megurosさんの映画レビュー・感想・評価 - 9ページ目

レ・ミゼラブル(2019年製作の映画)

4.0

マチュー・カソヴィッツ監督「憎しみ (La Haine)」(1995)を思い出した。パリ郊外(バンリュー)の、移民が多く住む公営住宅を舞台に階層化された社会に生きる若者たちと警察暴力を描いた作品だが、>>続きを読む

ビューティフル・マインド(2001年製作の映画)

3.8

ナッシュ均衡で有名な数学者ジョン・ナッシュの半生を描く。前半はプリンストン大学を舞台に、アダム・スミスが打ち立てた150年も続く経済理論を否定するゲーム理論を思いつくまで。中盤から後半は統合失調症によ>>続きを読む

なぜ君は総理大臣になれないのか(2020年製作の映画)

4.2

議員を志すからには総理大臣を目指すと語る小川淳也を追いかけた17年間の記録。

国民生活よりも党利党益を重視しなければ党内で出世ができず、発言権も与えられない。そんな政界でもがく彼の姿を描いた映画では
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ハッピー・デス・デイ(2017年製作の映画)

3.5

恋はデジャブ(Groundhog Day)形式のホラー映画で、女子大生が殺されるたびに同じ一日を繰り返す。

当初は性格が悪く(劇中ではBitchやらwhoreやら呼ばれている)、転生を繰り返す中で生
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フォレスト・ガンプ/一期一会(1994年製作の映画)

4.3

運命に導かれながらも同時に風に浮かんでは漂い、出会いと別れを繰り返しながら前に進んでいく我々の人生について語られる。

フォレスト・ガンプの人生を辿りながら、それがアメリカの50〜80年代史にもなって
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インセプション(2010年製作の映画)

4.3

モーリス・フィッシャーの経営するエネルギー複合企業を破滅させるため、サイトーから依頼を受けたコブたちは息子で後継者のロバート・フィッシャーの夢の中に潜入し、父親の会社を解体させるアイディアを無意識に植>>続きを読む

交渉人(1998年製作の映画)

4.0

シカゴ警察の人質交渉人であるダニー(サミュエル・L・ジャクソン)が横領と殺人の濡れ衣を着せられ、人質をとって立て篭る。ダニーが交渉人に選択したのは2年前に一度話したことがある程度の知り合い、クリス・セ>>続きを読む

13th 憲法修正第13条(2016年製作の映画)

4.2

南北戦争後の奴隷解放によって南部の経済を支えていた400万人の奴隷労働力が一瞬で失われる。そこで、「奴隷的拘束」の禁止を規定し自由を保障する合衆国憲法の”修正第13条”の抜け穴(=犯罪者は除く)が利用>>続きを読む

洲崎パラダイス 赤信号(1956年製作の映画)

3.8

東陽町のあたりにかつて存在した吉原に次ぐ東京第二の色街。洲崎パラダイスに至る橋のふもとの居酒屋に、文無しで行き場を失った男と女が流れ着く。しっかり者の女は居酒屋で、優柔不断のうじついた男は少し離れた蕎>>続きを読む

ドリームハウス(2011年製作の映画)

3.8

作家になるために会社を辞め、新しい街での新生活が始まると思いきや、敷地への侵入者など何やら不審な出来事が家の周りで立て続けに起きて幸先の悪いスタート。どうやら以前住んでいた家族が一家惨殺に遭ったようだ>>続きを読む

ラ・ジュテ(1962年製作の映画)

3.5

第三次世界大戦で廃墟となったパリの地下。科学者たちは全産業を復活させるエネルギーを持ち帰るためにタイムトラベルの実験を繰り返していた。時間と記憶をめぐる物語で、La Jetteとは記憶として何度も夢に>>続きを読む

シェアハウス・ウィズ・ヴァンパイア(2014年製作の映画)

3.8

ニュージーランドに住むヴァンパイアの生活を紹介するモキュメンタリー。昼間は出歩けない、招かれないとお店に入れない(だから行きたいクラブに入れない)、元カノ(人間)からもらったシルバーアクセが着けられな>>続きを読む

弁護人(2013年製作の映画)

4.2

全斗煥のクーデター、金大中らの逮捕を不服とした市民によるデモ隊と陸軍特殊部隊とが衝突し多数の死傷者が出た光州事件のその翌年。不正選挙で大統領となった全斗煥政権下においては「国家保安法」の下に思想狩りが>>続きを読む

スポットライト 世紀のスクープ(2015年製作の映画)

4.0

2002年にボストングローブ紙の取材チーム”スポットライト”がカソリック教会による組織ぐるみの小児虐待隠蔽を暴いた実話に基づく話。被害者は数千人という物凄いスケールのスキャンダルで、911後の信仰が求>>続きを読む

21世紀の資本(2017年製作の映画)

3.6

18世紀からの経済史を眺めながら、貴族や資本家といった支配層が生み出す労働者搾取の構造、権力の温存、富める者がより富み貧しい者がより貧しくなるという現代のシステムについて描く。

映画終了後のティーチ
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千と千尋の神隠し(2001年製作の映画)

4.8

「もののけ姫」が自然と人間との共存を模索した作品(=共に生きよう)であるとすると、「千と千尋」は山をすっかり人間が住宅地に作り変え、神様の家である祠は朽ち果て、川の神様は不法投棄によって腐れ神となって>>続きを読む

ミッドナイト・ラン(1988年製作の映画)

3.5

元シカゴ市警で今は賞金稼ぎのウォルシュ。逃亡した会計士を公判までにNYからLAに連れ戻すことになるのだが、FBIやギャングや他の賞金稼ぎに追われて大変なことに。会計士は堅気だが、雇い主がシカゴの麻薬王>>続きを読む

ハーフ・オブ・イット: 面白いのはこれから(2020年製作の映画)

4.5

中国人優等生のエリーはメキシコ系の美少女アスターに密かに想いを寄せているが、口下手で文才もない(アメリカ人でありながら英語があまり得意じゃないとも言う)アメフト部のポールからアスター宛のラブレター代筆>>続きを読む

プライベート・ライアン(1998年製作の映画)

4.8

ライアン家4兄弟の内3人の戦死の報が同日に母親の元に届くことが判明。4人目のジェームズ・ライアン二等兵(=Private Ryan)は敵地奥に散開していて生死も所在地も不明だが、そのライアンを何とか探>>続きを読む

スキャンダル(2019年製作の映画)

3.8

FOXニュースの元人気キャスター グレッチェン・カールソンが、CEOでテレビ界の帝王であるロジャー・エイルズをセクハラで提訴するという2016年に起きた実話スキャンダルの裏側を描く。映画界の帝王ハーヴ>>続きを読む

スーパーサイズ・ミー: ホーリーチキン !(2017年製作の映画)

4.0

モーガン・スパーロックがチキンサンドレストランのオープンにチャレンジすることでチキン業界/ファーストフード業界の闇に迫る。「答えを知る方法はその問題の一部になること」という気合い籠った作品。

最近、
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フード・インク(2008年製作の映画)

3.8

かつてマクドナルド兄弟はレストランの厨房に工業システムを導入することで調理を単純流れ作業に変え、早くて安価な食のあり方”ファーストフード”を発明したが、巨大な多国籍企業によるフードシステムは農場をすっ>>続きを読む

マッドマックス 怒りのデス・ロード(2015年製作の映画)

5.0

個人的なオールタイムベスト作品。映画開始から終始驚き、胸躍り、手に汗握る。Junkie XLの劇伴も素晴らしい。次から次へと展開される凄まじい迫力の撮影は、実際に車を作って爆破しているからなのだろう。>>続きを読む

ダム・キーパー(2013年製作の映画)

4.0

第87回アカデミー賞の短編アニメーション部門ノミネート(バードマンの年、長編アニメではかぐや姫がノミネートされていて、ベイマックスに...)

大気汚染に覆われた世界の話。内気な豚が絵を描くのが得意な
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ホドロフスキーのサイコマジック(2019年製作の映画)

3.8

通常のカウンセリングは言葉による癒しであり、患者との接触を良しとしないが、ホドロフスキーが提唱するのは、患者との積極的な接触と劇的な体験によって癒しに到達する”癒しの芸術=サイコマジック”。

映画は
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かぐや姫の物語(2013年製作の映画)

4.5

高貴な君となって(かぐや姫をまるで獲得対象のモノのように扱う横暴で嘘つきな)貴族や帝と結婚することが本当に地上の”幸せ”なのか?生命はもっと自由であってはいけないのか?ただ鳥や獣のように生きることを望>>続きを読む

精神0(2020年製作の映画)

4.2

患者さんとの”共生”をテーマとして治療にあたってきた山本先生が退任し、認知症を患う妻・芳子さんとの生活に移る。前作の「精神」が2007年。芳子さんがまるで別人のようになっていることに気付く。

観察映
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グリーン・ライ 〜エコの嘘〜(2018年製作の映画)

3.5

気候変動という”今ここにある危機”の根本原因は成長神話にがんじがらめになった資本主義のシステムにこそあり、それを解決するには現行の経済システムとそれを支えるイデオロギーを根底から変える以外に方法はない>>続きを読む

ゲット・アウト(2017年製作の映画)

4.2

このレビューはネタバレを含みます

鑑賞2回目。運転していなかったクリスが免許証を警察から求められ、それにローズが強く抗議する冒頭のシーンで、「わたしの男を守っただけよ」とローズはクリスに説明するが、結末が分かっている2回目の視聴だから>>続きを読む

雨の日は会えない、晴れた日は君を想う(2015年製作の映画)

4.0

倦怠期の中で突然の交通事故によって妻を失い、自分の心にうまく向き合えない哀しみと苛立ちで、周りのものや住んでいた家までも破壊する。

原題はDemolition. 解体の現場を手伝って彼がしているのは
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美女と野獣(1991年製作の映画)

3.5

怒りっぽかった野獣がベルによって育てられる話。その野獣とガストンでベルを奪い合うという点でベルに成長はなく、それでいてベルと野獣が結ばれてしまうのだから(この当時も批判はあったようだが)ベルの主体性は>>続きを読む

インポッシブル(2012年製作の映画)

4.2

2004年のスマトラ沖地震に伴う未曾有の津波によってタイのリゾートでプール遊びしていた家族が散り散りとなる実話に基づく話。地上の楽園のように見えた景色を一瞬にして地獄に変える津波の恐ろしさ、死に溢れた>>続きを読む

ホーホケキョ となりの山田くん(1999年製作の映画)

4.5

朝日新聞紙上で連載された4コマ漫画「となりの山田くん」及び「ののちゃん」を長編アニメーション化。現実のどこかにあるような家族の姿、記憶に残る昭和の日常の一コマを、お正月や結婚式、お使いを頼む話などのエ>>続きを読む

夢と狂気の王国(2013年製作の映画)

4.3

「風立ちぬ」製作の舞台裏を主に映しながら、同時期に製作が進められていた「かぐや姫の物語」の混沌を捉える。高畑、宮崎、鈴木の3人の若き日のフッテージも交えながら”ジブリという青春”をその晩年期におさめた>>続きを読む

ウェイキング・ライフ(2001年製作の映画)

4.2

夢の中で目が覚めるとまた別の夢の中にいる。その夢の中で出会う人々はさながら市井の哲学者のようで、現実と夢、自由意思、人生の意味、明晰夢、実存主義などをテーマに彼らの考えが連続して語られていく。いわば「>>続きを読む

ハートブレイク・リッジ/勝利の戦場(1986年製作の映画)

3.5

ベテラン軍人トム・ハイウェイが、海兵隊に復帰して、規律乱れた海兵隊員を鍛え直し、堕落した組織的風土に喝を入れる話。2020年の今から数えて34年前の映画だが、主演で監督も務めるイーストウッドがこの時点>>続きを読む