megurosさんの映画レビュー・感想・評価 - 2ページ目

南極料理人(2009年製作の映画)

3.8

1997年、南極はドームふじ基地。標高3800m、平均気温は-54℃。動物はおろか細菌すら存在しない極寒地。寒いし、何もないし、家族と離れて寂しいし、水さえ自由に使えないから一刻も早く帰りたい。でも”>>続きを読む

さかなのこ(2022年製作の映画)

4.0

『さかなクンの一魚一会~まいにち夢中な人生!』を原作としながら、フィクション要素も大胆に取り入れた沖田修一監督らしい少しファンタジックでやさしい映画。

”好き”の求道者みー坊をのんに演じさせるそのキ
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ベイビー・ブローカー(2022年製作の映画)

4.2

社会の底に視点を置くことでその社会を露わにする是枝メソッド。今回は赤ちゃんポストから始まるロードムービーだが、「万引き家族」のような疑似家族の一行が釜山からソウルへと向かう過程で、この社会に澱として溜>>続きを読む

キングメーカー 大統領を作った男(2021年製作の映画)

3.8

金大中とその選挙スタッフだった厳昌録をモデルしたフィクション、社会派エンターテイメント。1997年に行われた第15代 大統領選挙で韓国では初めて投票による政権交代が実現したとのことで、ずいぶん最近のこ>>続きを読む

モガディシュ 脱出までの14日間(2021年製作の映画)

4.0

2021年度韓国映画No.1ヒット作。スーダンで大規模な武力衝突があったこともあり鑑賞(スーダンでは、反政府勢力を攻撃するために政府によって作られた民兵組織=第二の軍隊vs正規軍なのでやや毛色は違うと>>続きを読む

ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:VOLUME 3(2023年製作の映画)

4.7

このレビューはネタバレを含みます

ロケットの話である今作は、もっと完璧な自分を求めるRadiohead「Creep」から始まる。回想の中で自らを”ロケット”だと名付けたことを思い出し、自分がアライグマであることを知ることになるが、映画>>続きを読む

ザ・ホエール(2022年製作の映画)

4.5

米国では大きな社会問題ともなっている肥満を描く。部屋の外から中を伺うピザ屋さんは社会の象徴だろう。その差別意識は根深い。

ホン・チャウ演じるチャーリーの友人・看護師のリズは、彼の過食を気にかけながら
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神々の山嶺(2021年製作の映画)

4.3

このレビューはネタバレを含みます

前人未到のエベレスト南西壁冬期無酸素単独登頂に挑む登山家・羽生丈二の姿を描く。

小説原作は未見、漫画は刊行当時に読んでいた。本作は吹替版にて鑑賞。谷口ジロー氏がフランス文化勲章であるシュバリエ章を2
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マトリックス レザレクションズ(2021年製作の映画)

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このレビューはネタバレを含みます

セルフ低予算パロディのような前半に敢えなく途中脱落。カメラワークにもビジュアルにもフレッシュなものが無く、むしろフォロワー達が映像のフロンティアを切り開いている現在、オリジナルよりも後退した表現を見せ>>続きを読む

未来を生きる君たちへ(2010年製作の映画)

4.2

原題はHEAVEN(天国), 英題はIn A Better World(より良い世界で)。

デンマークで暮らす少年エリアスとクリスチャンはいじめっこ集団のリーダーに復讐の形で大怪我を負わせる。一方、
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恋のゆくえ ファビュラス・ベイカー・ボーイズ(1989年製作の映画)

3.8

当時40歳前後で色気ムンムンのジェフ・ブリッジスと、30前半のミシェル・ファイファーの恋愛映画...と途中怪しんだが兄弟の話にもちゃんとなっていて良かった。

兄はクリエイティブなタイプの人間というよ
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ナワリヌイ(2022年製作の映画)

4.0

このレビューはネタバレを含みます

プーチンに暗殺されかけた反体制のカリスマ=アレクセイ・ナワリヌイ。彼が一命を取り留めたことはニュースで知っていたが、内幕がまさかこんなことになっていたとは。寡聞にも知らずでいたが、とにかく驚いた。>>続きを読む

フェイブルマンズ(2022年製作の映画)

4.0

このレビューはネタバレを含みます

スピルバーグの自伝的作品。映画の素晴らしさを描くのかと勝手に思っていた(アカデミーの授賞式ではスーパーヒーローものとギャグにされてました)が、映画との出会いや家族の話を扱ったとてもパーソナルな作品だっ>>続きを読む

キャスティング・ディレクター ハリウッドの顔を変えた女性(2012年製作の映画)

4.0

映画キャスティングの第一人者マリオン・ドハティを軸に、キャスティングの歴史と現在を映したドキュメンタリー。

映画史初期において俳優はスタジオ毎の専属(これは日本においてもそうだったが)で、となるとキ
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アルゼンチン1985 ~歴史を変えた裁判~(2022年製作の映画)

3.8

クーデターによって成立した軍事独裁政権は国民に過剰な弾圧を行った。反国家主義者をテロリストと称し、対応を正当化するようなロジックは最近も聞いた気がするが、いま裁かねば無罪放免、裁判が普通に行われない国>>続きを読む

バビロン(2021年製作の映画)

4.7

このレビューはネタバレを含みます

サイレントからトーキーへの過渡期、狂騒の20年代は世界恐慌によって終わりを迎え、映画黎明期の野生的な現場はヘイズコードによる統制された現場へと変わっていく。この映画はそうした時代の転換期における映画人>>続きを読む

エルヴィス(2022年製作の映画)

4.0

このレビューはネタバレを含みます

不世出のスーパースター、エルヴィス・プレスリーの真実に迫る伝記映画。映画を観て、自分はエルヴィスについて何も知らなかったのだなと気がついた。

エルヴィスは黒人コミュニティで生まれ育ち、ソウルやゴスペ
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エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス(2022年製作の映画)

4.3

このレビューはネタバレを含みます

A24製作。家族の崩壊と全宇宙の崩壊とがイコールになっている点でセカイ系。社会に蔓延る不寛容と閉塞感、それに対する無力感から人々はベーグルブラックホールに吸い寄せられる。ジョブ・トゥパキは若い世代を代>>続きを読む

別れる決心(2022年製作の映画)

4.5

このレビューはネタバレを含みます

捜査する刑事と被疑者との禁じられた恋愛関係を描いたメロドラマでありながら、折り返し地点を挟んでそれが不条理劇のように展開。自分は恋愛映画に興味は本来ないのだが、大傑作と感じた。

前半の転落事件で真犯
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イニシェリン島の精霊(2022年製作の映画)

4.0

寓話的な話であり、捉え方は人それぞれ。退屈な話にはもうこれ以上耐えられないという友情関係終焉の1形態と率直に見ることもできるし、より構造を敷衍して捉えるならば、閉じられた文化圏において土着な価値観と世>>続きを読む

ブラックアダム(2022年製作の映画)

3.8

5000年ぶりに目醒めたデミゴッドのテス・アダム鎮圧のため、ヒーロー軍団JSA(ジャスティスソサエティ)はカーンダックを訪れる。過去の有事に一度も姿を見せなかった癖に、この地域にやっと生まれた神を悪者>>続きを読む

ストーリー・オブ・フィルム 111の映画旅行(2021年製作の映画)

3.8

WOWOWのHPに書いてあった紹介文が分かりやすい。

“誰よりも映画を愛し、これまでの人生で鑑賞した映画の総本数は1万6千本以上。2011年には、古今東西の数々の映画の名場面を引用しながら映画の歴史
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逆転のトライアングル(2022年製作の映画)

4.3

このレビューはネタバレを含みます

人間社会の権力関係・パワーゲーム・格差の構造を戯画化。全三幕構成になっていてとても演劇的。人間社会の醜悪さを写しとっている点でカンヌのパルム・ドールも納得。

第一幕ではモデルのカールとヤヤのカップル
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ハウス・オブ・グッチ(2021年製作の映画)

3.8

このレビューはネタバレを含みます

いかにして現在のグッチにグッチ創業家が誰1人としていなくなったのか、お家騒動の顛末を描く。

家業の経営方針をめぐって夫婦の間で意見の対立が生まれ、そもそも仕事が忙しいため疎遠にもなる中で、家族を悪く
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「鬼滅の刃」上弦集結、そして刀鍛冶の里へ(2023年製作の映画)

4.2

ミッドナイトIMAX上映にて鑑賞。遊郭編は既に何度も見ているが、大画面大音量での音柱vs妓夫太郎は格別。11話も劇場での方が感情移入が捗り「なんて可哀想な兄妹/鬼...」と涙腺がゆるむ。

新作1話は
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セールスマン(1969年製作の映画)

4.0

ダイレクトドキュメンタリーの巨匠メイズルス兄弟の傑作と言われる本作。2017年にジョージルーカス財団によって修復され、日本初上映となったのも最近のことだがようやく横浜で鑑賞。

カメラは聖書のセールス
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ギレルモ・デル・トロのピノッキオ(2022年製作の映画)

3.8

このレビューはネタバレを含みます

ファンタスティックMr. FOXでアニメーション監督を務めたマーク・グスタフソンを共同監督に、セサミストリートをてがけたジム・ヘンソンカンパニー、ボージャックホースマンのShadowMachineが制>>続きを読む

The Windshield Wiper(原題)(2021年製作の映画)

4.2

94回アカデミー短編映画賞受賞作品。Youtubeで観られるようになっていたとは。愛とは何か?の問いからはじまり、世界各地のさまざまな愛の形、愛の模様がモンタージュされる。

愛とは隠された社会であり
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My Year of Dicks(原題)(2022年製作の映画)

4.2

ヒューストン郊外に住む15歳の女の子の処女喪失をめぐる短編。脚本のパメラさんの自伝的作品が原作のようで、Vimeoで舞台裏を写したフッテージを確認したところパメラさんが自らPamを演じられていて、実に>>続きを読む

The Flying Sailor(原題)(2022年製作の映画)

3.8

港近くの船の爆発に巻き込まれた船乗りが、爆風に吹き飛ばされ、宙空を漂う間に人生の走馬灯を、そして生命の原点のようなものを幻視する様が描かれる。

歴史上で原子力爆弾以外で最大の爆発と言われるHalif
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西部戦線異状なし(2022年製作の映画)

4.0

このレビューはネタバレを含みます

戦争の過酷さをドイツ側から描いたドイツ人作家の原作をアメリカで映画化したのが1930年(未見). 今回この反戦映画を初めてドイツ人監督、キャストでリメイクしたとのこと。

第一次世界大戦では戦車や戦闘
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ジェイコブと海の怪物(2022年製作の映画)

4.0

このレビューはネタバレを含みます

海の怪物と戦い続けてきた王家とモンスターハンターたち。主人公のジェイコブは幼い頃に海で拾われ、最強のハンター船”イネビタブル(不可避)号”の次期船長として将来を嘱望されるまでに成長するが、凶悪な海の怪>>続きを読む

THE FIRST SLAM DUNK(2022年製作の映画)

4.3

週刊誌連載では読んでいたものの、もう20年も前。おぼろげな記憶で鑑賞したが映画を通じて当時の興奮をフレッシュに思い出した。

漫画原作では主人公だった花道や(花道から一方的にライバルと見なされる)流川
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RRR(2022年製作の映画)

4.7

1920年代イギリス統治下のインドが舞台。インド映画は敵役がイギリスになるから楽しい。監督の前作「バーフバリ」も最高だったが、今回もケレン味の特盛り。トロイの木馬的に森の動物たちが一斉に檻から飛び出す>>続きを読む

劇場版 呪術廻戦 0(2021年製作の映画)

3.8

戦いたくない乙骨憂太はシンジに、ツンデレキャラの禪院真希はアスカに、指導役の五条さんがミサトさんに見えてきてしまい、呪術廻戦は虎杖悠仁を主人公に据えたのが正解だったとよく分かった。

※乙骨は後半”女
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トロール・ハンター(2010年製作の映画)

3.8

大学のニュースサークル?がクマ密猟の取材のつもりで密着したのがトロールハンターだったというモキュメンタリー。ノルウェーの神話に詳しくはないが、トロールの知られざる生態が映される。撮影者が登場人物である>>続きを読む