現実と幻想が混ざりあう前衛的な自己表現。ほとんど忘れていたけれど、むかし観たときの記憶がよみがえってきた。人生の悲哀を見つめながら、喜劇のなかに包みこむようなイタリア映画の優しさは、ここにもある。
芸術としての映画。こどもの世界、官能の世界、そして死の世界が交錯しながら、それぞれの孤独を浮かび上がらせる。その絶望的な重さは、神の不在であり必要でもあるのか。
だらしのない色男と、どうしても思い切れない女。なんとなく身につまされるようで、つらい。
志村喬目当てに鑑賞も、三船敏郎の堕ちていく男の色気…黒澤作品の人間(ヒューマニズムだとしても)はどうしてこんなに深いのか。
鬼気迫る演技、美しい日本語による台詞回し、そして白黒にもかかわらず鮮やかな映像美。侍のヒューマニズムという「ねじれ」もまた、この作品に魅力を与えている。
ゴダールが亡くなり、トリュフォーを見たタイミングで。いつもどこかで惹かれながら、いまだ魅せられることのないヌーヴェルヴァーグ。
読んだ小説に引用されていたので。火星へ行ったことにする話。意外と面白かった。
物語で省略されてしまいがちなものを丁寧に映しているという感じ。白黒というだけで、古さを感じさせなかった。
複雑なプロットを追いきれなかったが、雰囲気だけでも楽しめた。寝不足の日に、大いなる眠気と戦いながら。
事実に基づく社会派の冤罪モノというより、現代人の存在の底にある不安を浮かび上がらせる不条理劇として。カフカのアメリカならぬアメリカのカフカ!
印象に残ったのは、ガソリンスタンドの耳の聴こえない少年。彼の心は何を聞いたのだろうか。
社会の底辺という厳しくて優しい世界の片隅で、言葉にならないような屈折した愛。キム・ギドクが影響を受けたというのも納得。
すべてを追えたとは思わないが、カオスな展開をまとめあげ、メッセージにしてしまうのは脱帽。
アパートの裏窓から隣人たちの生活を覗く、脚を骨折した男の固定された視点。ほとんど会話劇なのに、面白くて、どこか哲学的。
いや、鳥って…と思ってたけど、登場人物たちのドラマと絡み合いながら、潜在的かつ根源的な不安を炙りだす。
映画作法の名著とそれをめぐるインタビュー。見過ごしてしまっていたようなカットのなかに込められた意味に、目を開かれた。映画は大切に観ようと思う。
映画を撮る映画。裏側だからこそ見えてくる、美しいだけでない小さな物語たち。映画と人生への愛が伝わる。
はじめてのヒッチコックだが、古さを感じさせなかった。雰囲気、トリック、斬新な手法、そして心理描写、全部ある。
わかるようで、わからない。わからないようで、やっぱりわからない。でも、心に残る物語。聖書になぞらえて、ひとりの男の人生を描く。そして、恩讐の彼方に。
そういうことだよ韓国映画!深みのある暗さというよりは、完璧な絶望の美しさ。意外に伏線と情報量多め。
名前だけ知っていた劇作家だが、芸術に対する言葉や姿勢だけでなく、演劇の裏側まで観察できた。気難しいイメージがあったけれど、意外とやさしい。でもちょっと長い。