mikeさんの映画レビュー・感想・評価 - 5ページ目

パワー・オブ・ザ・ドッグ(2021年製作の映画)

3.5

このレビューはネタバレを含みます

各所での評判を漏れ聞いて。たしかに観客の好き嫌いを超越するような、すさまじい映画。

まずずっと主人公もジャンルも物語のゆく先もわからない。うつくしい撮影、奇妙な違和感と通底する不穏さでほぼ全編を引っ
>>続きを読む

ラストナイト・イン・ソーホー(2021年製作の映画)

4.5

このレビューはネタバレを含みます

キワキワのキワを進みながらものすごくぐっと刺さるのが『プロミシング・ヤング・ウーマン』と同じ今を映す傑作。とにかく理屈を超えて、ガラスを突き破ってのハグと燃えさかる記憶の城の中でのハグに号泣してしまっ>>続きを読む

ドロステのはてで僕ら(2019年製作の映画)

3.0

あっという間の70分でおもしろかった!2分間のタイムラグの忙しさに笑いつつ、最後はじんわりと胸があたたかくなる。

ただこれはやっぱり舞台だと。カメラワークや演技が、映画ならではの没入感やカタルシスを
>>続きを読む

あのこは貴族(2021年製作の映画)

4.0

すばらしい原作の、すばらしい映画化。
地方の輩も都心の貴族もせまい世界を出ないという点では同じ生き物、人には人の地獄がある、という視点。性別や家柄や地域の呪縛に苦しみながら、女たちが連帯して自由になろ
>>続きを読む

エターナルズ(2021年製作の映画)

4.0

このレビューはネタバレを含みます

人種や性別で語りたくないけれど、アジア系女性のオタクにしか撮り得ないエモみが堂々と炸裂しまくっていて、感動した!

まず、一番好感を持ったのは、『エンドゲーム』とほぼ裏返しの部分。ヒーローたちが「最大
>>続きを読む

最後の決闘裁判(2021年製作の映画)

4.0

このレビューはネタバレを含みます

『ある女流作家の罪と罰』のニコール・ホロフセナーが描いた第三幕の地獄がすさまじかった。

第一幕・第二幕もとてもおもしろかった。構成の巧みさとクソ男3人の演技アンサンブルが見事。仕事、身分、家柄、処世
>>続きを読む

DUNE/デューン 砂の惑星(2020年製作の映画)

3.5

『メッセージ』の時とほぼ同じ感想になってしまうのですが、ドゥニ・ヴィルヌーヴのSFには静けさと品格がある。裏返すといくらなんでも説明不足だったり、個人的な好みとしてはちょっと崇高すぎるきらいもあるので>>続きを読む

007/ノー・タイム・トゥ・ダイ(2019年製作の映画)

3.5

このレビューはネタバレを含みます

リッチでゴージャスな卒コンありがとう!と思いつつも、正直007シリーズの限界を感じながら観てしまった。

そもそも『スカイフォール』であまりにもきれいに輪が閉じてしまったので、『スペクター』もNTTD
>>続きを読む

オールド(2021年製作の映画)

3.5

このレビューはネタバレを含みます

やはり閉じられた小さな世界を描く名手。オープニングで自ら「劇場で物語を語るんや!」と高らかに宣言するブレなさ。正直設定はかなり雑いけど、きちんとエモがそれを超えてくる。

無情に過ぎていく時間を前に「
>>続きを読む

シャン・チー/テン・リングスの伝説(2021年製作の映画)

4.0

このレビューはネタバレを含みます

ビジュアル地味だなぁとか思っていたけれど、MCU初のアジア系ヒーロー実際に劇場で観たらかなり胸熱で…。88rising仕事にのるキレッキレのアクション最高……!

父権や男らしさという呪縛からの解放、
>>続きを読む

ドライブ・マイ・カー(2021年製作の映画)

5.0

暫定今年ベスト。感じたことを全て文章化したらとんでもない量になってしまう。それくらい自分の現況や志向的に刺さるところが多かった。

「言語」の描写がとても興味深い映画だった。日本語/韓国語/英語に現れ
>>続きを読む

プラットフォーム(2019年製作の映画)

3.5

『スノーピアサー』を思い起こさせるような設定や寓意あふれる問答は、思想や宗教や属性によっていかようにでも受け取れそう。各キャラクターの人種/性別/世代にも明確な意図を感じる。
わたしは最初から未来の世
>>続きを読む

あの頃。(2021年製作の映画)

2.5

ア゛ー!これは推し活を始める前に観たかったな…。アイドルはただの媒介であって、これはコミュニティの絆やモラトリアム、「好き」から受ける恩恵についての話なんだ!と自分に必死に言い聞かせないと観れない。そ>>続きを読む

イン・ザ・ハイツ(2021年製作の映画)

3.5

結婚記念日だったので、パーッと景気よく人生讃歌ミュージカルをDOLBYで!
楽しかったです。とにかくずっと歌とラップとダンスが続いて、もうそれだけで受け取るエネルギーの渦に圧倒される。
ダンサーの使い
>>続きを読む

プロミシング・ヤング・ウーマン(2020年製作の映画)

4.5

観る前から題材については知っていたので、これはエンターテインメントにするバランスが相当難しいのでは…と思っていて。おまけに「ハーレイクイン」調なポップ&キッチュなビジュアルとタランティーノ的な演出がか>>続きを読む

バクラウ 地図から消された村(2019年製作の映画)

4.0

めちゃくちゃおもしろくて変わった映画だった!『アポカリプト』『ミッドサマー』『オンリー・ゴッド』、カーペンター、タランティーノなんかが頭をかすめるのだけれど、どこか牧歌的でくせになる味わい。

ラスト
>>続きを読む

アメリカン・ユートピア(2020年製作の映画)

4.0

デイヴィッド・バーン × スパイク・リー、オーバー60のパワーに圧倒されてしまった💪🏻💪🏿
ダンスも音楽も楽器(とくに打楽器!)も大好きなので、楽しくて泣きそうになった。

グレーのスーツに裸足、とい
>>続きを読む

茜色に焼かれる(2021年製作の映画)

2.0

このレビューはネタバレを含みます

前半ただただ不快で、ずっと「この映画どこから巻き返しがくるのかな?」と思いながら観てしまった。
これが弱者に寄り添った映画と言えるのか?クソや不幸の解像度は高いのに、救済/逃避ルートやカウンター策の解
>>続きを読む

宮本から君へ(2019年製作の映画)

3.5

原作もストーリーも正直あまり好きではなかったのだけれど、惹きこまれてしまった。真利子監督の構成力と、原作への愛とリスペクトのおかげで、わたしにも伝わった。

実際にいたら好きにならないであろう登場人物
>>続きを読む

ファーザー(2020年製作の映画)

3.5

題材が個人的に最も恐れていることの一つだったので、鮮やかすぎる監督の手際もあいまって、とにかくずーっとこわかった。人を人たらしめているものとは何なのか、人との関係を築いている礎とは……。
劇場内ではけ
>>続きを読む

ディリリとパリの時間旅行(2018年製作の映画)

4.0

各国バージョンが観たい!と思わせてくれるような、知的で文化的でうつくしい作品。
ベル・エポック期のパリを舞台に、そうそうたる偉人や名所のオンパレード。実写を背景に切り絵風のアニメーションが動く、ファン
>>続きを読む

ミッチェル家とマシンの反乱(2020年製作の映画)

4.0

製作フィル・ロード&クリス・ミラーで、音楽マーク・マザーズボーなら最高に決まってる!

ポップでスピーディー、ティーンのイマジネーションの洪水のような作画!映画ファン垂涎のパロディ特盛!コメディタッチ
>>続きを読む

フェアウェル(2019年製作の映画)

4.0

新鮮で多層的で、とてもおもしろかった。難病告知系人情モノかと思っていたが、そこが主眼ではない。東西の価値観やカルチャーギャップを超えて、もっと広く個人の価値観や異邦人そのものを捉えるような映画だと思っ>>続きを読む

ワンダーウォール 劇場版(2019年製作の映画)

3.0

京大吉田寮問題に見える現代の縮図。体制vs反体制、経済vs文化、システムの中の歯車、対話の断絶、闘うべきは誰なのかー。中・高と寮生活をしていた自分にとっては親近感がわいたし、現実の問題と照らし合わせて>>続きを読む

朝が来る(2020年製作の映画)

3.5

始まってすぐ、一瞬も目を離せない類の映画だとわかる。視点や時系列を変えながら、ていねいに一つ一つのピースを埋めていき、端役の登場人物の人生にまで光が当たるような映画。どんな人間も誰かの子どもであり、事>>続きを読む

AWAKE(2019年製作の映画)

3.5

棋士という存在、奨励会を辞めたあとの生き方、AI vs 人、因縁の同期対決、相手を尊重する投了ーと、くらくらするほどエモい要素を、ぐっと抑えたトーンと青みがかった画面でまとめたのが上品。

「みんなが
>>続きを読む

街の上で(2019年製作の映画)

4.5

今泉監督の作風は低予算ほどかがやくのがすごいな、と思う。今作はご自身がカウリスマキとジャームッシュの名前を挙げていたのも納得。市井の人々のいとおしさと、なにげない日常に宿る人生の豊かさが詰まっている。>>続きを読む

ノマドランド(2020年製作の映画)

3.5

風の時代……と感じた。ものすごくしずかで、ありえないほど没入感が高い映画。

思い出のお皿が割れてしまうシーンや外よりもよほど緊張して見える訪宅のシーンなど放浪者の心を映しとる繊細な描写と、観る者を圧
>>続きを読む

判決、ふたつの希望(2017年製作の映画)

3.0

2人のささいな諍いが、国家/民族/宗教/政治(&親子)の代理戦争へと発展していき、お互いの古傷をも暴いていく展開は巧みで、お互いの心情の変化や着地の見せ方もていねいで良かった。

ただ、本筋ではないと
>>続きを読む

パーム・スプリングス(2020年製作の映画)

3.5

このレビューはネタバレを含みます

Time Loop × The Lonely Islandという完全俺得映画!終わらないバカンスを楽しみ続けるか、新しい未来に飛び込むか、という問いはおもしろいし、もしかしたら現実世界にもループの民が>>続きを読む

ドント・ウォーリー(2018年製作の映画)

4.0

GVSらしい、弱さに寄り添うような映画。自分は宗教やスピリチュアルには興味がないけれど、心が折れそうな時いつでも電話できる存在、恥や弱さをさらけ出せる場所があるのはいいなと思えた。

思いきり自分を憐
>>続きを読む

明日への地図を探して(2020年製作の映画)

4.0

タイムループもののツボを押さえながら、さわやかな青春ラブストーリーになっている良作。

『恋はデジャ・ブ』に影響を受けての一日攻略、好きな女の子との奇跡集め、身近な人の問題、物語の主人公のスイッチ、と
>>続きを読む

サウンド・オブ・メタル ~聞こえるということ~(2019年製作の映画)

5.0

すっと心の芯に届くような映画。要所に心に残るせりふを配置しながらも、基本的には繊細な描写、そして豊かな音が自然と染み入ってくる。

まず冒頭のトレーラー暮らしの描写だけで、このカップルの人となりや抱え
>>続きを読む

隔たる世界の2人(2020年製作の映画)

4.0

はじまりの予感を胸に抱えながら、愛犬の待つ自宅に帰る、という考え得る限り最高にしあわせなシチュエーションなのに……。

あぁ、この問題はタイムループなのか、あらゆる手段を試して前進しているように見えて
>>続きを読む

日日是好日(2018年製作の映画)

3.5

両祖母がお茶の先生だったので、なつかしく感じられる作品だった。所作や室礼のうつくしさ、四季の移り変わりを味わう感性、すっと凪ぐ心。

おとなになってからバレエを習っている身としては、お稽古ごとあるある
>>続きを読む

旅のおわり世界のはじまり(2019年製作の映画)

3.5

とにかくひたすら居心地の悪さに耐えて耐えて耐えた先に訪れる、ひらかれた光景のカタルシス! 
タイトルそのままのことを映像一本で表現しきる手腕に改めて感心しつつも、あまりに底意地が悪いんじゃないか、と思
>>続きを読む