オトマイムさんの映画レビュー・感想・評価 - 3ページ目

オトマイム

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判決、ふたつの希望(2017年製作の映画)

4.0

レバノンは中東にあるからイスラム教かと思っていたら実はキリスト教徒の割合がいちばん多いとか、レバノン内戦の難民がフランスに移住する映画を見たことがあるからフランスとのつながりは強そうだなとか、それくら>>続きを読む

コレクションする女(1967年製作の映画)

4.0

ロメールの作品はどれもそこはかとなく官能的だけれど、本作は監督自身がそれを大いに狙っているという点が珍しい。フェロモンダダ漏れのアイデ・ポリトフの魅力をとにかくカメラに収めたいがために作った作品なので>>続きを読む

つかのまの愛人(2017年製作の映画)

4.0

とてもよかった。フィリップ・ガレルは男女の痴情のもつれをストレートに描くのとミニマムな作風から閉塞感を感じてしまうのだけれど、これは父親目線も入ってくるので風通しよく感じる。一方で女たちが病気っぽかっ>>続きを読む

リトアニアへの旅の追憶(1972年製作の映画)

4.4

もしも私が故郷の風景を思い出に残したいと望んだら、そして私がこれだけのセンスを持ち合わせていたら、間違いなくこんな映像を撮りたい。揺れて粒子の粗い映像のかけらの集まりとたくさんのNo.が振り当てられた>>続きを読む

ひかりのまち(1999年製作の映画)

4.3

おびただしいひかりが溢れにじむ都会の夜。家路を急いで、享楽を求めて、愛を探して、街を泳ぐひとたち。ネオンがこんなにも美しい映画をたぶん初めて観た。

肌を重ねても満たされず涙がこぼれるのはなぜだろう。
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13回の新月のある年に(1978年製作の映画)

4.5

すばらしかった。鬱々とした深い哀しみの海底を彷徨っているよう。女優であるパートナーを自殺により失い失意の中撮られたとのことで、なるほどと納得できる。
男性から女性へと性転換したエルヴィラの苦悩と孤独。
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第三世代(1979年製作の映画)

4.0

難解で理解しきれていないけどおもしろかった。《意思と表象としての世界》をはじめとする哲学的な言葉にあふれちょっとゴダールっぽいなと思った。とても刺激的なのだけれど、脈々と波打つ情熱とか、何かへの渇望と>>続きを読む

2001年宇宙の旅(1968年製作の映画)

4.5

IMAX初体験。迫力の映像とお腹にドコドコ響く大音量を全身に浴びてきました。ふだんミニシアターに行くことが多いせいもあってかなり刺激的だった。ああ、幸せ〜

じつは昔、DVDを1/3くらいで観るのをや
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ひなぎく(1966年製作の映画)

3.0

女の子は自由気ままに振る舞っていいんだよ
どこまでも残酷になっていいんだよ
女の武器を最大限に利用してね
だってそのほうが楽に生きられるから
なんにも悩まなくてすむから
女の子はわかりすぎるほどわかっ
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現金に手を出すな(1954年製作の映画)

4.5

渋い・粋・しびれる。この3語に集約される大好きな一本。フレンチ・フィルムノワールの元祖にして金字塔にして傑作!

☆好きポイント☆
①何はともあれジャン・ギャバン。やたら厚みのあるずんぐりした体躯は熊
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秋のソナタ(1978年製作の映画)

3.9


《ふるさとは遠きにありて思ふもの 》

ものすごく重苦しく辛い映画だった。いつものようにファンタジーという繭にくるむことをせず、冷徹にリアリティを追求している。母娘の確執をどこまでも深く鋭くえぐって
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傷だらけの挽歌(1971年製作の映画)

4.1

色んな意味で心臓バクバク。
導入部がいつもながら秀逸。人の表情をねちっこく舐め回すように撮るアルドリッチ節も健在で、ギリギリの気持ち悪さと面白さが拮抗して終盤の銃撃戦で一気に盛り上げる流れが最高だ。中
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特攻大作戦(1967年製作の映画)

3.9

神経をすり減らすことなくのびのび観れたアルドリッチ(笑)意外にも正統派でおもしろい〜
12人の囚人を特攻部隊に仕立て上げる話。まずはオープニングクレジットの出る瞬間がしびれる。そしてリー・マーヴィン《
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ガーデン(1995年製作の映画)

4.6

魔法のような映像美に酔ってとろけてしまいそう。プラムやりんごの木がたくさんある広い庭/ボロボロの小屋/おじいちゃんの鏡文字の日記。秋の庭が金いろになって色んなものの輪郭が光にぼやけて、ボーダーTシャツ>>続きを読む

スウェーディッシュ・ラブ・ストーリー/純愛日記(1970年製作の映画)

4.4

好き嫌いは分かれると思うけど私はものすごく好きで、でもぞわりとする感覚もあって、自分の中でどのあたりに位置付ければいいのか迷っている。
13歳と15歳の恋ものがたり。ブルーアワーに浮かぶ幾つもの原付の
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悲しみに、こんにちは(2017年製作の映画)

4.1

母親を失ったフリダに寄り添うように、けれども冷静に、カメラは彼女と彼女の視界に入る世界を映しだす。小さな妹への意地悪や、反抗や、我儘をきいてくれる祖父母への甘えで必死にバランスを取ろうと踏ん張っている>>続きを読む

愛する時と死する時(1958年製作の映画)

3.8

初鑑賞のダグラス・サーク。ハリウッドの明快さとドイツの生真面目さが同居しているかんじ。ちなみに監督はドイツ出身、奥さんはユダヤ人だそうです。3週間の休暇で故郷に帰ったドイツ兵の恋の話。

上官の制服を
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ビフォア・ザ・レイン(1994年製作の映画)

4.2

暴力描写は必要最小限だけれどメッセージはまっすぐ胸に届く。民族とか宗教とか国籍とか言語とかをはぎとったあとに残る人間のいちばん美しい部分を淡々と静かに描くことで、それを理不尽に失う時の悲しみを際立たせ>>続きを読む

ウィズ・ユー(1997年製作の映画)

3.4

知的障害を持つ男と少女のものがたり。イェルン・ペルションによる映像が美しく、ペンシルベニア州の柔らかな光あふれる自然の中遊ぶ二人の姿を見ると、この世の中でいちばん美しいものはやはり自然と子供(そして無>>続きを読む

マイライフ・アズ・ア・ドッグ(1985年製作の映画)

4.8

つらいときにはライカを思い出す。スプートニク2号に乗って宇宙に旅立ったライカ犬を。星空を見て思いを馳せる。犬のこと。ママのこと。人生のこと。

たいせつに仕舞われていた思い出をとくべつだよ、と見せても
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狼の時刻(1966年製作の映画)

4.0

草木も眠る丑三つ時をあちらでは狼の時刻というのですね。精神を病んでいき不眠症に陥る画家の男、その妄想と悪夢をいつしか共有し現実との境界が曖昧になっていく妻。じわじわ怖い。怖くておもしろい。ベルイマンの>>続きを読む

ベルイマン監督の 恥(1966年製作の映画)

4.4

ある夫婦の暮らす島が戦火に巻き込まれる。島=隔絶された地であるがゆえにその描写は究極にミニマムであり、徹底的に残酷だ。飢えをしのぎ、痛い思いから逃れ、生き残るために夫婦が蹴落とすもの/すがりつくもの/>>続きを読む

暗殺のオペラ(1970年製作の映画)

4.5

内側にある触覚に絶え間なく触れてくる、ストラーロによる夢のような映像美。季節は夏なのにひんやりとして底の浅ささえ感じられる。そんな心地よさと寒々しさが同居していた。《ベルトルッチの一番美しく触覚的な官>>続きを読む

不思議の世界絵図(1997年製作の映画)

4.4

世界の果てを旅するこの少女が胸の中に住みついてしまった。オレンジ色のワンピースが似合ってた、少年のような、唇のはしを上げてちょっとだけ笑う笑顔がすてきなテレスカ。
結婚式のシークエンスと吊るされる牛の
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私の好きなモノすべて(1993年製作の映画)

4.6

人の内側は育った環境と経験したこと考えたこと五感で感じたことすべてからできている。同じ好きなものがたくさんあったらきっと私たち気があうね。

あなたの好きなものはなんだろう。夕暮れは好きかな。夏は好き
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ハッピーエンド(2017年製作の映画)

4.0

他者への無関心という暗い色のインクが社会のあちこちにしみを落とし広がりやがてどす黒い闇となる。暗闇に侵された社会で生きるためには他者を傷つけるか、狂気の世界に入るか、倒錯した性や薬に逃げ場を求めるしか>>続きを読む

ザ・スクエア 思いやりの聖域(2017年製作の映画)

3.6

閑散とした現代美術館でインタヴューを受ける冒頭からどこかちぐはぐで胸がぞわぞわする。監督は人の心をえぐって動揺させて楽しんでいるみたい。あなたの化けの皮は簡単に剥がれますよ。ほらね、チョチョイのチョイ>>続きを読む

ボクシング・ジム(2010年製作の映画)

4.2

リズミカルなパンチの音やワン・ツーの声がすがすがしく余韻に残っている。ボクシングの練習風景だけを飽きずにいくらでもみていられるのはすごい。老若男女・多様な人種が通う和やかな雰囲気のジムだけれど、ジム生>>続きを読む

賭博師ボブ(1955年製作の映画)

4.0

老境に差し掛かった賭博師に巡ってきた一世一代の大勝負!肩の力が抜けた軽妙洒脱な味わいが心地よい。イザベル・コーレイがふわふわした独特の魅力をふりまいている。押せばなびくような危なっかしい、孫ほど年若の>>続きを読む

恋人たち(1958年製作の映画)

5.0

極上の恋愛映画。むせかえるほどの。小細工せず、シンプルに、格調高く。これほど美しい不倫映画をほかに思いつかない。

闇に淡く光る白いネグリジェ/偶然触れあって音をたてるグラス/ふたりの上を流れていく木
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甘い抱擁(1968年製作の映画)

3.0

ファーストカットからめちゃくちゃ面白い《いい感じ!》が、どんどんディープな展開になるにつれドン引き《生理的にきつい〜》でもやっぱりすごく面白い《途中でやめられないどうしよう》。文が錯綜してますね 笑。>>続きを読む

11'09''01/セプテンバー11(2002年製作の映画)

3.7

2001年9月11日。もう17年も経つことに驚いてしまう。あの日TVのニュースでみた衝撃的な映像はありありと脳裏に焼き付いているのに。
11か国11人の映画監督によるオムニバス。ずっと気になっていてや
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エリ・エリ・レマ・サバクタニ(2005年製作の映画)

3.9

がらくたに生命を吹きこんで/爆音でギターをかき鳴らして/風になびく髪/くるくる回るホース/臨界点を超えて溶け出す音/音に支配され分裂する。
リアリティに満ちていた『ユリイカ』とは対極のすごく感覚的な映
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そして僕は恋をする(1996年製作の映画)

4.4

おそらく満席の人いきれの映画館で(通路にしゃがんで観てたおじさんがいたから立ち見が出てたかも)、この作品をみれたのは嬉しかった。TV画面ではかなり印象が変わりそうだと感じたから。

セピアがかった映像
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小さな泥棒(1988年製作の映画)

4.0

向かうところ敵なしの16歳のシャルロット・ゲンズブール。つきたてのおもちみたいなほっぺと母親譲りのスレンダーな身体(脚長ーい)、ささやくような喋りかたもほんのり官能的。生き急ぐ少女の焦りや苛立ち、愛を>>続きを読む

日曜日が待ち遠しい!(1982年製作の映画)

4.7

ファニー・アルダンが10頭身くらいのプロポーションで美脚を披露しながら素人女探偵として活躍する、そのビジュアルだけで100点満点。後期トリュフォー作品の常連ネストール・アルメンドロスによるモノクローム>>続きを読む