mat9215さんの映画レビュー・感想・評価 - 9ページ目

mat9215

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画家と泥棒(2020年製作の映画)

2.5

女性画家とその作品を盗んだ男の二人が本物であることは確からしいものの、映画全体が最後の絵画作品に導くために構成されており、撮影も劇映画風だ。ギョーム・ブラックの『宝島』では好ましかった劇映画風ドキュメ>>続きを読む

危険な関係(1959年製作の映画)

3.5

ロジェ・ヴァディムの映画は『バーバレラ』と『世にも怪奇な物語』(オムニバスの挿話)しか見たことがなかった。これは好印象。なんと言ってもジャンヌ・モローの性悪女が素晴らしい。同じ時期に撮られた『死刑台の>>続きを読む

サイボーグでも大丈夫(2006年製作の映画)

2.5

精神病院を舞台にした映画は枚挙にいとまがない。衣笠貞之助『狂った一頁』、アナトール・リトヴァク『蛇の穴』、サミュエル・フラー『ショック集団』などのクラッシクから、最近ではジョン・カーペンター『ザ・ウォ>>続きを読む

聖メリーの鐘(1945年製作の映画)

3.5

とにかくレオ・マッケリーは上手い。ビング・クロスビーに飄々とした演技をつけ、大味なイングリッド・バーグマンに細かい表情を使い分けさせ、そして子どもや猫やワンコを活用する。本作と『我が道を往く』は、同じ>>続きを読む

オールド・ボーイ(2003年製作の映画)

4.0

酩酊して暴れるサラリーマン風のおっさん、チェ・ミンシクが、15年の監禁生活を経て精悍な復讐鬼と化すというツカミからやられる。監禁生活中にイメージトレーニングしていただけで戦闘能力を体得し、多数を相手に>>続きを読む

復讐者に憐れみを(2002年製作の映画)

3.5

ソ・ガンホとシン・ハギュンによる復讐の応酬において、ストーリーが手際よく展開される一方で、暴力を含むディテールがねっとりと描かれる。河原の青年の描写は、パク・チャヌクの『オアシス』に一年先行していた。>>続きを読む

イノセント・ガーデン(2013年製作の映画)

4.0

イカれた人々の犯罪譚がねっとりした演出で描かれる。とくに、ミア・ワシコウスカとマシュー・グードがピアノを連弾する場面は官能的でうっとりする。男女の連弾がいつも官能的というわけではない。ミヒャエル・ハネ>>続きを読む

JSA(2000年製作の映画)

3.5

大人が子供のような遊びに興じる場面は、遊びの終わりに死が訪れることを予感させる。北野武『ソナチネ』やルネ・クレマン『狼は天使の匂い』のように。こうした遊びに興じる場面で、ソン・ガンホとシン・ハギュンの>>続きを読む

エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス(2022年製作の映画)

2.5

登場人物たちがマルチバースを行き来する混沌とした展開はベタな家族モノに収束する。それ以上に、多元宇宙の混沌に一貫性を与えているのはミシェル・ヨーの引き締まった顔立ちだ。ただ、本作はショットの連鎖など映>>続きを読む

渇き(2009年製作の映画)

3.5

吸血鬼と化す神父と、家庭生活で抑圧された女の血で結ばれた性愛劇。エロやグロよりも、口がきけなくなった姑の目の芝居のように、黒い笑いが冴えている。わざとらしいワイヤーアクションや、朝焼けで朱に染まる大海>>続きを読む

ザリガニの鳴くところ(2022年製作の映画)

2.0

本作のヒロインは街場の人々から "Swamp girl"と罵られる。文字通り「沼地の娘」だ。沼地には貧しい人々が住まう。湿地帯や葦原の風景が印象的なせいか、沼地や河口地を舞台にした映画は記憶に残るもの>>続きを読む

ドント・ウォーリー・ダーリン(2022年製作の映画)

2.5

1950年代アメリカ中西部の郊外生活。ご近所の旦那たちが同時に玄関を出て、カラフルなクルマたちの一列縦隊で職場に赴く。こうした人工的(というか「人造的」)な絵柄が嘘くさくてちょっと面白い。夫たちの職場>>続きを読む

ザ・メニュー(2022年製作の映画)

2.5

教祖たるシェフの号令一下、スタッフも客もシェフが練り上げた破滅のストーリーを突き進んでいく。一方で、アーニャ・テイラー=ジョイは庶民の食べ物を所望して招かれざる客であることを再認識させ、このストーリー>>続きを読む

NOPE/ノープ(2022年製作の映画)

2.5

『ゲット・アウト』『アス』ときて本作。ジョーダン・ピールの過去作品は苦手だった。本作もサスペンスやスリルとは無縁でも、視覚的効果のスペクタクルとして見てはいられる。ジョーダン・ピールが映画ではなく映像>>続きを読む

ハッピー フィート(2006年製作の映画)

2.5

教祖ラブレイスの姿形や振る舞いがイモータン・ジョーだった。

ちひろさん(2023年製作の映画)

2.5

弱い者と交感するけど、他人には依存しない。ぎこちない親子関係の子供が集まってくる。弁当屋の奥さんの代打の役割が終わるとさっと消えていく。控えめな表現は好ましいもののそれほど没入できず。風吹ジュンは徐々>>続きを読む

我が道を往く(1944年製作の映画)

4.0

全身が入るくらいの長回しで俳優の芝居を捉え、要所でクロースアップを入れるタイミングの良さ。音楽演奏の場面の上手さは『人生は四十二から』でも発揮されていた。レオ・マッケリーは『吾輩はカモである』や『結婚>>続きを読む

アラビアンナイト 三千年の願い(2022年製作の映画)

3.5

物語の物語。思えば、マッドシリーズ各篇は神話を語るようなナレーションで締めくくられていた。ティルダ・スウィントンとイドリス・エルバのホテル内の会話。イドリス・エルバは自分が伝える物語の中で様々な時空に>>続きを読む

別れる決心(2022年製作の映画)

4.0

「歴史は繰り返す。一度目は悲劇として、二度目は笑劇(ファルス)として」という箴言を踏まえたかのように、本作の男女は一線を越えぬ恋愛劇を二度繰り返す。ただし、本作における二度目の恋愛劇は笑劇ではなく決定>>続きを読む

ボーンズ アンド オール(2022年製作の映画)

2.5

ヴィム・ヴェンダースの『パリ・テキサス』や『アメリカ 家族のいる風景』と同じように、欧州人が描くアメリカ合衆国の田舎はずっと砂漠が続く。じっさい、アメリカ合衆国を横断する飛行機から見える風景はほとんど>>続きを読む

狂ったバカンス(1962年製作の映画)

2.5

ヴァカンスの日々のとりとめないエピソードが綴られたり、ヴァカンスの終わりの寂寥感が描かれたり、ジャック・ロジェによるヴァカンス映画の系譜に属するかも知れない一作。余裕カマしたイケオヤジのウーゴ・トニャ>>続きを読む

逆転のトライアングル(2022年製作の映画)

2.5

第一部におけるレストランの請求書をめぐるカップルのいざこざの居心地悪さとか、第二部における富裕者たちの傲慢なふるまいや同時多発ゲロ(タモリ語)は好感が持てた。ただ、第三部は邦題にある「逆転」が図式的に>>続きを読む

殺人者たち(1964年製作の映画)

4.0

本作は二人組が展開を駆動する。リー・マーヴィンとクルー・ギャラガーの殺人者コンビは、『殺人捜査線』におけるイーライ・ウォーラックとロバート・キースのコンビを上回る非情さと破壊力。一方で、レーサーのジョ>>続きを読む

ドラブル(1974年製作の映画)

4.5

小刻みなものから長回しまで、すべてのショットに意味がある。とくに、ジョン・ヴァーノンとデルフィーヌ・セイリグがマイケル・ケインの部屋に仕掛けを施す場面の長回しは、セイリグがコートを脱ぐだけで全裸になっ>>続きを読む

雨月物語(1953年製作の映画)

3.5

がっちりと決まった構図、長回しとそれを打ち切るタイミング、そして、霧の湖上や幽霊屋敷といった名場面の数々。しっかし、田中絹代が体現する全体のテーマが品行方正過ぎて溝口作品として物足りない。『羅生門』に>>続きを読む

博士と狂人(2018年製作の映画)

2.5

そこそこ楽しめる実話ベース映画。メル・ギブソンとショーン・ペンがいつものようにに熱演する。ただ、手持ちカメラの忙しない動きや、無闇なカット割りなど、演出は終始馴染めなかった。

10番街の殺人(1971年製作の映画)

4.0

リチャード・フライシャーによるシリアルキラー映画の秀作。後に大物映画監督となったリチャード・アッテンボローがぶっきーな犯罪者を怪演する。ショットの小気味よい連鎖でサスペンスが醸成され、コントラストの強>>続きを読む

崖上のスパイ(2021年製作の映画)

2.5

ハルビンの街や雪中のロケーション撮影は立派でも、あまり感興が湧かない。「スパイ」を題名に冠した最近の映画では、黒沢清の『スパイの妻』が、欺し合いのコンゲームとしても、また、映画の面白さでもだんぜん優れ>>続きを読む

抜き射ち二挺拳銃(1952年製作の映画)

2.5

妖艶風なフェイス・ドマーグは、負傷して担ぎ込まれた男を無造作に絞殺した後に、保安官スティーブン・マクナリーに粉をかける。この乾いた描写にしびれる。本作の夜景は暗闇の中に部分的に照明を当てて月光を模して>>続きを読む

ソイレント・グリーン(1973年製作の映画)

2.5

リチャード・フライシャーの演出はシャープだ。群衆の中での撃ち合いや、ソイレント・グリーン工場内の立ち回りといったアクション場面は言うに及ばず。何げない会話でもカット割りや人物の配置に工夫がある。そして>>続きを読む

波の間に(2021年製作の映画)

2.0

オープニングからしばらくはちょっと面白い。稽古中の劇中劇の背景に上映されているニューヨークの風景映像が、あたかもスクリーンプロセスのように見えたり、本編でもその映像がクロスカッティングされたりする。ク>>続きを読む

ブートレッガー 密売人(2021年製作の映画)

2.5

闇の深い絵作りや、先住民居留区の不穏な雰囲気や、針葉樹林の中の一本道などなどは悪くない。一方で過去のエピソードだとか、皆が住民投票(レファレンダム)に賛同していく描写が分かりにくかったりする。当方が鈍>>続きを読む

自来也/忍術三妖伝(1937年製作の映画)

3.5

短い尺数の中にマキノ(正博)雅弘の映画の上手さが詰まっている。小気味よいテンポのカット割、遠近・同一軸上のマッチカットとアクション繋ぎ、役者の芝居を見せる長回し、さらに人物が消えたり現れたりする原始的>>続きを読む

イニシェリン島の精霊(2022年製作の映画)

2.5

リアルなドラマのようでいてダークなファンタジー。『精霊』という邦題は妖精に通じて当たらずも遠からず。妖精(バンシー)は死を告げる老婆だし、依怙地な男は指を切り落とした手から血を流しながら酒場で演奏を指>>続きを読む

ブラッド・オレンジ(2021年製作の映画)

2.5

登場人物たちのくっだらないお喋りが面白い。ダンスコンテストの審査員、老夫婦とその子供たち、少女と仲間、大臣とその知人といったバラバラのグループのお喋りが何度か続くうちに、お互いが次第に絡んでいくつかの>>続きを読む

西部戦線異状なし(2022年製作の映画)

2.5

戦死者から軍服を剥ぎ取り、洗濯して補修する。遠足気分で浮かれた志願兵たちにそれが支給され、ある者は前に着ていた死者の名札を見つける。兵士は戦死し代替者が補充される。この陰鬱なオープニングに戦闘場面、す>>続きを読む