しのさんの映画レビュー・感想・評価 - 9ページ目

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ミラベルと魔法だらけの家(2021年製作の映画)

4.0

非常にミニマムな家族の物語であり、同時上映の短編の内容もあわせて考えると、実はオチまで全て読めてしまう(というかあと一歩欲しい)物語ではある。では何がそれを魅力的にしているかというと、それこそモノに命>>続きを読む

tick, tick...BOOM!:チック、チック…ブーン!(2021年製作の映画)

3.0

特殊な入れ子構造のミュージカルに面食らったが、題名でも強調している「時間」を体感させる手法だと分かった瞬間に納得。ただ、逆にいえばどこに力点を置いて観ればいいのか分かりづらい時間が大半だった。あとガー>>続きを読む

MONOS 猿と呼ばれし者たち(2019年製作の映画)

4.1

外界から隔絶され、無意識の恐怖により支配された武装組織。少年少女たちの視野狭窄的な世界認識に没入させることで強調してはいるが、それはいわばコミュニティというものの普遍的な在り方でもある。全く状況説明が>>続きを読む

皮膚を売った男(2020年製作の映画)

3.6

背中をアート作品にされることによって、誰も「顔」を見なくなっていく……という一発アイデアだが、撮影や演出が工夫されていて楽しめた。主人公が美術品として美しく展示される様を、映画の観客として眺めることの>>続きを読む

ボクたちはみんな大人になれなかった(2021年製作の映画)

3.0

巻き戻しありモノクロありアス比変更ありフラッシュバックあり……と、CM・MV畑出身の監督らしい演出の手数の多さが逆効果で、ノスタルジーに浸っていつまでも未練がましくくだを巻いている印象を抱いてしまう。>>続きを読む

映画 すみっコぐらし 青い月夜のまほうのコ(2021年製作の映画)

2.7

前作が凄すぎたしイレギュラーすぎた。ただ、太い線のかわいいキャラクターたちが身を寄せ合う所作、癒されるような優しさそのものに雄弁さを託す本作の方がよりエッセンスに近いんだろう。映画にしなくてもいい気が>>続きを読む

エターナルズ(2021年製作の映画)

3.6

冒頭テロップのモロな感じからしてMCUというより本格SFを作ってやろうという宣言で、実際これは神話ですからと言わんばかりに物凄いスケールの時間軸を当然のように行き来しつつ10人の神々を家族として描き分>>続きを読む

アイの歌声を聴かせて(2021年製作の映画)

3.2

「人が突然歌い出す」ミュージカルの違和感を逆手に取ったアプローチは近年では『ダンスウィズミー』がやっていたが、本作は「ロボットだから」という理由でBGMが流れる理屈まで納得させてしまうのが面白い。合法>>続きを読む

かそけきサンカヨウ(2021年製作の映画)

1.3

片手間で撮ったんじゃないかと邪推してしまうくらい演出も話も雑。今泉作品の良いところを全て無くすと、ここまでかったるくなるのか。どう考えても115分かける内容になってない。

父親の再婚、継母と連れ子へ
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最後の決闘裁判(2021年製作の映画)

4.2

それまで積み立てた観客の映画体験すら、あの三幕目のために全て破壊してみせる必然性にシビれた。こんな構成ができるのか。個人的に今年の年間ベスト10入りは堅い。

何がすごいって、女性の主体なんて気にも留
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DUNE/デューン 砂の惑星(2020年製作の映画)

1.1

悶絶するつまらなさ。エンタメ性がないとか物語としてどうとかそういう話ではなく、浸らせるほどの取っ掛かりもないのがまずい。リンチ版に比べて何が起こってるかはわかる、というだけ。映画ではなく映像。なんでこ>>続きを読む

ビルド・ア・ガール(2019年製作の映画)

2.7

試写で鑑賞。冴えない子扱いされている16歳の女子高生が「ここではないどこか」を求めて毒舌批評家に。要はグレる話だが、それをド定番のシンデレラストーリーに当てはめ、なおかつ主人公の猪突猛進っぷりに合わせ>>続きを読む

キャッシュトラック(2021年製作の映画)

3.4

蓋を開けてみればストレートなジャンルものだが、「そのジャンル」であることをどこで明かすか、というタイミングを計算した編集で興味を持続させる。中盤以降は予定調和すぎてもう一つ飛躍する何かが欲しかったが、>>続きを読む

由宇子の天秤(2020年製作の映画)

3.6

ある事件の真実を浮かび上がらせようとするドキュメンタリー監督が、並行して自身もとんでもない事件の渦中に置かれることで、むしろ「真実」なんてものの脆弱さを体現してしまうという皮肉な状況設定がインパクト大>>続きを読む

007/ノー・タイム・トゥ・ダイ(2019年製作の映画)

2.9

このレビューはネタバレを含みます

まず何よりも言いたいのは「今の時代にボンド映画を蘇らせるには?」を15年模索した結果がこれってどうなんだよと。

そもそもボンド映画というのは、共犯関係の歴史だと思っている。ボンドは影の世界に生きざる
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カラミティ(2020年製作の映画)

3.5

本作には輪郭がない。大自然も、そのなかで生きる人々も、初めからそこにあるかのように融和している。しかしそれは、コミュニティで生きる厳しさが、大自然の厳しさと等価であるという表現でもある。だからこそ、西>>続きを読む

空白(2021年製作の映画)

4.1

まさにその瞬間「空白」が発生したことを印象付ける衝撃的なタイトルシークエンスから掴まれた。これほど悲惨な話が延々続くのに、終盤になってくると「根っからの悪人なんてこの世に居ないんじゃないか」という希望>>続きを読む

べイビーわるきゅーれ(2021年製作の映画)

3.1

「元女子高生が殺し屋」という大きな嘘を成立させるために、ちゃんと説得力あるアクションを提示しているのは良かった。体格差ある相手に無理やり食らいつく様な動き。ただ、まだ全体的に荒削りで、今後大きな作品に>>続きを読む

子供はわかってあげない(2020年製作の映画)

4.1

「複雑な家庭」「別れた父親探し」「新興宗教」と、何だか重苦しそうな要素が満載だが、カラッとした夏休み映画・青春映画の色に全てを塗り替えていく。冒頭のアニメから始まり、場面のディテールの描き込み、台詞の>>続きを読む

哀愁しんでれら(2021年製作の映画)

3.0

「御伽噺だから何から何まで設計してやったぜ」感はあるのだが、言ってしまえばそれだけのことでしかなくて、なんか虚しい。ただ、終盤で娘を学校に行かせようと完全にイカれた説得をするシーンはギャグでしかなくて>>続きを読む

シャン・チー/テン・リングスの伝説(2021年製作の映画)

3.5

兎にも角にも前半、特にバスのシーンだけでももう一度観たいと思わせる肉弾戦+ワンアイデアのアクションが素晴らしい。ただ、物語に関しては大枠が同じである『ブラックパンサー』の方が筋は通っていた。あとは後半>>続きを読む

アナザーラウンド(2020年製作の映画)

2.8

題材の割に理屈っぽい作り。良い歳したおじさんが酔っ払って元気になっていく過程も、劇中では実験という体なので割と淡々としている。その後も、飲酒の正負両側面をイベント的に配置する予想通りな展開で、人生の悲>>続きを読む

劇場版 アーヤと魔女(2020年製作の映画)

3.7

80分以上あるが、これは短編として観るべき作品。いい意味で作り手の肩の力が抜けた感があり、スケールも物語も等身大で清々しく、主人公・アーヤの逞しさ愛らしさが存分に描かれている。受け手もジブリの看板に囚>>続きを読む

鳩の撃退法(2021年製作の映画)

2.6

マクガフィンが奔放に人物間を移動していくのは伝統的な構成で楽しいはずなのに、この興味の湧かなさはすごい。思うに理由は2つあり、1つは単に映画的な牽引力がないこと、もう1つは「語られる出来事が現実か虚構>>続きを読む

オールド(2021年製作の映画)

3.2

ビックリするほど凡庸だった。この題材なら絶対もっとグッとくる話になったはず。あの少年との交流すらすぐフレームアウトさせるとは思わなかった。

どういう理屈で歳取るの? みたいな設定への疑問はどうでもよ
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ドライブ・マイ・カー(2021年製作の映画)

4.1

演技と言葉、すなわち表現というものを、3時間の尺をかけてほとんど偏執的なまでに探求した怪作。もはや表現オタクのための映画なのではと思うが、しかしそのフェティシズムの3時間に付き合った先、全てが設計され>>続きを読む

Summer of 85(2020年製作の映画)

3.3

終盤までは美しいだけで陳腐だなと感じてしまい、冒頭で提示されるサスペンスで集中力を持たせていたが、最後の最後でなるほどなと。LGBTQの後ろ暗さを描きながらも、盲目性にフォーカスすることで恋の体験自体>>続きを読む

孤狼の血 LEVEL2(2021年製作の映画)

3.9

前作は何だったのかと思う面白さ。松坂桃李と鈴木亮平の対峙からどんどんキャッチーなエンタメ映画になっていく展開、それを見世物的に楽しむ構図こそが、「この世界に狼はいるのか?」という本作の問題提起に繋がり>>続きを読む

サマーフィルムにのって(2020年製作の映画)

3.0

「青春映画」としては素晴らしかったが、「映画作りの映画」としては本当にダメ。面白いくらい綺麗に乖離している。「いつかのだれかの物語」って、本当にそういうことか?

時代劇もキラキラ恋愛劇も、その人の好
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ザ・スーサイド・スクワッド "極"悪党、集結(2021年製作の映画)

4.1

出落ちギャグを「決死部隊とは何か」の説明として活用するストーリーテリングの巧さ、ちゃんとアメリカ国旗の重圧を画面に忍ばせておく緻密さに冒頭から舌を巻く。無茶苦茶やっててもこういう根本部分がしっかりして>>続きを読む

キネマの神様(2021年製作の映画)

2.9

山田洋次の我が出過ぎていて、この世界に浸れる人は美談に感じるのだろうが、しかしコロナ禍というタイムリーな要素を無理やり入れた割には「これからも映画を未来へ繋ぐんだ」という心意気を感じず、むしろ物凄く内>>続きを読む

フリー・ガイ(2021年製作の映画)

3.9

物語の主軸は懐かしさすら覚えるようなロマコメで、そこに『トゥルーマン・ショー』やら『マトリックス』やら『シュガー・ラッシュ』やらのエッセンスをブレンド。要素は既視感あるものの、レイノルズ×「途中で」デ>>続きを読む

ワイルド・スピード/ジェットブレイク(2020年製作の映画)

2.9

TOKYO組含めこれまで以上にキャラクターを集結させてはいるが、お話の水増しにしかなっていない。ドムの家族に斬り込む主軸も、結局表層的なファミリーイズムに回収されるだけ。一見シリーズ愛に満ちているよう>>続きを読む

映画クレヨンしんちゃん 謎メキ!花の天カス学園(2021年製作の映画)

4.1

青春学園モノとして、ミステリーとして掛け値なしに面白いのがまず偉い。そこにアニメーションでしかできないギミックを採用し、最終的に全てのジャンル要素を「『クレヨンしんちゃん』ってどんな作品か?」という本>>続きを読む

イン・ザ・ハイツ(2021年製作の映画)

3.6

真夏に繰り広げられるミュージカルの熱気が、移民たちの確かな存在感の主張として充満していく。未だ改善しない格差と差別について、例えば悪役を登場させるでもなく、完全に内輪の物語として陽気に歌い上げたのがす>>続きを読む

ジャングル・クルーズ(2020年製作の映画)

3.0

立て続けに発生するアクションでもキャラクターや設定を説明して停滞させない前半は良かった。割としっかり怖がらせてくる演出は意外。ただ、後半でクルーズが関係なくなると無理やり盛り上げてる感が強くなる。盛り>>続きを読む