めしいらずさんの映画レビュー・感想・評価

めしいらず

めしいらず

パラノーマル・アクティビティ(2007年製作の映画)

2.3

寝室に据え置いた定点カメラ映像に頻繁に映り込む不可思議な現象。設定の巧さについては第二の「ブレア・ウィッチ・プロジェクト」とも呼べそう。この後に大量の亜流作品を生んだのがその証左だろう。恐怖の対象が気>>続きを読む

マルサの女(1987年製作の映画)

4.2

税務調査員の主人公が有能さを買われ国税局の査察官(マルサ)に任命され、税務署員時代から目を付けていたラブホテル経営車の、やくざや銀行も絡んだ大きな脱税のカラクリに挑み一網打尽にする。とにかくお話が圧倒>>続きを読む

非常線の女(1933年製作の映画)

2.7

裏社会に生きるボクサー崩れのヤクザ者と、昼と夜で違う顔を持つ情婦。ヤクザ者に憧れて身を持ち崩す子分と、そんな弟を心配する姉。清らかな彼女に己の生き方を悔いたヤクザ者と情婦は、真面目に生きる決心をしたけ>>続きを読む

沈黙のパレード(2022年製作の映画)

2.8

このレビューはネタバレを含みます

殺されて然るべきと思ってしまうような悪辣な被害者。まさかアガサ・クリスティーの某有名作品的な”同情すべき犯人群像”の展開にするつもりなのかと危ぶんでいたら、さすがにそんなことにはしなかった。被害者に対>>続きを読む

カプリコン・1(1977年製作の映画)

3.5

人類初の有人火星探査計画の裏側で進む国家ぐるみの”やらせ”。砂漠のスタジオ内に作られたセットからの映像。その嘘の片棒を担がされた宇宙飛行士たちが帰還中の探査機(無人である)の事故をきっかけに今度は政府>>続きを読む

容疑者Xの献身(2008年製作の映画)

3.2

このレビューはネタバレを含みます

これまでのトリッキーな作風と、これ以降に傾いていくエモーショナル(浪花節的?)な作風とが、今作では有機的に結びつきバランスされている。苦手意識がある東野作品であるけれど、これは快作だと思った。二重底、>>続きを読む

いまを生きる(1989年製作の映画)

4.8

己の人生の航路を見定めようとする多感な少年期の瑞々しい感性の煌めき。さまざまな経験に学びスポンジのように吸収していく。その中で自分の心が動くものを見つける。カーペ・ディエム(いまを生きろ)。躊躇ってい>>続きを読む

アザーズ(2001年製作の映画)

3.1

名作「シックス・センス」の後にしばらく流行ったトリッキーなホラー映画の内で定評のあるものの一つ。殆どのカーテンを閉め切った広壮な屋敷に住まう母と日光アレルギーの子らを日々悩ませる不可解な現象。それにつ>>続きを読む

成功成功/キートンの白日夢(1922年製作の映画)

2.6

太宰の「東京八景」に”人間のプライドの窮極の立脚点は、あれにも、これにも死ぬほど苦しんだ事があります、と言い切れる自覚ではないか”という一文があるが、本作の主人公もそんな風に開き直ってしまえそう。恋人>>続きを読む

KUBO/クボ 二本の弦の秘密(2016年製作の映画)

2.4

正直あまり印象に残らない感じだったけれどクライマックスはなかなか。キャラクターがみんなファーストサマーウイカに見える。

エターナル・サンシャイン(2004年製作の映画)

3.7

元恋人が別れを機に自分との記憶を消去してしまったことを知り、ショックを受けつつも自分も同じようにしようとする主人公だったけれど…。恋愛関係が少しずつ馴れ合いになり冷めていき、やがて相手の美点よりも粗ば>>続きを読む

オー・ブラザー!(2000年製作の映画)

3.0

脱力系脱獄逃避行映画。コーエン兄弟の作品としてはそこそこくらいの出来栄えな気がするけれど、主人公たち”ずぶ濡れボーイズ”の歌も含めて流れてくるカントリー曲が悉く素晴らしく、お話のコメディテイストと相ま>>続きを読む

七人の侍(1954年製作の映画)

4.7

恥ずかしながら今回が初鑑賞。これまで何度も観る機会はあったのに変に気取ってスルーしてきた己が難儀なる性分を恥じる。この三時間半の大長尺を全く感じさせない圧倒的な面白さだった(間を置かず二度目も鑑賞)。>>続きを読む

羅生門(1950年製作の映画)

4.2

森の中の殺人。もちろんそこで起きた"事実"は一つである。ところが裁きの場に集められた目撃者や容疑者たち、更には殺された当人(の霊魂)が語った証言は、それぞれがまるっきり食い違う。当事者たちに嘘をついて>>続きを読む

映画大好きポンポさん(2021年製作の映画)

3.6

充実した人生を送ってきた者よりも、人生につまづいてきた者の方がクリエイター(芸術家)たり得るという部分が、漱石の「草枕」の、芸術の本質を突いた文学史に残るあの名文を思い出させる。以前はどんなにかスマー>>続きを読む

生きる(1952年製作の映画)

4.7

市民からの嘆願。融通が利かないお役所仕事。そんな環境に染まりきった主人公渡辺への婉曲な死の宣告はお決まり通りに唐突で彼を狼狽えさせる。地味に目立たぬよう生きてきた彼にやけっぱちの派手な遊びはやはり肌に>>続きを読む

用心棒(1961年製作の映画)

3.8

荒んだ宿場町で権勢を争う二つのヤクザ一家を巧みに誘導して相討ちさせて滅ぼそうとした流れ者の浪人だったけれど、切れ者のヤクザに彼の目論みが見抜かれ捕らえられ殺されかけたものの隙をついて逃れ、その凄腕の剣>>続きを読む

Dr.コトー診療所(2022年製作の映画)

2.0

何も改善されぬまま一人の医師の献身に縋って成り立ってきた過疎地の離島医療のこと、テレビドラマと同じキャストが演じて人が老いるとはどういうことかを目の当たりに見せたことなど、興味深い内容を含んでいる。島>>続きを読む

すずめの戸締まり(2022年製作の映画)

2.4

それなりに面白いとは思うけれど作風に飽きてきている感じもしてしまう。随分と身勝手なお話ではある。廃墟の中に朽ちて残った扉だけがポツンと屹立している画が印象的に美しい。少しばかりモノリスを彷彿としてしま>>続きを読む

チャップリンの船乗り生活(1915年製作の映画)

2.0

船でこき使われるチャップリンら乗組員たち。揺れる船上でのアクションが某漫才チャンピオンの電車ネタにも似ている。面白みは微妙かも。

こちらあみ子(2022年製作の映画)

3.5

良くも悪くも他人の感情を察することができない、と言うよりも一顧だにしない主人公あみ子の日常。他人とは違って世界が見えているかのように不可解な言動を繰り返しては周囲を困惑させている。でも彼女自身はそれに>>続きを読む

ソナチネ(1993年製作の映画)

3.3

北野作品の中でも希死念慮的なニュアンスが最も色濃く出たものだと思う。死を掌の上で弄んでいるような感覚があった。あの頃の北野の心象風景であるかのような空漠としつつも澄んだ美しさに満ちた画。あの紙相撲の映>>続きを読む

その男、凶暴につき(1989年製作の映画)

3.5

処女作にはその作家の全てがあるとは昔からよく言われてきたけれど、本作もまさにそうだった。北野映画のモチーフなり要素なりが既に揃っているような所感。サティのグノシェンヌをいなたく編曲したような絶妙な音楽>>続きを読む

メアリと魔女の花(2017年製作の映画)

1.9

このレビューはネタバレを含みます

半分で離脱してしまいました。些か面白みの少ない感じのお話が既視感のある映像で語られるけれど、積極的につまらないと言うほどではなくて、そうかと言ってここが美点と言える部分も見つけられるわけでもない。まる>>続きを読む

赤ひげ(1965年製作の映画)

4.0

あまりにもど直球な人間讃歌に少しばかり尻こそばゆい感じもなくはないけれど、それでもその揺るぎないヒューマニズムに圧倒されてしまう。いくつかのコメディ的な場面場面や、清廉潔白とはいかない側面も描くことで>>続きを読む

それから(1985年製作の映画)

3.3

言わずと知れた漱石の前期三部作の一つを映画化した文芸作品。原作のイメージに忠実に、そして時に鮮烈な映像感覚を交えながら格調高く漱石ワールドが展開。明治末期の時代の空気が活写されていて見事だった。愛する>>続きを読む

シン・ウルトラマン(2022年製作の映画)

2.8

面白かった。作り手と観客の悪意と劣情、その需要と供給の一致を見るようなあの巨大長澤まさみの場面が個人的にはハイライトかも。ちゃんと自己批判的なツッコミもなされていたし…。メフィラス星人やゼットンのキャ>>続きを読む

劇場版ごん GON, THE LITTLE FOX(2019年製作の映画)

3.0

このレビューはネタバレを含みます

言わずと知れた新美南吉の代表作のアニメ映画化。物語の哀しみが繊細に描写されていたと思う。孤独な境遇のごんと兵十の交わらないでいた優しさが最後に至ってようやっと交わった時はもう手遅れである残酷な皮肉。過>>続きを読む

余命10年(2022年製作の映画)

2.9

お話は難病ものの雛形通りのものであるのだけれど、過剰にお涙頂戴に走りがちな凡百のそれとは違って、あまり感情的にならない静かな演出で落ち着いて観ていられる。儚げな小松菜奈のナイスキャスティング。難病の娘>>続きを読む

リズと青い鳥(2018年製作の映画)

4.1

台詞やナレーションで説明的に物語を推し進めていくのでなく画によって人間をじっくり見せていくような、どんな話を語るのかでなくて話をどのように語るかに注力したタイプの映画だろう。身体に表れる反応だとか、一>>続きを読む

キングダム(1994年製作の映画)

4.5

四半世紀ぶりの新作「キングダム エクソダス(脱出)」が公開されたということで旧作を引っ張り出して再鑑賞。デンマーク版「ツインピークス」と呼ばれているけれど、個人的にはこちらが断然面白い。巨大病院で起こ>>続きを読む

キャリー(1976年製作の映画)

3.4

先に観てしまった2013年リメイク版と比べて、この1976年オリジナル版の方が断然良かった。スローモーションの効果や観客の視点の誘導が巧みなカメラワーク(ヒッチ的な…)などデ・パルマらしい演出が冴えて>>続きを読む

キートンの大学生/キートンのカレッジ・ライフ(1927年製作の映画)

3.1

秀才とスポーツマンの世界は交わらない。恋するヒロインにアピールしようと様々なスポーツに挑戦するガリ勉の主人公であるけれど、運動オンチで何をやってもまるでダメ。醜態を晒しては恋敵や取り巻きたちから嘲笑さ>>続きを読む

ダークシティ(1998年製作の映画)

1.8

エンデの「モモ」をハードボイルド調のダークSFに翻案したような物語。記憶をなくして目覚めた男が娼婦殺しの濡れ衣を着せられ、警察の追っ手をかいくぐりながら、街の裏側から人々の記憶を捏造したものに差し替え>>続きを読む

第3逃亡者(1937年製作の映画)

2.8

ヒッチコックお得意の典型的な巻き込まれ型のストーリーであるけれど、スリラーと言うよりはロマンス映画的な味わいが強い。殺人の濡れ衣を着せられた男が、逃走しながら冤罪の証拠を探し真犯人を追う中で協力者の女>>続きを読む

タルコフスキー・ファイルin「ノスタルジア」(1984年製作の映画)

3.3

「ノスタルジア」の撮影現場で演出するタルコフスキーを撮ったドキュメンタリー。本編と撮影風景とが境目なく地続きに繋がっている感触があって不思議な感覚になった。本編と同じようにゆったりしたカメラワークが心>>続きを読む

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