海さんの映画レビュー・感想・評価 - 5ページ目

汚れた血(1986年製作の映画)

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なにをもって、わたしか、きっと死んだってわからない。なにをもって、あなたか、なにをうしなっても手にいれてもあなたはあなただろう。声、手、目、くちびる、頬、背中、あなたに与えられたからだ、そこにわたしが>>続きを読む

Home(原題)(2012年製作の映画)

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猫と暮らし始めてから、動物のいのちについて考えることがずっと増えた。引っ越しを何度か繰り返してから、家にもたましいが宿っていると信じるようになった。ひと以外の何かを、まるでひとのようだ、と感じることが>>続きを読む

ボーイ・ミーツ・ガール(1983年製作の映画)

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18歳だった、これを観たとき。今日わたしは驚いた。あの頃、こんなに知らないこと多かったっけ。「しあわせだったろうな、なにもおもわないなんて。」「しあわせだろうな、なにかおもえるなんて。」おまえたち、二>>続きを読む

パーフェクトブルー(1998年製作の映画)

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嫌われたいわ、貴方がたのその、成長を目の前にして黙り込む他できなかったくせに匿名下や画面の向こうではふんぞり返って自己中心的幻想に縋り付くしかない害悪さやら、若さを信用できないからその部分を犯す以外に>>続きを読む

海がきこえる(1993年製作の映画)

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日曜日の午前中、風があって、眠っているねこの毛をなぜている。陽が、えらんで射すのは人間よりねこだ。ねこは、光合成をするらしいから。そとから、鳥の声と、一時間に一回くらいの電車の音、踏切の音、住宅街のむ>>続きを読む

ジャッキー・ブラウン(1997年製作の映画)

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窓開放、カーテン閉鎖、キャミ1枚、対テレビ偉そうな姿勢をとってこの映画を流しながら、「タランティーノ監督の映画にある、ひとりの人間の中にあるクールさとダサさと賢さと愚かさ(ただしジャッキーだけは366>>続きを読む

マティアス&マキシム(2019年製作の映画)

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去年、3ヶ月くらい付き合ってたひとと、初めてデートした帰りの電車の中で、補助席を開けてくれた外国人のお兄さんが居た。氷結かなんかの缶を持ってて、ちょっと酔ってるみたいだった。そのとき、周りに誰も居なか>>続きを読む

マイ・マザー(2009年製作の映画)

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肉体が、心の容れ物であったとして、ではなぜ心に容れ物が必要なのか、そのときわたしは、内側で何も感じなくなったときに、外側でそれを感じるため、と書き留めている。わたしはいつも逃げ出したい、自分自身から。>>続きを読む

ナイト・オン・ザ・プラネット(1991年製作の映画)

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日本のある都市、ある晩冬の夜、22時39分。月齢4.7中潮。駅の方向を示す標識の真下に下がった温度計が、外の温度は7度だと教えている。タクシーの運転手は何度も繰り返し先週末行われたプロ野球の試合につい>>続きを読む

わたしは光をにぎっている(2019年製作の映画)

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つい昨日、夜神楽を観に行く予定だった。地元よりも知り尽くした大好きな町で、毎年この時期に、お稲荷さんの神社で行われる。近くの銭湯でお風呂は済ませて帰るつもりで、下着とタオルと眼鏡を鞄に詰めて家を出た。>>続きを読む

レザボア・ドッグス(1992年製作の映画)

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先生、このお熱いのは何に対しての愛ですか?と終始手をあげたい気持ちだった。先生わたし、こんなもの知りません…こんな激しい遊び知りません、こんな際どい本気知りません…、大丈夫おまえが何も知らない分だけ叩>>続きを読む

シックス・センス(1999年製作の映画)

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不幸とは何ですかと聞かれたらどう答えますか。幸せじゃないこと、悲しいことやつらいことで頭がいっぱいになること、病気になること、死ぬこと、安心できる場所を失うこと。どうにかしたくてもどうにもできないこと>>続きを読む

スピリッツ・オブ・ジ・エア(1988年製作の映画)

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「いって」と言うか、いっそ「いくな」と言うか、でも「いってもいいんだよ」と言われるから、今日も羽を仕舞ってあなたの元へ帰ります。退屈はやわらかい。熱狂はするどい。それは相互作用に過ぎないのに、あなたは>>続きを読む

BOYS/ボーイズ(2014年製作の映画)

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何度も願った、「今すぐに彼のもとへ走って」「あの場所に泳ぎに行って」「このひととならどうなってもいいと、痛いほど思っている心を殺したりしないで」お願い、 両手の指を組んで、手の甲に爪のあとが残るほど握>>続きを読む

夕陽のあと(2019年製作の映画)

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2020/9/4夕方、仕事終わり、台風に備えてスーパーに寄る。入り口で手を消毒してると、首からエコバッグを下げた幼い女の子が入ってきて、わたしの持ってる消毒のスプレーを隣でじっと見ている。消毒を向けて>>続きを読む

光陰的故事(1982年製作の映画)

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小学生の頃に引っ越しが重なって全部で4つの学校に通ったんだけど、そのうち2つの学校の校長先生が、夏休みの前の終業式で「光陰矢の如し」という言葉について話していて、印象に残っている。とは言っても小学生の>>続きを読む

ブンミおじさんの森(2010年製作の映画)

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よく出来た怖い話を聞いたとき、鳥肌が立つ。あれをわたしは、未知への畏怖と感動が合流して生まれているものだと思っている。神か悪魔かも分からない不明瞭な現象に感じてしまう感動、興奮、憧憬は、それを追う途中>>続きを読む

パリ、テキサス(1984年製作の映画)

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誰もが飛行機か新幹線を選ぶだろう遠い距離を、わたしたちだけが車で走るときの、車窓から見る夜明けと街の明かり、眠っているまぶたや太ももに落ちる対向車のヘッドライト、遠くから響いて聞こえるクラクションやサ>>続きを読む

さざなみ(2015年製作の映画)

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肝心なとき、ひとがひとに求めるのは一途な正直でも上手な嘘でもなくその先にある誠実さなのかもしれない。今年の春、名前すら知らなかった人に自分の文章を盗作されたとき、わたしが欲しかったのは、ごめんなさいと>>続きを読む

かぐや姫の物語(2013年製作の映画)

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可笑しくて面白いことだけのためじゃなく、うれしいときや、愛していると伝えるとき、美しいものを見たしあわせを言葉に起こす代わりにもわたしたちは、笑っているんだ。そのことを、何度も忘れてしまいながら生きて>>続きを読む

オーファンズ・ブルース(2018年製作の映画)

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わたしたちは声から誰かを忘れていくいきものらしい。となりで、眠そうに閉じかけてるふたつの目のために、子守唄みたいに一番小さな声でcharaのkissを歌ったとき、これだけはずっと、いつか会えなくなった>>続きを読む

On Your Mark(1995年製作の映画)

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わたしをかわいそうだと思う?あのとき、それまで何度も浮かべ続けては打ち消したその言葉に、あなたは言った。思わない。海ちゃんはかわいい。それはわたしが何年も、何年も待ちわびた言葉だった。人間はかわいそう>>続きを読む

家族を想うとき(2019年製作の映画)

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この生活を知っていた。どん底に居るこの家族が不幸だとか可哀想だとか判断するだけの心の余白も見つけられないほどに、いつかわたしが確かに、知っていたものだった。人間はたぶん、苦しい想いをすればするほど賢く>>続きを読む

サラブレッド(2017年製作の映画)

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呼吸にも瞬きにも行き渡った真っ白な緊張に、垂れて伝う真っ赤な衝動。インターネット上で毎秒繁殖する悪意から出た言葉は今や、紙の本に語られた愛の数をも上回る。ぐちゃぐちゃに歪んだ正義や幸福や悲痛の文字。才>>続きを読む

エイス・グレード 世界でいちばんクールな私へ(2018年製作の映画)

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痛くて恥ずかしいけどそれよりずっと愛しさを感じたのは、わたしがもうケイラを通り過ぎた「大人」だから、なんだろうか。14歳の頃、現実よりもネット上の友達の方が多かった。詩や絵を見せ合う場として使っていた>>続きを読む

もののけ姫(1997年製作の映画)

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仕事に行く日よりも早い時間に起き、猫にいってきますと5回ほど言って家を出た。開店前のショッピングモールの、映画館専用の入り口へ向かっている途中、赤とんぼを見た。
赤とんぼだ。今年広島で見るのははじめて
>>続きを読む

パラサイト 半地下の家族(2019年製作の映画)

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わたしはふと、伊藤計劃が「映画はテーマを観に行くものではない」と書いていたのを思い出す。映画とはそこにただある映像に過ぎず、そこから何を持って帰るかは我々に任されていると。本当にそのとおりだとこういう>>続きを読む

残酷で異常(2014年製作の映画)

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ふと窓の向こうを見ると、言い争いをしている男女が居る。二人にとってはきっと大したことのない、いつも通りの喧嘩なのだろう、もう何度も繰り返したやり取りみたいに休む間もなく言葉が飛び交う。ほんの少しだけ、>>続きを読む

デスプルーフ in グラインドハウス(2007年製作の映画)

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2022キラキラのアイシャドウが視界の隅に海の見える窓つくるとき、夜っていう時間帯は絶対女の子(とお化粧をするそれ以外のみんな)の目から見たほうが眩しいし綺麗だし本物だよなって根拠のないこと思って無敵>>続きを読む

ふたりのベロニカ(1991年製作の映画)

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孤独とか、愛情とか安心とか、わずかな希望とか、そういうものが、からだのなかでぐちゃぐちゃにからまってどうしようもなくなることがある。ずっとそんな日がつづいていて、見たことない映画を観ることさえためらっ>>続きを読む

サンドイッチの年(1988年製作の映画)

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ひとが、花束みたいに犬や猫を抱えているところを見ると、途端に泣き出したくなる。わたしたちが、愛するひとに悲しいことなんてありませんようにと願うとき、心の中で神さまになる。悲しいだけが欠けていて、やさし>>続きを読む

残穢 住んではいけない部屋(2016年製作の映画)

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では、今宵一通目の恐怖幽便を読んでみよう。うみちゃん君。

ハイ!吾郎さん。…「これは私が以前、住んでいたアパートで実際に体験した出来事です…」

これは私が以前、住んでいたアパートで実際に体験した出
>>続きを読む

失明に関する所感(2016年製作の映画)

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2020年6月、今から20年後には犬や猫との会話が可能になるだろうという未来予測を文部科学省が発表した。初めてそれを耳にしたのは夕方のラジオ番組で、すごいなぁと思いながら、だけれど今わたしが理解しよう>>続きを読む

眠りに生きる子供たち(2019年製作の映画)

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雨がふっているから、傘をさしている。それと同じ感覚なのかもしれない。この子たちは、生存を放棄するというよりも、きっと生きるために眠り続けるのだろう。子供が眠る姿はいとおしい。そして、そのいとおしい子供>>続きを読む

ミッドサマー(2019年製作の映画)

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悲劇と喜劇は同じ盤面上に見出されていく、人を一人挟んだりガラスを一枚挟むことによって。本作でダニーを捕えて離さなかった悪夢にも、ある者は不快感を、ある者は理解を仄めかす。「曲解」だったと思う。ダニーに>>続きを読む

風の谷のナウシカ(1984年製作の映画)

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幼い頃、どんな幽霊や悪魔の映画も怖がらずむしろ楽しんで観ていたわたしが、唯一心から怖いと感じたのが『風の谷のナウシカ』だった。母が一番愛するジブリ映画だったから、家にビデオテープもあって何度も繰り返し>>続きを読む