津次郎さんの映画レビュー・感想・評価 - 5ページ目

オットーという男(2022年製作の映画)

3.9

トムハンクス出演作がほとんど高クオリティ作品なのはどういう仕組みなんだろうか。
自身のマネジメントによって常にいい作品へ出るようがんばっているにしてもすごい打率だと思う。

たとえばジュリアロバーツの
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ファンタスティック Mr.FOX(2009年製作の映画)

3.5

今(2023/05)TikTokでWesAndersonインスパイアの動画が頻りにでてくる。

パターンがあって、シンメトリカルな(シンメトリカルでなくてもいいがバランスのとれた)背景で人を直立させた
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おばあちゃんの家(2002年製作の映画)

4.0

韓国では強い創作動機がキャリアをこえて映画を高品質にすることがある。たとえば子猫をお願いやおばあちゃんの家やはちどり。女性で寡作で初監督で、もう撮らないかもしれないが記憶に残っている。

日本では「映
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キングダム2 遥かなる大地へ(2022年製作の映画)

2.0

登場人物の名前に中国史的見地から監修された情趣がない。三国志が好きな中学生がつけたような、当て字とそれっぽい響きの名前になっており、主役格はさらに呼びやすく簡素化されている。

三国志といっても吉川英
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少女は卒業しない(2023年製作の映画)

3.5

答辞を結びにしているが、それぞれの卒業模様を等価に描いていく。
いずれも過不足のない共感しやすい話で、JKに必要以上の価値を与えていないのはよかった。
(日本映画ではJKに必要以上の価値を与えてシンボ
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浅田家!(2020年製作の映画)

3.8

湯を沸かす~をけなしたので恥ずかしいが良かった。
じめじめしないし弁解がましくない。一貫して陽性で、その陽性ムードを二宮和也が下支えしていた。震災も涙腺素材として扱っていなかったし、愁嘆しても爽やかな
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ある男(2022年製作の映画)

2.8

原作は読んでいないので映画としての印象になるが、石川慶とプロモーション用の装丁から愚行録や吉田修一や李相日のようなものを予測&期待して見た。が、登場人物が入り乱れ、追えなくなっていく。リアルなタッチだ>>続きを読む

あのこと(2021年製作の映画)

3.8

1950年代のフランス。
妊娠した女学生が堕胎のために奔走する様子がたんたんと描かれる。

当時中絶が重罪だったことで医者から見放され、アンヌ(Anamaria Vartolomei)は誰にも打ち明け
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アメリカン・アニマルズ(2018年製作の映画)

3.6

先日(2023/05/08)、白昼の銀座で高級腕時計強盗があった。
実行犯はアノニマスのお面をかぶった高校生を含む10代4、5人。
すぐ捕まったが盗品は黒幕に渡った後だった。
状況から見てかれらは捨て
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エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス(2022年製作の映画)

4.3

なんの取り柄もないエヴリン。
つぶれかけたコインランドリーを経営する華僑。

そんな彼女のところへ並行世界の優位次元から使者がやってくる。
使者は唐突にあなたこそユニバースの救世主だと説いて戦いがはじ
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ディック・ロングはなぜ死んだのか?(2019年製作の映画)

3.5

とある事件をファーゴ風に語っていく。

あきらかにおかしいのに、つくっている人も演じている人も笑わず笑わせようともしない──を徹底すると、コメディになりえる。たとえばジャームッシュやジャーヴェイスのT
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PLAN 75(2022年製作の映画)

4.0

先日(2023/04/27)ネットに“日本人口50年後8700万人”というニュースがあがっていた。「将来推計人口」の試算によるものだそうだ。

外国人の入国者が増加し、2070年の平均寿命は、男性は8
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マイ・ブロークン・マリコ(2022年製作の映画)

1.5

自殺、ブラック企業、毒親からの虐待、彼氏からのDV。
現代的病弊をならべたあざと日本映画。

マリコ(奈緒)が自死したというテレビ報道を見た幼馴染みのシイノトモヨ(永野芽郁)。
回想をまじえながら、ふ
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アネット(2021年製作の映画)

-

RottenTomatoesが71%と76%、IMDBは6.3だった。
RottenTomatoesやIMDBをよく見るじぶんとしては逡巡を感じる点だった。
つまり、なんかどっちつかずで迷っている点だ
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ボーンズ アンド オール(2022年製作の映画)

3.4

RAW少女のめざめ(2018)やぼくのエリ(2008)を思わせる。
世間から隠れ、人と違う体質に葛藤している。
人食はしたいが非道はしたくない。

とてもそういうものを描いているとは思えない語り口でも
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ハッピー・オールド・イヤー(2019年製作の映画)

3.0

片付けをしているときなつかしいものを見つけ、しばらく手をとめて思い出にふけることがある。とりわけ実家の片付けをしているとき、遠い過去からいろいろな記憶がざくざくでてきて片付けが停滞しがち──なものだ。>>続きを読む

エンパイア・オブ・ライト(2022年製作の映画)

3.0

撮影がよかった。コールマンの演技もよかった。雰囲気もよかったが本題が転がって違うところへ落ちた。立派なプロダクトだがつまづいていると思った。

Rotten Tomatoesを見たら多数の批評家がディ
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SHE SAID/シー・セッド その名を暴け(2022年製作の映画)

3.8

#MeToo運動のきっかけになったニューヨークタイムズ紙によるワインスタインの告発を描いている。

記者に課せられたのは実名付きの証言あつめ。
だが、関係者との接触をこころみるたびに、壁にぶち当たる。
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ハンガー:飽くなき食への道(2023年製作の映画)

1.2

中華鍋のあおりだけは上手な屋台飯屋の子が高級の洗礼をうける話。

克己主義の料理長から「ダメだ!やりなおし!」てなぐあいにド根性論できたえられる陳套な展開。

映画/ドラマにでてくる厨房でかならず星一
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キャッシュトラック(2021年製作の映画)

4.0

警備会社FORTICOに採用された男H(ステイサム)。現金輸送車を襲った強盗らを眉一つ動かさず百発百中八面六臂でやっつける。そこからHの来歴を倒叙し、息子の仇である強盗団の来歴も倒叙される。
脚本はガ
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スマイル(2022年製作の映画)

4.4

また新たにホラーの異才があらわれたという感じ。

ニンマリで固まると怖い──をみごとに映像化していた。
かえりみるとニンマリで固まると怖い──は誰もが認知している不気味さなのに、それがモチーフになった
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バースデイ・ガール(2002年製作の映画)

3.0

コミカルにはじまるけれどスリラー領域へ変化するサムシングワイルドのような展開のロマンチックコメディ。さいしょはThe 40 Year Old Virginみたいな感じ。口べたで奥手なジョン(ベンチャッ>>続きを読む

おと・な・り(2009年製作の映画)

4.0

よかった気がする。

ちかくに居て、なんとなく好き合っているのに、ぜんぜん会えない男女を描いた映画だった。
Wikipediaによるとキャッチコピーは『初めて好きになったのは、あなたが生きている音でし
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ファイブ・デビルズ(2021年製作の映画)

4.3

アデルがでてたので見た。
母親の遍歴をユニークな方法で可視化する娘視点の奇譚。SFにはモノにさわると来歴が見えるサイコメトラーという能力があるが、ヴィッキーは対象の人物に関連した匂いをかぐと過去へリー
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キル・ボクスン(2023年製作の映画)

3.1

殺人請負会社MKにつとめるベテランの暗殺者。
表向きはシングルマザー。
殺人と子育て。
矛盾するふたつを両立させようと奮闘するボクスン(チョンドヨン)。

MKはランク別の暗殺者を擁し若手の育成もやっ
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ボストン・キラー:消えた絞殺魔(2023年製作の映画)

3.2

着衣や街並みや車など時代考証が精妙だった。記者の葛藤や逡巡が描かれ、スポットライトやゾディアックを思わせた。話題になっているShe saidもそうだがこの分野(記者目線の事件簿)は秀作が多い。本作も手>>続きを読む

イニシェリン島の精霊(2022年製作の映画)

4.3

(部分ネタバレ)

民話の宝庫アイルランド。
想像力が豊かなケルト人。
マーティンマクドナー監督の映画を見るとそれが納得できる。

劇作家だったが映画業へ乗り出すと寡作ながら高品質で注目されスリービル
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フロッキング(2015年製作の映画)

3.3

14歳の少女がレイプされたと告白するのに誰にも信じてもらえないばかりか村八分に遭いすべてを失う──という話。

トマス・ヴィンターベア監督、マッツ・ミケルセン主演で偽りなき者という映画があった。性虐待
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モテキ(2011年製作の映画)

3.5

昔、大江千里をださいなあと思っていた。
洋楽に傾倒していたから余計にそう思っていた。
十人十色という曲があってサビが思いっきり十人十色なんだわ。
大江千里といえば巻き舌(HOUNDDOGの大友康平みた
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山の焚火(1985年製作の映画)

3.7

むかしのじぶんにとって山の焚火はパゾリーニのアポロンの地獄を見るのと同じだった。禁忌を描写しちゃっているぞという扇情的な触れ込みが若いわたしのあたまの中ですごい絵にふくらんでいた。
しかし思えば若い頃
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ウェディング・プランナー(2001年製作の映画)

2.6

昭和の結婚式はほとんどが神式だったが教会式が輸入されると瞬く間に定着した。非キリスト教徒にもかかわらずチャペル式が定番化したのは花嫁の憧憬を具体化していたからだ。教会を備えた結婚式場が乱立しオルガン奏>>続きを読む

太陽の帝国(1987年製作の映画)

5.0

スピルバーグでどれがいいと言えば個人的には一番がプライベートライアンで二番がこれ。世評とは異なるかもしれないが、じぶんの思い出としてこの二作品は大きい。

当時、若いわたしは太陽の帝国を見て凄く感動し
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BODIES BODIES BODIES/ボディーズ・ボディーズ・ボディーズ(2022年製作の映画)

3.4

人の惚れた腫れたをのぞき見するリアリティー番組は通俗の見本のような世界だ。よってそんなものが好きなのは卑しさのあらわれにちがいない──そう考えて例のリアリティー番組が好きなことは黙っていた。が、毎回欠>>続きを読む

キューティ・バニー(2008年製作の映画)

2.7

ロストイントランスレーション(LIT)がお気にで20年の間たびたび見るのだがLITのアンナファリスの楽しさは多くの映画ファンにご同意いただけると思う。
映画のプロモーションで日本に来ているB級感の甚だ
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秘密の森の、その向こう(2021年製作の映画)

3.6

オタキング氏の発言だが「映画は面白いかどうかを見るものであって、これをわかるかどうかって言い出すとアート系になっちゃうんですね。で、わかるかどうかで言い出すとすっごい作り手は楽なんですよ。」というのが>>続きを読む

ほの蒼き瞳(2022年製作の映画)

3.0

前作Antlersは好きでした。が、スコットクーパーは手堅いけれど生真面目すぎます。概して“優等生で食い足りない”という印象があります。この映画The Pale Blue Eyeもまさにそうでした。>>続きを読む