ヨコヤマコムさんの映画レビュー・感想・評価

ヨコヤマコム

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カニバ/パリ人肉事件 38 年目の真実(2017年製作の映画)

3.2

極端に被写体に寄る制限されたフレーミングでフォーカスも合わない。長い長いワンショット。語る言葉は支離滅裂で、カッティングも分断されていく。こうした演出すべてがもう過去になった出来事とどこか奥底に沈み込>>続きを読む

ゲット・アウト(2017年製作の映画)

3.8

このレビューはネタバレを含みます

個人的に、ティザーやプロモーションをあまりちゃんと見ていなかったこともあり、アクシデント的にミスリードさせられていた可能性が大いにある。が、いわゆるレイシズムに関する系譜の連続性のような部分を見つめる>>続きを読む

オン・ザ・ミルキー・ロード(2016年製作の映画)

4.7

「戦争は終わらない」
それはきっとビッグ・ブラザーがいてもいなくても。

クストリッツァらしい、荒唐無稽さと陽気さ、その下敷きとしてのリアリズムとグロテスク。
ファンタジーそのものではなるあくまでフィ
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わたしはロランス(2012年製作の映画)

4.4

"男が好きなわけじゃない、生まれる体を間違えたんだ" 声を張りあげてそう言うロランスの一言が圧巻。現代のLGBTムーブメントが萌芽し始めたころ(少なくとも日本では、)にホモセクシュアルやバイセクシュア>>続きを読む

ブルーバレンタイン(2010年製作の映画)

3.5

愛に関するフィルム、その中でも喪失や決断、別離、後悔を描いたもの。言葉やエピソード、カットの構図をフックに過去、現在を往き来する構成は秀逸。

過去と現在が並行したシークエンスにみえて、リアルタイムな
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ミスター・ロンリー(2007年製作の映画)

4.8

なにものにもなれないぼくがいて、なにものにもなれないきみがいて。きっとみんな本当は気づいているのだけど、みんな集えばなにかになれると信じていた。

"世の中のスピードがぼくには速すぎる"

マイケルの
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20センチュリー・ウーマン(2016年製作の映画)

5.0

アメリカの20世紀、あらゆる面で象徴的で、歴史においてもっとも重要なファクターのひとつともいえる。20世紀的で、20世紀に生きたその女性は、世紀末に死んだ。単なるハートウォーミングかと思いきやそこはや>>続きを読む

オーディション(2000年製作の映画)

3.4

この時代この演出だからこそ海外でうけたのかな、と。いま観ると全体的に少し粗く感じるけど、えいひさんの部屋のシーン、後半のイメージカットなど深層にせまる印象的なカットが多く細かい部分で魅せてくれる。痛い>>続きを読む

光りの墓(2015年製作の映画)

5.0

2016年ベスト映画

スーパーナチュラル、エクストラオーディナリー、ファンタズマル…。SFよりもっとオーガニックな東南アジア独特の死生観+静的幽体交信みたいなものを多分に感じさせてくれた。

劇中の
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オンリー・ゴッド(2013年製作の映画)

4.7

きらびやかなタイ、バンコク。マフィア、ノワールとしての表現と東南アジア的文化観がマッチしていて最高。

セリフも少なく、キャラクターの心理も読めないように描いているのはきっと意図的。もう、キタノ映画の
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複製された男(2013年製作の映画)

3.5

複製、というよりもむしろ、分離した一個体、という印象。デイヴィッド・リンチ的。不条理と同一性がどんっとあの靄のかかった街に沈殿している。

褪色した色味は、今、現在が玉虫色にうつろうのを表現するかのよ
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ドント・ブリーズ(2016年製作の映画)

3.7

このレビューはネタバレを含みます

おじさんが強い。いや、おじいさんが強い、それだけでも十分愛せる。もっといえば、おじいさんが盲目でヴィランで強い、最高。

密室ワンシチュエーションが『ソウ』や『パニック・ルーム』に近いと感じた。前者の
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レヴェナント:蘇えりし者(2015年製作の映画)

4.4

「ナショジオ映像 with ディカプリオの絵に耐えられるか」という上司の一言をもってみました。

イニャリトゥ監督は前々からあざといと思っていて、今回のもネイチャー・ワーシップ、アニミズム的なイズムが
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キック・アス(2010年製作の映画)

3.9

"現実にはスーパーヒーローなんていないよね、でも!"的なメタを盛り込みつつ、劇中にもふんだんにコミック引用をほどこすことで一歩引かせる。
それゆえ、余計にヒットガールの存在が圧倒的衝撃を与える。実際"
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ガタカ(1997年製作の映画)

4.3

無重力状態っていうのは、胎内に似ているそうだ" - ジェローム・モロー
これはジェロームの言葉。SFにみせて、クライムものにみせて、ヒューマンにすべりこませる。SFにしてみれば前日譚でしかないし、クラ
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監督失格(2011年製作の映画)

3.8

林由美香さんが「監督失格だね」と言った。平野勝之さんは笑った。ドキュメンタリー性という特有の価値観ではなくただただリアルであること。監督なのか恋人なのか。エロなのかドラマなのか。

恋の渦(2013年製作の映画)

3.5

シチュエーション、それだけが紡ぐ物語。否。それはもはや物語ですらない。状況が状況を生み、会話は互いの感情の間を浮遊するかのように往来し続ける。劇作が元であること、というよりその属性しか持たない。若者の>>続きを読む

SHIFT 恋よりも強いミカタ(2013年製作の映画)

3.1

このレビューはネタバレを含みます

いまフィリピン映画があついとのことで観ました。手持ちクロースが多いのはヨーロッパの潮流と関連を感じさせる。ストーリーや展開はすごく単純であるにも関わらず、フェミニズムやゲイセクシャルなどとも関わって、>>続きを読む

右側に気をつけろ(1987年製作の映画)

4.6

思考を必要としない。
断片は"拡張"を示唆し、物語はその外へと繋がり、我々を想起させシークエンスを生み出す。画面の外へ、映画館の外側へと。"白痴"は語り部として物語を紡ぐが、やはり外部を意識させる。思
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冷たい熱帯魚(2010年製作の映画)

3.6

人は人に狂い、人を狂わす。みんながみんな狂っていたって、世界はそう簡単に破綻しない。

レスラー(2008年製作の映画)

-

このレビューはネタバレを含みます

アロノフスキーが監督ということで、もっとエグい映像かなと思ったけれどそうでもない。物語もシンプル。主人公の過去と現在という盛衰や娘との別離再会、よき理解者の女、病気。わかりやすいストーリーですね。コン>>続きを読む

ゆきゆきて、神軍(1987年製作の映画)

5.0

アナーキスト・奥崎謙三、国家とは何か、戦争とは何かと、あまりにも独自性を貫いた思想の数々。"どんな状況であっても撮り続ける"という原一男と"カメラが回っていようが、真のためならどんな行為も辞さない"と>>続きを読む

フェリーニの道化師(1970年製作の映画)

3.8

フェリーニにとっての"クラウン"。よりパーソナルな領域を語ることによって、自分自身凌駕せんとする。"ドキュメンタリー的"という芝居が虚構×現実の綯い交ぜならば、それまでのリアリズムと空想性のどちらもを>>続きを読む

革命前夜(1964年製作の映画)

5.0

最高級。ヌーヴェルヴァーグの影響を多分に感じさせた。ジャンプカットやクロースアップの多用。ピントの不安定さ。カット割り、フレームへのこだわり。ベッドシーンでの観念的イメージはより官能的な空間を演出して>>続きを読む

メトロポリス(2001年製作の映画)

3.8

I Can't Stop Lovin' You.
塔の崩壊はやはりバビロンに習って。

ウィ・キャント・ゴー・ホーム・アゲイン(1973年製作の映画)

4.7

予習なしのニコラス・レイ初体験。とにもかくにもビデオアートとの因果性を感じる。複数の映写機を使ったような、フレームサイズなんて二の次の、映像コラージュ。華麗なるワークショップというな表現しか出来ないが>>続きを読む

ポーラX(1999年製作の映画)

4.8

初のカラックス体験。深い闇。イザベルが初めて明るい場所に出た時、その表情が窺えた時、果たしてその物語は始まったのかあるいは全てが終わったのかがわからなかった。闇に堕ちていく速度は速く、果たして落ちてい>>続きを読む