しのさんの映画レビュー・感想・評価 - 5ページ目

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金の国 水の国(2023年製作の映画)

3.4

正直、演出やトーンは観ていて小っ恥ずかしくなるが、原作が少女漫画だしある程度は仕方ない。最初のナレーションで早々にリアリティラインを引いてくれるので、寓話としての心構えもできた。それでも映画としてはや>>続きを読む

FALL/フォール(2022年製作の映画)

3.4

座って映画を見てるだけなのにここまで手に汗握れるのか、という体験だけで元が取れる。『127時間』と同様、主人公が抱えるドラマを軸にスリラーが展開されていく。高所を捉えた映像とサバイバルのアイデアはもち>>続きを読む

別れる決心(2022年製作の映画)

3.6

「愛は最大のミステリー」なんて使い古された言葉だが、本作はその謳い文句通りのことを全力で描いている。何より、あのパク・チャヌクが相変わらずのドカ盛り技巧でこんなにシンプルでストレートな話撮るのか! と>>続きを読む

イニシェリン島の精霊(2022年製作の映画)

4.0

おじさんの絶交宣言から始まる不条理劇として導入から展開から抜群に面白い。しかし恐ろしいのは、喧嘩している両者のどちらにも寄り添っているようで寄り添っていない「神の視点」だということを時たま忘れさせるこ>>続きを読む

ピンク・クラウド(2021年製作の映画)

3.4

コロナ禍とのシンクロ性は確かにあるが、どちらかというと「ゆきずりの男女がある種やむを得ず家庭を持ち、そこに囚われたらどうなるか?」という思考実験がメインだった。適切な距離感を保てない夫婦の話から、ジェ>>続きを読む

レジェンド&バタフライ(2023年製作の映画)

3.3

歴史物の醍醐味である「作り手が歴史をどう解釈するか」に関しては楽しめたし、物凄く労力をかけた王道ラブストーリーではある。ただ、確実に金と時間をかけているのに、どこに20億円使っていて何に168分もかけ>>続きを読む

ノースマン 導かれし復讐者(2022年製作の映画)

4.1

血生臭く泥臭いヴァイキングのリアリズムと、神話的・超自然的なファンタジー。それらを、シンプルで洗練された物語とカメラワークによるエンタメ性と、鮮烈なビジュアルセンスによるアート性によって融合させた、ま>>続きを読む

エンドロールのつづき(2021年製作の映画)

3.5

映画好き少年の自伝的作品だが、ノスタルジーに浸りすぎず、映画の引用も押し付けがましくなく自然。しかし少年時代の風景を色彩豊かに美しく切り取ることで入り込ませてしまう。というように、作りからは映画愛を感>>続きを読む

SHE SAID/シー・セッド その名を暴け(2022年製作の映画)

3.2

映画としてはそこまで面白みがないが、こうしてハリウッドから自浄作用的な作品が生まれることが羨ましい。当事者を傷付けないよう配慮しつつ実名でしっかり描くバランス。記者のお仕事映画でもあるので、これは「キ>>続きを読む

モリコーネ 映画が恋した音楽家(2021年製作の映画)

3.7

モリコーネの作曲プロセスとそれに対する周囲のリアクションを一曲ごとにひたすらインタビューしていく。膨大な音楽知識の体系化とその応用による変幻自在の映画音楽の豊かさを浴びた末に、生涯をかけて「自分のため>>続きを読む

非常宣言(2020年製作の映画)

3.4

コロナ以降になるとこういうパニック映画が出てくるのか。どんどんガバガバかつウェットになっていく展開は以前なら単に凡庸なだけだったが、こういう文脈を付与されると見え方も変わってくる。本作が何に焦点を当て>>続きを読む

NOPE/ノープ(2022年製作の映画)

3.1

これまでのジョーダン・ピール作品に比べ頭でっかちさが薄れ、有無を言わせぬ映像体験で理解させてしまうエンタメ映画……とは聞いていたが、個人的にはむしろこれこそ頭でっかちな映画ではと思ってしまった。

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ナイブズ・アウト:グラス・オニオン(2022年製作の映画)

3.6

ダニエル・クレイグが「残りの人生これやっていきたい」と言うのも納得のストレス解消リゾート映画。もはやミステリーの語り口を利用した別の何かで、時事性あるメッセージの痛快さに前作より比重を置いている。気取>>続きを読む

かがみの孤城(2022年製作の映画)

3.1

ここまで当事者目線に立った作品が大衆向け映画として公開される意義は確かにある。しかし、映像化としてはむしろ原作の足を引っ張っている部分が多いのではないか。そういう意味では「500ページ越えの小説をよく>>続きを読む

バルド、偽りの記録と一握りの真実(2022年製作の映画)

3.8

よくよく考えれば言い訳と開き直りと自分語りのオンパレードなのだが、その矛盾や曖昧さ傲慢さを抱えた自分そのものを「夢」というある種最強の映像遊び空間で提示してしまう正直さにやられた。ユーモアはあるし意外>>続きを読む

ケイコ 目を澄ませて(2022年製作の映画)

4.3

ただただ素晴らしい。何がすごいって、本作を鑑賞する際の「目(と耳)を澄ませる」体験こそ、主人公の感覚や感情に寄り添い想いを馳せる体験であって、つまり他者とのコミュニケーションのあり方そのものになってい>>続きを読む

そばかす(2022年製作の映画)

2.5

この話に救われる人がいるのは分かるし、その人には何の罪もないが、自分からすればこういうアプローチすら「古臭い」と感じる。頭で考えたような話だなとしか思えなかった。

リベラルなことやっているようで、蓋
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アバター:ウェイ・オブ・ウォーター(2022年製作の映画)

3.6

「ナヴィ族の役者を雇ってパンドラでロケして映画作ったの?」と言いたくなるほど映像の現実感は増している……というかもはやこれは「現実」だ。しかし、これをあと3本作ろうとしているのは正気とは思えないし、現>>続きを読む

アフター・ヤン(2021年製作の映画)

3.5

これはSF設定を利用して「喪失の疑似体験」をさせる映画だと感じた。人間がどのように存在しているのかということを、ロボットの記憶を覗き見る行為の反復によって浮かび上がらせる。そこにお茶という東洋的モチー>>続きを読む

あのこと(2021年製作の映画)

3.6

ここ数年の映画でも一二を争うレベルでキツい、しかし意義のある映画体験だった。『17歳の瞳に映る世界』とはまた違った、性にまつわる非対称性の体験。スタンダードサイズで被写界深度の浅い画は、主人公が押し込>>続きを読む

THE FIRST SLAM DUNK(2022年製作の映画)

3.9

3DCGってこんな表現ができるのか。予告映像であれだけ感じた違和感がゼロになるどころか、この原作のこの映画にしかできない没入体験が確実に生まれている。どんな魔術だ?

漫画の絵を動かす3DCGは『スパ
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マッドゴッド(2021年製作の映画)

3.6

偏執的なまでにディテールに凝った地獄巡りとして鮮烈すぎる。単に理解不能なのではなく、自分が認知し得ない社会の仕組みが確かに回っているのだろうなと推察できるディストピア描写が恐ろしくリアルだし、リアルす>>続きを読む

ブラックアダム(2022年製作の映画)

3.5

冒頭で説明を済ませたら後はほぼひっきりなしにアクションが続き、デカい音とスローモーションを多用しすぎで胃もたれしてくる。ここまで見せ場を詰め込んだ構成も珍しい。ドラマとしては雑な部分もあるが、大味アイ>>続きを読む

マーベル・スタジオ スペシャル・プレゼンテーション:ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー ホリデー・スペシャル(2022年製作の映画)

2.6

観ても観なくてもいいやつかと思ったら開幕で超重要設定明かされてて笑う。内容は無難にハートフルだが、ドラマが描かれているというよりキャラクターがワチャワチャしてるだけな印象。

1作目から言及されてきた
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グリーン・ナイト(2021年製作の映画)

3.3

ダークファンタジーとは言うがほぼアート映画のような抽象的イメージと抽象的台詞がずっと続き、だいたいのシーンが暗いので眠らせにきているとしか思えない。ただ、英雄譚でございといわんばかりの気品溢れるルック>>続きを読む

母性(2022年製作の映画)

2.4

あまり感心しない内容だった。この作品を観て自分が不審に思ったのは、むしろ父性の不在だ。母と娘の依存関係が延々と続くような無限地獄の構図を生み出すために、意図的に父親の存在が空洞にされている。母性幻想へ>>続きを読む

ストレンジ・ワールド/もうひとつの世界(2022年製作の映画)

3.4

インディ風ロゴからの20世紀パルプ・マガジン風OPでテンションは上がるし、その古典的世界観のなかで親子三世代の交流と今日的なエコロジーについて伝える試みは面白い。ただ、肝心の異世界における冒険活劇の切>>続きを読む

ある男(2022年製作の映画)

3.3

ミステリーの切り口で差別問題を描く社会派のエンタメとしてはまとまっている。特に構成は考えられていて、前半でじっくり描いた何でもない家族の人生の描写が終盤に効いてくる。問題提起としてはわりと表層的ではあ>>続きを読む

魔法にかけられて2(2022年製作の映画)

2.6

原題が示す通り、前作を反転させるアイデア、即ち人間界が御伽噺の世界になるというドタバタ劇が大部分を占めていて、その試みは面白い。ただ、今回は単なるプリンセスものの実写版のようなルックになってしまい、メ>>続きを読む

ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー(2022年製作の映画)

3.8

ティ・チャラ王の死という事件が、なんの理由づけもないままただ唐突な死としてそのまま描かれて、気持ちの整理がつかないままに世界が緊張状態へと向かっていくという構成が非常にリアルだった。常に「誰かの死」が>>続きを読む

すずめの戸締まり(2022年製作の映画)

3.7

新海作品のわりに観やすい。気持ちの悪い描写はやや抑えめになり、青臭いモノローグやRADの曲に頼る演出は封印、そしてメッセージは新海作品史上もっとも普遍的かつ地に足のついたものになっている。これだけ聞け>>続きを読む

ドント・ウォーリー・ダーリン(2022年製作の映画)

3.0

完璧な「円」のモチーフから始まり、悪夢的なビジュアルとともに世界の違和感に気づき始める演出など技巧はあるのだが、いかんせん大ネタ含めあらゆる要素が既視感満載で、その割に理想郷に没入させてくれないし、フ>>続きを読む

エノーラ・ホームズの事件簿2(2022年製作の映画)

3.5

前作よりも全然楽しめた。まずミステリー要素がかなり強化されているし、シャーロックの立ち位置も「協力すべき相手」としてハッキリしたので観やすくなった。相変わらず推理なのか思い付きなのかよく分からない部分>>続きを読む

窓辺にて(2022年製作の映画)

3.4

稲垣吾郎というビッグネームを中心に据えてもなお今泉作品の世界観が崩れないのは流石だ。構造は『街の上で』同様、終始受け身で成長しない主人公の「無駄な時間」に関する物語だが、より超然としており、40代から>>続きを読む

恋人はアンバー(2020年製作の映画)

3.1

1995年のアイルランドの田舎高校における性風俗や同性愛嫌悪の描写は戯画的ながらも実感がこもっており、だからこそエディとアンバーが「安全地帯」として築く関係には刹那的な安らぎがある。一方、物語展開はわ>>続きを読む

犯罪都市 THE ROUNDUP(2022年製作の映画)

3.2

前作よりコメディに振り切っており、シリアスさ湿っぽさ、韓国映画特有の汚れ感すらほぼナシ。その分、良くも悪くもマ・ドンソクへの依存度が増しており、筋力もスケールもパワーアップしているので、前作以上の安定>>続きを読む