物質)には群がる群>>続きを読む

反撥(1964年製作の映画)

4.0

全てはキャロルという女性のフィルターを介した世界。言葉以上に物を訴えかけるカトリーヌ・ドヌーヴによる眼球の演技に感服。なぜ家族写真に写るキャロルは父親と距離を空け虚ろな目線は空を描くのか、なぜキャロル>>続きを読む

袋小路(1965年製作の映画)

4.0

闖入者物と見せかけた巧妙なバディムービーなのではないかと錯覚させられる不思議な映画。こりゃフランソワーズ・ドルレアックは空気だしベルトで打たれますわ。サイコスリラーという前情報、古城に軟禁というシリア>>続きを読む

ピンクナルシス(1971年製作の映画)

3.0

大画面ドアップ真正面アングルで観客席に向けて精液を浴びせつける事に成功した監督の快感たるや、想像を絶するものだっただろう。劇場で観た人の心境を知りたい。この悪夢が監督の自宅にて自活されたものであり、出>>続きを読む

セブンス・コンチネント(1989年製作の映画)

4.0

生命の存続には道具を要する。衣食住への要求が増えたら増えただけ道具は増え、時間に比例し物には人間の意志や記憶が介入していくのだが、今作では一切の情感もなく道具は徹底的に「物体」として無機質に描かれる。>>続きを読む

ホーリー・マウンテン(1973年製作の映画)

3.5

クソも積もればホーリー・マウンテン。

学生時代、どんな他愛のないものでも集積すればそれは立派な作品となると教授に教わったのだが、どんなクソも全ては原石であり、それを生かすも殺すも己次第。光り輝く黄金
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早春(1970年製作の映画)

4.0

黄色い薔薇の花言葉が「ジェラシー」であると、こどもの頃に漫画で知ったことを思い出した。10代の頃何が一番辛かったかって、気持ちよく自分の世界広げてるときに他人の存在に気がつかされてしまう事。つまり嫉妬>>続きを読む

ファニーゲーム(1997年製作の映画)

4.0

— それでも楽しい虚構 —

平穏な日常を犯すかのように、グラインドコアっぽい曲が挿入される冒頭からワクワクが止まらない。鑑賞後時間が立っても尚、余韻が残り続ける。こんな映画を観たのはいつぶりだろう。
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ハートストーン(2016年製作の映画)

3.8

--- 群の外へ ---

アイスランドと、日本の、特に東北地方の気質はとても似ていると東北出身の自分は感じた。同じ島国である他、東北の秋から冬にかけての厚い雲に覆われた薄暗い空、長い冬と寒々しく広大
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ベニスに死す(1971年製作の映画)

4.3

--- 死神との契約の先に ---

個人的な話ですが、あれこれと頭のなかで思案していたものの答えに出会ってしまった時、手も足も出なくなってしまうという経験が幾度なくありました。そんなこともあり、今作
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ラ・ラ・ランド(2016年製作の映画)

3.0

--- 人生という名の舞台で踊り続ける ''我々'' へ ---

ミュージカル(ジャズ)はアメリカの古典文化である。監督はミュージカル(ジャズ)を愛している。しかし愛しているものを再び再現しても歴史
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マイ・プライベート・アイダホ(1991年製作の映画)

4.0

子孫を残すことがそんなに偉いのか?

--- 世界一美しいゲイの自虐と人間の本能 ---

当然だが、男女間の性の先には新たな生命が宿される。一方同性間の性にはその成果が無い。場合によってはハンデと成
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アイズ ワイド シャット(1999年製作の映画)

4.0

キューブリック直伝 

----- 夫婦円満の秘訣 -----

すべての男性にとって妻は、汚れなき「聖母マリア」でもなければ無垢な「ふしぎの国のアリス」でもない。ただ当たり前に欲望を胸に秘めた、普
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はじまりへの旅(2016年製作の映画)

3.5

独自の教育法と文明社会を捨てた生活を子どもたちに教え込む父親の姿はファシストそのもの。一家の教祖的ともいえる。自然での生活しか知らないまだ幼い子どもほどが社会復帰を特に嫌がるところから、完全な洗脳が伺>>続きを読む

ガタカ(1997年製作の映画)

4.0

この映画を包む空気感が厚く上品なのは、
伝えたいことを暗喩で見せているからではないでしょうか。


①螺旋階段 --------------

ジェロームとヴィンセントの家の螺旋階段は、
DNAの二重
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LION ライオン 25年目のただいま(2015年製作の映画)

3.5

5歳が助けを求めてもびっくりするほどスルーされるわ
うるさがられるわ、孤児は商売道具だし、玩具にするわ、
極め付けに正義が機能しないわで第3世界って本当にこんなんなの。
知らない大人が近寄ってくるとき
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