眼科医マーティン・ランドーのエピソードと、ドキュメンタリー映画監督ウディ・アレンのエピソードが別々に描かれ、同席したパーティ会場で束の間交錯して、また離れていく。この間合いがなかなかよろしい。ユダヤ人>>続きを読む
オープニングの緊迫感がずっと続く濃厚なドラマ展開。一方で、磔刑のキリスト像が動きだしたり、教皇が割礼されたりする幻想描写は強度あり。息子、父、母、異端審問官、教皇ピオ9世といった登場人物たちの顔は雄弁>>続きを読む
ジャン=ルイ・トランティニャンの変態ぶりや、登場人物たちが殺人に至るまでの愛憎劇や、首なしニワトリの創造をめぐる科学技術盲信批判などよりも、ニワトリへの執着ぶりに感銘を受ける。ニワトリの赤いトサカと白>>続きを読む
ベルイマンラブをむき出しにしていた『インテリア』と同様に母娘の葛藤を中心に物語が展開する。本作ではさらに複数の色恋が配置され、仕立ては芝居のごとし。メンヘラのミア・ファーロウやクズ男のサム・ウォーター>>続きを読む
映画史に燦然と輝くブランコ場面!老いも若きも子供も坊さんたちも若い娘に目が釘付けになる。ピクニックに訪れた商人の一家は祖母、父、母、娘、それに使用人と思しき冴えない小僧が帯同している。郊外に到着したと>>続きを読む
マカロニもかくやという極端なクロースアップ。そこに籠る強い視線の交錯によってメロドラマが展開される。とくにジャンカルロ・ジャンニーニの眼差しが強烈だ。主要な登場人物の裸体を曝さずにはいられない巨匠。マ>>続きを読む
ウディ・アレンの作風はいつもセコくて小狡いけど、ちょっぴりと映画を感じるときがある。とくに撮影。この時期はカルロ・ディ・パルマが多くのアレン作品を手掛けていて、トラッキングショットなんて上手さが際立つ>>続きを読む
成人して久しい娘が父親に激しくぶつかっていく。メンヘラ女を活き活きと演じるジェーン・バーキンと、曖昧な表情を浮かべたまま受け身に徹するミシェル・ピコリ。会話の切り返しが多い中で、バーキンがピコリに頭突>>続きを読む
トニースコがタランティーノの世界を大事にしていることが伝わってくる。デニス・ホッパーとクリストファー・ウォーケンのくだらない会話と、へらへら笑っているウォーケンがいつ爆発するかというサスペンスはまさに>>続きを読む
前半、ケヴィン・コスナーとマデリーン・ストウの不義密通カップルに老夫のアンソニー・クインがいつ「リベンジ」を企てるかというサスペンスに手に汗を握る。といいたいところだが、カップルのいちゃつきが長くて少>>続きを読む
ツイードのジャケットにブルーのシャツ。ロバート・レッドフォードの出立ちは、本作と同じくCIA職員を演じた『コンドル』(1975年)そのまま。老境に入ってなお知略を繰り出すレッドフォードと、愛する者のた>>続きを読む
暗いスクリーンで観なければ味わえない闇が充実した絵に、目まぐるしい動きと細かいカットつなぎ。トニスコの刻印がいっぱい。主人公のウィル・スミスはドジも踏むけど、いざというときは機転を利かせて、自分に災厄>>続きを読む
A24が手がけるファミリーものは、やはりA24に相応しく人間関係の歪みに焦点が当てられる。父親の言いつけに、男兄弟たちが一様に「イエッサー」と応える。ハイソ家庭ならいざ知らず、米国中西部の一般家庭を描>>続きを読む
アート映画とか心温まる小品系でこの規模の映画は日本でも公開されるけど、本作のようなアクションものはどれくらい作られているのだろうか。ケイジはこの小規模アクションもので数多くの作品に出まくっていて、ケイ>>続きを読む
ゲイリー・クーパー大尉が率いる歩兵部隊は、ジョン・フォードの騎兵隊とは趣が違う。砦を華々しく爆破した後は、地面や水面を移動する逃避行に終始する。泥臭くも男臭い。最初にクーパーが登場する場面は何回かのジ>>続きを読む
デニーロの胡散臭い笑顔が炸裂するサスペンス・ホラー。野球好きのおっさんカジュアル、セールスマンのスーツ、贔屓選手のユニフォーム、審判員のユニフォームといったデニーロのコスプレがストーリーを動かす。
とにかく気持ち悪いものを見せようという中2病的な趣向。自分が中2の頃だったら面白がっていただろう。R18指定という禁を破って見るささやかな背徳感とともに。こうした趣向と映画の面白さとは別物だということ>>続きを読む
アクション場面のほとんどは不意打ちの一撃でキレ良く片付く。たとえば、ブルース・ウィリスが悪役の邸宅に拉致された後、タバコの火をめぐる小競り合いの末に拳の一撃で相手の息の根を止める展開のキレのよさ。Li>>続きを読む
乾いた気候のカリフォルニアでも、夜の場面の路面は濡れて灯火を反射している。大半の場面は闇とわずかな光のなかで展開される。『ハンガー』では浮ついた感のあった暗い絵へのこだわりが、犯罪活劇ではキレのよいア>>続きを読む
絶え間のない緊張感ばかりが続く3時間。いつものように時間軸を生真面目に操作するノーランは、初めてだという性交描写も生真面目だった。人類の叡智が結晶された爆発を幻視するときの閃光、火炎、暴風、人体損壊な>>続きを読む
潜水艦映画にハズレなしと言われる。本作の台詞で『眼下の敵』と『深く静かに潜航せよ』に言及があるのはご愛嬌。潜水艦内は暗いだけでなくアクセントとなる光が当たっていて濃密。ジーン・ハックマンとデンゼル・ワ>>続きを読む
カトリーヌ・ドヌーヴとデヴィッド・ボウイの浮世離れしたたたずまい。そこに、ぐっと下世話感のあるスーザン・サランドンを配置する妙。愛し合う吸血鬼カップルという物語では、ジム・ジャームッシュが『オンリー・>>続きを読む
普通の映画なら数本分くらいの材料が詰め込まれている。結婚生活の開始がさまざまな事件で引き延ばされた末に、やっと成就するに至って強引に終了する。意志をもった女や戦後ドイツ史に関わる寓意が込められた数々の>>続きを読む
ジョン・アルトンが撮影監督を務めるアンソニー・マンのノワール作品にハズレなし。黒い闇が限りなく深い。メキシコ人の出稼ぎ農民の話としては、30数年後のフライシャー『マジェスティック』もあった。
シオドマクは本当にノワールが上手い。リチャード・コンテの人たらしぶり、病室からの脱出、悪徳弁護士事務所での立ち回り、夜の街を走る自動車内の治療、大女ホープ・エマーソンの不気味なたたずまい。それに、イタ>>続きを読む
誰もいない海岸で中高年の男女が睦み合うオープニング。この後に見舞われる不幸を十分に予感させるほどの幸福感が溢れている。不幸の兆しは、ジュリエット・ビノシュが元カレの姿を見掛けただけで心が乱れるところで>>続きを読む
ある一日の三人の女のストーリーが、直接接触することなく紡がれていく。三つのストーリーに共通するのは記憶というテーマだ。ハローワークに通う失業者は知人の記憶に召喚され、ニュータウンを彷徨う。ガス検針員は>>続きを読む
アイダ・ルピノが階段を登って居室に入るまでを捉えるショットがいいなと思ったら、何度か繰り返された。ビジネスに才長けたジョーン・フォンテインと中華料理屋ウェイトレスのアイダ・ルピノは異なった階層にある。>>続きを読む
見せ場が必ず盛り上がらるマキノ演出。とくに多数の人々が入り乱れる群像描写がエネルギッシュ。天守を一階ずつ上っていく(上昇するカメラが天井を横切ってブラックアウトするところでカット繋ぎ)立ち回りも素晴ら>>続きを読む
濃密に作り込まれた壮大なVFX、腹に響く重低音、シャラメを初めとするスターたち。上映時間が長いのはこれらをじっくり堪能させるためだろうか。映画としての感興はあまり湧かなかった。
辛気臭い顔が切り返されるだけの、無言の会話がこの上なく雄弁に見える。国民社会主義ドイツ労働者党の党員だったという初老の女が、有色人種の男と恋に落ちるときのぎこちないダンスと、その恋を回復するときのダン>>続きを読む
冒頭の空撮から始まる、江戸川下流域の広大で真っ平な風景。カメラが地上に降り立つと、そこには野鄙な人々が住まう。後にアメリカの映画会社のテーマパークが築かれたり、高層集合住宅が溢れたりして風景は一変し、>>続きを読む
木星探査に一人で向かう宇宙飛行士と、巨大蜘蛛型異星人との会話の応酬。壮大な話のようでいて、コンパクトな夫婦復縁話に帰着する。木星探査が始まった後の光溢れるサイケな(死語)トリップ場面はイマイチ。主人公>>続きを読む
セーヌ川を下る導入部が素晴らしい。紗のかかった映像で霧に烟るパリが水面から捉えられる。ちょっと三白眼のフェイ・ダナウェイが情緒不安定な主人公を演じてクロースアップ連続の大熱演。また、情緒不安定なダナウ>>続きを読む
お馬鹿テイストとプチグロ描写は、タラランティーノが喜びそうな70〜80年代グラインドハウステイストを狙いすぎかな。ハリウッド製グラインドハウス作品には明るい陽光が溢れているのに対して、徹頭徹尾、薄暗く>>続きを読む
腐れたインテリ小説家が家族のために偽名で作品を書き、それが世評を得てしまうという展開やテイストは、じつはウディ・アレンと同じ路線だ。人種や家族をめぐる面倒くささのネタもアレンっぽい。ただ、本作は映画と>>続きを読む