海さんの映画レビュー・感想・評価 - 9ページ目

呪われたジェシカ(1971年製作の映画)

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これは夢?それとも悪夢?狂気か正気か、もう私にはわからない・・・ジェシカのそんな語りで始まり終わる本作の原題は「ジェシカを死ぬほど怖がらせよう」、おそろしさ、あたらしさ、おもしろさ、どれに固執したホラ>>続きを読む

夏、19歳の肖像(2017年製作の映画)

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このレビューはネタバレを含みます

(潮騒ちゃんとの会話のために残しておくレビュー)

アメリカン・スリープオーバー(2010年製作の映画)

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自分の気持ちが伝わるほど誰かを想ったことある?夜眠ることも忘れて、一生分のキスとロマンチック。息を継ぐのも忘れて、夜の雨のクロール。夜が明けるまではまだ今日のうち。真っ赤に熟すこともなくいまだ水のよう>>続きを読む

マンチェスター・バイ・ザ・シー(2016年製作の映画)

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おなかがすいて喉がかわいて、眠たくなって、触れていたくなった。たぶんこの映画を観終わったときわたしは、瞬間的に生きようって思っていた。いつもぼんやり決めてる生きるってことが、突然ぼんやりとじゃ決められ>>続きを読む

ゼロ・グラビティ(2013年製作の映画)

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生まれるはずだった男の子の名前をそのまま付けられた女性が、無重力空間で胎児のように丸まるシーンを観た時、わたしはこの先何が起きてもこの映画を嫌いにはなれないだろうと思った。宇宙で聴く故郷の音楽、臍の緒>>続きを読む

秋津温泉(1962年製作の映画)

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連なるゆるやかな山々と瑞々しく透きとおる川、桜のように雪が降り、雪のように桜の降る地。光と影、明るみと暗がり、前と後ろを入れ替わりながら歩き続ければこのまま涯てまで、たった一つボタンを掛け違えるだけで>>続きを読む

キャラメル(2007年製作の映画)

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猫の中には一羽の鳥が住んでいるらしい。夢の中にしか出てこないからつかまえることができなくて、でもねむるたびに追いかけている。出会いっていうのが、神さまの仕組んだ運命なのだとしたら、愛しあって笑いあうこ>>続きを読む

ベルリン・天使の詩(1987年製作の映画)

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わたしはこどもだったころ、本当に多くのものを見ていた。チューリップの花の中にクリップを隠した妖精、絆創膏の上で眠っていた仔猫、バス停に立っている青いワンピースを着たおばあさん、教室の掃除道具入れの前に>>続きを読む

悲しみに、こんにちは(2017年製作の映画)

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去年の九月、尾道に行ったとき、映画館の前に本作のポスターが貼られているのを見つけて、いちじくのアイスクリームを右手に持ったまま、しばらくその場に立ち尽くしていた。光の彫る影の中にゆらめくそれがとても綺>>続きを読む

寝ても覚めても(2018年製作の映画)

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以前、東京で育った人と話をしたときに、東京の道端で誰かが倒れたり泣いていても誰も立ち止まらないのは、声をかけてしまったことによって面倒なことや犯罪に巻き込まれてしまうことがあるからだと言っていた。だか>>続きを読む

テルマ(2017年製作の映画)

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高鳴る鼓動、走る呼吸、踊り出す手脚、まるでひとが祈る姿のように枯れた木の枝は天に向け指先を伸ばし、くちびるからは愛の詩が怒涛のようにこぼれ落ちる。ひるがえるスカートの表と裏はひかりとくらやみ。目を閉じ>>続きを読む

運命は踊る(2017年製作の映画)

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結び目ばかりを気にしていたから、羽根が広がりすぎて不恰好になってしまった蝶々結び。まるで、そこに手紙の続きでも書かれているみたいに、あなたは背中を丸めたままで、その穴の向こうを覗き込む。砂をかぶった古>>続きを読む

ROMA/ローマ(2018年製作の映画)

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このひとたちは、まるでもうこの世に居ないひとたちみたいだった。ただこの場所に残り続けるいとしい記憶の亡霊みたいだった。涙のこぼれるまぶたを強くおさえて震えている手のひら、最後まで味のしなかったアイスク>>続きを読む

秋日和(1960年製作の映画)

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桜は春を選んで散り、陽は夏を選んで長居をして、かえでは秋を選んで美しく色づき、雪は冬を選んで降るのだとしたら、わたしとあなたのことも、運命なのだと思うのです。いつかかならず来る別れに見守られながら、長>>続きを読む

インサイド・ルーウィン・デイヴィス 名もなき男の歌(2013年製作の映画)

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ギターを始めたばかりの頃、おそらくこの狭い町で一番の桜の名所でもある公園に、よくギターを弾きに行った。その公園には一匹の猫が居た。この映画に出てくる猫と同じオレンジ色の、でももっと太ってて、瞳は金色で>>続きを読む

運び屋(2018年製作の映画)

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広島行きの電車で、私の向かいに座ったおばあちゃんと、私の隣に座ったおばあちゃんが、はじめましてと言い合ってからずっと話し続けてた。途中で向かいのおばあちゃんが、突然私に、「お姉ちゃん、あたしはね、10>>続きを読む

眠れぬ夜の流れ星(2015年製作の映画)

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私はずっと、一時間に一本電車がくればいいくらいの田舎で育ったから、初めて大阪の街に泊まった時には、夜が更けてもいつまでも、自転車も車も街のネオンも人の声も煩くて、驚いたものだった。いつまでこの人たちは>>続きを読む

ピアノ・レッスン(1993年製作の映画)

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失ってはじめて永遠になる。海岸で天使のように舞っていた少女、わたしを見つめるときのあなたの突き刺すように真っ直ぐな瞳、持て余した情熱は、指先が痺れるまで鍵盤を叩き続けてもなお、語り尽くされることはない>>続きを読む

劇場版 魔法少女まどか☆マギカ 新編 叛逆の物語(2013年製作の映画)

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川を渡る橋の上、ケーキ屋の前、学校の屋上、桜の木の下、砂に描いた落書き、朝も昼も夜も。どこにでも居て、ここだけに居る鹿目まどか。そうだよ、少しの真実をまぜることで、嘘はより完璧になる、髪を結んでほどく>>続きを読む

心と体と(2017年製作の映画)

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心臓は一つしかない。唇は一つしかない。瞳は二つもある。でも見つめられるのはたった一つだけ。湿った肌に触れる夜風。火照った頬に揺れる灯り。閉じたまぶたの上で、夢の中のあなたの声と、窓の向こうの電車の音が>>続きを読む

少女邂逅(2017年製作の映画)

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手を触るだけ。きみが泣いたら抱きしめるだけ。眠たいのなら肩を貸すだけ。あとは全部風のせいにした。やわらかい髪の毛の、終わりのほうにそっと指をかざした。背中を見つめながら、白いシャツの匂いを知った。嫉妬>>続きを読む

海街diary(2015年製作の映画)

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一年草という言葉は、一年中咲く花のことじゃなく、一年をかけて咲いて、そして枯れていく花のことを、呼んでる。海という漢字は、流れる水と母で成り立っていて、海は、わたしたちがそこに居ないあいだもずっと、一>>続きを読む

しあわせ(1998年製作の映画)

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あなたの匂いが、美しいところへ行くための唯一の切符みたいだから、いつまでも手放せないままで生きてしまう。あなたを抱きしめるたびに、いつかあなたを抱きしめた記憶がこぼれていく。まるでそう、海辺を歩いたあ>>続きを読む

旅芸人の記録(1975年製作の映画)

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私は沈黙する。この美しい雪景色は、かつて貴方が踏み固め、爪で掻き、すがりついて涙した地。別れを惜しむように長い間一つの風景を捉え続けるカメラ。淋しげな海、白い洗濯物、雪の中の道、幾つものトランク、壁を>>続きを読む

明日、君がいない(2006年製作の映画)

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この映画観て自分のことで胸が苦しくなったわたしも、結局、自分のことばかりで周りが見えなくなる彼らと同じなのかもしれない。でも、誰にも言えないことを、誰かに言いたいって思うことは、まちがってないと思う。>>続きを読む

ミスター・ノーバディ(2009年製作の映画)

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わたしは、猫の毛を撫でるとき、かならず、海の波打ち際を思い出します。寄せては、かえす。押しては、引く。生まれては、死ぬ。抱いては、離れる。そのくりかえし。世界中にある尊いものに、わたしたちがこの手でふ>>続きを読む

ジンジャーの朝 〜さよなら、わたしが愛した世界(2012年製作の映画)

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夢はかなわない。恋はいつか終わる。戦争は眠ってるうちに起こる。昨日と同じような今日は突然二度と来なくなる。あなたとわたしは違う。あなたは、自分を傷つけるというすごく贅沢で身勝手な一瞬の快感に溺れながら>>続きを読む

ブルー・マインド(2017年製作の映画)

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わたしの脇腹にふれている、あなたのやわらかな肌。女は流れる水に似ていると、誰かが言ってた。血、海、雨、砂?そうね、たぶん、死は生の果てにあるんじゃなくて、からだの半分だけ溺れさせあってるわたしとあなた>>続きを読む

君と歩く世界(2012年製作の映画)

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錆と骨。痛みも、古びていくだけのからだも、過去を覚えておくために与えられたものなんだって、今は思うの。頭とかじゃない。このからだ全部で、水を掻いて、あなたを探す。人は空を飛ぶことができないから、わたし>>続きを読む

青い犬(2018年製作の映画)

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わたしはあなたが好き。あなたのことを思い出す言葉、音楽、天気、季節、気温、匂い、感触、色。あなたへの好きを重ねることは、世界中の宝石を身に纏っていくのと似ているの。本当はそれだけで、悪魔も天使も怖くな>>続きを読む

野獣(2018年製作の映画)

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笑った口の中で、嘘と本当を飴玉のように転がして、素肌に触れる砂の混じった風と追いかけあってた、さっきまで、まるで楽器のようになっていた体が、今は一つも音を立てずに、黙っている。裸の背中に触れるやわらか>>続きを読む

ザ・ディスカバリー(2017年製作の映画)

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はじめて会った誰かのことを「知っている」と思ったり、忘れている大切な何かをさがすように何時間も海で座り込んだり、最近出会ったあなたと居るとき小さな頃の記憶を思い出したり、きっと誰でも、そんなことがある>>続きを読む

アナイアレイション -全滅領域-(2017年製作の映画)

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新しい世界を迎えることは、古いわたしの終わりを受け入れるのと同じことだった。恐怖の向こう側で待っているのは、こちら側に居るわたしには知り得ない世界だった。今日のわたしが知らないことを、明日のわたしは知>>続きを読む

ホンモノの気持ち(2018年製作の映画)

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時々思う。わたしの中に生まれる気持ちは、今まで観てきた映画や、読んできた小説や、聞いてきた話の真似事をしているだけで、本当に新しく生まれた感情なんか、どこにもないんじゃないか。その疑いさえも、どこかで>>続きを読む

牯嶺街(クーリンチェ)少年殺人事件 デジタル・リマスター版(1991年製作の映画)

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飴玉が缶の中で遊ぶような軽い靴の音、カーテンを揺らしていた夏の風、きみを待ち伏せた保健室の匂い、母の美しいドレスの手触り、午後に溶け込むなだらかな影、真夏の新緑、オレンジ・ジュース、汗をかいた硝子、お>>続きを読む

こねこ(1996年製作の映画)

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あなたはきっと、神さまがついうっかりうっとりして、雲の上から落としてしまった天使なんだと思う。ほかの誰も持ってない温かさで、どんなことばでもたどり着けなかった心の底に、あくびをするくらい簡単に入り込ん>>続きを読む