mat9215さんの映画レビュー・感想・評価 - 6ページ目

mat9215

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リリオム(1934年製作の映画)

3.5

神話劇、SF、サスペンスといったジャンルの立派な作品で名声を得たラングが、異国で初めて手がけた通俗劇。といっても、オーストリア=ハンガリー帝国出身の作家による原作は、ラングにとって馴染みのあるものだっ>>続きを読む

アイデンティティー(2003年製作の映画)

4.0

切れ味のよい密室サスペンスを短い尺でまとめているのは美徳。解離性同一性障害(多重人格)でモーテルといえば、アレを思い出さずにはいられないところ、ビニールのシャワーカーテンで控えめにアレに言及している。>>続きを読む

蜂の巣の子供たち(1948年製作の映画)

4.5

ときどきトラックや船に乗る以外はひたすら徒歩で移動するロードムービー。徒歩旅なら雨が降る辛い日もあるだろうけど、本作では気持ちの良いピーカンが続く。行く先々で別れた人物と再会するのを含めてファンタジー>>続きを読む

高原の情熱(1944年製作の映画)

4.5

豪勢な映画だった。
オープニング、豪快な発破と斜面を転がり落ちる無数の小石。一転して、眺望のよい坂道を登るバスから降り立つマドレーヌ・ロバンソン。ここは清水宏の『明日は日本晴れ』みたい。コイバナの舞台
>>続きを読む

オオカミの家(2018年製作の映画)

2.5

作り込みはすごい。三次元の物体と背景の壁にある二次元の絵が渾然一体となった悪夢を見せる。壁の絵はセルではなく、壁に描いた絵を次々と上塗りしていくという途方もない手間ひま。ある場面では、蝋燭が見る見る短>>続きを読む

シークレット・サンシャイン(2007年製作の映画)

3.5

チョン・ドヨンは事件が起きる前から何かしでかしそうな不穏な表情を浮かべている。子どもが家の中に隠れて見つからず泣き声を上げるところから始まって、ソ・ガンホが勝手に壁に下げた偽のピアノ経歴書をそのままに>>続きを読む

サンタクロースの眼は青い(1965年製作の映画)

2.5

剣呑な眼差しと身勝手なふるまいの永遠の小僧、ジャン=ピエール・レオが堪能できる一作。トリュフォー、ゴダール、リヴェット、そしてユスターシュなんて人たちがレオの代表作を作っていて、好みなのはリヴェットの>>続きを読む

わるい仲間(1963年製作の映画)

2.5

男が二人で街を歩くと女をナンパする。ジャック・ロジェの『ブルー・ジーンズ』やジャン=ピエール・モッキーの『今晩おひま?』なんてのも同じ設定で、展開がぐだぐだなところも同じ。本作だと、ナンパした女が失業>>続きを読む

かぶりつき人生(1968年製作の映画)

4.0

だらしない母と、それに反発しながら同じような道を辿る娘という基本的な設定の上で、ストーリーが行き当たりばったりに進んでいく。これは田中小実昌の原作通りかも知れないけど、紛れもなく神代辰巳ワールド。>>続きを読む

私を町まで連れてって(1953年製作の映画)

3.5

たいていの映画は1時間半以内に収めることができる、ということを痛感させる教育的な81分。主役のアン・シェリダンが街の女から主婦に転身することに逡巡する以外は、相手役のスターリング・ヘイドンを始めとして>>続きを読む

エドワード・ヤンの恋愛時代(1994年製作の映画)

3.5

数多い登場人物たちの関係を、観る者に苦も無く把握させる手腕。ルノワール『ゲームの規則』や濱口竜介『パッション』にも似た恋愛遊戯で、カップルが次々と壊れていく。公務員ミンの父と内縁の妻のカップルは、死に>>続きを読む

アメリカの影(1959年製作の映画)

3.5

『フェイシズ』に継承される顔への執着。『ハスバンズ』に継承されるぐだぐだにして目が離せない展開。1950年代にして黒人が主要な登場人物。

タラデガ・ナイト オーバルの狼(2006年製作の映画)

2.5

トニスコの『デイズ・オブ・サンダー』に描かれたヒロイックなストックカーレースの世界とは対極にあるベタなギャグワールド。観ているうちに次第に馴染んでくる。主役の不真面目顔ウィル・フェレルは『バービー』で>>続きを読む

椿三十郎(1962年製作の映画)

4.0

簡潔に物語を回し、立ち回りに加えてコメディまで織り込んでいて、苦手な黒澤映画の中では好印象。

バービー(2023年製作の映画)

3.5

『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』ではまだ控えめだった教育的なメッセージが本作では剥き出しになっている。それを極彩色のキッチュワールドに埋め込み、ヒット作にしてしまう豪腕ぶり。極彩色の>>続きを読む

サリー・ポッターのパーティー(2017年製作の映画)

3.5

野党のシャドウキャビネットの大臣に任命された記念のパーティという設定が英国風。政治家、その夫、皮肉の強い友人と夫のドイツ人セラピスト、学者と料理人のレズビアンカップル、金融ディーラーといったインテリた>>続きを読む

十代の夏/新学期(1956年製作の映画)

4.5

子供たちの反乱はもちろんジャン・ヴィゴ『新学期・操行ゼロ』だけど、森の中で一人楽しむ小僧には清水宏『団栗と椎の実』を思い出した。

フィフィ・マルタンガル デジタル・レストア(2001年製作の映画)

4.0

ロジェ最終作はヴァカンスではなく演劇の映画。演劇の映画といえば、同じジャックでもリヴェットが得意とするところ。たとえば、『アウト・ワン』や『彼女たちの舞台』。リヴェットがリハーサル風景に終始してそこに>>続きを読む

エクソシスト(1973年製作の映画)

3.5

冒頭、イラクにおける遺跡発掘や街中の風景がえんえんと続く。異文化をあくまで異物として扱う描写は、たとえばインディ・ジョーンズ・シリーズのような無邪気なオリエンタリズムとは一線を画す。その後のストーリー>>続きを読む

シャンゼリゼをさかのぼろう(1938年製作の映画)

4.0

教師のサシャ・ギトリが生徒たちにシャンゼリゼの歴史と、それに併走する自分の家庭史を語りかける。家族史における4代の男たちの生涯は正確に反復されていて、これを示す板書の説明が簡にして要を得ている。56歳>>続きを読む

わがままなヴァカンス(2019年製作の映画)

2.5

ヴァカンスで少女が成長するという物語。こうした物語でお約束の性的アヴァンチュールはもっぱらヒロインの従姉が引き受け、ヒロインは中年男ブノワ・マジメルと父娘のような間柄となる。うぶなヒロインのボーイフレ>>続きを読む

ピアノ・レッスン(1993年製作の映画)

2.0

自ら発話能力を封じた子持ちの女、ピアノへの執着、夫を遠ざけ粗野な男と情を通じる。どの設定も作為が強くてあまり心を打たない。スカートの中のパニエ(鳥かご状の骨組み)を何度も見せるのは面白い。

エルミタージュ幻想(2002年製作の映画)

3.5

フィルムカメラの連続撮影時間は最長10分間だった。ヒッチコックの『ロープ』は、カメラが静物を捉えたところで次のロールに切り替えていた。本作はビデオ機材が映画撮影に使用される最初期に、最長撮影時間100>>続きを読む

ミッション:インポッシブル/デッドレコニング PART ONE(2023年製作の映画)

3.5

宇野維正『ハリウッド映画の終焉』(集英社新書)が述べるとおり、最後のスターが最後の映画を作る気魄で臨んでいる。アクション場面では登場人物たちの身体を見せ、ドラマパートでは登場人物たちの表情を極端なクロ>>続きを読む

ナチスに仕掛けたチェスゲーム(2021年製作の映画)

2.5

バッドトリップの中を彷徨うウェルメイド・ドラマ。原作者ツヴァイクの雰囲気をたたえた主人公オリヴァー・スマッチが、堂々としたブルジョワと精神に異常を来した人物の落差を演じるのはお見事。船上で邂逅した妻が>>続きを読む

浮かれ狐千本桜(1954年製作の映画)

3.5

初めての斎藤寅次郎。益田喜頓の弁慶、伴淳三郎の佐藤忠信などなど、芸達者の俳優たちの持ち味を大活用。というか端役に至るまでけっこうなオールスターキャストだ。のんびりしたテンポの素朴なギャグに油断している>>続きを読む

マッド・ハイジ(2022年製作の映画)

3.5

オープニング、傷だらけのフィルムの質感はグラインド・ハウス。タラやロバロドのようなキレはないけど、大元のグラインド・ハウス映画群のほとんどはこんな感じだったのではないか。

ウォーク・ザ・ライン/君につづく道(2005年製作の映画)

2.5

子どものときにラジオで歌を聴いた歌手と添い遂げるというドラマチックなトゥルー・ストーリーだけど、あまり感興が湧かず。米国のカントリーミュージックというジャンルに興味を持てないのと同様かな。

幸福(しあわせ)(1964年製作の映画)

4.0

夫のジャック・ドゥミにも似た色彩世界で、ジャック・ドゥミを上回る運命論的なストーリーが展開される。ピクニックを楽しむ幸福そうな家族。夫が得た新たな女。ピクニックにおける妻の自死。元の妻と同じように家事>>続きを読む

秘花 〜スジョンの愛〜/オー!スジョン(2000年製作の映画)

3.5

イ・ウンジュとチョン・ボソクが凍った川の上を進んでいくなんてのはいい絵柄。ただ、この二人が接吻したり交わる場面は気持ち悪い感あり。そういえば、ホン・サンスは、キム・ミニには絡みをさせていないな。

バビロン(2021年製作の映画)

2.0

象が垂れ流す大量の糞とマーゴット・ロビーが放つ大量のゲロ。この志には共感するものの、映画センスには共感できない。とにかく長いし、ディエゴ・カルバが『雨に唄えば』を観ながら幻視する映画史上の有名作群やゴ>>続きを読む

オズの魔法使(1939年製作の映画)

4.0

『Pearl パール』を観たところで、今までご縁のなかった有名作に挑戦。すごい!極彩色の変態世界。小人の群れや悪い魔女のビジュアルも強烈で、子どもの時に見ていたらトラウマもの。子犬のTOTOが米国のバ>>続きを読む

川沿いのホテル(2018年製作の映画)

3.5

いつものように、煙草と酒の場面が多い。いつものように、登場人物は映画監督だったり作家や詩人。いつものように、登場人物たちの会話はかみ合っているようですれ違っている。詩人の親父が女二人に近づいたり、詩を>>続きを読む

Pearl パール(2022年製作の映画)

4.0

ミア・ゴスの気合いが炸裂。案山子との疑似性交、義妹に己の行状を告白する長回し、そしてエンドロールの笑顔。エンドショットは普通ならストップモーションで終わらせるところ、数分間の長回しで涙まで流す顔面から>>続きを読む

ショック・ドゥ・フューチャー(2019年製作の映画)

2.5

モーグ・モジュラーシステムが据え付けられた部屋で女性ミュージシャンが曲を作る過程が淡々と描かれる。女性ボーカリストを加えてラフ・スケッチから完成形に近づけていくのがなかなかの見所。音楽を作っている人が>>続きを読む

草の葉(2018年製作の映画)

3.5

感情を爆発させる登場人物たち。それに追随するかのようにズームにパンと、カメラが頻繁に動く。階段の昇降を繰り返す女を追うカメラの動きも面白い。ダサズームもここまで来れば作家の刻印だ。関連のなさそうなエピ>>続きを読む