繋がらない電話、動かないエレベーター、奪われた結婚指輪、禅問答。ヴェントゥーラは本来の機能を失ったものものの間を彷徨う。 宙吊りにされた煉獄の糸が切れるのを待つ。
とは言ったもののいかんせん退屈だ。
2008年アカデミー作品賞を獲得した『ノー・カントリー』は、絶対悪を設けることでアメリカの正義に猜疑の目を向けた。
8年後、仮想敵を作らずに社会システムの欠陥を自己批判した本作がオスカーを受賞したのは>>続きを読む
歴史に片足突っ込んだ表現者が衰退を恐れ、失われた若さを追い求め続ける作品に『YOUTH』と名付ける容赦のなさよ。
登場人物は皆生ける屍、マラドーナだ。
ジェーン・フォンダに衰えを指摘されたハーヴェ>>続きを読む
僕らはいつだって不自由だ。
40過ぎても独身だったら家族や会社から白い目で見られるし、結婚相手に求めるべき条件はまとめサイトに押し付けられる。
LGBTのカップルは腫れものみたいに扱われなきゃならな>>続きを読む
TVシリーズファンのための2時間スペシャル。
最初から最後まで傑作の匂いしかしない変態シリアスコメディ。
硬質さと色気を併せ持った描写、見せる効果/見せない効果を絶妙なところで選択していくセンスの良さ、無駄のない構造美、終始徹底した底意地の悪さ>>続きを読む
一片の爽快感もないのが素晴らしい。システムの虚構を暴いても、富める者のツケは貧民が払うのだし、そのカラクリは変わらないし。stop fuckin dance.
クソみたいな邦題が跋扈するのもきっと止>>続きを読む
タランティーノ映画の総括あるいは彼なりのアメリカ史総括とも言える8作目は、ただただ残念な内容だった。
相変わらずオープニングは見事だった。雪道を走る駅馬車と、ほのめかされる先客の存在、不穏な幕開け。>>続きを読む
会ったこともない誰かを救うためにあらゆる人々が全力をかける、そんな風景を幻想としか思えない現実。
アーサー・C・クラークが我が子を連れて未来を幻視する場面から、Mac発表会前のドタバタにつなげたオープニングはバッチリだったんだけどなぁ……
傑作『ソーシャル・ネットワーク』と同じく、諧謔に満ちたア>>続きを読む
大傑作。
ガラスごしに泳ぐ指と紅はどこまでも優雅で流麗。
あらかじめ決められた終焉に向かい、映画は動き出す。指先に紅を取り戻したキャロルが以前よりも弱気にテレーズを誘うその背後で、終わりのカウントが>>続きを読む
サウルの見たくないものは全てぼやけて映される。焦点の定まらない映像は否応無しにスクリーンへの集中を高めるのだけど、朧げな画とは対照的に音響(台詞ではない)は雄弁で、視覚的にも聴覚的にもとにかく神経を使>>続きを読む
映画的運動の悦楽。喜怒哀楽全てを飲み込んだ狂乱の大傑作。
冒頭のブラス大行進〜動物園破壊、酒まみれのラブシーン、地下での祝祭、水平線上の朝焼け等印象的なシーンばかり。
オープニングの砂埃舞う長回しから、溢れ続ける才気。どこまでも猥雑でどこまでも詩的な人間賛歌は、結婚で始まり葬式で終わる。ドブ水すすって、グラスを噛んで、のし上がって、裏切られて。
かの大傑作『アンダー>>続きを読む
仁義。不屈。
言葉自体は時代錯誤的だけど、間違いなくこのご時世に打ち鳴らすべき物語。
守るべきはなんなのさ。
若者のすべて。
バッキバキの音響センスとお約束の否定。流麗なカメラワークで描かれるのは、ホラーに擬態した苦い青春譚。
振り返らず進め。
(追記)
クライマックス、黒と赤に染まるプール。これは主人>>続きを読む
すべては1976年のために。
ブランドの肥大化とイヴ晩年の混濁の間で、あらゆるものを喰いつくしたバレエ・リュスの煌めき。
執拗なまでにイヴの後姿(鏡も含め)を映すのだけど、その現実感の欠如、浮遊にゾ>>続きを読む
実話風クライムサスペンス。無計画な嘘は身を滅ぼす話。
悪人を相容れる余地のない他者として描いたり、バカをとにかくみみっちく見せたりするのがコーエン兄弟らしい所。そのフラットさを支持したい一方で、20>>続きを読む
普通に面白かった。世代間の無理解に逃げない強さ。
白眉は二人きりのオフィスでジュールスがベンの過去を知るシーン。フェイスブックとBillie Holidayを媒介として、世代を超えた信頼関係が芽生え>>続きを読む
架空のホテルの造形から死体の見せ方まで、とにかく小洒落たホラ話。ストーリーテリングの無駄のなさ(本編約90分!)も素敵。
墓場で開かれた本は、今は亡き小説家の回想、そして(恐らく)もう現世にはいない>>続きを読む
再見。
第1章のねちっこいカメラワークだけでもう満足感あり。クリストフ・ヴァルツの言動ひとつひとつ(ミルクを飲む、小指立てて万年筆を扱う、馬鹿でかいパイプを吸うetc.)が、とにかく鼻について素晴らし>>続きを読む